公開日:2023年08月22日
最終更新日:2023年10月17日
少数株主権と単独株主権は、ともに株主の権利です。
株主の権利は、保有している株式の数で変わります。
少数株主権とは、一定の割合の議決権などが必要な権利で、単独株主権とは、1株でも保有していれば行使できる権利です。
会社法では、すべての株式会社に株主総会と取締役を置くことが義務づけられています。
株式会社では、出資した人は会社設立後に株主となり、その地位や権利を株式といいます。
株式は、原則として1株ごとの権利などの内容は同じです(例外として優先株式や劣後株式など、内容が異なる種類の株式もあります)が、保有している株式の数で権利の内容は変わります。
少数株主権とは、一定以上保有していることで行使できる権利であり、単独株主権とは、1株でも保有していれば行使できる権利です。
株主の権利は、大きく自益権と共益権の2つがあります。
自益権とは、株主が自分自身のためにもつ権利であり、具体的には剰余金から配当を受ける権利や会社清算時に分配を受ける権利などをいいます。
一方、共益権は株主が会社のためにもつ権利で、具体的には会社の経営に参加したり(株主総会の議決権など)、経営を監視したり(役員に対する各種行為の差止請求権など)する権利ですが、ほかにも共益権に分類される権利はいろいろなものがあります。
区分 | 権利の内容 | |
自益権 | 単独株主権 | 剰余金の配当を受ける権利 |
残余財産の分配を受ける権利 | ||
反対株主の株式買取請求権 | ||
共益権 | 議決権 | |
株主総会における議題提案権 | ||
定款閲覧等請求権 | ||
募集株式の発行または自己株式の処分の差止請求権 | ||
少数株主権 | 株主総会招集の請求権 | |
株主総会における議題提案権(取締役会設置会社) | ||
取締役の解任請求権 | ||
解散請求権 |
先ほど、株主の権利は大きく自益権と共益権の2つに区分されるとご紹介しましたが、この共益権のなかには、一定の株式や一定割合以上の議決権を保有していないと権利の行使ができない権利があり、これを「少数株主権」といいます。
少数株主権とは、一定以上の保有で行使することができる権利で、代表的なのは株主総会の議題・議案を提案できる株主提案権です。また、株主総会の招集を会社に請求できる権利、やむを得ない時に会社の解散を請求する訴訟を起こす権利も少数株主権の1つです。
少数株主権が一定以上の保有で行使できる権利であるのに対し、単独株主権は、1株の保有で行使できる権利です。
分かりやすい例では、株主総会の議決権、株主総会の議決を取り消す訴訟を起こす権利などがあります。
なお、前述した自益権は、すべて1株でも保有していれば行使できる単独株主権です。
代表的な単独株主権
・自益権
剰余金の配当を受ける権利
残余財産の分配を受ける権利
反対株主の株式買取請求権
・共益権
議決権
株主総会における議題提案権(取締役非設置会社)
株主名簿閲覧請求権
代表訴訟の提起権
取締役の違法行為差し止め請求権
少数株主権は、すべて行使するために必要な議決権数・株式数の要件が定められています。そして、その割合の議決権などを保有しない株主は、少数株主権を行使することはできません。
権利の内容 | 議決権数・株式数の要件 | 保有期間の要件 |
株主総会招集の請求権 | 総株主の議決権の3%以上 | 行使前6カ月 (公開会社でない会社は要件なし) |
株主総会における 議題提案権 (取締役会設置会社) |
総株主の議決権の1%以上 または、300個以上の議決権 |
行使前6カ月 (公開会社でない会社は要件なし) |
取締役の解任請求権 | 総株主の議決権の3%以上 または、発行済株式の3%以上 |
行使前6カ月 (公開会社でない会社は要件なし) |
会計帳簿の閲覧等請求権 | 総株主の議決権の3%以上 または、発行済株式の3%以上 |
- |
解散請求権 | 総株主の議決権の10%以上 または、発行済株式の3%以上 |
- |
取締役会設置会社では、少数株主権のうち、株主提案権は議決権総数の100分の1以上を保有する株主が、株主総会の8週間前までに会社に通知をすれば、株主総会に議案を提出できる権利です。
しかし、この権利を濫用して1人の株主が多くの議案を提出して、株主総会の進行を妨害するケースが相次ぎました。
そこで、2021年3月施行の改正会社法では、1人の株主が1回の株主総会で提出できる議案に制限が設けられ、「1人の株主が、1回に提出できる議案の数は10個まで」とされました。
会社設立時には、発起人が複数名となることがあります。
会社法上は、設立時の株主となる発起人について「何人まで」という制限はありません。1人でもOKですし、100人でもOKです。
しかし会社設立は、設立時の出資者全員が発起人となる「発起設立」で行うケースがほとんどであり、発起設立では、会社設立に必要な定款の内容を変更するためには発起人全員の同意が必要ですし、設立後は、発起人は会社の株主となり、出資比率に応じた議決権を持つことになります。
設立当初はそれほど問題にならなくても、会社が順調に成長すればするほど、各株主の考え方の違ってくることが増えてくるものです。所定の議決権数を満たさなければ決議することができなくなり、事業を進めるうえで大きな問題となることがあります。
株主の権利は、大きく自益権と共益権に分けられます。
起業したばかりの小さな会社の場合は、1人で会社を設立する場合に配当を行うケースはありませんから、会社設立当初の株主の権利は、株主総会の議決権ということになります。
したがって、どのような出資の割合にするかは、経営への関与度合いなどをもとに決めることが大切です。
たとえば、1番要件の軽い「普通決議」でさえも、過半数の同意が必要なので、発起人2名で50%ずつ出資をして設立した場合には、常に双方の同意が必要となるというリスクを伴います。
つまり、会社設立当初の役員としては、特別決議が議決可能となる「出資総額の3分の2以上」を確保することがポイントとなります。
上場している会社の株式は、原則として自由に他社に譲渡することができます。
しかし、会社を設立したばかりの会社や小さな会社の場合には、全く知らない株主が勝手に経営に関与できるようになると、思わぬトラブルに発展することがあります。
そこで、このようなトラブルを回避するために、通常会社を設立したばかりの会社は、株式に譲渡制限をも受けます。譲渡制限とは、会社の株式を譲渡する際には会社の許可が必要であると、定款に定めておくことをいいます。
譲渡制限株式とすると、株主は会社の承認なく株式の譲渡をすることができなくなります。
なお、譲渡制限株式とした場合には、譲渡を承認する機関もあわせて定款に定めておくようにしましょう。通常は、株主総会か代表取締役を譲渡承認する機関とします。
定款の記載例 第○条 当会社の発行する株式の譲渡については、当会社(例、株主総会、代表取締役、取締役、取締役会)の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認したものとみなす。 |
株主は、株式の引受価額を限度とした責任を負うとともに、株主の権利を有することになります。
株主の権利は、その性質によって「自益権」と「共益権」に区分され、行使要件によって「単独株主権」と「少数株主権」に分類されます。
単独株主権とは、株主が1株でも保有していれば行使することができる権利であり、少数株主権とは、一定以上の割合の議決権または発行済株式を保有する株主だけが行使できる権利です。
なお、会社設立時には、同じ志を持ったメンバーでスタートすることになりますから、「全員で同じ株式を持って、会社を成長させよう」と考えがちですが、株主数は少ない方がリスクは少なくなります。
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