社会福祉法人の設立手続きの流れと必要書類

公開日:2019年07月07日
最終更新日:2022年07月16日

この記事のポイント

  • 社会福祉法人とは、社会福祉法の定めるところにより、設立された法人のこと。
  • 社会福祉法人には、理事や財務諸表を監査できる監事をおく必要がある。
  • 社会福祉法人の設立に際しては、所轄庁の認可を受ける必要がある。

 

社会福祉とは、貧困者や心身に障がいを持っている人に対して、さまざまな分野において支援をするという意味で用いられます。
その公益性の高さから、設立するためには行政庁の許可が必要であり、設立後も行政庁などの厳しい監督下に置かれます。

一方で、補助金の交付や税制面での優遇措置がなされるなど、健全な運営を行うための支援体制が整っています。

社会福祉法人とは

社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより、設立された法人のことをいいます。

生活保護を受ける人や、高齢者、児童、障がいを持つ人など何らかの支援を必要とする人に対して、教育、文化、医療、労働などさまざまな社会福祉サービスを提供する公益性が極めて高く、営利を目的としない民間の法人です。

(1)どのような事業を行えるか

社会福祉法人が行うことができる事業は、その名のとおり「社会福祉事業」です。
公益性、継続性、非営利性を確保しながら利用者に安心を与えることができる「福祉理念」を実践する事業であることが求められます。
具体的には以下の内容の事業に分類されます。

社会福祉事業
生活困難者に対する支援で、内容に応じて第一種福祉事業、第二種社会福祉事業に分類されます。

①第一種福祉事業
・生活保護法に定められた施設運営
・児童福祉法に定められた、乳児や母子、障がい者などに対する施設運営
・老人福祉法に定められた養護老人ホームなどの施設運営
・障がい者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための施設運営
・売春防止法に定められた婦人保護施設運営
・授産施設の運営、生活困難者に対する資金融資事業

②第二種福祉事業
・生活困窮者に生活用品や金銭を与える事業
・児童福祉法に定められた支援事業や相談事業
・母子および寡婦福祉法に定められた支援事業
・老人福祉法に定められた支援事業
・障がい者自立支援法に定められた支援事業
・身体障がい者福祉法に定められた障がい者への更生相談事業
・精神障がい者社会復帰施設の運営事業
・生活困窮者への居住地利用や診察、介護老人保健施設の利用事業
・隣保事業(貧困や差別によって劣悪な環境に置かれた人に対する支援)

公益事業
有料の老人ホーム運営など、社会福祉事業を公益目的とした事業で、具体的には、保健医療サービスとの連絡事業や入浴支援、子育て支援、有料老人ホームの運営などが該当します。

収益事業
福祉事業の妨げとならないような事業のことで、ビルの貸与や駐車場の運営などが該当します。
なお、収益事業による収入や経費について会計処理する場合には、社会福祉事業による会計とは別に処理します。

(2)社会福祉法人の理事と監事

社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて理事と監事を置かなければなりません。
理事は、社会福祉法人内部の事務を処理する機関であり、社会福祉法人を代表する権限を持つことになります。そして、監事は、社会福祉法人の運営が適正に行われているかどうかを監査する権限を持つことになります。
理事や監事は大変重要な役職であることから、慎重に選任することが要求されます。
理事については、人数は6名以上選任しなければなりません。また社会福祉に関する学識経験を有していることも求められます。
また、監事については、社会福祉法人を監査するという権限を持っていることから定数は2名以上とされ、1名は財務諸表の監査ができること、もう1名は社会福祉事業の学識経験者であることなどが要求されます。

(3)社会福祉法人の評議員会

社会福祉法人においては、重要な事項の意思決定権限を持っているのは理事会ですが、理事会とは独立した機関が意見を述べることで、社会福祉法人の利益につながる判断が行われることが求められています。
このように、社会福祉法人の意思決定に基づいて意見を表明する権限を持つ人を「評議員」といいます。
そして、この評議員によって構成されるのが「評議員会」です。

