新株発行による資金調達の方法とは?

公開日:2023年11月02日
最終更新日:2023年11月02日

この記事のポイント

  • 新株発行には①株主割当、②第三者割当、③公募発行の3つの方法がある。
  • 新株発行を行うためには、株主総会の特別決議等が必要。
  • 既存の株主は、新株発行の差止め請求をすることができる。

 

新株発行には、通常、①株主割当、②第三者割当、③公募発行の3つに分類されます。
投資家から直接資金調達を行う方法であり、返済の必要はありません。
 

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新株発行とは

新株発行とは、新しい株式を発行して資金調達を行うことです。
会社の資金調達の方法としては、新株発行、社債発行、借入などがありますが、新株発行で得た資金は、会社の自己資本に組み込まれるため、返済の義務は生じません。
一方、社債とは、会社が発行する債券のことで、借入れと同様に返済の義務があります。債券とは、借入れをするときに借り手が発行する有価証券のことで、返済期日や利息などが決められています。

(1)新株発行の3つの方法

会社が新株を発行する方法は、①株主割当、②第三者割当、③公募発行の3つに分けられます。
会社法上は、すべてが募集株式の発行に該当します。

①株主割当とは、既存の株主に割り当てる方法、②第三者割当は、第三者に割り当てる方法、③公募発行は、応募者に割り当てる方法です。

(2)新株発行①株主割当

株主割当とは、既存の株主の持株数に応じて新株を発行する方法です。
株主割当は、既存株主の持株比率を変えないで割り当てる方法なので、第三者割当や公募発行と異なり、議決権の数による会社の支配力に影響を与えません。

株主割当による増資を意図していても、結果的に第三者割当になってしまうことがあります。既存株主に割り当てるということは、既存株主に新たに資金を払込んでもらうということですが、なかには新たな出資に応じない株主がいる場合もあります。このような場合には、既存の株主比率を保つことができなくなるため、結果的に第三者割当となるからです。

(3)新株発行②第三者割当

第三者割当とは、既存の株主以外の第三者に対して新株を発行する方法です。
第三者割当は、新規株主に新株を発行するため、既存の株主の権利が変動します。とくに、既存株主以外の第三者に割り当てる一般的な第三者割当の場合、既存株主の持株比率が低下するため、既存株主の権利は希薄化します。
その結果、株主総会における議決権も、配当などを受ける権利も、相対的に低下します。

(4)新株発行③公募発行

公募発行とは、一般の不特定多数の人から広く募集して割り当てる方法です。
公開会社にとっては最も一般的な資金調達の方法です。
公募発行によって既存株主の利益を損なわれるようなことがないよう、配慮されています。

(5)新株発行の手続き

新株発行を行う場合には、そのたびに数や金額について募集事項を決めなければなりません。
募集事項の決定は、公開会社と公開会社以外で異なります。

公開会社では、原則として取締役会の決議で決定することが可能です。
ただし、株主割当以外の方法で有利な金額で発行する場合には、既存の株主の権利が希薄化し、既存の株主にさまざまな不利益が及ぶ可能性があります。そのため、取締役による株主総会での説明や、株主総会の特別決議が必要とされています。

公開会社以外の会社では、株主総会の特別決議が必要となります。つまり、新株の発行について、必ず株主のチェックを受けるということです。
ただし、株主総会での特別決議の決定を、取締役(取締役会設置会社の場合には、取締役会)に委任することも可能です。

第三者割当
第三者割当を実施する場合には、その都度以下の募集事項について決議する必要があります。そして、募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対して通知をします。

①募集株式の数
②募集株式の払込金額
③金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額
④募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは③の財産の給付の期日またはその期間
⑤株式を発行するときは、増加する資本金および資本準備金に関する事項

株主割当
株主割当の場合も、第三者割当と同様に募集事項を決定する必要があります。株主割当の場合には、第三者割当の募集事項に加えて以下の事項を定める必要があります。

①株主に対して、募集株式の引受けをすることにより募集株式(種類株式発行会社の場合は、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当を受ける権利を与える旨
②上記①の募集株式の引受けの申込みの期日

公募発行
公募発行の手続きは、第三者割当と変わりません。

(6)支配株主の異動がある時の注意点

公開会社では、新株発行を、原則として取締役会の決議で行うことができます。
そうすると、たとえば議決権の過半数を持つ株主が誕生するといった重大な新株発行を、株主のチェックを受けることなく、取締役会の決議だけで行うことが可能となってしまいます。
そこで、新たに議決権の2分の1を超える株式を保有する株主(株式会社の経営に関する意思決定を支配できる株主)が出現する場合については、原則として新株の代金の支払期日の2週間前までに、既存株主に対して、支配株主になる人の氏名や名称、議決権の数などを通知または公告しなければならないとされています。

そして、その通知または公告から2週間以内に新株主の議決権の10分の1以上の議決権を持つ株主が、会社に対して反対である旨の通知をしたときには、代金支払期日の前日までに、株主総会の普通決議による承認を受けなければならないとされています。

(7)新株発行の差止め請求

時価より有利な価格で割り当てられるなど、不公正な新株発行が行われると、既存株主は大きな不利益を被ります。
また、経営者に近い人物に大量の新株の割当てが行われることがあれば、既存株主の議決権による会社の支配力が希薄化してしまいます。

そこで、株主が不利益を被る恐れがあるときは、株主は会社に対して新株発行と自己株式の処分を取りやめるよう請求することができます。
取りやめるよう請求することができる場合とは、法令または定款に違反して、会社に回復できない損害または著しい損害を生じるおそれがある場合と、著しく不公平な方法で行われる場合です。
著しく不公平な方法とは、たとえば資金調達のニーズがないのに取締役が一部の者に多数の新株を割り当てるような場合です。

(8)新株発行の効力

払込期日までに払込みがあった新株については、払込期日に新株発行の効力が生じて、引受人はその日から株主になります。

会社設立時に、株式発行に瑕疵があったような場合には、株式発行の部分についてだけその効力を否定することは認めず、設立無効の問題として処理することとしています。
会社設立後の新株発行については、新株発行の効力が生じるまでの間については、瑕疵のある新株発行を差し止める制度が用意されており、新株発行の効力が生じた後は、新株発行向こうの訴えおよび不存在確認の訴えという制度が用意されています。

まとめ

新株発行は、新株を誰に割り当てるかによって、株主割当、第三者割当、公募増資の3つに分類することができます。

株主割当とは、株主に株式の割当てを受ける権利を与える形式で実施される株式の発行です。
第三者割当とは、特定の者(既存株主を含む)に対して募集株式の申込みの勧誘および割当てを行う方法です。
そして、公募発行とは、不特定多数の人に対して募集株式の申込みの勧誘および割当てを行う方法です。
これら3つの新株発行を行うための手続きは、公開会社であるか公開会社でないかによって、異なります。

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