執行役員とは?取締役との違いや執行役員制度の導入法は?

公開日:2023年02月17日
最終更新日:2023年09月12日

この記事のポイント

  • 執行役員は、取締役としての権限や義務があるわけではない。
  • 執行役員の位置づけが取締役と同等である場合もあれば、そうでない場合もある。
  • 執行役員制度は、法令上の根拠はなく、自由に制度設計が可能である。

 

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執行役員は、通常は取締役会で選任・解任されますが、取締役としての権限を有するわけではありません。

執行役員は、取締役や委員会設置会社における執行役と異なり、法令上の根拠はあるわけではなく会社の任意の職制です。

そのため、会社が自由に制度設計することができるというメリットがあり、多くの会社で活用されています。

執行役員制度とは

近年、執行役員を置く企業が増えてきました。執行役員制度は、経営の意思決定や業務執行機能を分離させて、特定の部門における業務執行権限を執行役員に委ねる制度です。
執行役員制度のパターンは、「従業員の最上級の地位として扱う」「取締役に近い役員として扱う」「そのミックスで扱う」などさまざまで、どのようなパターンで制度を利用するかは、執行役員規定で定める必要があります。

なお、執行役員制度は法令上の根拠があるわけではなく、会社の任意の職制であることから、会社の実情に応じて自由に制度設計することができるというメリットがあります。任期も会社が自由に定めることができ、定数についてもとくに制限はありません。

執行役員制度の概要
目的 業務の効率化、意思決定の迅速化
役割 特定の部門の業務を効率的に行い、結果として会社の業績に貢献すること
選任・退任 取締役会で決定する
任期・定数 会社が自由に設定できる

執行役員制度を導入することで、特定の部門の業務を効率的に執行することが期待できるため、会社の業績に貢献することが可能となります。また、取締役は「会社全体の経営方針の決定」という、取締役の本来の業務に専念することができます。
経営の効率化や意思決定の迅速化が可能になるというメリットがあり、多くの会社で執行役員制度が活用されています。

(1)そもそも「執行役員」とは

会社法上の「執行役」と「執行役員」とは別物であり、執行役員制度は会社法上の制度ではありません。
ただし、会社法では「重要な人事については、取締役会で決定しなければならない」と規定されており、執行役員についても取締役会で選任されます。

執行役員は、取締役会等で選任され、代表取締役の指揮命令のもとで、本社部門や工場、研究所など、ある特定の部門においてその権限の範囲内で責任を負います。

執行役員には、本来は取締役が担っていた業務執行権限が委ねられるケースが多いですが、執行役員の位置づけは会社ごとに異なります。取締役と同等であるものから、従業員である使用人の最上級職とされるものまでさまざまです。

(2)執行役員と取締役・兼務役員との違い

執行役員は、取締役会等で選任・解任されますが、会社法上の取締役ではありません。
業務執行に関して大きな権限を与えられますが、担当する業務の範囲は特定されていますし、法令上の根拠があるわけではなく、あくまで会社組織上の任意の職制です。

なお、執行役員と使用人兼務役員の違いについては、会社法上の取締役であるか取締役でないかです。
兼務役員は会社法上の取締役ですが、執行役員は会社法上の取締役ではないので、会社法は適用されません。

執行役員 兼務役員
身分 社員 取締役
選任機関 取締役会 株主総会
取締役会の出席義務 出席義務なし 出席義務あり
任期 会社の事由 2年以内(非公開会社は10年以内)
報酬 株主総会の決議の必要なし 取締役分については、株主総会の決議が必要

(3)会社と執行役員の関係

会社と執行役員との関係は、雇用契約または委任契約、またはその混合型とされるケースが考えられます。一般的には雇用契約によることが多く、使用人としての職制上の地位の最上位とするケースが多いようです。
会社法上の役員ではないため、株主代表訴訟の対象とはなりませんし、登記の対象ともなりません。

なお法人税法上は、特定株主に該当する使用人や委任契約による執行役員が経営に従事しているときは、その人は「みなし役員」に該当しますので、注意が必要です。

(4)執行役員の義務と責任

会社法では、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会決議を遵守し、株式会社のために忠実にその職務を行わなければならない」「取締役が自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引をしようとする時は、株主総会において、その取引等について重要な事実を開示し、承認を得なければならない」など、取締役の一定の義務があることを定めています。

執行役員は取締役ではないため、会社法は適用されませんが、執行役員は取締役会で選任され、特定の業務を遂行するという立場にあります。

したがって執行役員についても、以下の義務を課し責任を負わせるのが望ましいでしょう。

・忠実義務
取締役の指揮命令を遵守し、株式会社のために忠実にその職務を遂行する。

・指揮命令服従義務
代表取締役の指揮命令に忠実に従う。

・法令遵守義務
独占禁止法、労働基準法などの法令を遵守する。

・競業避止義務
取締役会の承認を得ることなく競業を行うことを禁止する。

・業務報告義務
業務の状況を適宜適切に取締役等に報告する。

・部下の監督義務
部下を適切に管理監督する義務を負う。

・損害賠償責任
故意または重大な過失によって会社に損害を与えた時は、その損害を賠償する。

(5)執行役員の報酬・賞与

執行役員は取締役ではないので、報酬や賞与を決定する際に株主総会の決議は必要なく、会社の判断で自由に決定して支給することができます。
また、執行役員に対する報酬は、その全額を損金の額に算入することができます。
しかし、執行役員であっても会社経営の重要な意思決定に参加している場合は、税務上は「みなし役員」とみなされて、役員賞与は損金不算入となりますので注意が必要です。

