出口戦略(EXIT戦略)とは?意味や種類を解説

公開日:2024年07月25日
最終更新日:2024年07月26日

この記事のポイント

  • 出口戦略とは、ベンチャー企業が出資者に利益を確定させ、キャッシュ化する戦略のこと。
  • 創業期から出口戦略を明確にしておくことは、事業計画の指針となる。
  • 出口戦略は、資金調達時に出資者を納得させる要素となり、非常に重要である。

 

最近では、起業の段階からIPO、M&A、事業承継といったEXIT戦略を見据えて起業する人が増えています。しかし多くの場合、起業時には「出口戦略」という概念がピンとこない人も少なくありません。それでも、起業時点でしっかりと出口戦略を考えているかどうかは、その後の事業展開や成長スピードに大きな影響を与えることがあります。起業時からEXIT戦略を持つことで、目標を明確にし、資金調達の計画を立てやすくし、最適な経営判断を行う手助けとなります。

出口戦略(EXIT戦略)とは

出口戦略(EXIT戦略)とは、投資家や起業家が企業から資本を回収する方法を指します。企業が成長し、一定の成功を収めた後は、多様な選択肢から、個々の状況に応じて出口戦略を講じていく必要があります。
出口戦略は大きく2つの方法に分けられます。内部に出口を求める方法と外部に出口を求める方法です。
内部に出口を求める方法としては、親族内承継や役員・従業員に事業を承継させるMBOなどがあります。
一方、外部に出口を求める方法としては、IPOやM&Aと言った方法があります。

(1)IPO

IPOは企業が株式を公開市場で販売することによって、一般投資家から資金を調達する方法です。IPOは企業に大量の資金をもたらすことができますし、公開市場で株式を売ることにより、企業は大規模な資本を得て、研究開発、新製品の投入、マーケティング、拡張計画などに使用することができます。

また、IPOは企業の認知度を大幅に向上させる効果もあります。上場することで、企業はメディアの注目を集め、市場での信頼性が向上します。結果的にブランド価値の向上にもつながり、顧客や取引先からの信用を得ることができます。さらに、既存の株主や創業者は、株式市場で自分の持ち株を売却することで資金を回収することができ、初期投資のリターンを実現することができます。

しかし、IPOには多大なコストと時間がかかりますし、法律遵守のための準備や、マーケットへの適応が必要です。企業は詳細な財務情報を開示しなければならず、競合他社に情報を提供するリスクもあります。また、IPO後は企業の経営が分散される可能性がありますし、多くの新しい株主が経営に関与することになり、経営陣の自由度が制限されるリスクもあります。

さらに、上場後は四半期ごとの業績報告が求められるため、短期的な業績に対するプレッシャーが増大します。これは長期的な戦略計画の実行を難しくする場合があります。市場の期待に応えられない場合、株価が大幅に下落するリスクも伴います。

また、IPOプロセスには厳格な規制と監督があります。企業は証券取引委員会(SEC)などの監督機関の規制に従う必要があり、これが企業の自由な運営を制約する場合があります。上場後も継続的なコンプライアンスコストが発生し、これが中小企業にとっては大きな負担となることもあります。

これらの要素を考慮に入れると、IPOは企業にとって強力な資金調達手段であると同時に、多くの課題とリスクを伴う複雑なプロセスであることが分かります。

(2)M&A

M&A(合併・買収)は他の企業に買収されたり、他企業と合併されたりすることによって、投資家が資本を回収する方法です。M&Aは迅速に資金を回収できる手段です。買収者が現金や株式で企業を買収する場合、投資家はすぐに資金を得ることができるので、投資家は早期にリターンを実現し、次の投資先を探すことができます。

また、M&Aは企業の成長を加速させる手段ともなります。たとえば、ある企業が他の企業を買収することで、新しい地域市場に進出したり新製品ラインを追加したりすることができて、企業は競争力を強化し、長期的な成長を促進することができます。

さらに、M&Aはシナジー効果を生む可能性があります。合併や買収によって、企業はリソースを統合し、効率を向上させることができます。たとえば、重複する部門を統合することでコストを削減したり、共通の技術プラットフォームを利用することで開発効率を高めたりすることができます。

