公開日:2018年11月07日
最終更新日:2024年03月05日
期限を守って相続税の申告や納税をしても、後日に税務署から連絡があり相続税の税務調査の対象となる場合があります。また、相続税の申告をすべきであるにも関わらず申告をしなかった場合にも、同じく税務調査の対象となる可能性があります。
相続税の税務調査で問題が指摘されれば、高額な追徴課税をされてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
ここでは、相続税の税務調査の概要や、税務調査で聞かれることの多い質問、税務調査の効果的な対処法をご紹介します。
税務調査の豆知識
税務調査で指摘される事項は、大きく2つに分けることができます。
1つは、明らかな申告もれです。これらの情報は、税務調査に入る前から税務署が把握している可能性があります。事前に調べておかしいと感じているから税務調査の対象となるので、調査されれば言い逃れは難しくなります。
そしてもうひとつは、白黒はっきりしない事項に関する指摘です。
税法の規定では白黒はっきりしない項目が多々あり、この点をしつこく指摘してくるわけです。
しかし、適切に相続税対策を行い相続税申告を行なっているのであれば、税務調査で指摘を受ける事項は、後者の白黒はっきりしない事項が主となります。
調査官としても最初から反論を予想して指摘してきますから、この時きちんと反論することができれば、納税の金額は安くて済みます。
つまり、この時税法や判例に照らし合わせて、きちんと反論できるか否かで税務調査の結果は大きく変わってくるのです。これが、「相続税の税務調査は、税理士がいるかいないかで大きく変わる」と言われる理由です。
また相続税対策についても、ほんの少しの工夫で大きく節税することができるものが、この工夫をしなかったばかりに全く節税にならないことがあります。相続税や贈与税の節税対策は中長期計画で実行する方が、効果が大きいものです。節税効果を上げるためにも、税務調査の対象とならないためにも、可能な限り早くから税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
税務調査では、被相続人(亡くなった方)の生い立ちや職歴、趣味、交友関係など、さまざまな事柄について質問されます。なかでも名義預金については必ずと言っていいほど質問されます。
ここでは、税務調査でよく聞かれる代表的な質問のパターンについて5つ、ご紹介します。
相続税の税務調査で必ずと言っていいほど聞かれるのが、「名義預金」に関する「被相続人以外の名義の預貯金や株式は、誰のものか」という質問です。
名義預金とは、親などの被相続人が実際は自分の預金を子どもや孫などの名義で預貯金口座を作り、そこにお金を移動させておくことです。このような名義預金は、「生前に預貯金などを妻や子ども、孫の名義に変えておけば、相続税の対象にならないだろう」という意図で行われます。
しかし、口座の名義を変えるだけで相続税がかからないとなれば、相続税はほとんど課税できなくなってしまいますので、「この名義の預貯金は、本当は誰のものか」という点をしつこく指摘してきます。
親子がきちんと贈与の合意をして、「贈与契約」にもとづいて預金をしていれば問題にはならないのですが、ときには親が子どもに告げずに一方的に子ども名義の預金口座にお金を貯めていることがあります。
このように預貯金や株式を、色々な名義に分散しているだけで、実際の管理は本人が行っているケースは、「贈与契約」が認められず、親が単に子どもの名義だけ借りて預金をしているだけと判断されるので、子ども名義の預貯金が「親の相続財産」と判断されます。
税務調査では、調査官に「これは贈与契約ではないですよね?実質的には親の預金ですよね?」と追及されます。
そして、実際には亡くなった人の貯金であったと判断された場合には相続税の対象となり、追徴課税が必要となります。
なお、税務署は強力な調査権限を持っていますので、名義預金の調査をされるときには、事前に金融機関に照会をしています。親名義の預貯金口座や子ども名義の預貯金口座の入出金履歴、振込依頼書や出金依頼書などの筆跡まで確認されていることも多いので、言い逃れすることは難しいと考えておいた方がよいでしょう。
