公開日:2023年11月10日
最終更新日:2023年11月10日
クリニックを開業するということは、クリニックの経営者になるということです。
事業計画を作成して、銀行へ融資の申し込みを行なったり、物件を探したり、ホームページを作成したりと、準備すべきことが多々あります。
また、経営ノウハウを身につけることも必要です。開業してからだと、日々の業務に追われて余裕がなくなりますから、診療報酬のしくみはもちろん、収支計画の立て方や損益分岐点などについては理解しておきます。
ここでは、クリニックの開業を思い立った時に最低限知っておきたい、クリニック開業の8つのポイントをご紹介します。
クリニックを開業するということは、クリニックの経営者になるということです。
マネジメントや経営の基礎知識はもちろん、マネジメントの知識も必要です。
ただ、経営はひとりで行うものではなく、クリニック開業支援のコンサルタントのサポートを受けることもできますし、弁護士、税理士、社会保険労務士などの専門家と顧問契約を締結して、時には経営相談をすることもできます。
しかし、それでも最終的な意思決定を行うのは、経営者です。したがって、それだけの覚悟が必要ですし、最低限の知識が必要です。
クリニックを開業すれば、自分の裁量で仕事ができて、しかも高収入も夢じゃない…。一見すると、クリニックの開業には、夢と可能性が詰まっているように見えます。
しかし、クリニックを開業するということは、リスクを負うことでもあります。また、経営者として営業マンにもなり、経理をこなし、ときには人事担当まで行わなければならないこともあります。
開業後に、「こんなに大変だと思わなかった」と後悔することがないよう、まずはクリニックを開業して実現したいこと、開業するうえでのコンセプトはしっかり検討することが大切です。
「クリニックを開業することで、自分は何を実現したいのか」「どのようなクリニックを理想とするのか」ということを、自身の強みや弱み、経歴、専門性から検討します。
このコンセプトを明確にするためには、ターゲットを設定することから始めます。「誰でも構わない」「すべての人が、ターゲット」と考えがちですが、それではエリア選定もクリニックの内装も、ありきたりになってしまいます。
ある程度特定のターゲットに的を絞ると、そのターゲットを集められるコンセプト、エリア、内装が定まっていきます。
なお、このコンセプトは、開業後のクリニックのホームページなどで「落ち着いた環境の中で、患者さまに寄り添う診療」「生活習慣病に高い専門性を持つ」などといったアピールポイントにつなげることもできます。
クリニック開業のコンセプトを決めたら、今度はクリニックの概要を具体的に計画書にします。
事業計画書は、金融機関から融資を受ける際にも提出を求められます。つまり、事業計画書でクリニックを開業した後の経営の見通しをきちんと説明できるかどうかは、融資の判断材料とされるのです。
とくに、どのくらいの収入を上げて、どのくらいの費用がかかり、どれくらいの利益を計上するかという損益計画を検討し、そのためにどれくらいの開業資金が必要になるのかを検証していきます。
収入は、「患者数×単価」
収入は、「患者数×単価」で考えます。単価は、診療科によって大きく異なりますが、社会保険診察報酬支払基金によると、内科が最も高く皮膚科が最も低くなっています。
患者数は、1日40人
患者数は、診療所の外来患者数の平均値に近い数値である1日40人を目標とするとよく言われますが、具体的には地域の人口、世帯数、就業数、年齢別男女別人口などを調査して、開業したらどれくらいの患者さんが何人来てくれそうかを推計します。
費用は、固定費と変動費に分ける
費用を分析することで、何にどれくらいのお金がかかっているのかが明確になり、クリニックの状況を把握しやすくなります。
費用は、固定費と変動費に分けて考えます。
固定費とは、売上に関係なく毎月固定的に発生する費用で、給料、家賃、水道光熱費、医療機器のリース費用などが該当します。
変動費とは、売上に応じて変動する費用のことで、薬剤・診療材料などの費用が該当します。
固定費は、患者数が増えても減っても固定的に発生しますが、変動費は、患者数が増加すれば増えていきます。
患者数が増加すれば売上が増加し、この固定費と変動費の合計を上回る点が損益分岐点となります。
利益は、「収入-費用」で計算
利益は、「収入-費用」で計算します。
したがって、利益を出すためには、給与や家賃、給与などを抑えつつ、売上を伸ばすことが大切です。さらに借入金があれば、その返済が必要ですし、税金の支払いもあります。
経営がスムーズにいかないと、たちまち資金繰りが悪化して最悪の場合兵員に追い込まれることがありますから、早期に黒字化を実現すること、そして固定費を抑えるための努力が必要です。
金融機関から融資を受ける際には、遅くとも開業予定日の2カ月前に相談したいところです。ただ、医療機器の導入や内装にお金がかかる場合には、もっと早めに相談しておいた方がいいでしょう。
なお、この時に事業計画や不動産契約が進んでいないと、融資の申し込みができませんので注意が必要です。
どのように借入金を返済していくのか、その返済のためのお金をどうやって稼ぐのかということを金融機関に説明するためには、説得力のある事業計画が必要になります。
そして、事業計画と返済計画が整合していなければ、融資を受けることは難しくなります。
事業計画は、返済計画どおりに返済できる内容でなければなりませんし、事業計画は、実現可能性について十分に説得力のあるものでなければなりません。
なお、開業資金を調達する際には、金利より返済期間の長さを重視することをおすすめします。返済期間が短いと、毎年の返済金額が多額になり、運転資金がその分多く必要になります。返済が厳しくなれば、また新たに融資を受けたりリスケジュールを検討したりすることになりますが、開業後の融資は開業前より難しくなります。
クリニックの開業には、超音波や血液検査機器などの医療機器のほか、問診予約システムなどのシステムが必要になります。
