社債とは?株式や融資との違いは?手続きはどうする?

公開日:2024年07月02日
最終更新日:2024年07月02日

この記事のポイント

  • 社債とは、企業が中長期の資金を調達するために発行する債券。
  • 社債債権者はあくまで債権者であり、株主とはならない。
  • 中小企業が利用しやすい制度として「少人数私募債」
    がある。

 

社債とは、企業が投資家から比較的長期に資金調達をするために発行する債券です。従来は、生命保険会社や信託銀行などが発行するケースが主でしたが、現在は個人向けの社債発行が増えています。

社債とは

社債とは、民間企業が中長期の資金調達を行うために発行する債券です。
債券とは、発行体が必要な資金を調達するために、投資家に対して利息の支払いや元本の返済を条件として発行する証券で、社債以外にも政府が発行する国債や、地方自治体が発行する地方債などがあります。
少額ずつでも多数の投資家から、同じ条件でまとまった資金を調達できるというメリットがあります。

(1)銀行融資との違い

社債と銀行融資は、どちらも企業の資金調達手段であり、定期的に利息がつくなど似た点がありますが、お金を集めるしくみが違います。
たとえば、元本割れや利息の不払いなどがあると、投資家が直接被害を受けますが、融資の場合には、仮に融資先の企業が倒産したとしても、その銀行にお金を預けている預金者に害が及ぶことはありません。あくまで損失を負うのは、銀行だけです。
また、銀行融資の場合には、貸し手である銀行が返済してもらいたくなっても、借り手は期日までは返す必要はありませんが、債券の場合は、投資家と証券会社などの金融機関の間で売買が成立すれば、貸し手が交代できます。

(2)株式との違い

社債と株式は、どちらも会社に投資する商品ですが、株式を買う=その会社のオーナーになることを意味し、会社の業績が良くなれば儲けることができますし、反対に業績が悪くなれば損失が発生したりします。一方社債は、基本的にその会社にお金を貸すだけなので、業績が良くなったとしても金利が高くなるわけではありませんし、期日に返してもらえる金額が増えるわけでもありません。また、どんなにその会社の業績が悪化しても倒産さえしなければ、満額返してもらえて金利も払ってもらえます。

(3)公募と私募

社債は、その購入者の募集方法によって「公募債」と「私募債」に分けられます。公募債は広く一般の投資家に向けて募集されるのに対し、私募債は特定の投資家を対象に発行されます。私募債はさらに「プロ私募債」と「少人数私募債」に分類されます。

少人数私募債は、少数の縁故者や取引先など、特定の小規模な投資家グループを対象に発行される社債です。通常の社債に比べて、発行手続が簡素化されているため、企業にとっては発行が容易です。また、無担保で発行できることもあり、企業の資金調達の柔軟性が高まります。
中小企業が銀行借入に依存せず、直接金融の手段として少人数私募債を活用する機会が増えており、少人数私募債は、資金調達の手段として中小企業の経営戦略において重要な役割を果たしています。

(4)中小企業が利用しやすい少人数私募債

少人数私募債は、中小企業にとって利用しやすい資金調達の手段です。通常の公募債と比べて発行にかかるコストや時間が大幅に削減できますし、無担保で発行できる場合が多く、企業の資産を担保にする必要がありません。
また、発行条件も企業と投資家の間で柔軟に設定できるため、企業の財務状況やニーズに合わせた条件で発行が可能です。金融機関からの融資とは異なり、少人数私募債は無担保債であるため、利息の支払いは年に一度の後払いが一般的であり、保証会社に支払う保証料の負担もありません。

「少人数私募債」の「少人数」とは、通常50人未満の投資家を指し、具体的には、上限は49人です。50人以上になると、金融商品取引法上の募集行為となり、公募扱いとなるため、有価証券届出書を作成して提出する必要があります。また、社債の一口あたりの単位が発行総額の50分の1以上になると社債管理会社が必要となるため、社債の一口の最低金額は発行総額の50分の1より大きく設定する点には注意が必要です。

投資家側にも少人数私募債にはメリットがあります。主な利点は、金融機関に預ける預貯金よりも有利な利率が設定されることです。発行する企業側から見ても、社債利率を金融機関より高く設定しても、保証料などのコスト負担がないため、十分に採算が取れます。

一方で、少人数私募債にはいくつかのデメリットも存在します。まず、発行規模が限定されているため、大規模な資金調達には向いていません。また、会社外部の人が引受人となった場合、その引受人の意向を無視しにくくなる点にも注意が必要です。

(5)少人数私募債の発行の流れ

少人数私募債の発行するためには、まず資金調達の目的や金額、返済期間、金利などを決定し、同時に投資家の選定基準も設定します。その後、縁故者や取引先など、少人数の投資家を選定し、事前交渉を通じて発行条件について合意を得ます。

次に、取締役会や株主総会で少人数私募債の発行を正式に決定し、承認を得る必要があります。決議内容は必ず議事録として記録し、保管しておく必要があります。

次に、社債の募集要項を作成します。募集要項は社債申込証の裏面に記載し、投資家に内容を確認してもらいます。投資家が内容に同意したら、社債申込証の表面にサインをもらいます。サインをもらった社債申込証を回収し、募集引受通知書を投資家に発送します。

入金口座は、日常取引で使用している口座とは別の口座を用意しておきます。入金が確認されたら「社債申込預り証」を発行します。社債は、社債権者の住所・氏名、振込先口座、社債の取得年月日などを記録して管理します。

万が一、社債の返還が困難になった場合には、社債権者集会を開いて全額の償還請求を通知することができます。また、新たな少人数私募債を発行し、引き続き投資家に引き受けてもらうための交渉を行うことも可能です。

社債の処理仕訳

社債を発行した場合には、発行時、利払い時、決算時、償還時に会計処理を行います。
従来、社債をその額面より低い金額で発行した場合、発行金額と額面との差額を「社債発行差金」として繰延資産に計上し、償却していました。しかし、金融商品会計基準により、社債を額面より低い金額または高い金額で発行した場合、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とすることが規定され、社債発行差金の計上は認められなくなりました。

(1)社債を発行した

「社債金額1000万円、利率3.6%(利払いは半年に1度)、発行価額は額面100円につき95円で発行した。社債発行費は55万円であった。」

借方 貸方
当座預金 9,500,000 社債 9,500,000
社債発行費 500,000 当座預金 550,000
仮払消費税等 50,000

(2)社債の利払いを行った

「社債の利払いをおこなった。年利3.6%で、利払いは半年に1度である。」

借方 貸方
社債利息 180,000 当座預金 180,000

(3)決算時に償却原価法で評価した

「決算時に、償却原価法で評価した。」
※償却原価法とは、金融商品を取得した際の発行額と額面との差額を、償還期限までの期間にわたって一定の方法で償却する会計処理方法です。

借方 貸方
社債利息 100,000 社債 100,000

(4)償還した

借方 貸方
社債 10,000,000 当座預金 100,000

まとめ

社債は、企業が将来の一定の期日に券面額で償還することを約束した有価証券を発行することで、広く一般から資金調達をする方法です。
長期借入金と似た性格を持ちますが、証券として広く一般的に流通するという点で異なります。
なお、特定の引受人を対象として発行する社債を私募債といい、中小企業にとっては資金調達の1つの手段として少人数私募債を活用するケースが増えています。
詳細については税理士に相談し、慎重に検討することをおすすめします。

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