所得税はいくらから課税されるのか?|2020年改正もあわせて解説!

公開日:2021年08月23日
最終更新日:2022年11月14日

この記事のポイント

  • 所得税は、103万円までは課税されない。
  • 学生アルバイトの場合、所得税は130万円まで課税されない。
  • 所得税については、配偶者控除・配偶者特別控除の検討も必要。

 

アルバイトやパートをする場合に気になるのが、所得税がいくらからかかるのかという点です。
結論から言えば、年収103万円までは所得税はかかりません。それ以上稼ぐ場合には、年収130万円、150万円、201万円のラインで注意が必要です。

なお、学生のアルバイトの場合には勤労学生控除がありますから、130万円までは所得税はかかりません(※ただし、扶養する親は扶養控除が適用されなくなります)。

所得税はいくらから課税されるのか

所得税とは、人が1月1日から12月31日までに稼いだ金額にかかる税金です。稼ぎのことを税法で「所得」と呼ぶことから、所得税と呼ばれます。

所得税には、個人の事情に応じて適用される「所得控除」という制度があります。
そして所得税は、所得の額からまず個々の事情に応じて所得控除の分が差し引かれ、残りの課税所得金額に税率を掛けて計算します。つまり、控除されれば税額は減ることになります。

この所得控除は個々の事情によって異なり15種類あります。このうち基礎控除は、所得者本人について一律に控除される所得控除です。基礎控除額は令和2年(2020年)に以前の38万円から48万円に10万円引き上げられました(2,400万円を超えると控除額が段階的に減り、2,500万円を超えると控除額はゼロになります)。

納税者本人の合計所得金額 基礎控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0万円

引用:国税庁「基礎控除」

ただし、基礎控除が引き上げられた代わりに給与所得控除と公的年金等控除が10万円引き下げられることになりました。

※給与所得控除とは、給与所得から差し引かれる控除で、収入金額によって控除額は変わります。

給与等の収入金額 給与所得控除額
162万5,000円以下 55万円
162万5,000円超180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円以上 195万円

引用:国税庁「給与所得控除」

上記のとおり、基礎控除が48万円、給与所得控除が55万円であることから、48万円+55万円(合計103万円)までは所得税がかからないことになります。

(1)年収103万円以下なら所得税がからない

家計の足しにと、パートをする妻(夫)も多いでしょう。
パートも給与所得となり、基礎控除が48万円、給与所得控除が55万円ありますから、妻のパート収入が103万円までなら、所得税はかかりません。

パートの収入 基礎控除48万円 + 給与所得控除55万円 = 103万円

しかし、パート収入がある時の税金の問題点は2つあります。
①パートをする妻(夫)の所得税と、②妻(夫)のパート収入がいくらまでなら、夫(妻)の控除対象配偶者になれるかということです。
パートによる収入が103万円以下であれば、その妻(夫)にも税金はかかりませんが、かつ配偶者控除の適用があれば、夫(妻)の所得税も安くなります。

※以下、夫がサラリーマンで、妻がパートの場合とします。

配偶者控除とは、妻の合計所得金額が48万円以下(夫本人の所得金額が1,000万円を超えると適用なし)なら控除対象配偶者となり、納税者本人の所得金額に応じて一定の控除を受けられる所得控除のひとつです。

つまり、配偶者控除は、妻の所得の合計が48万円(パート収入103万円-給与所得控除55万円)を超えると適用されません。妻の所得が48万円以下で配偶者控除の適用があれば、夫の所得税も安くなります。

【配偶者控除】

配偶者の合計所得金額 控除可能な配偶者の年収 配偶者の年齢 納税者本人の合計所得金額
900万円以下
(給料のみの場合は年収1,095万円以下)
900万円超950万円以下
(年収1,095万円超1,145万円以下
950万円超1000万円以下
(年収1,145万円超1,195万円以下
48万円以下 103万円以下 69歳以下 38万円 26万円 13万円
70歳以上 48万円 32万円 16万円

よく「パート収入は、103万円以下がお得」と言われますが、それはこのような理由によるものです。

(2)学生アルバイトは130万円まで所得税がかからない

学生がアルバイトする場合には、勤労学生の条件を満たせば「勤労学生控除」を受けることができます。
勤労学生控除を受けるためには、合計所得金額が75万円以下(収入は130万円以下)であることが必要で、控除額は27万円です。
学生のアルバイト収入も給与所得控除を受けることができるので、給与所得控除が55万円あります。そして、基礎控除の48万円もあります。

したがってアルバイト収入が、勤労学生控除27万円と基礎控除48万円、給与所得控除の55万円を合計した130万円に満たなければ所得税はかかりません。

給与所得控除額55万円 + 基礎控除額48万円 + 勤労学生控除額27万円= 130万円

ただし、アルバイトをしている学生本人を養っている親が、扶養控除を受けるためには、そのアルバイト収入が103万円以下でなければなりません。
つまり103万円を超えると、親の税金が増える可能性があります。
この点については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 勤労学生控除|税金がかからないのは130万円まで

(3)年収130万円以上から社会保険料が自己負担になる

正社員と比較すると勤務時間が少ないパートタイマーやアルバイトについては、社会保険の適用基準が別に設けられています。

妻が家計の足しに働いているような場合には、年収が130万円を超える時に健康保険の被扶養者、国民年金の第3号保険者になります。

労働時間等 社会保険
①1週間の所定労働時間および1カ月間の所定労働日数が、正社員と比較して4分の3以上である人または、4分の3未満であっても従業員数501人以上の企業に勤務し、1週の所定労働時間が20時間以上、賃金が月8.8万円以上などの要件を満たす人 本人が健康保険、厚生年金保険の被保険者になる(保険料は労使折半)
②上記①以外の人で、年収が原則130万円未満である人 健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者(保険料の本人負担なし)
③上記①②以外の人(原則として年収が130万円以上である人) 健康保険、厚生年金保険の適用なし。国民健康保険と国民年金に加入(保険料は全額本人負担)

