【令和3年度見直し】中小企業投資促進税制とは|要件・対象設備など

公開日:2019年07月08日
最終更新日:2021年12月12日

この記事のポイント

  • 「中小企業投資促進税制」とは、中小企業の設備投資を後押しするために設けられた制度。
  • 「中小企業投資促進税制」の適用対象法人は、中小企業者等。
  • 「中小企業投資促進税制」は、令和3年度に見直しがされ、適用期間が2年延長された。

 

「中小企業投資促進税制」とは、中小企業の設備投資を後押しするために設けられた制度です。平成31年(2019年)に一部見直し・延長されましたが、さらに令和3年度の税制改正で見直しが行われ、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」も取り込む形で制度が一本化され、適用期限が2年間延長されました。
中小企業者で設備投資を検討中の場合には、このチャンスを逃さないようにしましょう。

中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制とは、適用対象法人が、指定期間内に特定機械装置等でその製作の後事業の用に供されたことがないものを取得、または製作(つまり新品)して、国内にある中小企業者等の営む指定事業の用に供した時に、その指定事業の用に供した事業年度において、その特定機械装置等の基準取得価額の30%相当額の「特別償却」または基準取得価額の合計額の7%相当額の「税額控除」の選択適用ができる制度です。
※税額控除の適用は、特定中小企業者等(資本金3,000万円以下の中小企業者等)に限られます。

このような中小企業・小規模事業者の投資を後押しする税制は数多く、主なものとしては、以下のようなものがあります。

・中小企業経営強化税制
・少額減価償却資産の特例
・地域未来投資促進税制
・再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置
・DX投資促進税制
参照:中小企業庁「中小企業税制(令和3年度版)」

(1)中小企業投資促進税制の令和3年の改正ポイント

中小企業投資促進税制は、令和3年度に見直しが行われました。
中小企業投資促進税制は2年間延長されるとともに、商業・サービス業・農林水産活性化税制については、対象業種が中小企業投資促進税制に統合されることになり、商業・サービス業・農林水産活性化税制は適用期限をもって廃止されることになりました。

これにより、対象となる指定事業に以下の事業が追加されました。

・不動産業
・物品賃貸業
・料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する業種(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)

また、対象となる法人に「商店街振興組合」が追加されることとなりました。

(2)中小企業投資促進税制の適用法人

適用対象者は、青色申告書を提出する「中小企業者等」であり、適用除外事業者に該当する法人は適用を受けることはできません。

・中小企業者
・農業協同組合等
・商店街振興組合

(3)中小企業投資促進税制の特別償却・税額控除

中小企業者等は、特定機械装置等を事業の用に供した事業年度において、特別償却または税額控除のいずれかの適用を受けることができます。

①特別償却

特別償却額の限度額は、特定機械装置等の基準取得価額の30%相当額です。基準取得価額とは、船舶についてはその取得価額×75%であり、その他の資産については、その取得価額となります。

船舶以外の特別償却限度額

基準取得価額(=取得価額)×30%

船舶の特別償却限度額

基準取得価額(=取得価額×75%)×30%
①税額控除
なお、税額控除の適用が認められるのは、特定中小企業者等に限定されています。資本金の額または出資金の額が3,000万円を超える法人は適用されません。

資本金 特別償却 税額控除
3,000万円以下
3,000万円超 ×

事業の用に供した年度の法人税額から、特定機械装置等の基準取得価額の7%に相当する金額(税額控除限度額)が控除されます。ただし、特定中小企業者等の共用年度における税額控除限度額がその共用年度の所得に対する調整前法人税額の20%に相当する金額を超える時には、その控除額は20%に相当する金額が限度とされます。

基準取得価額×7%
調整前法人税額×20%
※上記のうち、いずれか少ない金額

限度額は法人税額の20%が限度となります。控除しきれなかった金額は、翌年度に繰り越すことができます。

(4)中小企業投資促進税制の指定業種

令和3年度の見直しによって、不動産業・物品賃貸業・料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する業種(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)が追加されたことにより、以下の事業が指定事業となります

製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、不動産業、物品賃貸業、サービス業(他に分類されないもの)、農業、林業、漁業、水産養殖業

(注)電気業、映画業以外の娯楽業等は対象になりません。また、風俗営業法上の性風俗関連特殊営業に該当する事業についても、対象となりません。

(5)中小企業投資促進税制の適用期間

適用期間は、令和3年度に見直しが行われ期間が延長され、令和3年4月1日から令和5年3月31日までとなっています。
この期限までに対象設備を取得等して指定事業のために利用することが必要です。ただし、解散(合併による解散をのぞく)の日を含む事業年度および清算中の各事業年度は適用できません。