これらの医療機器をすべて購入すると、多額の費用がかかりますので、初期投資を抑えて手元に資金を確保するためにも、購入ではなくリース会社から借りることも可能です。
ただし、リースは、リース料率が高いこと、原則として中解約ができないことなどのデメリットがあります。
したがって、中古医療機器の購入などもあわせて検討するようにしましょう。
内装工事は、複数の業者から見積もりをとって業者を選定しますが、この時、見積金額が安いというだけで業者を選ぶと、後々トラブルに発展することがありますので、注意が必要です。
業者を選ぶ際に重要なのは、①開業するクリニックのコンセプト、導入する医療機器、診療内容などを十分に理解したうえで最善の提案をしてくれるか、②これまで医療施設を手掛けた実績がどのくらいあるか、の2点です。
なお一般的には、内装工事費は坪単価50万円程度が平均と言われていますので、内装工事費用の目安としてください。
開業エリアは、競合がいるかいないか、患者や自分にとって利便性がよいか、人口はどれくらいかを考慮して選びます。
駅前か住宅地のどちらが有利かは、簡単に答えが出ない問題です。駅前での開業は、自宅からの通勤利便性が高ければ、自分も患者が通いやすいというメリットがありますが、競争が激化しやすいリスクがあります。
一方、住宅地での開業は、相対的に競合が少ない、家賃が安いなどのメリットがありますので、他のクリニックと競合したくないのであれば、自分と同じ診療科目のない場所に開業するのもおすすめです。
また、最近はショッピングモールなどにクリニックを開業するケースも増えています。ターミナル駅にあるショッピングモールであれば、1日あたりの乗降客数が多いので、魅力的です。
クリニックを開業したら、診療所の開設後10日以内に診療所の保健所への届出が必要です(医療法第8条)。
なお、個人事業主として医師が個人で開業する場合は届出のみでOKですが、医療法人などを設立する場合には、「診療所開設許可申請」を都道府県に提出し、認可を受ける必要があります。
また、診療行為を行って保険請求するためには、届出をした証明を持って、厚生局に保健医療機関指定申請を行います。
申請は月1回で、厚生局によって提出期限が決められており、申請が受理されると保険診療を行うことができるようになります。
保健所によっては、開設届前に立ち入り検査を行う場合がありますが、この時点ですべての設備が整っている必要はありません。ただし、管理者の氏名や従事する医師の氏名、診療時間などが見やすい場所に提示されているか、個人情報管理指針などは策定されているかなどがチェックされますので、必要書類はきちんと準備し周知しておく必要があります。
クリニックを開業する場合には、医師会に入会すべきか否か検討することになります。医師会に加入するメリットとしては、健診や予防接種など、自治体が費用を助成する業務の委託を受けることができるという点を挙げることができます。また、校医など地域のつながりもできます。
地域によっては100%近く加入しているところもありますが、都市部などでは、地域のつながりがそれほど重視されなくなっていることから、医師会に加入しない医師も増えてきているようです。
医師会に加入すれば、前述したようなメリットはあるものの、当然負担も発生しますので、メリット・デメリットを見極めたうえで、加入の是非について検討することをおすすめします。
クリニックを開業したら、開業を洗剤患者に知らせなければなりません。
まずは、クリニックの看板です。ビルの1階であれば、間口全体を使ってアピールできますが、2階以上であれば、立て看板を入り口付近に設置するなどの工夫が必要です。
また、最寄り駅や道沿いにも看板広告を出すことも検討しましょう。
次に、クリニックのウェブサイトの作成です。
ホームページでは、難しい医学用語は使わず、コンセプト、診療内容をできるだけ分かりやすく伝えるように工夫します。
また、Googleなどの検索エンジンで「○○町眼科」などと検索した時に上位表示されるためのSEO対策も重要です。
具体的なSEO対策としては、クリニックを開業したことをGoogleに知らせるために、Googleマイビジネスへ登録を行い、信頼度の高いサイト(医師会など)から被リンクを獲得するなどが有効です。
次にぜひ行いたいのが、MEO対策です。
MEO対策とは、地図アプリなどで施設を検索した時に上位表示させるための対策です。Googleマイビジネスへ登録すれば、Googleマップで表示させることができますが、Googleマイビジネスにサービスの詳細や診療時間、写真、電話番号などの情報をきちんと設定することで、さらに効果が期待できます。
厚生労働省の調査によると、病院数は平成2年をピークに減少しているものの、診療所数は年々増加傾向にあります。
全国の医療施設は180,396施設で、前年に比べ1,672施設増加している。 「病院」は8,205施設で、前年に比べ33施設減少しており、「一般診療所」は104,292施設で1,680施設増加、「歯科診療所」は67,899施設で25施設増加している。 |
したがって、当然クリニック同士の競争も激しくなってきていますから、開業前の診療圏調査や開業後の集客は、クリニックの経営にとって非常に重要な要素となります。オンライン診療や夜間・土日の診療が必要となることもあります。
また、開業すると、医師であり院長であり経営者でもあるということになりますので、収支もきちんと管理しなければなりません。
これらの役割をひとりでこなすのは至難の業といえますから、クリニック開業に精通している税理士やクリニックのコンサルタントにサポートを依頼するケースがほとんどです。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、クリニック開業の手続きや開業後の節税対策や税務申告などについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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