つまり、年収が原則130万円未満であれば、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者となり、保険料の本人負担はありません。
しかし年収130万円以上になると、国民健康保険と国民年金に加入し保険料は全額本人負担となります。
配偶者の社会保険の扶養に入っていた人も、扶養から外れることになります。

(4)年収150万円以上から配偶者特別控除額が減額される

先ほどご紹介した配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が48万円(給与所得控除額55万円を含む年収では103万円以下)という要件がありました。
そこで、これを1円でも超えれば控除額が0円になってしまうことがないようにという趣旨から、配偶者特別控除制度が設けられています。
配偶者特別控除は、配偶者控除が適用されなくなる103万円を超える収入の配偶者について201万円以下の収入まで段階的に所得から控除される制度です。

配偶者特別控除が適用されるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

①納税者の配偶者で生計を一にする人
②配偶者の年間合計所得金額(年収から給与所得控除額55万円を差し引いた金額)が48万円超133万円以下(給与収入では103万円超約201万円以下)である人
③青色事業専従者、事業専従者でない人
④納税者本人(夫)の年間の合計所得金額が1000万円以下であること(年収より給与所得控除を引いた金額・年収によって変動)

控除額は、令和2年(2020年)分より、納税者本人(夫)と配偶者(妻)の合計所得金額によって、以下のとおり変わりました。

【配偶者特別控除】

配偶者の合計所得金額 控除可能な配偶者の年収 納税者本人の合計所得金額
900万円以下
(給料のみの場合は年収1,095万円以下)
900万円超
950万円以下
(年収1,095万円超1,145万円以下
950万円超
1,000万円以下
(年収1,145万円超1,195万円以下)
48万円超95万円以下 103万円超150万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 150万円超155万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 155万円超160万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 160万円超166万7999円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 166万7,999円超175万1,999円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 175万1,999円超183万1,999円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 183万1,999円超190万3,999円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 190万3,999円超197万1,999円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 197万1,999円超201万5,999円以下 3万円 2万円 1万円
133万円超 201万5,999円超 0円 0円 0円

上記の表のとおり、納税者本人の所得が900万円以下の場合、配偶者の年収が150万円を超えると配偶者特別控除額が38万円から36万円に減ります。
つまり、パート収入が150万円を超えると、配偶者特別控除額が減り始めることになります。

(5)年収201万円以上から配偶者特別控除が適用外になる

先ほどの配偶者特別控除の表でご紹介したとおり、配偶者の年収が201万5,999円を超えると、納税者本人の合計所得金額に関わらず、配偶者特別控除額は0円となります。

※前述の配偶者特別控除の表から、201万5,999円超を抜粋して再掲

配偶者の合計所得金額 控除可能な配偶者の年収 納税者本人の合計所得金額
900万円以下
(給料のみの場合は年収1,095万円以下)
900万円超
950万円以下
(年収1,095万円超1,145万円以下
950万円超
1,000万円以下
(年収1,145万円超1,195万円以下)
133万円超 201万5,999円超 0円 0円 0円

201万5,999円以下であれば、3万円の控除があるのに、201万5,999円を超えたとたんに0円となってしまい、税額が増える可能性もあるので注意が必要です。

(6)所得に対するもうひとつの税金「住民税」

個人の所得にかかる税金は所得税のほかに、住民税があります。
個人の住民税についても、令和元年(2019年)分以降、控除額は異なりますが同様の改正が行われました。

住民税の基礎控除額は43万円、配偶者控除額は最高33万円(70歳以上の配偶者は最高38万円)、配偶者特別控除額は最高33万円です。

基礎控除額について合計所得金額が2,400万円(給与収入2,595万円)超の場合、控除額が段階的に減り始め、2,500万円を超えると適用がなくなります。
配偶者控除と配偶者特別控除の控除額については合計所得金額が900万円(給与収入1,120万円)超の場合、控除額が段階的に減り始め、1,000万円を超えると適用がなくなります。

控除額は異なりますが、年収103万円、130万円、150万円、201万円のラインは所得税と同じです。
このラインを超えると住民税がかかることもあるので、あわせて注意が必要です。

参照:東京都主税局「個人住民税」

まとめ

以上、所得税がいくらから課税されるのか、2020年の改正点とあわせながらご紹介しました。
所得税については所得控除があり、基礎控除額が48万円、給与所得控除が55万円あることから、48万円+55万円=年収103万円までは、所得税はかかりません。
また、年収130万円を超えると国民健康保険と国民年金に加入することになり、保険料は全額本人負担となります。
さらに年収150万円を超えると配偶者特別控除額が減額され、年収約201万円を越えると配偶者特別控除は適用外となります。
また学生のアルバイトの場合には、勤労学生控除を受けることができるので、アルバイト収入が130万円に満たなければ、所得税はかからないことになります。ただし、扶養する親にとっては103万円を超えると適用がなくなります。

したがってパートやアルバイトをする場合には、このラインに注意をしないと税額が増え、かえって家計を圧迫することもあるかもしれませんので、十分な検討が必要です。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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