(6)中小企業投資促進税制の対象資産

対象となる資産の種類と価額要件は、以下のとおりです。
中古品や貸付の用に供する資産は、対象とはなりません。

設備の種類 取得価額の要件
機械装置 1台160万円以上
測定工具・検査工具 1台120万円以上、または
1台30万円以上で、かつ複数合計120万円以上
ソフトウェア 一定のソフトウェア70万円以上、または
複数合計が70万円以上
(複写して販売するための原本、開発研究用のもの等はのぞく)
普通貨物自動車 車両総重量3.5トン以上
内航船舶 海上運送業の用に供されるもの

なお、機械および装置、工具またはソフトウェアの取得価額が160万円以上、120万円以上、70万円以上であるか否かを判定する場合には、その機械装置および装置、工具またはソフトウェアが法人税法第42条から第49条までの規定による圧縮記帳の適用を受けたものである時には、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行います。

(7)中小企業投資促進税制の手続き

中小企業投資促進税制の特別償却の適用を受けるためには、確定した決算において償却費として損金経理を行う必要があります。そして別表16(1)または別表16(2)とともに、確定申告書等に特定機械装置等の償却限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り適用されます。具体的には、特別償却の附表を作成して提出します。

<個人事業主>
・特別償却の場合、青色申告決算書の「減価償却の計算」の「【ヘ】割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」の欄に特例名(措法 10 条の3)を記入すること。
・税額控除の場合、「中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」を確定申告書に添付すること。

<法人>
・特別償却の場合、法人税の確定申告書に「特別償却の付表」(中小企業者等又は中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)と適用額明細書を添付すること。
・税額控除の場合、法人税の確定申告書に「別表」(中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書)と適用額明細書を添付すること。

参照:中小企業庁「中小企業税制(令和3年度版)」

なお、特別償却の適用を受けることに代えて、特別償却限度額以下の金額を損金経理によって特別償却準備金として積み立てる方法、またはその事業年度の決算確定日までに剰余金の処分によって特別償却準備金として積み立てる方法によって損金の額に算入することも認められます。
この場合には、確定申告書等に損金算入に関する申告の記載を行い、明細書を添付する必要があります。

中小企業投資促進税制以外の令和3年の主な見直し

地域経済の中核を担う中小企業を取り巻く状況は、コロナ禍にありますます厳しさを増しています。
そこで、ポストコロナを見据えて生産性の向上や経営基盤の強化を支援するために、さまざまな税制の創設が行われています。

(1)中小企業事業再編投資損失準備金制度の創設

中小企業の経営資源の集約化に資する税制として、「中小企業事業再編投資損失準備金制度」が創設されました。
前向きな取り組みを行う意欲のある中小企業について、経営資源の集約化を支援するため、M&Aによるリスクに備え、一定の損失準備金積立額を損金算入することができます(株式等の取得価額の70%が限度)。

中小企業等経営強化法の改正法の施行の日から令和6年3月31日までの間に同法の経営向上計画の認定を受けたものが行う株式の取得について適用されます。

(2)DX投資促進税制の創設

青色申告書を提出する法人が、事業適応計画を提出し、一定の要件を満たす設備の取得等を行った場合には、特別償却または税額控除の措置が認められることになります。

対象資産 特別償却 税額控除(※3)
ソフトウェア
繰延資産(※1)
機械装置および器具備品(※2)
30% 3%
グループ※4外の事業者とデータ連携する場合には5%

※1事業適応を実施するために必要なソフトウェアの利用にかかる費用の支出
※2適用要件を満たすソフトウェアまたはその事業適応を実施するために必要なソフトウェアとともに事業適応の用に供するものであり、開発研究用のものは除かれます。
※3カーボンニュートラルに向けた投資促進税制による税額控除との合計で、法人税額の20%が上限となります。
※4「グループ」とは、会社法上の親会社関係によって構成されるグループです。

まとめ

以上、中小企業投資促進税制の内容や要件、対象となる設備などについてご紹介しました。中小企業が設備投資を行う際に活用できる税制措置は数多くありますが、制度内容や要件、計算方法などがかなり複雑です。
しかし、うまく組み合わせて活用できると、法人税額を大幅に減少させることができます。設備投資を検討している企業は、ぜひ早めに税理士に相談することをおすすめします。

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