公開日:2019年11月13日
最終更新日:2024年05月08日
益金(えききん)とは、会計上の「収益」に近いものですが、同じではありません。
法人税法では、益金の額に算入するべき金額について規定していて、益金に算入するもの、不算入とするものも決められています。
したがって、会計上の収益がそのまま益金ということにはなりませんので、注意が必要です。
益金の豆知識
益金とは、企業会計上の収益に、法人税法上の「別段の定め」を調整したものです。
企業会計上の収益・費用と、法人税法上の益金・損金は必ずしも一致しません。これは、企業会計が適正な期間損益計算を目的としているのに対して、法人税法は公平な税負担を目的としていることによる違いです。
そこで、会計上の収益について公平な税負担の観点から見て、一定の調整をはかったものを、法人税法上の収益たる益金としているわけです。
たとえば、受取配当金は会計上の収益ではありますが、法人税法上は特定の場合に益金に算入しないことを別段の定めで規定しています。
同様に、企業会計上の費用と損金も、必ずしも一致しません。たとえば、賞与についてはその支給が翌期以降であるものの、当期に発生していると認められる部分については、賞与引当金を計上した場合に、賞与引当金繰入額は会計上は費用として処理されますが、法人税法上は当期の損金とはならず、実際に支給された時にその実際支給額が損金に算入されます。
益金とは、税法上の収益をいいます。また、損金とは税法上の費用をいいます。
会社の利益=収益-費用 会社の所得=益金-損金 |
上記を見ると、収益=益金、損金=費用と考えることができそうですが、利益と所得は必ずしも一致しません。それは、会社法と税法のそれぞれの目的が違うからです。会社の利益は、会社法や企業会計原則などによって計算し、その目的は株主等の利害関係者会社の経営成績や財政状態を正確に報告することです。一方、所得金額は税金の額を計算するもので、課税の公平が目的です。
そこで、益金の内容は、商品や製品の売上高や土地などの資産を売った代金だけでなく、「タダで資産をあげた時に本来もらうべき金額」や「タダで役務の提供をした時に本来もらうべき金額」も含まれ、非常にその範囲が広くなっています。
税法でいう益金の範囲は非常に広く、タダで資産をあげた時に本来もらうべき金額も益金となります。
つまり、タダで資産をあげても収益があると考えて、本来もらうべきであった金額を時価かつ収益として計上しなければならないということです。
たとえば、時価100万円、帳簿価額50万円の機械をタダであげた場合には、税法では以下のように計算し、時価で売ったものとして売却益を計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄附金 | 100,000 | 機械 | 500,000 |
売却益 | 500,000 |
益金には、タダで資産をもらった時やタダで役務の提供をした時も、同じように時価で収益を上げることになります。
この時には、本来支払うべき金額を収益に上げなければなりません。
たとえば、100万円の機械をタダでもらった時には、以下のように受贈益を計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
機械 | 100,000 | 受贈益 | 100,000 |
前述したとおり、税法でいう益金は会社の収益より範囲が広くなっていて、「益金算入」とは、企業会計上の収益と計上されないが、法人税法上益金と計上するものです。
法人税法では、益金の額に算入すべき金額について、「別段の定め」があるものを除き、次に掲げる金額とすると規定しています。
①資産の販売による収益の額
商品や製品の販売による収益のことで、損益計算書では「売上高」に該当します。
②有償または無償による資産の譲渡による収益の額
固定資産(土地、建物、機械など)や有価証券の譲渡による収益のことです。損益計算書では、「営業外収益」や「特別利益」に含まれます。
③有償または無償による役務(サービス)の提供による収益の額
請負(建設業やソフト制作など)、金銭や不動産の貸付による収益のことです。損益計算書では、「売上高」や「営業外収益」に含まれます。
④無償による資産の譲受けによる収益の額
資産を無償で取得した場合の収益のことです。たとえば、小売業者がメーカーの負担で販売コーナーを設置してもらうなどのケースです。また、債務免除についても経済的価値があることから、この類型に含まれます。
法人税法独特の考え方です。
⑤その他の取引で資本等取引以外のものによる収益の額
①から④以外の取引から生じる収益のことです。
ここでいう資本等取引とは、会社の資本(株主などからの出資)の増減や利益(収益と費用の差引額)の分配(いわゆる配当)のことですが、益金とは関係ありません。
