働き方改革で「残業」はどう変わるか

公開日:2019年12月13日
最終更新日:2019年12月13日

目次

  1. 働き方改革の背景
    • ブラック企業への対策強化
    • 調査はより強化されている
  2. 働き方改革と残業時間
    • (1)残業の上限が定められた
    • (2)36協定届の新しい様式
  3. 働き方改革に対応するための労働時間の管理とは
    • (1)業務命令なら労働時間
    • (2)労働時間の原則は「週40時間」
    • (3)休日はできるだけ1週に1日
  4. 働き方改革で求められるその他の対応
    • (1)一定日数以上の年休取得
    • (2)フレックスタイム制の見直し
    • (3)高度プロフェッショナル制度の創設
    • (4)産業医・産業保健機能の強化
    • (5)同一労働同一賃金
  5. まとめ
    • 社会保険労務士をお探しの方

この記事のポイント

  • 働き方改革は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することを目的としている。
  • 働き方改革では、これまで「告示」として出されていた残業時間の「限度時間」が、法律として定められることになった。
  • 大企業への適用は2019年4月、中小企業への適用は2020年4月。

 

働き方改革法案は、平成30(2018年)年4月に通常国会に上程され、同6月に可決成立、同7月に交付されました。
この働き方改革法案では、労働基準法が改正され、時間外労働(残業)の上限が規制されることになりました。

大企業への適用は2019年4月ですが、中小企業への適用は1年猶予され2020年4月となっています。

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働き方改革の背景

働き方改革の背景には、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現したいという目的があります。
そのためには、長時間労働を是正して多様で柔軟な働き方を実現し、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が必要であるとし、そのための措置を講じるために、時間外労働の上限規制を全面的に見直しするなど、さまざまな施策を強化することになりました。

ブラック企業への対策強化

長時間労働を強いたり、残業代を支払わなかったり、有給休暇の取得を認めなかったりといった、主に若者を劣悪な環境で働かせる企業は「ブラック企業」と呼ばれています。政府は、このようなブラック企業をますます問題視しており、調査を強化しています。
そして、調査の結果違反があれば是正するように指導され、それでも改善されない会社は、送検されたり会社名を公表されたりすることがあります。

調査はより強化されている

前述したようなブラック企業とまではいえないような企業に対しても、労働基準監督署の調査はより強化されています。
労働基準監督署の調査は、以前指導された会社や定期監督によるものがほとんどですが、内部告発や労働基準監督署に対する相談から始まる場合もあります。
内部小告発は、セクハラやパワハラなどのハラスメント問題も多いですが、退職時のトラブルや残業代の不払い、長時間労働に関する相談も増えていて、本人からだけでなくその家族から申告されるケースもあります。

このような内部告発や相談があると、労働基準監督署から呼び出しを受けることがありますし、監督署の職員が突然会社にやってくることもあります。

平成30年8月に厚生労働省が発表した「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」によれば、監督指導の実施事業場は25,676事業場であり、そのうち18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反があったとしています。

そしてこれらの違反のうち、「違法な時間外労働があったもの」は、11,592事業場(45.1%)、「賃金不払残業があったもの」は1,868事業場(7.3%)、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」2,773事業場(10.8%)であったとされています。
また、「労働時間の把握が不適正なため指導したもの」も4,499事業場(17.5%)あったとしています。

引用:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します」

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働き方改革と残業時間

働き方改革では、これまで「告示」として出されていた残業時間の「限度時間」が、法律として定められることになりました。
今回の改正によって、上限が告示ではなく法律で定められることになり、違反した場合には罰則も適用されます。
また、中小企業に猶予されてきた月あたり残業時間60時間超の割増率についても、猶予がなくなり、大企業と同じ5割増しの賃金を支払う必要があります。

上記以外にも大きな法改正がたくさんありますが、ここではまず残業時間の関する改正についてご紹介します。

(1)残業の上限が定められた

働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制を全面的に見直されることになりました。
従来は、過重な時間外労働が発生しないように厚生労働大臣が「時間外限度基準」を定めていましたが、この「告示」には、これまで強制力がありませんでしたが、今回の改正では、法律の本則とすることで規制が強化されます。

