従業員が退職した時に必要な書類・手続き

公開日:2019年12月26日
最終更新日:2022年07月16日

この記事のポイント

  • 従業員が退職した時には、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きが必要となる。
  • 退職者の退職理由や状況によって、手続きの内容が変わる。
  • 退職する人にとって一番よい手続きについて説明しながら手続きを進めることが必要。

 

退職は、その従業員から申し入れがあったり、何らかの退職理由があったりした時に成立します。退職に関する労使トラブルは数多く、なかには円満に退職したと思っていた元従業員から「不当解雇だ」と訴えられたり、退職者が再就職先でスムーズに手続きを行うことができなかったりするケースもあります。
トラブルを防ぎ、スムーズに手続きを進めるためにも、従業員が退職した時に必要な書類や手続きをしっかりチェックしておきましょう。

▶ 従業員の退職手続きについて相談する

従業員が退職した時の手続き

従業員が退職した時には、以下のように雇用保険や社会保険の資格喪失手続きなどさまざまな手続きが必要になります。
退職する従業員には、さまざまな退職理由がありますし個々の状況によって手続きが変わります。したがって、まずは退職者の退職理由や状況を明確にすることが大切です。
どのような退職理由かによって雇用保険の失業給付などに影響することがありますし、退職日をいつにするかによっても健康保険や失業給付に違いが出ます。
退職理由をしっかり確認して、退職する人にとって一番よい手続きを行うことが担当者の役目であり、労使トラブルを防ぐことにもつながります。

(1)従業員退職時の手続き一覧

従業員が退職した時には、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きが必要です。
それぞれの手続きは個々の退職者によって異なりますが、まずは、一般的な退職手続きの大まかな流れを知っておきましょう。

退職者から退職届を提出してもらう(退職理由を確認する)
  ↓
健康保険任意継続希望について確認する
  ↓
住民税徴収方法について確認する
  ↓
貸与品(社員証、事務用品、名刺など)を返却してもらう
  ↓
年金手帳を提出してもらう(会社が保管している場合は不要)
  ↓
退職証明書を交付する
  ↓
雇用保険の資格喪失手続き
  ↓
社会保険の資格喪失手続き
  ↓
退職者に離職票を交付する
  ↓
退職者に源泉徴収票を交付する
手続き名 内容 期限・備考
健康保険
厚生年金保険
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を年金事務所に提出
協会けんぽ:健康保険と厚生年金保険の喪失手続きは同時に行う
健康保険組合:厚生年金保険の喪失手続きは年金事務所、健康保険の喪失手続きは健康保険組合で行う

・健康保険被保険者証を年金事務所に返却する
・被扶養者がいる場合は被扶養者の資格喪失手続きも行い、被扶養者の健康保険被保険者証も年金に事務所に返却する

退職日の翌日から5日以内
(退職日の翌日起算)
雇用保険 ・雇用保険の資格喪失手続きをハローワークで行う
・離職票を発行する場合は、従業員のタイムカード、賃金台帳、退職届(写し)などの添付書類が必要
雇用保険の資格喪失手続きは退職日の翌々日から起算して10日以内だが、できるだけ早く失業給付の手続きに入れるようにするために、手続きは早急に行う
住民税の手続き ・特別徴収継続の場合:
退職する従業員を通じて転職先の会社へ書類を提出

・普通徴収切替の場合:
①6月1日から12月31日までに退職
住民税の残額を一括して退職月の給与から控除し、納付する方法(一括徴収)か、個人で納付する方法(普通徴収)にするかを退職者が選択可能。申し出がない場合は、普通徴収へ切替

②1月1日から5月31日までに退社する場合
本人申し出がなくても給与から一括徴収が可能

給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書を、退職した後すみやかに退職時の居住地の市町村に提出

前年中に転居している場合は転居前と後の二カ所に届出

前年の住所地の市町村:特別徴収に係る給与所得者異動届出書
当年の居住地の市町村:給与支払報告に係る給与所得者異動届出書

源泉徴収票の発行 退職者の当年1月1日から最終支払給与までの額で源泉徴収票を発行 退職後1ヶ月以内に交付

 

(2)従業員退職時は「退職届」を忘れない

退職理由は個々のケースによってさまざまです。
退職には広い意味で「解雇」も含まれるので、退職に関する労使トラブルを防ぐためにも退職届は必ず提出してもらいましょう。
退職届の宛名は、直属の上司ではなく会社代表者の名前を書いてもらい、退職者に退職日、氏名、退職理由などを記載・押印してもらいます。
この時、就業規則や誓約書の退職規定に従うこと、返却物などについて明記してもらうようにしましょう。

なお、「退職届」と「退職願」を同じ意味で使っているケースが多いですが、退職届と退職願は意味が違いますので注意が必要です。
「退職届」は、従業員が退職する意思を表明するもので、提出した後は原則として撤回することはできません。一方「退職願」は文字通り「退職したい」と願い出るものなので、会社が退職を承認するまでの間は、従業員は退職の意思を撤回することができます。