専業主婦である妻が、生活費から「へそくり」を貯めて預金していた場合も、税務調査ではシビアに追及されます。
専業主婦は自分の稼ぎがないので、いくら「へそくり」を「家計をやりくりした結果だ」とか「家事労働の対価だ」と主張しても、その主張は認められません。そもそも税務署は家事労働の対価を認めていないので、「へそくり」は亡くなった夫のお金を妻が管理していたに過ぎないと解釈されてしまいます。
そして、このへそくりも相続財産に加えられ、相続税の対象となってしまいます。
税務職員が雑談のように、「そういえば、被相続人の趣味は何だったんですか?」、あるいは「どのような生い立ちで、どのような家族関係だったのですか?」などといったプライベートな事柄まで聞かれることがあります。
しかし、このような質問を単なる雑談と考えるのは避けた方が無難でしょう。
たとえば「ゴルフが趣味でした」と答えれば、「ゴルフ会員権などの財産があるのではないか」と推測しされ、「サラリーマンだった」と答えた場合は、勤務先の会社の持株があるのではないかと推測されるわけです。
他にも、「経営者だった」などと答えれば、「父から相続した資産があったのではないか」となりますし、「生命保険会社に勤めていた」と答えたら「生命保険」が、公務員だったら「公務員共済の積立」があったのではないかと、推測されることになります。
何気ない世間話でも、実はその質問の1つに深い意味が隠されている可能性があるということを頭に入れて、回答するようにしましょう。
被相続人が定期預金をしていて満期を迎えたり、解約したりした場合などは、その行方について質問されます。
銀行には、定期預金が満期解約された履歴と解約出金された金額の履歴が残りますが、税務調査の前には、これらの履歴はすでに把握されていて、解約された現金について浪費して使ってしまっていなければ、何らかの財産になっているはずだとして、税務調査官はその「ひもづいた財産」を探ってくるわけです。
不動産や自動車などを購入したのであれば、それらの相続財産についても申告していないと申告漏れとなってしまいます。家に現金で置いているのであれば、その現金も相続財産として申告する必要があります。
「まさか、税務署に分からないだろう」と思っていても、税務署は把握していることが多いので、出金したお金の使い途は、きちんと説明できるようにしておきましょう。
被相続人が病気になって介護を受けていたケースなどでは、税務職員が「誰が介護していたのか」「入院期間は、どれくらいかかったか」と聞いてくることがあります。
これは、長期入院であればその入院している間に金融資産を移動したのではないか、もし看病していた人がいる場合には、「看病していた人の名義で、預貯金されたのではないか」と推測しているからです。
相続開始前3年間(令和6年以降に贈与される財産については、加算の対象となる期間が段階的に7年まで延長)の推定相続人に対する贈与は、相続税の課税対象になりますので、もし看病していた妻や子どもに生前贈与された財産があっても、贈与税の申告していない場合には、相続税の課税対象になります。
また、相続人以外の介護者であっても、「名義を借りて預金をしているだけ」であれば、単なる名義預金として否認され、相続税の課税対象になる可能性があります。
上記以外にも、次のような質問をされることがあります。日記やメモ、手帳などには、被相続人のお金の流れのヒントが隠されているのではないかと考えるので、とくに細かく質問されます。当日慌てないためにも、事前にチェックしておきましょう。
・被相続人が財産を築いた手段 ・被相続人の日記はないか ・印鑑の保管場所 ・香典帳(誰が葬式に参列したか、銀行や証券会社の人はいないか) ・取引している(いた)金融機関の名称と支店名 ・被相続人の自宅の購入金額や過去の所有していた不動産の売却金額 ・相続人の家族の年齢、学校名、職業 ・死亡直前に、被相続人の財産管理をしていた人 ・入院していた場合には、その時期や病院名など ・介護費用や入院費用にいくらかかったか ・死亡直前に出金したお金があったら、その使い道 ・証券会社との取引状況 ・各相続人に対し、生前贈与を受けていないか |
税務調査の際には、上記のような質問内容に対し、ケースに応じて適切に対応する必要があります。