改正法が施行された後は、時間外の上限を協定すべき期間は、①1日 ②1カ月 ③1年の3種類となり、このうち1カ月については、45時間、1年については360時間の上限が規定されることになりました。
つまり、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。

また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下については守らなければなりません。

時間外労働が年720時間以内
時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

この上限規制の施行は平成31年(2019年)4月1日ですが、中小企業に対しては1年間猶予され令和2年(2020年)4月1日から導入されることになります。

参照:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

(2)36協定届の新しい様式

従業員に「残業」や「休日出勤」をしてもらいたい時には、36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署へと提出しなければなりません。

この36協定に定める事項についても、協定事項を整理・追加し、法律の本則に列挙しました。

そして、この36協定は、限度時間の範囲内で協定をする必要があり、この協定書を作成せずに法定労働時間を超えて労働させた場合には、罰せられることになります。
災害など避けられることができない理由がある場合には、特例として36協定なしで時間外労働や休日労働をさせることができますが、この特例を受けるためには、あらかじめ(または事後に遅滞なく)労働基準監督署の許可を受ける必要があります。

時間外労働又は休日労働を行わせる必要がある場合には、以下の事項について協定した上で、36協定届(様式第9号)を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

・労働時間を延長し、または休日に労働させることができる場合
・労働時間を延長し、または休日に労働させることができる労働者の範囲
・対象期間(1年間に限る)
・1年の起算日
・有効期間対象期間における1日1か月1年について、労働時間を延長して労働させることができる時間または労働させることができる休日
・時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満2~6か月平均80時間以内を満たすこと

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働き方改革に対応するための労働時間の管理とは

これまでご紹介したように、働き方改革では、労働時間の管理が強化されることになりました。労働条件をきちんと明示しなければ30万円以下の罰金が科されますし、強制労働をすれば1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科されます。また、従業員が勝手にした違反でも会社が罰を受けることがあります。
したがって、これまで以上に適切に労働時間を管理することが求められます。

(1)業務命令なら労働時間

まず、労働時間には以下の2つのポイントがあります。

①会社の指揮・命令を受けていること
②労務の提供をしていること

したがって、1日の労働時間は、通常「事業主の指揮・命令のもとでの拘束時間(始業から終業まで)」から休憩時間をひいて求めることになります。

この休憩時間には、店員がお客様を待っている時間や後片付けの時間は入りません。
このようないわゆる「手待ち時間」は労働時間に該当します。また、健康診断や研修時間も労働勘です。

ただし、従業員が勝手に早く出社しているだけという場合には、原則として労働時間にはあたらないとされています。

(2)労働時間の原則は「週40時間」

労働時間の原則は、一般の事業場の場合「1日の労働時間は8時間以内、かつ1週の労働時間は40時間以内」です。

ただし、特例として小売業や卸売業、演劇、飲食店などの特例事業場に該当する場合には、「1日の労働時間は8時間以内、かつ1週の労働時間は44時間以内」とされています。したがって、この原則は遵守するように注意し、36協定の限度額を超えそうな時には、再度検討を行うようにしましょう。

なお、あわせて「勤務間インターバル」の導入も検討しましょう。
「勤務間インターバル」とは、今回の改正で努力義務とされた制度で、勤務終了後一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
この「勤務間インターバル制度」を導入することで、一定期間の休息時間が採れるようになれば、健康やワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることができると考えられています。

(3)休日はできるだけ1週に1日

休日は、毎週1日以上、それが難しければ4週で4日以上与えなければならないと定められています。4週で4日の場合には、就業規則などで4週の起算日を明らかにする必要があります。
しかし、求職者が会社を選ぶ時には、休日を重視する傾向がありますので、休日はできるだけ1週に1日、できれば完全週休2日制の方が、応募者も増えて有利になります。

なお、休日については、「振替休日」と「代休」の取扱について混同しているケースがあります。振替休日とは、事前に休日の変更を指定するもので、代休とは、事後に休日を指定するものです。

振替休日の場合には、給料に返納はなく、休日に労働させる場合であっても事前に別の日を休日にすれば、通常の給料を支払えば済みます。
しかし、代休の場合には、割増賃金を支払う必要があります。