(3)退職時に渡すもの・返却してもらうものリスト

従業員に渡さなければならないものリスト
退職する従業員に渡さなければならない書類や、後日交付しなければならない書類は数多くあります。
退職者が失業給付の手続きに必要となる書類もありますし、再就職先の手続きに必要な書類もあります。「書類がなくて手続きができない」などのトラブルが起こらないように注意しましょう。

・離職票(退職後送付)
再就職先が決まっている場合や離職票を希望していない人には、不要な書類です。

・雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、退職後に失業給付を受給したり再就職先で雇用保険に加入したりする時に必要となります。
退職日に必ず渡すようにしましょう。

・年金手帳
年金手帳は、厚生年金保険の加入証明や失業中に国民年金の種別変更をする時に必要となります。会社が保管している場合には、退職者に返却します。

・源泉徴収票(退職ご送付)
退職者が再就職先で年末調整を受ける時や、退職して再就職せずに確定申告を行なう時に必要となります。

・健康保険被保険者資格喪失確認通知書(後日送付)
健康保険任意継続希望について確認し、退職者が退職後に国民健康保険へ切替えることを希望する際に必要となります。

・退職証明書、在籍期間証明書
退職する従業員から、発行を希望された場合には、退職証明書、在籍期間証明書を発行しましょう。

従業員が退職する際に返却してもらうものリスト
従業員が退職する際には、保険証や社員証、カードキー、名刺、身分証明書、貸与している携帯電話などを返却してもらう必要があります。
仕事を通じて受け取った名刺についても、返却してもらうのが原則です。自宅に持ち帰っていた機密書類や顧客データデータも、残さず返却してもらいましょう。
あらかじめ返却してもらうもののリストを作成して渡しておくと、トラブルを防ぐことができます。

・健康保険被保険者証
・身分証明書(社員証やカードキー・社章なども)
・名刺などの顧客データ
・通勤定期券
・社費で購入した文具や書籍
・貸与している携帯電話
・その他の書類やデータ

雇用保険の資格喪失手続き

従業員が退職したら、雇用保険の資格喪失手続きを行います。
必要書類を整えて、退職日の翌々日から起算して10日以内にハローワークで手続きを行います。

資格喪失手続きがされていないと、退職者が次の会社で雇用保険の資格を取得することができず、退職者にも次の会社にも迷惑がかかることになりますので、可能な限り早く手続きを行うよう心がけましょう。

(1)雇用保険の資格喪失に必要な書類

雇用保険の資格喪失手続きに必要な書類は、「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」などです。
これらの書類には、退職者の氏名や住所、退職理由などを記載する必要があります。
手続きに必要な書類は状況によって異なりますが、主に以下の書類が必要となります。

・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者離職証明書
・賃金台帳、出勤簿、タイムカード
・労働者名簿
・退職届

(2)退職理由は必ず確認

退職理由が解雇か退職かで、雇用保険の失業給付をもらえる期間や金額が変わりますので、退職理由は明確にしておきましょう。
たとえば、また、失業給付の受給期間は、90~360日の間で、雇用保険の被保険者だった期間および離職した理由によって異なります。

自己都合で退職した場合、求職の申込日以降7日の待期期間と2カ月の給付制限期間(5年間で2回まで)がありますが、会社都合で退職した人は給付制限期間がなく、失業が認定されると基本手当が支給されます。

(3)離職票発行のための手続き

離職票の発行については、まず事業主がハローワークに雇用保険の資格喪失手続きを行います。退職者が失業給付を受ける場合、喪失手続きと同時に離職証明書も提出します。

離職票は、雇用保険資格喪失手続きをすると、ハローワークから発行されます。
発行される離職票は「離職票1」と「離職票2」があります。この離職票が発行されたら、すぐに退職者に発行します。

事業主側の手続きはここまでとなり、この後の手続きは退職者自身が行います。退職者は、住所地管轄のハローワークで手続きを済ませ、受給資格が決定すれば、そこから1週間程度で雇用保険説明会が行われます。

その後、雇用保険受給資格者証が交付され、失業の認定、基本手当支給と進みます。

なお、退職日以前2年間において雇用保険の被保険者であった期間が通算して12カ月以上ある人は、退職後に一定の手続きを行うことで失業給付を受けることができますが、失業給付を受けるには、以下の要件が必要です。

・いつでも就職できる状態であること
・積極的に就職しようとする意思があること

そのため、病気やケガ、出産や育児などの何らかの事情によってすぐに就職することが難しい場合は、失業給付の対象外となりますので注意が必要です。

▶ 従業員の退職手続きについて相談する

社会保険の資格喪失手続き

従業員が退職したら、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の資格喪失手続きをします。手続き書類を準備したら、退職日の翌日から5日以内(退職日の翌日起算)に、年金事務所等で手続きをします。

(1)まずは健康保険証を返却してもらう

まずは、従業員と被扶養者の健康保険被保険者証を返却してもらう必要があります。
もし退職者から回収されていないなどの理由で退職者の健康保険証を年金事務所に提出できない場合には、これらの書類のほかに「健康保険被保険者証回収不能届・滅失届」も必要になります。

