労働生産性とは?計算式・同業他社との比較・改善方法

公開日:2019年12月19日
最終更新日:2024年04月28日

経営の資源は「ヒト、モノ、カネ」と言われますが、なかでも会社の土台を支えているといえるのが「ヒト」です。
労働生産性とは、従業員1人あたりの付加価値をあらわす指標で、どれだけの労働力を投入してどれだけの付加価値を上げたのかを示す指標です。

一般的にはこの数値が高ければ高いほど、労働生産性はよいということがいえます。

この記事では、労働生産性の意味や計算方法、業種別の目安、分析方法などについてご紹介します。
 

労働生産性の豆知識

労働生産性とは、財務分析の生産性分析のひとつで、従業員1人当たりの付加価値を表す指標です。
労働生産性の計算式は、以下のとおりです。
労働生産性 = 付加価値従業員数
付加価値とは、企業が原材料等の仕入を行い、生産し販売して新たに生み出した価値です。
計算方法は、控除法と積み上げ方があります。
労働生産性は高いほどよいと言えますが、業種ごとに差があります。
資本集約型の産業は労働生産性が高く、労働集約型の産業は労働生産性が低くなる傾向があります。
したがって、労働生産性を同業他社の数値と比較して低ければ、機械化で効率アップを図るなどして、人件費をコントロールする必要があります。
会社としては、給与水準をおさえ労働生産性をあげつつも、労働分配率を上げることが大切ですが、労働分配率を下げ過ぎてしまえば、優秀な人材の確保が難しくなり、かえって労働生産性が低くなる可能性もあります。
労働生産性について分析して対策を検討する場合には、優秀な人材を確保するための対策もあわせて検討する必要があります。

労働生産性とは

労働生産性とは、従業員1人当たりが生み出す付加価値の平均金額をあらわす指標です。どれだけの労働力を投入してどれだけの付加価値を上げたのかをしめします。

従業員が付加価値を生み出すために効率的な働き方をすれば、労働生産性は高くなります。

(1)そもそも「生産性」ってなに?

労働生産性について「従業員1人当たりが生み出す付加価値の平均金額をあらわす指標」とご説明しましたが、それではそもそも「生産性」とは何なのでしょうか。

会社は、ヒト・モノ・カネなどの経営資源を「事業の生産要素」として投入し事業を行っています。そしてその結果、会社の経営がうまくいっているかをはかるものさしの一つが、「そうして投入した経営資源が、どれだけ有効に利用されているか」というものです。
そして「どれだけ有効に利用されているか」を見るためには、投入された「ヒトなどの生産要素」によってどれだけの成果が上がったのかを測ればよいということになります。
そして、投入された量に対して成果が大きいほど、有効に利用されているといえることになります。このように投入資源と産出の比率がみるのが「生産性」の基本的な考え方です。

(2)「生産性」を測る「付加価値」ってなに?

付加価値とは、生産性を測るものさしとして大変重要です。
付加価値とは、その文字のとおり会社が外部から購入したモノやサービスに付け加えられた価値です。
売上高から外部業者に支払うべき費用を引いた金額であり、その会社が生み出した価値をいいます。
たとえば、100円の材料や燃料を外部から仕入れて製品に加工し、180円で売ったとします。この場合、差額の80円(180-100)の価値が付け加えられたことになりますので、付加価値は80円ということになります。

労働生産性の付加価値の最大の特徴は、従業員の人件費を費用ではなく利益の配分と捉える点にあります。付加価値は、給料として従業員に支払われたり配当として投資家に配分されたりします。

そして、従業員一人ひとりが生み出す付加価値の平均金額が労働生産性です。
従業員が、付加価値を生み出すために効率的な働き方をすればするほど、労働生産性は高くなります。

労働生産性の計算式・目安・分析

それでは、労働生産性の計算式や目安、分析方法の説明に入りましょう。

労働生産性は、これまでご紹介したように従業員1人当たりが生み出す付加価値の平均金額ですから、要するに「従業員一人あたりが、どのくらい付加価値を生み出しているか」を表しているので、以下の計算式で求められます。

労働生産性(円)=付加価値(円)÷従業員数(人)

労働生産性(円) = 付加価値(円)従業員数(人)

付加価値は、付加価値の総額だけでなくその総額を何人で達成したかも重視します。そこで、労働生産性の計算では付加価値の総額を従業員数で割るのです。そして、ヒトが稼ぐ力の効率の度合いを見ることができるわけです。

※付加価値の額を計算する方法は、控除法、加算法があります。

控除法(中小企業庁方式)

付加価値=売上高-外部購入価額

加算法(日銀方式)

