公開日:2023年11月21日
最終更新日:2023年11月21日
会社は、取締役会があるかないかで運営が異なります。
取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定や取締役の職務の進行の監督、代表取締役の選定や解職といった職務を行います。
取締役会とは、3名以上の取締役によって構成される会議体で、会社の業務執行の意思決定機関です。取締役会は、すべての取締役によって構成されます。
取締役会を設置するか否かは、任意に選択することができます。株式会社で公開会社、監査役会設置会社、または委員会型の会社は取締役会を置かなければならないと定めています。
しかし、譲渡制限株式だけを発行する非公開会社の場合は、たとえ大会社でも取締役会を設ける必要はありません。
取締役会と株主総会との違いは
一方、株主総会は会社の最高意思決定機関です。株主の決定権は、原則として株式数に応じて議決権があり、その議決権を株主総会で行使することで議案に対する賛否の意思表示を行います。
取締役会設置会社とは、取締役会を置く会社または会社法上取締役会を置くことを強制された会社のことです。取締役設置会社は、取締役が3名以上必要です。また、監査役か会計参与を設置しなければなりません。
反対に、取締役会を置いていない会社を取締役会非設置会社といいます。
取締役会を設置するメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
・重要な決定事項は、取締役会を開催して決定できる。
監査役や会計参与を設置することで取締役の経営が適正かどうかを確認できる。
・複数の取締役の目で会社を経営することになることから、ワンマン経営となりにくい。
デメリット
・複数の役員(3名以上)が必要になるので、コストがかかる。また、会計参与は税理士などの資格を持つ者でなければならないので、報酬が高くなる。
・株主総会を開催する際には、原則として1週間前に招集を通知しなければならない。
※非設置会社は、定款に「前日まで」と記載すれば「明日株主総会を開催する」と招集をかけることもできる。
取締役会は、会社の業務執行を決定する機関です。
①取締役会設置会社の業務執行の決定、②取締役の職務の執行の監督、③代表取締役の選定と解職といった職務を行います。
代表取締役は、取締役会において、取締役から選定しなければならず、代表取締役と業務執行取締役(※)が会社の業務を執行します。
※業務執行取締役とは、代表取締役以外の取締役で、取締役会の決議により会社の業務を執行する取締役として選定された人のことです。
したがって、取締役会設置会社を運営する権限があるのは、原則として代表取締役と業務執行取締役です。ただし、一部の業務を部長、課長などの部かに委ねることもできます。
ちなみに取締役会がない会社では、それぞれの取締役に会社を代表する権限があり、会社を運営する権限を持ちます。
近年は、取締役会での迅速な意思決定を目的として、執行役員制度を導入する企業が増えてきました。
執行役員とは、会社法で認められた役職ではなく身分の違いも会社によって異なります。
一般的には、取締役に求められるのは、①戦略、方向性の決定、②企業財務状態のチェック、③役員などの人事評価などであるのに対して、執行役員に求められる役割は、①経営方針の実行、②従業員の指揮、管理、監督、③日常的業務の遂行などです。
つまり、取締役が経営陣であるのに対して、執行役員は、経営陣ではなく従業員のトップという位置づけです。
執行役員制度を導入するためには、執行役員の待遇などを決定して諸規程を整備すれば導入が可能です。
ただし、執行役員制度の導入に伴い取締役の数を減らす場合には、株主総会で関連事項の承認と報告が必要になります。
取締役会は、最低3カ月に1回は開催しなければなりません。
これは、会社法によって代表取締役や業務執行取締役が、3カ月に1回以上自身の職務の執行状況を取締役会で報告しなければならないと規定されているからです。
なお上場企業の場合には、1カ月に1度の月次決算と翌月の事業計画のための取締役会を開催しなければなりません。
取締役会は、原則としてそれぞれの取締役が招集できます。
ただし、取締役会を招集する取締役を定款などでとくに定めた場合は、その取締役が招集します。
実際には、多くの企業が取締役会規則等で、取締役の招集権者を代表取締役と定めています。この場合には、原則としてあらかじめ招集権者と定められた取締役以外の取締役は、取締役会の「招集を請求」することはできますが、自分で取締役会の招集をすることはできません。
ただし招集権限がない取締役でも、上記請求した日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする招集通知が発せられないときには、請求した取締役自らが取締役会を招集できます。
取締役会は、原則として取締役会の日の1週間前までに通知を出します。
ただし、1週間より短い期間を定款で定めている場合には、例外としてその期間前までに招集通知を出せばよいとされています。
これらの必要な手続きを取らずに取締役会を開催することは、原則として無効ですが、取締役の全員の同意があるときは、召集手続きを行わずに取締役会を開催することができます。さらに緊急の場合には、同意を得れば電話やメールなどによって開催することもできます。
株主は原則として取締役会を招集することはできませんが、例外的に監査役も指名委員会等も監査等委員もいない取締役会設置会社の株主については、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令や定款に反する行為をしたり、その行為をするおすれがあったりした場合に、取締役会の招集を請求することができます。
取締役会では有意義かつ効率的な議論ができるように、事前の準備は欠かせません。
報告事項をとりまとめることはもちろん、その他の問題についても事前に調査・検討しておくべきです。
なお、取締役会の開催には当該議案について特別利害関係のある取締役を除いて、過半数以上の出席が必要で、かつ出席取締役の過半数の同意が必要です。
したがって、取締役の数は偶数であることは避けるべきといえるでしょう。
たとえば、取締役が4名いて4名とも出席した場合、2名が当該議案に賛成し、2名が反対した場合には、可否同数となって決議ができないからです。
取締役が5名、7名などの奇数であれば、いずれかの形で決議が可能です。
取締役会は、会社法施行規則にしたがって議事録を作成することが義務付けられています。議事録には、取締役会の議事の経過と結果、決議事項について特別の利害関係を有する取締役の氏名、意見や発言内容の概要について記載が必要です。
書面による議事録には、出席した取締役と監査役の署名または記名押印が必要です。電磁的に作成した場合は、これに代わる措置が必要です。
また、取締役会の議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備えおく必要があります。また、株主代表訴訟や第三者責任訴訟の場合には、この議事録の内容が問題となることもあり、その場合には、議事録の提出が求められることもあります。
【例】取締役設置会社の取締役の報酬決定についての議事録
(取締役会議事録) 議案 取締役各個の受けるべき報酬金額の決定の件 議長は、令和5年10月10日開催の株主総会において、取締役会に委任された取締役各個の受けるべき報酬金額の決定について、一同に諮ったところ、全員一致をもってこれを代表取締役に一任する旨の決議を行った。 |
(役員の報酬金額に関する決定書) 令和6年10月10日開催の取締役会において、取締役各個の受けるべき報酬金額の決定については、これを代表取締役に一任すると決議されたことにより、その報酬金額を下記の通り決定し、令和○年○月○日以降支給される報酬金額より適用する。 記 代表取締役○田○子 月額1,000,000円 令和6年10月10日 以上 |
会社の機関は、株主総会と取締役が1名以上いれば、株式会社としての体裁は整いますので、取締役や監査役を置くかどうかは会社の任意です。
取締役会を置く場合には、監査役または監査等委員会、指名委員会等、会計参与のいずれかを置かなければなりません。
取締役会設置会社では、取締役のなかから代表取締役を選定し、その人が会社を代表します。選定するのは、取締役会で株主総会ではありません。
そして、実際の業務執行は代表取締役と取締役会で選定された取締役(業務執行取締役)が行います。
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