なお、取締役会で1人1人の執行役員の報酬や賞与を決定するのは現実的ではありませんから、一般的には、取締役社長に一任するという方法をとります。

なお取締役会で、執行役員の報酬に関する決議を行った時には、必ず議事録を作成しておきます。

第〇号議案 執行役員の報酬に関する件

議長は、令和〇年度の執行役員の報酬について代表取締役社長に一任願いたい旨を延べ、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

第〇号議案 執行役員に対する決算賞与支給の件

議長は、執行役員に対して決算賞与を支給することとし、各執行役員の支給額の決定および支給時期等については代表取締役社長にご一任願いたいと述べ、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

執行役員の選任手続き

執行役員は、会社法上の取締役ではないので株主総会で選任する必要はなく、取締役会で選任します。
ただし、株主総会決議は必須の要件ではないものの、導入時には株主総会の承認を得た方がベターです。
とくに、委任型の執行役員制度を導入する際には、取締役に準じて選任決議は不要であっても、株主総会の承認を得ておいた方が無難といえるでしょう。

代表取締役が、執行役員の候補者を人選する方法もありますが、取締役等で構成する指名委員会を設けて候補者を人選する方法の方が、経営の透明性・公正性を担保することができるので、おすすめです。

なお、執行役員制度を導入する際には、「なぜ、執行役員制度を導入するのか」という点を明確にすることが大切です。導入後のトラブルを回避するためにも、導入する際には以下の点について、取締役会で十分に議論を重ねる必要があります。

①執行役員制度を導入する目的
・執行役員の定義
・雇用か、委任か、混合型か

②執行役員制度の内容
・取締役との兼務の有無
・人数

③執行役員の職務分担
・執行役員会設置の有無
・執行役員の職務権限、責任、範囲
・執行役員の管理体制

④執行役員の待遇
・報酬・賞与、任期など
・従業員退職金との調整など

⑤執行役員制度の規程の作成、導入スケジュール

(1)執行役員は取締役会で選任し、議事録を作成する

執行役員は、取締役会で選任した場合には、かならず議事録を作成します。
代表取締役社長が、取締役会で諮る(はかる=他人に意見を求めたり、他人に相談したりすること)ことなく、独断で執行役員を選任・任命する行為は、会社法の規定に反しますので注意が必要です。

第〇号議案 執行役員の選任に関する件

議長は、経営の効率化と意思決定の迅速化を図ることを目的として、下記3名を執行役員に選任し、下記期間、下記業務の執行を担当させたいと述べ、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

氏名 生年月日 現職 業務内容 任期
○田 ○男  年 月 日 経理部長 経理に関する業務  年 月 日から
年 月 日まで
○川 ○子  年 月 日 営業部長 営業に関する業務  年 月 日から
年 月 日まで
○沢 ○男  年 月 日 総務部長 総務に関する業務  年 月 日から
年 月 日まで

(2)執行役員の任期はどうするか

取締役は、会社法によって任期が決められていますが、執行役員の任期は、会社法上の定めがありません。
したがって、執行役員の任期を定めるか定めないか、また任期の期間はどのようにするかは、会社が自由に決めることができ、執行役員規程などで定めて、それに従うことになります。

執行役員は、一般的な部長や課長より広い裁量権を与えられる存在です。任期を定めないと執行役員が積極的に業務に取り組む意識が薄れ、マンネリ化してしまうリスクがあります。
そこで、取締役と同じように任期制を採用して1年~2年程度として、任期中の成果や業績を評価したうえで、再任の可否を判断することとした方がよいでしょう。

なお、後々のトラブルを防ぐためにも、任期や再任の基準などについては、業績評価の基準を執行役員に予め知らせておくようにしましょう。

(3)取締役と兼任する場合の注意点

取締役と執行役員の兼任については、兼任を認めるべきではないという意見と兼任を認めるべきであるという意見があります。
しかし、現状は取締役と執行役員が兼任している会社も多く、兼任するか否かは会社の経営方針などを踏まえて判断すべきといえます。
なお、取締役が執行役員を兼任する場合も、取締役会の決議によって行ない、議事録を作成しておきましょう。

第〇号議案 執行役員に対する決算賞与支給の件

取締役社長は、業績向上を目的として取締役に執行役員を兼務させることとし、その人事について以下のように決定したいと述べ、可否を諮ったところ、本議案は満場意義なく承認可決された。

取締役 ○田 ○男 経理部門担当
取締役 ○川 ○子 研究開発部門担当
取締役 ○沢 ○男 営業部門担当

(4)執行役員の退任・解任

執行役員について、1~2年などの任期を定める場合には、その任期が満了すれば執行役員の身分が自動的に消滅します。
なお、執行役員と会社の関係は、一般的には雇用契約によりますが、民法では「当事者の一方が解約を申し入れた場合、雇用契約は2週間を経過すると終了する」と定めていますから、執行役員はいつでも辞任や退職を申し出ることができます。
また、任期中であっても合理的な理由がある場合には、会社は執行役員を解任することができます。

まとめ

執行役員制度は、会社が自由に設計し運用することが可能であり、執行役員に対する報酬は全額損金の額に算入することができますし、取締役の負担を軽減するなどのメリットがある制度です。
ただし、選任・解任・再任の基準や、みなし役員とみなされないためには具体的にどのように取り決めを行なえばよいのか不明点も多いものです。
したがって、執行役員制度の導入を検討する際には、あらかじめ税理士等の専門家に相談し、適切に導入することが大切です。

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