種類株式とは|発行手続き&定款の記載事項

公開日:2021年09月22日
最終更新日:2022年07月19日

この記事のポイント

  • 種類株式とは、配当や議決権などについて権利の異なる株式のこと。
  • 種類株式の発行によって、会社の株式による資金調達および支配関係の多様化が可能となる。
  • 税務上は、種類株式ごとに資本金等の額を管理することとされている。

 

種類株式とは、通常の権利を有する普通株式に対して、権利内容の異なる株式のことをいいます。
種類株式の発行に際しては、定款に定める事項や決議要件が会社法で規定されていますので、その内容を十分に確認してから手続きを進める必要があります。

種類株式とは

会社法上、配当や議決権などについて権利の異なる株式を発行することができるとされていますが、これらは、通常の権利を有する「普通株式」に対して「種類株式」と呼ばれています。

会社法が、種類株式の発行を認めているのは、会社の株式による資金調達および支配関係の多様化の機会を与えるためと考えられています。
種類株式は、トラッキング・ストックによる資金調達や、全部取得条項付種類株式を利用したスクイーズアウトなど、会社の資本戦略の設計において、さまざまな場面で活用されています。

種類株式の発行に際しては、一定の事項を定款に定めるとともに、既存株式の権利内容を変更する場合には、一定の決議が必要となるケースがあります。

また、種類株式を発行した会社の会計処理については、普通株式の会計処理と特に変わりませんが、税法上は種類株式ごとに資本金等の額を管理することとされています。

(1)種類株式の一覧

現行の会社法では、各株式の権利の内容は同一であることを原則としていますが、例外として一定の範囲と条件で、その発行する全部の株式の内容として特別なものを定めることと、権利内容の異なる複数の種類の株式を発行することを認めるとしています。
会社法では、第107条において、1種類の株式のみ発行している会社の場合には、その株式の内容として定められるものは、以下の3つとされています。

①譲渡制限株式
②取得請求権付株式
③取得条項付株式

そして、会社法の第108条では、2種類以上の株式を発行する会社の場合で、その内容として定められるものは、以下の9つとされています。
これらの種類株式は、トラッキング・ストック(特定の子会社や事業部門の業績に、株式の価値が連動する仕組みの株式)による資金調達など、さまざまな場面での活用が想定されます。

①剰余金の配当(配当優先(劣後)株式)
②残余財産の分配(残余財産分配優先(劣後)株式)
③議決権制限株式
④譲渡制限株式
⑤取得請求権付株式
⑥取得条項付株式
⑦全部取得条項付株式
⑧拒否権付株式(いわゆる「黄金株」)
⑨選解任種類株式

(2)種類株式に関する非公開会社の特例

前述した種類株式の一覧の各種株式に加えて、会社法第109条では、非公開株式については、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権について、株主ごとにその権利内容が異なる株式を発行することができるとされています。
つまり、非公開会社では、株式数ではなく株主の頭割りで剰余金を配当すること、特定の株主についてのみ複数議決権を認めることが可能となります。

ただし、株式会社は営利法人であることから、剰余金の配当も残余財産の分配も全く受けられないというような株主を設けることはできません。

種類株式の発行手続き

種類株式の発行に際しては、定款にその旨を定めることが必要です。
また、株主総会の決議が必要となるケースもあります。

(1)種類株式の発行手続き①「定款の事項」

それぞれの種類株式の発行については、種類株式によって定款に定める事項が異なります。

種類株式発行の際に、定款に定めるべき事項

種類株式 定款に定めるべき事項
配当・残余財産の分配の優先(劣後)株式 〇当該種類株主に交付する配当財産・残余財産の価額の決定法
〇剰余金の配当をする条件または交付する残余財産の種類その他剰余金の配当・残余財産の分配に関する取扱いの内容
〇発行可能種類株式総数
議決権制限株式 〇株主総会において議決権を行使することができる事項
〇当該種類株式について、議決権行使の条件を定める時には、その条件および発行可能種類株式総数
譲渡制限株式 〇株式の譲渡による取得については、会社の承認を要する旨
〇発行可能種類株式総数
取得請求権付株式 〇株主が会社に対して取得請求権を有する旨
〇取得の対価
〇取得請求権の行使期間
〇発行可能種類株式総数
取得条項付株式 〇一定の事由が生じた日に当該株式を取得する旨およびその事由
〇会社が別に定める日が到来することをもって取得する事由とする場合には、その旨
〇一部の株式のみを取得することとする場合には、その旨および取得する株式の決定方法
〇取得の対価
〇発行可能種類株式総数
全部取得条項付株式 〇取得対価の決定方法
〇取得に関して株主総会の決議をすることができるか否かについて条件を定める時にはその条件
〇発行可能種類株式総数
拒否権付株式 〇当該種類株式総会の決議を必要とする事項
〇決議を必要とする条件を定める時にはその条件
〇発行可能種類株式総数
選解任種類株式 〇当該種類株主総会で取締役または監査役を選任することおよびその人数
〇一部を他の種類株主と共同して選任するときはその条件
〇上記2項目を変更する条件があるときはその条件と変更後の内容
〇当該種類株主総会で社外役員を選任する場合にはその条件等
〇発行可能種類株式総数

※譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式については、発行する全部の株式の内容として定める場合には、発行可能種類株式総数の定めは不要です。

※譲渡の承認請求があった時に、一定の場合において会社が承認をしたものとみなす時には、その旨および当該一定の場合を定款で定めなければならないとされています。

(2)種類株式の発行手続き②「種類株主総会の決議」

種類株式発行会社が、ある種類の株式について譲渡制限を設ける旨の定款変更を行う時には、その種類株式に係る種類株主総会、その種類株式を対価とする取得請求権付株式および取得条項付株式に係る種類株主総会の特殊決議が必要です。この時、反対株主には、株式買取請求権が認められています。

※特殊決議とは、その決議事項が重大であることから、多数の賛成が要求される決議のことです。

取得条項付株式については、種類株式発行会社以外の会社で株式の全部を取得条項付株式とする定款の定めを設けること、またはその内容を変更する定款変更を行う場合には、総株主の同意を得ることが必要です。

全部取得条項付株式について、すでに種類株式の定款規定を設ける時には、定款変更に関する株主総会決議のほかに、当該種類株主総会の特別決議が必要です。

種類株式の活用事例

多様な種類株式の発行が可能になったことから、種類株式はさまざまな場面で利用されています。
ここでは、そのなかから特に利用されている事例をご紹介します。

(1)優先株式の発行

配当優先株式、残余財産分配優先株式とは、他の株式に優先して配当や残余財産を分配される株式です。
この優先株式を利用することで、一定の株主に優先して配当や残余財産を分配できるように設計することが可能となることから、ベンチャーキャピタルなどから資金調達を行う際に活用されます。

仮にベンチャー企業の公開が失敗して倒産してしまっても、残余財産の分配が優先されるので、そこから優先的に回収することができます。

(2)スクイーズアウトの際の全部取得条項付株式

スクイーズアウト(締め出し)とは、M&Aにおいて対象企業を完全子会社化するために公開買付(TOB)等で議決権を過半数取得した後、他の少数株主を排除して強制的に株式を取得する行為です。
少数株主を締め出し持ち株比率を100%にすることで、意思決定を迅速化することができる他、完全子会社化することで税制上のメリットを享受することができます。

種類株式発行会社の会計処理

種類株式を発行した場合には、普通株式と同じ会計処理や表示が必要となります。
つまり、払込資本として計上し、貸借対照表上に表示し、負債と資本について区分することになります。

(1)払込資本として計上する

払込資本として会社法上の規定に従い、資本金、資本準備金または資本剰余金を計上することになります。この時、会社法上は普通株式と異なる手続きについては規定されていません。

(2)貸借対照表に表示する

貸借対照表については、たとえば資本金を普通株式と種類株式に区分して表示すべきという規定はありません。
ただし、形式上には株式であっても、一定の時期に一定額で償還されるものや一定額で償還される権利を有していて取得時点で一定の時期に償還されることが確実であると見込まれるものについては、債券と同じ性格を持つと考えられるため、貸借対照表価額は、債券と同じように取り扱います。

(3)負債として表示することはない

種類株式の所有者は、一定の要件を満たす時に、その評価に際して債券に準じて処理をすることがありますが、発行者側としては株式として発行されたものは「株主資本」として計上するとされています。したがって、負債として表示することにならず、会計基準についても、発行者側の負債と資本の区分についての基準は設けられていません。

まとめ

以上、種類株式の意味や一覧、発行手続きについてご紹介しました。
種類株式は、配当や議決権等について権利の異なる株式のことで、種類株式を発行した際の処理は、普通株式を発行した際の処理と変わりはありません。
しかし税務上は種類株式ごとに資本金等の額を管理することとされているなど、手続きが煩雑となりますので、早めに税理士に相談し手続きを依頼することをおすすめします。

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