公開日:2019年12月13日
最終更新日:2023年10月17日
会社をつくるためには、発起人や役員(取締役、監査役など)が必要です。
発起人は、簡単に言うと「会社をつくろう」と言い出しお金を出す人です。発起人の数にはとくに制限はなく、1人でも大丈夫です。
人数は1名以上いればよく、上限はありません。
この記事では、会社設立の際に必要な発起人の役割や手続き、発起人になれる人・なれない人などについてご紹介します。
株式会社を設立するためには、「お金を出す人」と「会社を運営する人」が必要です。そして、株式会社を設立するうえでお金を出す人のことを、会社では「発起人(ほっきにん)」といいます。
発起人は、会社設立後には株主となり、所有している株数に応じて配当を受けることができます。さらに株主総会で議決権を行使して重要な事項を決定するなど、会社をコントロールしていく役割を負います。
個人で会社設立を考える場合には、発起人1名が100%出資し、会社の代表取締役を務めるケースが多いといえます。
発起人の最初の仕事は、定款を作成し資本金を集めることです。
定款を作成するためには、会社の名前や住所、役員、資本金の額などの重要事項を決めなければなりません。また、発起人が決めたことは、発起人決定書や発起人会議事録を作成して記載する必要があります(※ただし、これらの書類は作成しないでも登記をすることはできます)。
つまり、会社をつくろうと言い出し、お金を出し、会社を設立するためのさまざまな作業を行ない、設立後は株主となって議決権を行使するのが、発起人の役割ということになります。
株式会社を設立し運営するためには、「お金を出す人」と「会社を運営する人」が必要です。前述したとおり「お金を出す人」が発起人で、お金を出したら1株以上の株を引き受けることになります。
そして、会社を運営する人のことを総称して「役員」といいます。
役員には、代表取締役、取締役、監査役などさまざまな種類があり、それぞれ会社の経営や監査を担うことになります。
役員は、会社を設立する前にはやるべき仕事はそれほどありませんが、会社を設立した後は、会社を実際に動かしていく役割を担いますので、責任は重大です。
会社を設立する方法は、「発起設立」と「募集設立」という2つの方法があります。
発起設立:発起人だけが出資して会社を設立する方法 募集設立:発起人以外の人から出資してもらう方法 |
---|
募集設立の場合には、第三者から広くお金を集めることになるので、銀行から「株式払込金保管証明書」を発行してもらうなど、さまざまな手続きが必要です。
一方、発起設立は、家族や友人、知人など身近な人がお金を出し、お金を出した人全員が発起人となる設立方法で、募集設立と比較すると手続きも簡単で費用も安く抑えることができます。したがって、中小企業の多くは発起設立を選択します。
発起人は何人以上いなければならない、という制限はないので、発起人は1人でも構いません。また、人である必要はなく会社(法人)でも構いません。
会社の資本金を仮に200万円とした場合には、1人で200万円を出せば、発起人はその人1人になります。家族や友人、知人など身近な人にお金を出してもらった場合には、そのお金を出した人全員が発起人となります。
大勢にお金を出してもらった方が金銭的な負担は減りますが、会社は発起人全員でつくっていくことになるので、発起人の数が多ければ多いほど手続きに時間がかかります。また発起人は、会社設立後は株主となって会社の重要事項を決める立場になるので、その際に人数が多いと意見が割れてしまうこともあります。
したがって、発起人は慎重に検討し2、3名までにしておきましょう。
近年は、発起人1人・役員1人という会社が増えていますが、これは、発起人の数が多いと手続きが煩雑になったり、会社の運営がスムーズにいかなかったりすることが多いというのが、その理由です。ちなみに会社を設立したら、発起人1人・役員1人という場合でも社会保険に加入する義務があります。
手続き期限は会社設立後5日以内なので、会社の登記が完了したら、登記簿謄本を法務局で取得し年金事務所等で手続きを済ませましょう。
発起人の資格についてはとくに制限はありません。法定代理人(本人に代わって法律行為を行う人のこと)の同意があれば、未成年でも発起人となることができます。
その際には、法定代理人の同意書、印鑑証明書、戸籍謄本などの書類が別途必要となります。
また、会社(法人)でも発起人になることができます。
・1人で出資した場合 出資したその人が発起人となり、会社設立後は100%株主となります。 ・複数名で出資した場合 Aさん、Bさん、Cさんの3名が発起人となり、会社設立後は株主となります。 |
発起人は、会社をつくる人であり、会社を設立した後は株主となります。
したがって、会社を設立するまでに、行わなければならないことがたくさんありますが、そのなかで最も大切なのは、以下の4つです。
①会社の概要を決める
②定款を作成する ③資本金の振込(出資)などを行う ④会社設立に必要な開業準備(設立手続き、賃貸借契約など)を行う |
---|
会社を設立するためには、定款と登記が必要ですが、そのためにはまず商号や本店所在地(会社の住所)を決める必要があります。
商号
まずは会社の名前(商号)を決めます。
商号は基本的に自由に決められますが、商号に使える文字には一定のルールがあります。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベッド、数字は使用できますし、「’」(アポストロフィー)「,」(コンマ)「-」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点)の6種類は使うことができます。ただし、絵文字や感嘆詞「!や?など)は使うことができません。
また、株式会社という文字を社名の前か後に入れるというルールがあります。
本店所在地
会社の住所を「本店所在地」といい、登記をする際に必要となります。
定款の作成時は、最小行政区画(例:東京都千代田区)まで決めればOKです。
目的
目的とは、会社が行う事業内容のことです。
会社は、定款で定めた目的以外の事業を行うことはできませんので、将来を含めてやりたい事業があれば、最初から定款に記載しておくようにしましょう。
