生産性とは?計算方法や種類について解説

公開日:2024年07月12日
最終更新日:2024年07月12日

この記事のポイント

  • 生産性とは、投入された資源(労働や資本)に対する成果や出力の効率性。
  • ヒトの生産性は「労働生産性」カネの生産性は「資本生産性」。
  • モノの生産性は「在庫生産性」、設備の生産性は「設備生産性」。

 

生産性とは、投入された資源(労働や資本)に対する成果や出力の効率性です。労働生産性は、従業員一人あたりの生産量や付加価値を示し、設備生産性は、使用された設備の効率を測ります。資本生産性は、投入された資本に対する収益性を表します。生産性を向上させるためには、労働力のスキルアップはもちろんのこと、設備の最適化、資本の効率的活用、新しい技術の導入や業務プロセスの改善が重要です。

生産性とは

生産性とは、労働力、コスト、設備などの経営資源を投入した結果得られる成果物の割合を指します。
投入された資源に対してどれだけの成果が得られたかを示すものであり、成果が高いほど資源が有効に利用されていることを意味します。

ヒト モノ カネ
労働生産性など 在庫生産性など 資本生産性など
成果投入された労働 成果投入された在庫 成果投入された資本

(1)労働生産性

労働生産性とは、ヒトの生産性を見る指標です。
労働生産性は、以下の計算式で計算します。

労働生産性 = 付加価値額従業員数

付加価値とは、文字通り、企業が新たに生み出した価値です。
企業は、購入した原材料などに対して労働力や技術力など企業内資源を投下して生産し、付加価値を追加して外部に販売します。
たとえば、100円で原材料を仕入れ、製品に加工して150円で売った場合は、差額の50円の価値が付け加えられた(付加)ので、付加価値は50円となります。
付加価値を計算する方法は、控除法と加算法があります。
控除法とは、総生産高から外部購入価額を差し引いて、付加価値を計算する方法で、加算法は、付加価値が経営資源に分配される側面に注目する計算方法です。

控除法(中小企業庁方式)
付加価値 = 総生産高 - 外部購入価額

加算法(日銀方式)
付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+当期純利益

労働生産性は、要するに1人当たりの付加価値であり、付加価値の総額を何人で達成したかを重視する指標です。
この労働生産性の目安は、一般的には1人当たり1,000万円とされています。もちろん、高いほど生産性が高いということになります。

(2)資本生産性

資本生産性とは、投入されたカネ(資本)に対する生産性です。
資本生産性は、総資本経常利益率などの資本利益率で判断することができます。

総資本経常利益率とは、収益性を見るための代表的な経営指標で、「より小さな元手でより大きな収益や利益を上げているか」を見るための指標で、損益計算書の経常利益を、貸借対照表の総資本(負債と純資産の合計)で割って計算します。

総資本経常利益率 = 経常利益総資本 × 100

総資本経常利益率は、一般的には4%を超えていれば安心と言われます。
ただし、業種業態によって低くなる場合もあります。たとえば、小売業は製造業やサービス業と比較すると低くなるのが一般的です。
なぜなら、小売業は多くの商品の在庫を短期間で販売し、頻繁に回転させることで利益を上げるビジネスモデルであり在庫の回転が速くても、その在庫管理や保管にかかる費用が総資本に影響を与えるからです。

総資本経常利益率を高めるためには、計算式のうえではより小さい総資本でより大きな経常利益を上げればよいということになりますが、これはそう簡単なことではありません。
そこで、売上高経常利益率も見てみましょう。
売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合です。

売上高経常利益率 = 経常利益売上高 × 100

売上高経常利益率は、業種によってかなりバラツキの大きい指標です。これは、業種によって原価や人件費の水準が異なるからであり、小売業や卸売業は低く、学術研究,専門・技術サービス業は高くなる傾向があります。
いずれにせよ、売上高経常利益率は高い方が安心なので、同業他社と比較して低いようであれば、費用の中身などを十分に検討する必要があります。