国税庁の「令和元事務年度における相続税の調査等の状況」の調査によれば、令和4年度の実地調査件数は、8,196件となっています。
また、実地調査1件当たり追徴税額は705万円となっています。
とくに海外資産関連事案に対する調査が年々増加傾向にあり、令和4事務年度においては、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数(174件)は過去最高となりました。
参照:国税庁「令和4事務年度における相続税の調査等の状況(令和5年12⽉)」
相続税の税務調査が行われるのは、相続発生から2年以内で、相続税の申告書を提出した年の秋、もしくは翌年の秋に行われるケースが最も多いと言われています。
ただし、複雑で事前準備が必要なケースの場合には、税務申告後2年以上が経過してから行われることもあります。
通常は税務署から事前に連絡があり「いついつに税務調査を行う」ことが通知され、日程調整を行ったうえで、調査日が決められます。
したがって、いきなり調査官がやってきて調査を開始したいと言われるケースは、ほとんどありません。
税務調査の当日は、午前10時頃に税務署の職員(国税調査官)が、自宅にやってきます。たいていは、税務署の職員と相続人の代表者、税理士の3者で行われます。そして税務署の職員が、さまざまな質問をしたり資料を調べたりして、その結果をメモにとりながら調査を進めていきます。
午後12時頃になったらいったん休憩を挟み、午後1時頃からまた調査を再開します。午後5時くらいには調査が終了することが通常です。
多くのケースでは1日で終わりますが、1日で足りない場合には翌日に持ち越される事案もあります。
相続税の税務調査では、さまざまなことを聞かれ、細かい点について確認されます。
手帳や日記、手紙などまでチェックされ、疑問点があれば指摘されます。
したがって、まずは早い段階で税理士に相談することが重要です。
そして、相続財産に漏れがないかチェックしておく必要があります。
税務調査が入るとき、税務署側は綿密に調査をしており、さまざまなことをすでに把握しています。
預貯金の履歴については、被相続人、相続人のものを含めて5年分くらいを遡り、不動産の売買や贈与の履歴についても法務局に照会して調べています。
また、調査官はさまざまな意図をもって質問をしてきますので、その質問の意図がどこにあるのかその都度考え、適切に回答しなければなりません。
上記で紹介したような質問にもそれぞれ「模範解答」があるわけではなく、状況に応じた対応が必要です。
不用意な回答をしてしまわないためにも、税理士に税務調査に立ち会ってもらい、適切に答えてもらうようにしましょう。
税務調査では、預貯金通帳や生命保険証書、車検証や不動産の全部事項証明書、固定資産評価証明書など、さまざまな財産に関する資料を要求されます。
現在のものだけではなく、過去の分の入出金の証明書や証券会社とのやり取りを示す資料も必要です。
また、贈与契約書や遺言書、遺産分割協議書などについて提示を求められることもあります。
必要な書類をしっかりと用意しておき、どんな質問についても、矛盾のないように説明できるようにしておけば、税務調査を恐れることはありません。
反対に、もしも準備ができていなければ、税務署の職員からの質問や指摘に対応できず、高額な追徴課税を受ける可能性が高くなってしまいます。
税理士に相談をすれば、何を集めるべきか、どのような質問をされるか、その時にどのように回答すればよいのか、などについて細かくアドバイスをもらえ、調査当日も立ち会ってもらうことができます。
相続税の税務調査は、相続税の申告を行なった人のうち、30%くらいの割合で行われています。税務調査の対象になると、一般の人が想定している以上に詳細な質問をされたり細かいチェックが入ったりするので、十分な注意が必要です。相続税の税務調査ではどのような質問をされることが多いのか、知識として持っておきましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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