・健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失手続届
・退職者本人の健康保険証
・被扶養者がいる場合には、被扶養者の健康保険証
・健康保険証を添付できない場合は、健康保険被保険者証回収不能届・滅失届

(2)健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き

退職時の健康保険と厚生年金保険の喪失手続きでは、まず健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を、事業所を管轄している年金事務所に提出する必要があります。
協会けんぽに加入している事業所の場合は、健康保険と厚生年金保険の喪失手続きを同時に行なうことができますが、健康保険組合に加入している事業所は、厚生年金保険の喪失手続きを年金事務所で、健康保険の喪失手続きを健康保険組合で行います。
また、このとき従業員と被扶養者の健康保険被保険者証を返却する必要があります。
70歳以上75歳未満の場合は、加えて高齢受給者証の返却も必要なので、忘れずに回収しましょう。

▶ 従業員の退職手続きについて相談する

所得税・住民税の手続き

従業員の退職時に必要な税務関連の手続きは、住民税の手続きや源泉徴収票の交付やなどがあります。

(1)住民税の手続き

住民税は、前年所得に対するか税額を6月から翌年5月までの12回に分けて、毎月の給与から天引き(特別徴収)します。退職月が1月から5月までだと、原則普通徴収は選択することができなくなります。

6月1日から12月31日までに退職等をした場合
従業員(納税義務者)から一括徴収の申し出があったときは、退職時に支払いをする給与又は退職手当等から一括徴収(退職者等の未徴収税額の全部を最後の給与、退職手当等から差し引いて納入する方法)して、納付します。
なお、一括徴収とならないときは、従業員(納税義務者)が直接納付することになります。

翌年1月1日から4月30日までに退職等をした場合
地方税法第321条の5第2項により、特別徴収できなくなる税額は、本人の申し出がなくても、5月31日までの間に支払いをする給与又は退職手当等から一括徴収することになっています。(一括徴収すべき金額が退職手当等の金額を超える場合を除く)
※5月退職の場合も、最終月分として特別徴収により納付します。

前年中に転居している場合は、転居前と後の二カ所に届出が必要となりますので、注意が必要です。

前年の住所地の市町村:特別徴収に係る給与所得者異動届出書
当年の居住地の市町村:給与支払報告に係る給与所得者異動届出書

(2)源泉徴収票の発行

年の途中で退職した場合には、1年間の給与の合計が確定しないため年末調整ができませんので、退職者の年末調整は転職先の会社で行うことになります。

転職しない場合には翌年3月に従業員本人が確定申告をする必要があります。
そこで、退職者には、退職後1カ月以内に「給与所得の源泉徴収票」を交付する必要があります。なお、源泉徴収票は退職者だけでなく本人の住所地の市区町村に提出します。市区町村への提出は翌年1月末までです。
所得税は「源泉徴収票」に、給与や賞与の支払額や控除した社会保険料などとともに、退職月までに源泉徴収している所得税を記載します。

▶ 従業員の退職手続きについて相談する

従業員本人の退職後の手続き

退職者は、健康保険や年金の手続きを自分で行わなければなりません。
会社で行わなければならない手続きではありませんが、退職者がスムーズに手続きを行うことができるように、アドバイスできるようにしておきましょう。

(1)退職後の健康保険の手続き

退職後の健康保険手続きについては、退職者がすぐに再就職先が決まるか否かなどの事情によって異なります。

退職後すぐに次の会社で働き始めた場合
再就職先で健康保険に加入することになります。

退職後すぐに次の会社が決まらない場合
国民健康保険に加入するか、勤めていた会社の健康保険を継続することになりますので、退職者にどちらを選択するか確認しましょう。

・国民健康保険に加入する場合
国民健康保険に加入するためには、退職者が住所地の市役所や区役所で加入手続きを行う必要があります。退職後14日以内に手続きを行う必要があります。

・勤めていた会社の健康保険を継続する場合
勤めていた会社の健康保険を継続することを「任意継続」といい、退職後2年間にかぎり、健康保険を任意継続することができます。
勤めていた会社の健康保険を継続するためには、退職前に継続して2カ月以上勤めていて、かつ退職後20日以内に手続きをする必要があります。

(2)退職後の年金手続き

退職後の年金手続きについても、退職者がすぐに再就職先が決まるか否かなどの事情によって異なります。

退職後すぐに次の会社で働き始めた場合
再就職先で厚生年金保険に加入することになります。

退職後すぐに次の会社が決まらない場合・個人事業主となった場合
国民年金に加入します。
国民年金の手続きは、退職者の住所地の市役所や区役所です。

▶ 従業員の退職手続きについて相談する

まとめ

以上、従業員が退職した時に必要な書類や手続きについてご紹介しました。
従業員が退職する時の手続きは、退職者の退職理由な事情によって異なります。
個々の事情にそって、適切に事務処理を行なうようにしましょう。

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