しかしM&Aは、統合のプロセスが複雑であり、異なる企業文化や運営方法を持つ企業を統合することは容易ではなく、失敗すると企業全体の効率が低下するリスクがあります。また、買収企業が適切に統合を管理できない場合、従業員の士気が低下し、生産性が下がる可能性もあります。
さらに、買収や合併には多くの法的手続きが必要であり、プロセスが遅延し、追加のコストが発生するといったリスクも考えられます。

(3)MBO

MBO(マネジメント・バイアウト)は、企業の経営陣がその企業の全株式または一部を買収することによって、所有権を移転する方法です。既存の経営陣が企業の運営を継続するため、企業のビジョンや文化が維持されやすいといったメリットがあり、特に中小企業やファミリービジネスにおいて、利用されます。

MBOの大きなメリットの一つは、既存の経営陣が企業のビジネスモデルや市場環境について深い理解を持っているため、買収後の運営がスムーズに行われる点です。
また、MBOは企業の長期的な戦略を維持するための有効な手段ともなります。経営陣が所有権を持つことで、短期的な利益追求に囚われず、長期的な視点で企業の発展を図ることができます。創業者の意向やビジョンが次世代に受け継がれることで、企業のアイデンティティと競争優位性が保たれるのです。

しかし、経営陣が企業を買収するためには、通常、多額の資金が必要ですから、この資金を調達するために、外部の投資家や金融機関からの借入が必要となることが多く、これが企業の財務状況に負担をかける可能性があります。また、借入金の返済が業績に悪影響を及ぼすリスクもあります。

また、MBOが従業員や取引先に与える影響も考慮する必要があります。経営陣が所有権を持つことで、従業員の士気が向上し、企業のパフォーマンスが向上する場合もありますが、一方で経営陣のプレッシャーや負担が増えることで、組織全体の雰囲気が悪化するリスクもあります。従業員や取引先がMBOの影響をどう受け取るかを慎重に評価し、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。

(4)事業承継

事業承継にはいくつかの方法があります。
家族内承継とは、現経営者の子供や親族が企業を引き継ぐ方法です。家族内承継は、企業の文化や価値観を維持しやすく、長期的な視点での経営が可能です。しかし、子や孫といった後継者が経営能力を持っているかどうか、また意欲があるかどうかを慎重に評価する必要があります。

企業の従業員や幹部が経営権を引き継ぐ方法もあります。既存の従業員が企業のビジネスモデルや市場環境に精通しているため、スムーズな移行が可能です。また、従業員の士気が向上し、企業の安定性が保たれます。

そのほか、外部から新しい経営者を招く方法もあります。新しい視点やアイデアを企業に取り入れることができ、企業の成長を促進する可能性があります。しかし、外部からの経営者が企業の文化や価値観に適応できるかどうかが課題となります。

事業承継のメリットの一つは、企業のビジョンと価値観を次世代に継承できる点です。創業者や現経営者の意向や哲学が次世代に引き継がれることで、企業のアイデンティティと競争優位性が維持されます。
事業承継は、従業員や取引先との信頼関係を維持するためにも重要です。経営権が円滑に移行されることで、従業員の士気が維持され、取引先との関係も安定します。

事業承継には計画と準備が不可欠です。まず、現経営者は事業承継の時期と方法を明確に定め、次世代に引き継ぐための準備を行う必要があります。これには、後継者の選定や育成、財務状況の整理、法的手続きの準備などが含まれます。また、従業員や取引先に対しても適切なコミュニケーションを図り、事業承継のプロセスをスムーズに進めることが重要です。
さらに、事業承継には税務上の問題も伴います。特に、相続税や贈与税の負担が大きくなる場合がありますので、専門家の助言を受けながら、最適な事業承継の計画を立てることが求められます。