つまり、別段の定めがあるものを除いては、資本等取引以外の損益に関する取引から生じる収益が益金となります。
つまり、益金の範囲を分かりやすく説明すると、以下のようになります。
①商品や製品の売上高 ②土地などの資産を売った時の代金 ③タダで資産をあげた時に本来もらうべき金額 ④請負その他役務の提供による収入金額 ⑤タダで役務の提供を行った時に本来もらうべき金額 ⑥タダで資産をもらった時に本来支払うべき金額 ⑦資本等取引以外のその他の収益による金額(増資、減資など) |
「益金不算入」とは、企業会計上の収益として計上しているが、法人税法上の益金としては計上されないものです。
受取配当等の益金不算入、還付金などの益金不算入が代表的なものです。
①受取配当金の益金不算入 ②資産の評価益の益金不算入 ③還付法人税等の益金不算入 |
法人が支払う配当金については、支払法人にすでに法人税が課税されていて、配当を受け取った法人側で益金に算入すると、二重に課税されることになってしまうからです。
なお、この受取配当の益金不算入は、配当の支払法人と受取法人の二重課税を回避するために設けられています。なお、受取配当等の益金不算入制度について、次のとおり見直しが行われました。
参照:国税庁「受取配当等の益金不算入制度の見直し」
還付金の益金不算入は、還付された税金については益金には算入されないというものです。これは、法人税や住民税は損金不算入なので、還付された場合についても同じ扱いにするべきという考え方に基づきます。
益金と同じように、損金にも算入・不算入があります。
法人税法では、損金の額に算入するべき金額について「別段の定め」があるものを除いては、次に掲げる金額としています。
①その事業年度の売上原価、完成工事原価等の原価の額 ②その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額 ③その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの |
損金算入
企業会計上の費用として計上されていないが、法人税法上の損金として計上するものです。具体的には災害によって生じた損失に係る欠損金額や繰越欠損金などがあります。
損金不算入
損金不算入とは、簡単に言うと「経費として認めない」というもので、企業会計上の費用として計上しているものの、法人税法上損金として計上しないものです。
具体的には、以下のようなものがあります。
全額が損金にならないもの ①法人税・住民税 ②資産の評価損 |
一定の限度を超えた部分が損金にならないもの ①減価償却費 ②過大役員給与 ③寄附金 ④交際費 ⑤引当金の繰入損 |
これまでご紹介してきたように、益金と損金は、企業会計上の収益や費用と必ずしも同じではありませんから、法人税の税額計算の段階で所得に加算減算する項目があります。
これを申告調整事項といいます。
税法の規定では損金と認められない項目が会社決算で費用として計上されている場合には、これを損金から除外するために加算調整する項目がその中心となります。反対に減算される項目としては、受取配当金の益金不算入や欠損金の当期控除額などがあります。
法人税は、各事業年度の所得に法人税率を掛けて計算します。法人税の対象となる「課税所得」とは、企業会計上の「収益-費用」ではなく税法上の所得金額「益金-損金」のことをいいます。
収益-費用・損失=当期利益 |
益金-損金=課税所得 |
上記の2つが同じ場合には、基本的に別々に計算する必要はありませんが、益金算入・不算入の金額、損金算入・不算入の金額がある場合には、以下のように計算します。
当期利益-申告調整(加算・減算)=課税所得 |
申告調整の加算・減算は以下の通りです。
益金算入… 加算 益金不算入…減算 損金算入… 減算 損金不算入…加算 |
法人税の申告書は、株主総会に提出される決算書に「別表」と呼ばれる書類を加える形で構成されています。
この別表には数多くの種類がありますが、これは損金不算入などの架空種の調整項目ごとに対応する書式が用意されているためです。
これらの別表のなかで、最も重要な書式が「別表4」です。別表4は「所得の金額の計算に関する明細書」となっていて、当期利益の額から法人税の課税対象となる所得金額を導き出すプロセスを記入して計算していきます。
別表4 | ||
---|---|---|
会社の利益 | ① | |
加算 | 損金不算入 | ②~⑩、㉓、㉗、㉙~㉝、㉟、㊲、㊳、㊻ |
益金算入 | ||
減算 | 益金不参入 | ⑫~⑳、㉔、㉖、㉘、㉜、㉝、㊱、㊳、㊵、 ㊷~㊼ |
損金算入 | ||
所得金額 | ㊽ |
加算項目とは、損金不算入と益金算入によって発生するもので、減算項目とは、益金不算入と損金算入によって発生するものです。
法人税法では、商品や製品等の販売による収益の額は、その引き渡しがあった日の属する事業年度の「益金の額」に算入することになっています。これを販売基準または引き渡し基準といいます。
