実質的支配者の意味や申告書を分かりやすく

公開日:2023年08月21日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 実質的支配者の申告書は、公証人に提出する。
  • 実質的支配者には、要件がある。
  • 実質的支配者が、暴力団員等である場合、定款は認証されない。

 

平成30年(2018年)11月30日から、株式会社の定款認証の際に、実質的支配者となるべき者の申告書を公証人に提出することになりました。
実質的支配者が暴力団員等である場合には、定款は認証されません。
 

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実質的支配者とは

実質的支配者とは、会社の事業経営を実質的に支配することが可能な関係にある「個人」です。

平成30年11月30日から、株式会社成立の際に、実質的支配者となるべき人が、暴力団員や国際テロリスト、大量破壊兵器関連計画等関係者に該当するか否かについて、公証人に申告しなければならないこととなりました。

(1)実質的支配者の要件

実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人です。

参照:日本公証人連合会「Q4. 実質的支配者とは、どのような者を指すのですか。」

具体的には、以下の①~④のいずれかに該当する個人をいいます。

①株式の50%を超える株式を保有する個人
②上記①のような人がいない場合には、株式の25%を超える株式を保有する個人
③上記①、②のような人がいない場合には、事業活動に支配的影響力を有する個人
④上記①、②、③のような人がいない場合には、代表取締役

(2)定款認証で必要となる理由

昨今、マネー・ローンダリングやテロ資金供与などの手段として会社が不正使用されるケースが多発しており、これを抑止することが国内外から求められています。
これを踏まえて、平成30年11月30日から、株式会社成立の際に、実質的支配者となるべき人が、暴力団員や国際テロリスト、大量破壊兵器関連計画等関係者に該当するか否かを公証人に申告することになり、定款認証を受ける際に「実質的支配者となるべき者の申告書」を提出することとなりました。

(3)実質的支配者申告書の書き方

実質的支配者支配者となるべき者の申告書は、公証人役場で入手できるほか、日本公証人連合会のホームページでダウンロードすることができます。
実質的支配者の要件を満たす人が複数名いる場合には、原則として全員について申告する必要があります。

参照:日本公証人連合会「実質的支配者となるべき者の申告書」

1定款認証を行う公証人役場、公証人名を記入する。
公証人役場は、株式会社の本店所在地の都道府県内に公証人役場を設置している管内の公証人。
たとえば、東京都千代田区なら「東京都内」の公証人の認証を受ける。

2設立予定の株式会社の商号を記入する。

3認証を申請する人(嘱託人)の住所、氏名等を記載し押印する。

4該当する箇所にチェックを入れる。

5上記4に該当する人を記入する。国籍、生年月日、議決権割合等について記入する。
たとえば、発起人1人、取締役1人の会社の場合は、100%となる。

なお、申告書の「暴力団員等該当性」欄にある「該当」・「非該当」の選択肢を〇については、令和3年7月から、同欄の記入に代えて、実質的支配者となるべき者が作成した「表明保証書」を申告書に添付することもできるようになりました。

参照:日本公証人連合会「定款認証に必要な「実質的支配者となるべき者の申告書」の記載方法等の変更について」

(4)定款認証されない場合とは

公証人は、「実質的支配者となるべき者の申告書」を確認したうえで、実質的支配者となるべき者が、暴力団員、国際テロリストなどに該当する可能性があると判断した時には、嘱託人または当該実質的支配者となるべき者に、必要な説明を求めます。
そして、暴力団員、国際テロリスト、大量破壊兵器関連計画等関係者が実質的支配者であり、その会社の設立行為に違法性があると認められる場合には、公証人は認証することができなくなります。
実質的支配者となるべき者の申告書を提出しない場合、説明を求められたのに説明をしない場合にも、同様に認証することができません。

(5)定款認証されると文言が付記される

実質的支配者となるべき人が、暴力団員や国際テロリスト、大量破壊兵器関連計画等関係者(暴力団員等)ではないと公証人に認められたら、定款の認証文に「設立される法人の実質的支配者となるべき者が○○である旨、及び同人が暴力団員等ではない旨を申告した。」という文言が付記されます。

定款認証/その他の注意点

定款認証は、本店所在地の都道府県内の公証人役場で受けます。
定款3通、発起人の印鑑証明書、収入印紙、公証人の手数料となる5万円の現金、発起人の実印、そして実質的支配者となるべき者の申告書を準備します。
公証人は不在であることも多いので、事前に電話予約をしましょう。
公証役場は完全予約制としていることもありますので、事前に問い合わせを行うことをおすすめします。

(1)公証人役場は発起人全員で行く

公証人役場は、原則として発起人全員で行くことになっており、行けない人がいる場合には、委任状が必要となります。
ただし、実務上は発起人代表か司法書士を代理人に立てるケースがほとんどです。
代理人が公証役場に行く場合には、委任状の他、以下の書類が必要となります。

代理人自身の確認資料

ア 印鑑登録証明書と実印
イ 運転免許証と認印
ウ マイナンバーカードと認印
エ 住民基本台帳カード(写真付き)と認印
オ パスポート、身体障害者手帳または在留カードと認印
上記ア~オのうちいずれか

(2)定款認証に行けない場合は委任状

定款認証に行けない発起人がいる場合には、その人の委任状を用意します。
委任状に決まったフォーマットはありませんが、以下のような委任状を用意すれば十分です。

1日付は元号を使います。
2個人の印鑑で、押印します。

(3)電子定款という方法もある

定款は、一般的には公証人役場に持参しますが、定款を電子文書で作成して認証を受けることもできます。これを電子定款といい、印紙税4万円を節約することができます。
また、定款を電子定款とする場合には、公証人役場に直接行かずに、テレビ電話で公証人が本人確認を行い、認証を受けることができるようになりました。

公証人から、メールでテレビ電話用のURLを送付してもらい、予約時にPCやスマホでテレビ電話を行います。

テレビ電話による認証を希望する場合には、事前に公証役場に、テレビ電話による認証を希望している旨を申し出ます。そして、、メール、FAXその他の方法により、認証を受けたい定款の案と実質的支配者となるべき者の申告書を送付して事前調査を受ける必要があります。

参照:日本公証人連合会「 テレビ電話による認証を受けるまでの手順は、どうなっていますか。」

(4)定款認証に必要な費用は?

株式会社の定款認証の手数料は、これまで「5万円」でしたが、令和4年1月1日から以下のように変更となりました。

・資本金の額等が100万円未満の場合:3万円
・資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合:4万円
・その他の場合:5万円

また、謄本手数料が1枚につき250円必要となります。

参照:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」

(5)資本金の払込みは「認証後」

発起人は、定款認証が終わり次第、すぐに出資金(資本金)の払込みをします。
払込み先は、発起人の個人名義の口座で、各発起人が振り込みを行います。
定款認証前に払込みをすると、資本金と認められないことがありますので、必ず定款認証後に振り込みを行うようにします。

まとめ

実質的支配者となるべき者の申告書は、平成30年(2018年)11月30日からスタートした制度で、定款の認証を受ける際に必要となります。
株式会社を設立する際には、資本金の額、事業年度、議決権の割合など、事前に注意すべき点が多々ありますので、不明点や疑問点は事前に確認をしたうえで、手続きを進めることをおすすめします。

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