業種 売上高経常利益率【%】
全業種 4.3
建設業 5.1
製造業 5.1
情報通信業 7.8
運輸業,郵便業 2.3
卸売業 2.6
小売業 2.2
不動産業,物品賃貸業 9.2
学術研究,専門・技術サービス業 12.3
宿泊業,飲食サービス業 1.8
生活関連サービス業,娯楽業 1.6
サービス業(他に分類されないもの) 5.2

参照:中小企業庁「中小企業の経営指標」

また、資本の生産性を高めるためには、資本の回転も大変重要です。
会社はお金を使って商品を仕入、営業活動を行って売上を上げ、代金を回収します。このサイクルが資本の1回転で、資本の回転は速いほどよいとされます。

総資本回転率 = 売上高総資産

もし同業他社と比較して回転が遅いようであれば、商品の在庫管理がずさんで、ムダに多くの在庫を持っていたり、売掛金の回収が遅れ多額の売掛金を抱えていたりする可能性があります。
こうしたムダな在庫や売掛金は、総資本回転率を下げる結果になりますので、在庫や売上債権ごとに回転率をチェックしてみましょう。

業種 総資本回転率【回】
全業種 0.98
建設業 1.04
製造業 0.96
情報通信業 1.04
運輸業,郵便業 1.07
卸売業 1.62
小売業 1.67
不動産業,物品賃貸業 0.33
学術研究,専門・技術サービス業 0.45
宿泊業,飲食サービス業 0.79
生活関連サービス業,娯楽業 0.90
サービス業(他に分類されないもの) 0.82

参照:中小企業庁「中小企業の経営指標」

(3)在庫生産性

在庫の生産性とは、投入した在庫の生産性のことで、棚卸資産回転率などで判断することができます。

棚卸資産回転率 = 売上高棚卸資産

棚卸資産とは、商品や製品・原材料のことです。ムダな在庫を持つと資産が膨らみお金の出どころである資本も膨らみますから、資本の回転は遅くなります。
よく「在庫は少ないほどよい」と言われますが、そのとおりで在庫が膨らめば棚卸資産回転率は低くなり、在庫を抑えれば棚卸資産回転率は高くなります。つまり棚卸資産回転率は高いほど、「ムダな在庫がない」と判断できます。

業種 棚卸資産回転率
建設業 9.41
製造業 6.97
情報通信業 25.86
卸売業 14.83
小売業 6.60
不動産業・物品賃貸業 2.91
宿泊業・飲食サービス業 27.07
サービス業 57.62

参照:政府統計の総合窓口(e-Stat)中小企業実態調査(平成29年調査速報)より

棚卸資産回転率が低い場合には、棚卸資産の中身ごとに商品回転率、原材料回転率などを計算して、その原因を分析することができます。

まとめ

経営の資源は「ヒト、モノ、カネ」と言われますが、その中でも会社の土台を支えているのが「ヒト」です。労働生産性とは、従業員1人あたりの付加価値を示す指標で、どれだけの労働力を投入してどれだけの付加価値を生み出したかを表します。この数値が高いほど、労働生産性が良いと言えます。

総資本経常利益率(ROA)は、総資本に対する経常利益の比率を示し、会社に投下された総資本からどれだけの利益を稼いでいるかを測る指標で会社全体で多くの利益を上げていると判断されます。
また、棚卸資産回転率は、会社の棚卸資産が年間で何回転して商品を売り上げているかを示します。無駄な在庫があると資産が膨らみ、資本の回転率が遅くなります。在庫が多いと、その分の保管コストや管理コストも増加します。

労働生産性、総資本経常利益率(ROA)、棚卸資産回転率といった指標を活用することで、企業の経営資源の効率を評価し、無駄を削減することができます。企業が持続的に成長するためには、これらの指標を定期的に見直し、必要な改善を行うことが不可欠です。

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