なお、目的の書き方には一定のルールがあります。また、定款で目的を定めたら、会社はその事業以外を行うことはできません。
許認可が必要な事業を行う場合には、その記載がないと許認可が受けられませんので注意が必要です。
機関
取締役や監査役のことを、会社の「機関」といいます。取締役は必ず1名以上置く必要があります。
しかし、設立したばかりの時には取締役や監査役を置く必要はほとんどないので、代表者や代表者の配偶者を取締役とするケースが多いです。
役員の任期
役員は、一度選ばれるとずっとその職務に就いているわけではなく、それぞれ任期があります。取締役の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年です。
資本金の額
資本金とは、会社をスタートさせるための元手となるものです。
創業融資を受ける際の借入の限度額は資本金の額によって決まるので、多いに越したことはありませんが、資本金の額によって納税額に差が出ることがあります。したがって、資本金の額は多ければよいというものでもありませんので、税務上の違いについてあらかじめ税理士に確認しておきましょう。
決算期
決算期をいつにするかには、特に決まりはありませんが、決算期の決め方で税負担が変わることがありますので、決算期についてもあらかじめ税理士に確認しておきましょう。
株式の譲渡制限
中小企業においては、知らないうちに第三者が株式を取得してしまうと、会社の経営に支障が出てしまいます。そこで、会社が許可した人にのみ株式の譲渡を認める規定を設けることができます。株式の譲渡制限は、中小企業の多くが設定しています。
定款とは、会社のルールを決めたルールブックのようなものです。
定款を作成するのは、発起人全員です。作成した後は、公証役場で認証を受けます。
株式会社の定款は、公証人の認証がされていないものは効力を有しませんし、登記を申請することもできません。
定款の作成から認証までの流れ
定款は作成するだけでなく、公証人の認証を経なければ登記を申請することができません。定款の作成から認証までの主な流れは、以下の通りです。予め流れを理解し、効率よく手続きを進めましょう。
①定款作成に必要な事項を決定 ↓ ②発起人の印鑑証明書および実印の用意 ↓ ③定款の作成 ↓ ④公証役場で事前に定款の確認を受ける ↓ ⑤公証役場に行って、正式に定款の認証を受ける ↓ ⑥定款の謄本を取得 |
---|
定款には、会社の商号や本店所在地、株主総会を開く時期、決算期などについて記載することができます。
定款には、記載しないと無効になる「絶対記載事項」、決めたら記載しなければならない「相対的記載事項」、記載するかどうかは自由である「任意的記載事項」があります。
絶対的記載事項:記載しないと無効になる 相対的記載事項:決めたら記載しなければならない 任意的記載事項:記載するかどうかは自由である |
---|
定款は、これといったフォーマットはありませんが、通常はA4サイズで横書き、文字の大きさは10.5~12ポイントで作成し、片面印刷します。
※クリックすると拡大表示&ダウンロードすることができます(Word文書)。
定款は数ページになりますので、ホッチキスか製本テープでまとめます。
製本ができたら、発起人全員が実印を押します。
なお、定款は、3通作成します。
3通のうち、1通は公証人が保管し、1通は会社で保存し、もう1通は登記用の謄本として発起人に返却されます。
定款の認証が終わったら、会社の資本金を発起人の個人口座に振込または入金します。
この時には、まだ会社の登記が完了しておらず、会社名義の口座を金融機関で開設することができないので、発起人個人の口座に振込または入金をします。
ここで使用する口座について、新規に発起人名義の口座を開設するべきか迷う人もいますが、この資本金は、発起人個人の口座に会社のお金を一時的にプールしておくだけの口座なので、新規に開設する必要はありません。
資本金を払い込む時期は、定款認証を受けた後です。定款の作成日より前に資本金を払い込んでしまうと、法務局で登記をする際に、資本金と認められない可能性があるので、注意して下さい。
資本金を払い込んだ後は、「払込を証する証明書」を作成します。
払込を証する証明書とは、資本金の払い込みをしたことを証明する書類です。
以下の記載事例に従って、作成しましょう。
「払込を証する証明書」は、通帳のコピーと一緒にホッチキスで綴じます。通帳のコピーを取るページは、通帳の表紙、裏表紙、入金・振込みをしたページです。
コピーをしたら、出資に該当する箇所に蛍光ペンなどで線を引きます。
綴じる順番は、①払込証明書②通帳の表紙コピー③通帳の裏表紙コピー④入金・振込のページの順番です。
会社設立前に会社の賃貸借契約などを行う時には、会社はまだ法人格を持っていないので、会社名義で賃貸借契約を締結することができません。
そこで、発起人が個人名義で契約を締結するケースが少なくありません。
ただし、その場合には会社設立後に賃貸借契約上、その物件を事業目的で使用することができるかを確認しなければなりません。
住居のみと定められた物件を事務所として使用すると、用法遵守義務違反として、家主から賃貸借契約を解除されるケースもあります。
以上、発起人の意味や役割などについてご紹介しました。
発起人は、会社をつくろうと言い出し出資する人のことで、設立後は会社の株主となります。設立前にも設立後にも、行わなければならないことが多々ありますので、役割についてはしっかり理解しておくようにしましょう。
ここでご紹介したように、法人を設立するのは大変な手間がかかりますし、書類作成も煩雑です。また、決算期の時期や資本金の額によって税負担が変わることもあります。
設立時の負担を少しでも軽くし、設立後の税制上の特典を受けるためにも、できれば設立前の早い段階で、税理士や司法書士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から会社設立・起業について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 会社設立について相談できる税理士を検索 /
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し発起人の決め方や資本金など、会社を設立するうえで知っておきたい知識について相談することができます。