評議員会は、一部の理事によって社会福祉事業本来の目的に反して不当な営利追及などの行為が行われることを防ぐ目的で置かれます。

評議員は適切な学識経験者で、理事会の同意を得て理事長によって依頼を受けます。任期は2年(再任可能)で、理事の2倍を超える人数が選任されます。また、評議員の親族や特殊な関係にある者は3名までにしなければならないなどの要件もあります。

(4)社会福祉法人の法人本部

社会福祉法人の業務を具体的に遂行する機関を、「法人本部」といいます。
法人本部は、理事会の決定事項を実際に遂行するために、事業計画等を管理したりすることが求められます。そのため、法人本部は、理事会の意思決定の執行機関であるといわれることもあります。

たとえば、今後起こりうる問題に備えて社会福祉施設の事故などへのリスク管理を行うための情報収集や、社会福祉施設の外観に関する管理、事業を運営していくための計画の策定なども行います。
つまり、理事や理事会が十分機能するためには、まずこの法人本部の機能強化と職員の確保・育成が重要な課題ということになります。

(5)社会福祉法人の報酬

社会福祉法人の理事や監事は、その他の職員とは異なる地位にあるため、報酬に関してもさまざまな取り扱いが行われています。

たとえば、理事、監事及び評議員に対する報酬等については、民間事業者の役員の報酬等、従業員の給与と比較して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めなければならなりません。

また、役員等の報酬と社会福祉施設等に勤務する職員等との間で、報酬に大きな差が生じることは好ましくありません。
役員等の報酬が過大にならないよう、ほかの職員等とのバランスを見ながら、報酬額を決定する必要があります。

(6)社会福祉法人の税金

社会福祉法人や、一般の営利法人が行うような収益事業については法人税が課税されますが、その他の非営利事業については、法人税は課税されません。
また、収益事業についても法人税の軽減税率があるなど、さまざまな面で優遇措置が設けられています。

通常法人は、各事業年度に生じたすべての所得に対して法人税が課されることになっています。
しかし、社会福祉法人の場合には、収益事業を除く所得が非課税扱いとなり、収益事業に関する所得には軽減税率が適用されます。
また、社会福祉法人が運営する施設などに対する補助金制度を受けることができます。
また、社会福祉施設で就労する職員は退職手当共済制度を利用することができ、公務員並みの共済制度を利用することができます。

社会福祉法人の設立手続き

設立に際しては、社会福祉法施行規則で定められている手続きを行い、所轄庁の認可を受ける必要があります。

どの所轄庁に認可を求めればよいのかは、事業規模によって異なります。つまり、行う予定の事業が1つの区域にとどまる場合は市長または区長に対して行います。

これに対して事業規模が2つ以上の区域にまたがって行うことが想定される場合には、都道府県知事が所轄庁になりますし、場所的な制約がない場合には、厚生労働省大臣に対して認可を求めることになります。

主な認可の基準は、以下のとおりです。

①社会福祉法人の資産の有無(原則として1億円以上の基本財産)
②目的とする社会福祉事業を行う必要を満たしているか
③定款の内容および設立手続きが法令に違反していないか

社会福祉法人の事業は、貧困者や高齢者または障がい者などの支援を行うものであり、極めて公益性が高いことから、国による支援を受けることが必要となります。
そこで、設立手続きについても厳しい要件が必要となります。

(1)設立準備(設立準備会の発足、役員の選出など)

設立準備会とは、総会、代表者、監査機関など、社会福祉法人の設立準備を行うために、設立予定者が組織する合意機関のことをいいます。

総会とは、設立準備会を構成する者全員による意思決定機関をいいます。そして、総会において代表者が1名選出されます。
監査機関とは、社会福祉法人の設立に必要な費用を把握し、その費用が適切に使われることを監査する機関です。設立後の感じに就任する予定の者が行うのが一般的です。