たとえば、契約上は請求書作成の締め日後でも、決算日前に納品したり業務が完了したりしたものは、販売基準によって売上とされます。
「引き渡し」がいつになるかについては、法人税法では以下のいずれかの時点であれば、益金の額に算入することが認められています。
①相手方の注文に応じて、商品等を出荷した時に引き渡しがあったとする出荷基準 ア)店頭または倉庫などから出庫した時 イ)船積みまたは貨車積みした時 ウ)相手方の受け入れ場所に搬入した時 ②相手方が商品等を検収して、引取りの意思表示をした時に引き渡しがあったとする検収基準 ③機械、設備等の販売の場合、当該資産の設置が完了し、取引相手が使用して収益を得ることができる時に引き渡しがあったとする仕様収益開始基準 ④林、原野のような土地(または土地上の権利)であり、引渡日がいつであるのか明らかでない時には、代金の相当部分を収受した時と所有権移転登記の申請日のいずれか早い日 |
節税対策という視点でみれば、可能な限り売上高を翌期に伸ばして当該事業年度の所得金額を縮小する方がよいのですが、売上計上もれと指摘されると重加算税の対象となってしまいますので、税理士によく相談することをおすすめします。
益金の算入時期は、販売基準または引き渡し基準によりますが、商品の販売を他社に依頼する委託販売においては、原則として受託業者の販売時の販売基準によって売上高が計上されます。
なお、商品を買主の希望によって引き渡した後に商品の買主が当該商品を一定期間に試験的に使用できる、いわゆる試用販売においては、税務上買主が買取の意思表示をした時に、収益を計上します(買取意思表示基準)。
商品を予約して事前に予約金を受け取り、後から商品を引き渡す「予約販売」では、予約金を受けとった時点では収益を計上することはできません。
収益を計上するのは、実際に商品を引き渡した時(販売基準)です。
したがって、受け取った予約金のうち決算日までに商品の引き渡しを完了した分だけを登記の売上高に計上します。
モノの引き渡しを要しない請負契約によるサービスの収益(役務収益)は、役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入します。
たとえば、不動産の仲介や斡旋報酬の額は、原則として売買等に係る契約の効力が発生した日の属する事業年度の益金に算入します。
また、設計、作業の指揮監督、技術指導などの技術役務の提供によって受ける報酬の額は、その役務が完了した時(役務完了基準)に基づいて益金に算入します。
ただし、報酬の額が作業の段階ごとに区分され、それぞれの段階の作業が完了するつど支払いを受けているような時には、部分完了基準を適用することができます。
これまでご紹介したように、資産をタダで引き渡した時にも、本来もらうべきであった金額を時価として収益として計上しなければなりません。この収益は、原則として「引渡日」に益金に算入されます。ただし、土地、建物その他これらに類する有形固定資産を譲渡した場合には、契約の効力発生日に益金として処理することもできます。
工事請負については、その規模によって、工事完成基準、工事進行基準、部分完成基準があります。
長期大規模工事では、工事進行基準が強制適用されますが、それ以外の工事で目的物の引き渡しが翌期以降になる場合には、工事進行基準や工事完成基準が適用されるケースがあります。
以上、益金の意味と算入・不算入の範囲、損金の意味と算入・不算入の範囲、損金や益金を加算減算して法人税の課税所得額を計算する方法などについてご紹介しました。
何を算入して何を不算入とするのかについては、細かい規定があります。また範囲などについて改正されることもありますし、会社の資本金の額によって損金不算入の限度額が異なることもあります。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、国税・地方税・その他の添付書類の作成に対応していて、別表についても自動で作成することができますが、細かい計算方法や設定については、「クラウド会計ソフト freee会計」に精通している認定アドバイザーのサポートを受けることをおすすめします。
freee会計ソフトヘルプセンター「法人税の対応帳票について(平成31年4月1日以後終了事業年度分)」
freee税理士検索では数多くの事務所の中から益金の意味や益金算入となるもの、益金不算入となるものや、益金の計上時期について相談できる税理士をさがすことができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 益金について相談できる税理士を検索 /
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、益金、損金について相談することができます。