付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益

(1)労働生産性を業種別に見てみよう

労働生産性は、一般的に高い方が「人の稼ぐ力が、効率が良い」ことを意味しますが、業種によっても差があります。以下は中小企業実態基本調査による業種別の労働生産性です。
同業他社の数値を参考にしてください(下表は付加価値を「加算法」で計算しています)。


引用:中小企業庁「中小企業の労働生産性」

同業他社の数値と比較するのが難しければ、自社の前期の労働生産性と比較してみるのもひとつの手です。もし前期より労働生産性が下がっている場合には、早めに原因を特定し対策を講じる必要があります。

(2)労働生産性が高い会社は「効率的な働き方をしている」会社

会社として稼いでいるかどうかは、売上高や利益で判定しますから付加価値から直接分かるものではありません。また、先ほどご紹介したように労働生産性は業種によっても差があります。
したがって、労働生産性は「人が稼いでいる会社」ではなく「人のエネルギーが効率よく発揮されている会社」というイメージを持っていた方がよいでしょう。

(3)労働生産性を改善するためには

労働生産性は高いほど生産性がよいといえますが、もし先ほどの業種別労働生産性の表で、同業他社の数値と比較して労働生産性が低ければ、人件費をコントロールする方法を検討する必要があります。
会社の安定的な発展のためには、労働力にばかり付加価値を分配することは避けるべきです。

たとえば、従業員の給料について年齢が上がることに昇給していると、従業員全員が毎年1つ年は上がることになりますから、人件費は増加します。
もちろん、退職したり新しい人が入社したりするので、給料だけが上がり続けることはありませんが、油断していると労働分配率はすぐにアップしてしまいますので、注意しましょう。
ただし、労働分配率を下げようと給料を下げ過ぎれば、優秀な人材の確保が難しくなり、かえって労働生産性が低くなる可能性もあります。
したがって、経営者と従業員が売上高などの情報を共有することで相互に理解し合い、バランスの良い対策を検討することが大切です。
アルバイトなどを活用して人件費をコントロールすることで、収益とコストのバランスをとることも有効です。

また、設備投資によって人件費の省力化ができる会社であれば、設備投資をすることで、1人当たりの付加価値額を高めることを検討しましょう。
人間が手作業で生産するより、機械を導入する方が効率良く、結果的に生産性が高まるなら、機械に作業をさせようということです。
ただし、設備投資し過ぎれば、それはそれで減価償却費用の負担も大きくなりますから利益面で必ず優れているとは言い切れません。
したがって、機械化で効率アップを図る場合にも、業種の特性を踏まえ慎重に検討すべきでしょう。

(4)労働生産性をさらに分析してみよう

労働生産性の中身をさらに分析してみると、1人当たりの売上値などを見ることもできます。

労働生産性は、付加価値を従業員数で割った値ですが、売上高を従業員数で割れば、1人あたりの売上高を算出することができます。

1人当たりの売上高=売上高÷従業員数

労働生産性が下がっているということは、1人当たりの売上高も下がっているか、売上高に対する付加価値の比率が下がっていることになります。
この数値を改善するためには、同じ売上高でもより付加価値の高い商品を多く売ることを目指して対策を講じる必要があります。

(5)労働生産性と労働分配率の関係を見てみよう

労働分配率とは、付加価値のうち給料などの人件費が占める割合を見る指標です。

労働分配率=人件費÷付加価値

会社は従業員のモチベーションや他社の人件費などを考慮して労働分配率を決定します。
労働分配率が低ければ従業員のモチベーションは下がり優秀な人材の確保が難しくなり、労働生産性が下がる可能性があります。
一方、労働分配率を上げ過ぎれば人件費が高くなってしまい、利益を圧迫してしまいます。

その結果、将来のための設備投資や研究開発費などが捻出できない会社となってしまいかねないのです。
この労働分配率は、一般的に50%以下に抑えるとよいとされていますので、労働分配率が高い場合には、1人あたりの人件費を下げるためにパートなどを活用し、人件費をコントロールすることを検討しましょう。

労働生産性のまとめ

以上、労働生産性の意味や計算方法、目安、分析方法、労働生産性を改善する方法などについてご紹介しました。
労働生産性は、1人あたりどれだけ付加価値を獲得できたかを見る指標です。そして労働分配率は、付加価値に占める人件費の割合です。この労働分配率は、高ければ高いほど、1人あたりの人件費が多いということになります。

この割合が他社と比較してよくない場合には、生産性があまりよくない会社ということになります。したがって、売上高に占める人件費の割合を減らすか、売上高に占める付加価値の割合を増やすことが必要となります。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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