(2)設立する際の定款を作成

定款とは、社会福祉法人の基本規程のことで、定款に記載する事項は絶対的記載事項と任意的記載事項があります。
絶対的記載事項とは、その事項の記載が欠けている場合、その定款自体が無効になるような事項のことで、目的、名称、社会福祉事業の種類などを規定します。

一方、任意的記載事項とは、その事項が記載されていなくても定款の有効性には影響を与えませんが、記載すると絶対的記載事項と同じ効力を生じる事項のことをいいます。

必要的記載事項 ①目的
②名称
③種類
④事業所の所在地
⑤役員(理事・監事)に関する事項
⑥会議に関する事項
⑦資産に関する事項
⑧会計に関する事項
⑨評議会に関する事項
⑩公益事業の種類
⑪収益事業に関する事項
⑫解散に関する事項
⑬定款を変更するにあたって必要な事項
⑭公告の方法
相対的記載事項 ①評議会を置く場合には、それに関する事項
②公益事業を行う場合は、その種類
③収益事業を行う場合は、その種類
④解散に関する事項
⑤理事の代表権を制限する規定
⑥業務の決定方法
任意的記載事項 ①役員外で役職を設ける場合の規定や職員の任免に関する事項
②役員の欠員や補充に関する事項
③監事の職務に関する事項
④監事の兼職禁止に関する事項
⑤合併に関する事項

厚生労働省では、社会福祉法人の定款例を公表しています。
必要的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項についても記載されております。

参照:厚生労働省「社会福祉法人定款例」

(3)所轄庁の認可を受ける

定款を作成した後は、所轄庁の認可を受ける必要があります。
どの所轄庁の認可を受けるかについては、設立する社会福祉法人の事業規模によって異なります。行う予定の事業が1つの区域内にとどまる場合には、市長または区長に対して認可を求めます。
事業規模が2つ以上の区域にまたがって行うことが想定されている場合には、都道府県知事が所轄庁になります。
また、事業規模が広範囲にわたったり場所的な制約が存在しなかったりする場合には、厚生労働大臣に対して認可を求めることになります。

主な認可の基準は、以下のとおりです。

①社会福祉法人の資産の有無(原則として1億円以上の基本財産)
②目的とする社会福祉事業を行う必要を満たしているか
③定款の内容および設立手続きが法令に違反していないか

(4)設立登記を行う

法人登記の申請は、その法人の事務所の所在地を管轄する登記所に対して行います。
社会福祉法人は、設立の登記が完了すると法人として成立したことになりますが、設立登記が完了した後もさまざまな手続きが必要です。
たとえば、法人内部では迅速に第1回目の理事会を開催する必要がありますし、評議員会を設置する場合には、この理事会で評議員を選任する必要があります。
また第2回評議員会で理事・監事を選任したりその他の重要事項を決議したりする必要があります。
さらに社会福祉法人が土地や建物を所有する場合には、設立登記後に不動産登記の申請をすることも必要になります。

設立する際には、主に以下の書類が必要となります。

①設立認可申請書
②定款
③設立当初の財産目録
④財産が法人に帰属することを証する書類
⑤法人に帰属しない不動産の仕様権限を証する書類
⑥設立当初の会計年度および次会計年度の事業計画書および収支予算書
⑦設立者の履歴書等
⑧役員就任予定者の履歴書等
⑨施設建設関係書類
⑩施設庁就任承諾書
⑪諸規定

まとめ

以上、社会福祉法人の設立方法や必要書類についてご紹介しました。
社会福祉法人は、その高い公益性から、設立手続きや役員などについて厳しい要件があります。また、各自治体との協議が必要となるので、設立手続きや申請手続きにはさまざまなノウハウが必要となります。

社会福祉法人における幹事は、財務諸表等の監査ができる人や社会福祉事業について学識経験がある人でなければなりません。
また、財務諸表等を監査できる人とは、公認会計士や税理士などが想定されていることから、社会福祉法人の設立を検討する時には、社会福祉法人の設立にノウハウを持つ税理士に早めに相談することをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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