公開日:2019年11月08日
最終更新日:2022年03月15日
デット・エクイティ・スワップ(DES)とは、「債務の資本化」「債務の株式化」と呼ばれる事業再生のために用いられる手法です。親会社や金融機関が、業績不振の会社に対して救済目的で債務を株式に置き換え、債務超過を解消できる効果があります。
この記事では、デット・エクイティ・スワップ(DES)の意味やメリット・デメリット、デット・エクイティ・スワップ(DES)を行った際に必要となる会計処理などについてご紹介します。
デット・エクイティ・スワップは、財務体質の改善を行うために用いられる手法で、「Debt Equity Swap」の頭文字をとって「DES」とも呼ばれます。
文字通りデット(負債)とエクイティ(資本)をスワップ(交換)するという取引で、「債務の株式化」「債務の資本化」と表現されることもあります。
具体的には、債権者が返済期日の到来した借入金などの債務を現物出資する形で増資することによって、資本に振り替えます。このほか、親会社が債務超過に陥った子会社を救済するために貸付金を子会社株式にして、子会社の借入金を資本に振り替えることもあります。
いずれの場合にも、債務者において負債の返済が財務的に困難な場合に行われることがほとんどです。
負債の返済が財務的に困難な場合とは、デット・エクイティ・スワップ実行時に貸倒懸念債権、破産更生債権などに該当する場合に限らず、たとえば債務者が自力再建困難に陥っていて、債権者に債務の弁済猶予や減免等を要請する場合も含まれます。
デット・エクイティ・スワップのしくみ 債権者が株主になることで、純資産が増え財務体質が改善する |
DESは、現物出資型のDESと新株払込型DESに分かれます。実務上多く行われているのは、現物出資型のDESなので、ここでも現物出資のDESについてご紹介します。
DESを行うことで、債務超過の会社は債務超過を解消でき財務体質が改善される効果を発揮します。また利息の支払いや元本の返済という負担が解消されるなどのメリットもあります。
①債権者は株主になる DESは、債務を現物出資して資本に振り替える手法なので、債権者はDESを行うことで債権者から株主に変わります。 株主になれば、債権者側は貸付金を回収できなくなりますし利息収入もなくなることになります。 こうして見ると、債権者にとってはDESを行うメリットはないようにも見られます。しかし債権者にとっても、DESを行うことで会社の経営状態が改善されれば、将来利益が出た場合に配当を得ることができるというメリットがあります。 |
②自己資本比率が上昇する DESによって貸借対照表の自己資本比率が上昇します。また、利息の支払と元本の返済が軽減されますので、キャッシュフローも改善することになります。 さらに、自己資本比率が上昇すれば会社の評価が高まります。したがって、金融機関に借り入れる際には、DES実行後に申し込みをした方が有利になります。 |
③欠損金の損金算入制度で相殺できる DESにより計上した債務免除益に課税関係が生じると、それが企業再生に影響を与えることになります。そこで、会社更生等による債務免除益等があった場合の欠損金の損金算入制度によって、債務者側で期限切れの繰越欠損金と債務免除益を相殺できるとされています(※「DESの税務上の扱い」で詳述)。 |
DESは、非常に有効な企業再生の手段ではありますが、第三者の株主が増えることになりますから、そのことを他の株主に説明しなければなりません。
第三者の株主が増える DESを行うことで、債権者が株主になりますので、第三者の株主が増えることになります。会社の経営に干渉してくる可能性もありますし、利益が出た場合には配当の実施も検討する必要があります。 したがって、DESを実行する場合には出資割合がどうなるか十分注意しなければなりません。 |
DESを行うということは、債権者にとっては債権を現物出資して、保有していた債権の代わりに新たに株式という資産を取得するということを意味します。
したがって、会計上は債権が消滅したという点と株式を取得したという点、株式を時価で認識し差額を当期の損益として処理する必要があります。
DESにより借入金を株式にしたときは、債務者と債権者は以下のように仕訳処理を行います。
「借入金1億円を、DESによって株式(時価4,000万円)とした。」
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債権者が債務者に対してその債権を現物出資するDESが合理的な再建計画に基づいて行われた時には、その現物出資によって取得した株式の取得価額は、適格現物出資となる場合を除き、その取得時の債権の価額となります。
また、会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度について、更生手続きの開始の決定などがあった場合、この制度の対象となる事由にDES等に伴う債務免除益が生じる場合が含まれます。
そこで、DESの債務者側の処理については、債務免除を受けたうえで弁済の見込みがある債権の出資を受ける場合と同じ結果になるように時価で処理をします。
そして、時価と券面額との差額は債務の消滅益となりますが、DESが会社更生などに伴って行われる場合には、期限切れ欠損金との相殺の対象とすることになります。
以上、DES(デット・エクイティ・スワップ)についてご紹介しました。
最近は、不況から脱することができず企業が経営破たんに陥るケースが増えています。そしてこのようなケースで活用を検討したい方法がDESです。
DESは、経営不振の会社について債務を資本に振り替えることで債務が減少するという大変メリットの大きい企業再建手法ではありますが、第三者の株主が増えるデメリットもあります。
したがって、DESを検討したい場合には、顧問税理士などに確認して、どれだけのメリットがあるか、アドバイスを求めましょう。
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