公開日:2019年11月08日
最終更新日:2021年12月14日
「計上」とは、売上収益や仕入代金、その他のさまざまな取引の金額を全体の計算に加えるために帳簿などに勘定することをいいます。記帳する時にそれぞれの取引の性質ごとに振り分ける項目を「勘定科目」といい、振り分ける作業のことを「仕訳」といいます。
この記事では、計上の意味や計上時期についてご紹介します。
計上とは、売上収益や仕入代金、その他の取引の金額を、全体の計算に加えるために帳簿などに勘定することをいいます。
そして、この取引を性質ごとに振り分ける項目を「勘定科目」といいます。
たとえば、新聞図書費などを購入した時には、以下のようにいいます。
「書籍を購入したので、『新聞図書費』として計上した」 |
なお、取引を勘定科目ごとに振り分ける作業のことは「仕訳」といいます。
計上と似たものに「記帳」があります。
記帳とは帳簿などに記入する行為のことで、通帳記入することも「記帳する」といいますし、受付で名前を書くことも「受付で記帳する」などといいます。
つまり、計上は「全体の計算のなかに組み入れるために勘定する」という意味合いが含まれるという点で記帳とは異なります。
実際には、記帳は「帳簿に記入すること」という意味で使われていることが多くその意味では計上と同じように扱われますが、計上は記帳と比較すると「全体の計算のなかに組み入れる数字」という要素が強いということがいえます。
ここからは、計上するタイミングである「計上時期」についてみていきましょう。
収益や費用を計上する「計上時期」については、いつ収益(費用)を計上するかについて、一定のルールがあります。
商品の売上高は、会社の収益のなかでも大部分を占めるものです。
したがって、決算期末の前後にまたがって商品が売れた場合には、当期の収益に計上するか翌期の収益として計上するかは大きなポイントとなります。
たとえば、3月決算であれば、前年4月1日からその年の3月31日までの1年間で得たお金や支出したお金について、その結果をまとめなければなりません。したがって、その期が終わる決算期末前後の取引については、取引のどの時点で売上を計上するかが、決算の金額に影響を与える重要なポイントとなるわけです。
この点について、商品を売った時の収益は「引き渡した時」に計上しなければならないことになっています。仮に代金が未収であっても、引き渡した時に売掛金として計上します。
しかし、そうなると今度はこの「引き渡し」がいつの時点であるのかが問題となります。
この点について法人税法では、以下のいずれかの時点であれば、益金の額に算入することができるとしています。
①出荷基準 | 相手方の注文に応じて商品等を出荷した時に引き渡しがあったとする。 ・出庫基準:店頭または倉庫等から出庫した時 ・荷積み基準:船積みまたは貨車積みした時 ・搬入基準:相手方の受け入れ場所に搬入した時 |
②検収基準 | 相手方が商品等を検収して、引取の意思表示をした時に引き渡しがあったとする。 |
③使用収益開始基準 | 機械、設備等の販売の場合で、当該資産の設置が完了し、取引相手が使用して収益を得ることができる時に引き渡しがあったとする。 |
これらの基準については、自社にとってもっとも適切な基準を採用することになりますが、いったん採用した基準は、毎期継続適用する必要があります。つまり、「ある時は出荷した日、ある時は検収した日」というようなことはできません。
節税対策の観点からみれば、売上高はなるべく翌期として当該事業年度の所得金額を縮小する方がよいのですが、売上計上漏れが税務署から指摘されると、重加算税が課されることになりますので、売上計上基準の採用については税理士等に相談し、よく確認しておくことをおすすめします。
請負については、税法上「モノの引き渡しを要するもの(建築請負等)」と、モノの引き渡しを要しないもの(運送、技術指導等)の2種類があります。
そして、それぞれの収益の計上時期は以下のとおりとなります。
モノの引き渡しを要するもの | 工場完成基準(目的物を引き渡した日に収益を計上する)による |
モノの引き渡しを要しないもの | 役務完了基準(役務のすべてを完了した日に収益を計上する)、部分完了基準(部分的に収益金額が確定した日に収益を計上する)のいずれかによる |
土地を売る時には、売買契約を取り交わし、手付金の受け渡しがあり、所有権移転登記を行い、代金全額の授受があり、相手が使用を開始します。
そこで、これらのどの時点で収益とすればよいかが問題となります。
固定資産を売却した時の収益は、土地などを引き渡した時に計上することになっていますが、土地、建物についても、この「引き渡し」がいつの時点であるのかが問題となります。
そこで、「譲渡契約を締結した時」に計上してもよいとされています。
さらに、土地等を売却した時には、引き渡した時、契約を締結した時のどちらでも自由に選んで計上でき、継続する必要はありません。
収益の計上は「発生主義」であり、仮に分割払いのケースでも一括して収益を計上することになります。
しかし、分割払いが長期にわたる場合には、収益に見合う納税資金が不足するケースも考えられます。
そこで税法では、一定の特例を認めています。
延払基準 機械や車両などについて、契約時に頭金として相当額を受け取り、残金を3年、5年といった長期間で回収するという長期割賦払いの場合でも、相手に引き渡した時に収益に計上しなければなりませんが、以下の要件に該当する場合には、代金の回収金額に見合う部分について、分割して収益に計上することができます。 ①頭金が全体の代金の2/3以下であること ※平成30年4月1日以後に行う長期割賦販売から、適用が廃止になりました。 |
工事進行基準 製造、ソフトウェアの開発を含む工事の請負については、その収益について長期大規模工事、その他の工事に区分した計上基準があります。 ①長期大規模工事 ②その他の工事 ③その他 ※工事進行基準とは、工事の進行度合いに応じて、それぞれの事業年度に収益と費用を計上する方法です。 |
税法では、費用については企業会計と同じような考え方で計上することになっています。
まず、売上原価は、売上高に対応するものだけが損金となります。したがって、在庫となっているものは損金になりません。
販売費及び一般管理費については、当期の期間に対応するものが損金となります。
なお、費用について未払計上する場合には、税法では決算期末までに債務が確定している場合に損金となります。
「債務が確定」とは、①債務があることが明確であり、②その債務の原因となる事実が発生し、③その金額が合理的に算定できることの3つの要件を満たしている場合です。
以上、計上の意味や記帳との違い、計上時期の種類などについてご紹介しました。
計上時期は、自社の事業の実情に合わせて選択し、原則として継続して使用していく必要があります。どの計上基準を採用するかで、税額に大きな差が出ることもあります。
自社の事業ではどの計上時期を採用すべきか判断できない場合には、税理士にご相談されることをおすすめします。
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