(5)出口(EXIT)戦略のスケジュール

出口戦略のスケジュールは、企業の成長段階や市場環境、出口の方法などによって異なりますが、一般的なプロセスを以下のとおりです。

初期段階(0-2年):ビジョンと目標設定
起業家は最初にビジョンと長期的な目標を設定し、IPO、M&A、MBO、事業承継などの出口戦略を初期段階から計画します。
出口戦略を考慮したビジネスプランを作成し、成長戦略や資金調達の計画を立てます。この段階で、事業のスケールや成長見込みに基づいた具体的な目標を設定します。

成長段階(2-5年):市場拡大と製品開発
事業を拡大し、市場シェアを増やすための活動、具体的には新しい製品やサービスの開発、マーケティング戦略の展開などを行います。
成長を支えるために、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達も検討します。なおこの段階で、投資家に対して出口戦略の明確なビジョンを提示することが重要です。

成熟段階(5-7年):収益性の向上と効率化
事業の収益性を高めるための取り組みを強化し、コストの効率化を図ります。収益性の向上は、将来的なIPOやM&Aの成功に繋がります。
また、企業価値を最大化するために、定期的に事業評価を行い、パフォーマンスをモニタリングして、潜在的な買収者や投資家に対して魅力的な企業としてアピールするための施策を講じます。

準備段階(7-9年)
・IPO
IPOを選択する場合、証券取引所への上場準備を開始します。財務諸表の整備、内部統制の強化、監査対応などが含まれます。法的・規制要件を満たすための準備も行います。

・M&A
M&Aを選択する場合、潜在的な買収先との交渉を開始します。買収先の選定、デューデリジェンス、バリュエーション(企業価値評価)を行い、最適な条件での取引を目指します。

・MBO
MBOを選択する場合、経営陣が資金調達計画を立て、必要な資金を確保します。外部投資家や金融機関との交渉も行います。

・事業承継
事業承継を選択する場合、後継者の選定と育成を進めます。法的手続きや税務対策も計画的に行います。

実行段階(9-10年)
・最終調整
出口戦略の実行に向けて、最終調整を行います。
たとえば、IPOの場合は、ロードショーや投資家向けプレゼンテーションを実施し、公開日を設定します。M&Aの場合は、最終的な契約交渉と合意書の作成を行います。

・実行とクロージング
計画した出口戦略を実行し、取引を完了します。IPOの場合であれば、公開市場での取引が開始されます。M&Aの場合、企業の統合プロセスが始まります。MBOの場合、経営陣が所有権を正式に取得し、事業承継の場合、後継者への経営権移譲が完了します。

・ポストEXITマネジメント
出口戦略実施後も企業の安定と成長を確保するために、経営陣のサポート、新しいガバナンス体制の確立、従業員や取引先との関係維持などのポスト出口戦略のマネジメントを行います。さらに、出口戦略の成果を評価し、成功要因と改善点を分析し、将来の事業展開や新たな投資機会に対する洞察につなげることも大切です。

まとめ

EXIT戦略を検討するうえでは、早めに税理士に相談することが大切です。
IPOやM&A、MBO、事業承継の際に発生するキャピタルゲイン税や贈与税、相続税などの税負担を適切に計算し、節税対策を講じることができるので、EXIT戦略に伴う税務リスクを最小限に抑えることができます。

IPOを選択するのであれば、IPO準備の過程で必要な財務書類の作成や内部統制の強化をサポートし、法的・規制要件を満たすためのアドバイスを受けることで、上場プロセスがスムーズに進み、投資家の信頼を得ることができます。

また、M&Aの場合には、税理士はデューデリジェンス(企業価値の評価)を行い、買収先企業の財務状況や税務リスクを評価するサポートを行うことで、適正な価格での取引を実現し、買収後の税務リスクを最小限に抑えることができます。

さらに、MBOや事業承継の場合、税理士には資金調達や税務対策のサポートを依頼することができます。特に、相続税や贈与税の負担を軽減するためのプランニングをサポートし、円滑な所有権の移転を実現します。

さらに税理士はEXIT戦略の実行後も企業の財務管理をサポートします。ポスト出口戦略のマネジメントにおいて、税務リスクの管理や財務パフォーマンスの評価を行い、企業の持続的な成長を支援してもらうことができます。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

 

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