公開日:2023年08月14日
最終更新日:2023年10月17日
代表取締役は、その会社の代表権(社外に対する権限)と業務執行権(社内に対する権限)を有します。
代表取締役といえども、何でもひとりで決められるわけではなく、会社法では、代表取締役の権限は限定されています。また、「会社としての意思決定」は、株主総会と取締役会が行います。
代表取締役とは、株式会社を代表する機関です。
取締役会を設置した会社では、必ず取締役会で代表取締役を設置しなければなりません。
代表取締役を設置した場合には、代表取締役だけが会社を代表して契約などを行う機関になります。
代表取締役を選定する方法は、取締役会を設置する会社か、取締役会を設置しない会社かで異なります。
取締役会設置会社
取締役会設置会社では、まず株主総会で取締役を選定し、それから取締役会で代表取締役を選定します。
定款で定めれば、株主総会で代表取締役を選定することもできますが、定款で「株主総会の決議で代表取締役を定める」と規定している場合でも、取締役会でも代表取締役を選定することができます。
取締役会非設置会社
取締役会非設置会社では、基本的に1人の取締役か、取締役が2人以上いる場合は、各自が会社を代表しますが、任意で代表取締役を定めることもできます。
代表取締役を任意で定める場合には、①定款で定める、②定款で「取締役の互選による」と定める、③株主総会の決議で定めるの3つの方法で選定することができます。
①定款で定める方法では、代表取締役を変更するたびに定款を変更する必要があります。そして、定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。
②定款で「取締役の互選による」と定める方法では、代表取締役を変更するたびに株主総会で決議する必要はありません、ただし「互選による」と定めがない会社で、新たに「取締役の互選による」と定款に定める場合には、定款の変更が必要で、株主総会の決議が必要になります。
取締役会設置会社では、代表取締役は必ず選定しなければなりません。
また、会社法では「代表取締役は、取締役から選定する」としていますので、取締役でない人を代表取締役に選定することはできません。
もし、取締役でない人を代表取締役に選定したい場合には、まず株主総会で取締役に選定してから、取締役会で選定することになります。
なお、取締役会設置会社では、でも、定款で「株主総会で代表取締役を選定する」と定めることは可能です。
ただし、定款でこのように定めても、取締役会でも代表取締役を選定することはできるとされており、取締役会の決議事項を制限することはできないようになっています。
代表取締役は、社内に対する権限(業務執行権)と社外に対する権限(代表権)を持ちます。
社内に対する権限(業務執行権)とは、業務命令を下す権利ですが、代表取締役だからと言って、何でも自分一人の判断で決められるわけではありません。会社としての意思決定は株主総会と取締役が行い、代表取締役は、そこで決められたことを執行する権限があるということになります。
例外として、会社法362条4項に定められた「重要な業務以外」で取締役会から委ねられた事項(日常的な業務など)については、代表取締役が決定して執行することができます。
社外に対する権限(代表権)とは、会社を代表して契約その他の業務を行う権利です。例えば、会社としての契約は「○○株式会社 代表取締役○○」という名義で行われます。
なお、社内の制限に反して代表取締役が契約を締結した場合には、取引の相手方を保護する観点から、善意の第三者には対抗することはできません。
代表取締役も含めて、取締役は、株式会社のために業務執行や意思決定を行わなければならない「忠実義務」があります。
そのひとつが、取締役の競業避止義務です。これは、取締役が会社と競合する事業を行なったり、取引をしたりすることが制限されるというものです。
もし、競合する事業を行なったり、取引をしたりする場合には、取締役会もしくは株主総会(取締役会非設置会社)の承認を受けなければなりません。
この承認を受けずに取引等を行い、会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害賠償責任を負うことになります。
代表取締役も含めて、取締役は、利益相反取引について制限されます。利益相反取引とは、会社の利益と取締役自身や第三者の利益が相反する取引をいいます。
たとえば、代表取締役が自分自身と会社との間で、会社の財産の売買取引を行う行為などは利益相反取引となります。また、会社から贈与を受けたり、利息をつけて会社の資金を貸し付けたりする行為も利益相反取引になります。
ちなみに、無利息で貸し付けた場合には、会社にとって不利益とはなりませんから、利益相反取引とはなりません。
もし、取締役などが会社と利益相反取引を行う場合には、重要な事実を開示したうえで、取締役会か株主総会(取締役会非設置会社の場合)の承認を受けなければなりません。