「法定休日と所定休日の違いとは?休日と休暇はどう違う?」を読む

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働き方改革で求められるその他の対応

働き方改革関連法では、これまでご紹介した残業に関する規定以外にも、さまざまな改正がされました。
ここでは、そのなかから主なものについてご紹介します。

(1)一定日数以上の年休取得

年休は、過去1年間(最初は6カ月)の出勤率8割以上という要件を満たす労働者を対象として、一定日数が付与されます。
しかし、年休を取得する権利が付与されてもほとんど取得していない労働者もいます。
そこで、今回の改正では、使用者(会社など)が取得の時季を指定することとされました。
具体的には、以下の内容となっています。

①対象者は、年休の付与日数が10日以上である労働者
②使用者は、上記労働者に対して年5日の年休について時期指定をしなければならない
③ただし、労働者の時季指定、計画付与によって年休の時季が指定された時は、その日数の合計を5日から差し引いた日数を時季指定とする
④上記の①②によって指定された日数が5日以上に達した時には、使用者は時季指定の義務から開放される。

(2)フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制とは、始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる仕組みです。

フレックスタイム制については、清算期間を通じて週平均40時間を超える時間が時間外労働となりますが、この清算期間が、改正前は最長1カ月だったのが、改正後は3カ月に延長すると同時に割増賃金の支払い方法が整備されました。
また、導入する場合には過半数労働組合(ない時には過半数代表者)と労使協定を締結する必要があります。

清算期間が1カ月以内なら労働基準監督署への届出は不要ですが、1カ月超3カ月以内であれば、届出が必要となります。

(3)高度プロフェッショナル制度の創設

労働基準法では、裁量労働制の従業者や管理監督者などについては、時間外・休日の規定に関して一部を適用除外とする規定となっています。
しかし、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため、時間外・休日や深夜も含め、割増賃金の支払いの義務を除外した「労働時間制度の新たな選択肢」として、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)が創設されました。

具体的な対象業務は、以下のとおりです。

①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発の業務をいいます。

②資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
金融知識等を活用した自らの投資判断に基づく資産運用の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務をいいます。

③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務をいいます。

④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
企業の事業運営についての調査又は分析を行い、企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案等を提案し、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務をいいます。

⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
新たな技術の研究開発、新たな技術を導入して行う管理方法の構築、新素材や新型モデル・サービスの研究開発等の業務をいい、専門的、科学的な知識、技術を有する者によって、新たな知見を得ること又は技術的改善を通じて新たな価値を生み出すことを目的として行われるものをいいます

参照:厚生労働「高度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」

(4)産業医・産業保健機能の強化

長時間労働発生時の医師面談制度の強化および労働時間把握義務が強化されました。
産業医の活動環境、産業医への情報提供等に関する規定を整備することで、労働者の健康確保対策の強化をはかることを目的としています。

産業医は、法定要件を備えた医師等のなかから選任しますが、今回の改正では「必要な医学知識に基づき誠実に職務を行う義務」が本則に明記され、従業員規模50人以上の事業場では、産業医を選任しなければならないとされました。

(5)同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金」とは、いわゆる正規雇用労働者とパートや派遣との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
仕事の内容や責任、配置転換などが同じであれば、同じ待遇が求められるようになります。これからは、待遇を決めるうえでは、これらの法律を理解したうえで対応策を検討しておかないと、従業員とトラブルに発展する可能性が高くなります。

参照:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

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まとめ

これまでご紹介したように、働き方改革関連法案では、大きな法改正が数多くあり、会社を経営する人、従業員を雇用する人、人事担当者がこれらの改正内容を理解し、導入される内容やスケジュールについて細かく検討する必要があります。

会社名を公表され、ひとたびブラック企業というイメージがついてしまうと企業イメージは大幅に低下し、その損害は計り知れません。新しく従業員を雇用することも難しくなりますし、会社の経営そのものに大きな影響を与えることもあります。
今後は、しっかりと法律を理解し必要な対策を行わないと、さまざまなトラブルに発展する可能性もあります。

法律を正しく理解し、問題がある場合には早期の改善を行いましょう。

なお、働き方改革関連法の詳しい内容や、「労働基準監督署への対処が分からない」「残業代の計算方法が本当に正しいのか不安」「トラブルに発展しないよう、賃金システムを見直したい」など、現在のシステムを根幹から見直したい場合には、早めに社会保険労務士に相談して、導入する内容やスケジュールについて検討するようにしましょう。

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