代表取締役は、会社の代理人ではなく会社の代表機関です。しかし、この代表権には法律の定めによる制限があり、また定款の定め・またはこれに基づく株主総会、取締役会の決議などによって内部的に制限することもできます。
これらについて正確に理解しておかないと、思わぬトラブルに発展することがありますので、注意が必要です。
ここでは、代表取締役に関するよくあるトラブル、Q&Aについてご紹介します。
代表取締役といっても、法律上は代表権のある取締役に過ぎませんが、代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持ちます。
また、中小企業の場合には「代表取締役=会社そのもの」と見られるケースも多く、例えば融資の場合には、当然のように社長の個人保証が求められます。
会社法では、職務遂行上の任務懈怠(にんむけたい)について、取締役・監査役・会計参与・会計監査人・執行役に対して、損害賠償責任を負わせています。
しかし、高度な経営判断を行うためには、ある程度のリスクを払わなければならない場面も多いものです。さらに、会社の規模が大きくなるとその額が巨大化してしまうことがあり、会社の損害について常に代表取締役が責任を負わせるとすると、責任が重すぎます。
そこで会社法では、取締役の責任を一定程度免除する制度を設けています。
責任免除規定を設定する場合には、定款にその旨を定める必要があります。既存の会社が責任免除規定を設定する場合には、定款変更をする必要があるため株主総会の特別決議が必要になります。
また、責任免除規定を設定する場合には、会社の機関は取締役が2名以上であり、かつ監査役設置会社であることが必要です。
代表取締役の住所は登記事項であり、会社の登記簿は誰でも閲覧することができます。つまり、誰でも代表取締役の個人の住所を知ることができてしまいます。
この点については、従来からプライバシー保護の観点から代表取締役等の住所を登記事項から外してほしいという要望が強く出されていましたが、会社法では代表取締役の住所を登記事項として定めており、これを外して登記することはできません。
これは、代表取締役個人の責任を追及しようとした場合に、どこに住んでいるのか分からないのは不都合であるという理由によります。
なかには、自宅や会社近くにマンションを借りて、その住所を登記するケースもあるようです。また、DV法により配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等の観点から、代表取締役の住所を登記しなくてもよいとされるケースも考えられます。
どうしても代表取締役の住所を登記したくないという事情がある場合には、司法書士等の専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
代表取締役は1人である必要はありませんが、共同代表取締役制度(共同して代表権を行使すること)は、会社法で廃止されています。
ただし、複数の取締役が代表権を有することは会社法でも許されており、代表権を有する取締役が2人以上いる場合には、それぞれの取締役が各自株式会社を代表することになります。
たとえば、夫婦がともに代表取締役として会社を代表すると定めた場合には、夫婦それぞれ1人だけでも会社を代表することができます。
会社法349条
1.取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。 |
代表取締役が、取締役を解任・解雇するためには、株主総会における決議が必要です。
したがって、代表取締役が取締役を勝手に解雇・解任することはできず、原則としてまずは取締役会で発議を行い、株主総会の過半数の賛成による決議を行う必要があります(ただし、1人株主の場合は別)。
ただ実際は、代表取締役が実権を握っており、取締役に辞任を求めたり説得したりして、取締役の解任を社長が決めるような形になっているケースも多々あります。
代表取締役なら、何でも勝手に決められるわけではありません。
取締役会が決議すべき事項であり、個々の取締役が勝手に決められない事項としては、会社法362条に規定されています。
会社法362条
①重要な財産の処分、譲受け |
上記は、会社にとって重要な事項であり、取締役会でよく協議して決める必要があるため、代表取締役が勝手に判断することはできません。
ただし、会社の代表権は代表取締役が有していますから、株主総会や取締役会に留保されていない事項については、代表取締役自ら決定することができます。
代表取締役は、会社経営の中枢を担う役員であり、その判断は会社の命運を左右する存在です。しかし、取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定等を行うことになっており、重要な事項については、取締役会で決定することが必要であり、代表取締役に何でも任せてしまうことができるわけではありません。
思わぬトラブルを回避するためにも、代表取締役の権利と義務、取締役会の役割等については、正しく理解しておくことが大切です。
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