解雇のルール|トラブルを防ぐポイントと必要な手続き

公開日:2019年11月22日
最終更新日:2022年07月16日

この記事のポイント

  • 解雇は、大きく分けて普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇の4つの種類がある。
  • 一定の場合には、解雇が禁止されている。
  • 権利の濫用に当たる解雇は、労働契約法の規定により、無効となる。

 

解雇とは、会社が労働者との労働契約を一方的に解約する行為で、大きく分けて、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇の4つの種類があります。

会社は労働者を自由に解雇することができず、解雇する場合には厳しい制限があります。合理的な理由のない解雇は、解雇権の濫用として無効となります。

ここでは、解雇の種類や解雇のルールについてご紹介します。

解雇とは

解雇とは、労働契約を将来にわたって解約するという使用者(会社など)の意思表示をすることをいいます。

民法では、期間の定めのない契約(いわゆる正社員)の場合、会社と労働者は、いつでも解約の申し入れをすることができるとしていて、解約を申し入れた日から2週間経過すると、雇用は終了するとされています(民法627条1項)。

民法第627条

1. 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2. 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3. 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。

しかし、だからと言って2週間前に通知すれば簡単に解雇できるとなってしまうと、労働者の生活が安定しません。

そこで、解雇を行う場合には法律によって一定のルールに基づいた手続きが必要であり、また解雇が禁止される期間が定められています。
解雇は、大きく普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇の4つの種類に分類されますが、それぞれの種類によってルールや要件、手続きは異なります。

(1)普通解雇

普通解雇とは、労働者側に債務不履行がある場合にそれを理由として将来的に労働契約を解消する行為です。

普通解雇でいう「債務不履行」には、能力不足であるとか遅刻や欠勤が多い、協調性がないなどの理由が当てはまるケースです。ただし、たった1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはありません。
解雇が認められるか否かは、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性など、さまざまな事情が考慮されます。また、法律により解雇が制限される場合もあります。

①正当な解雇理由があること
権利の濫用に当たる解雇は、労働契約法の規定により、無効となります。

②法律により解雇が禁止されていないこと
業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇や、産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇、国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇、ハラスメントの相談を行ったことを理由とする解雇、公益通報を行ったことを理由とする解雇など、法律で解雇が禁止されている場合があります。

③原則として30日前に解雇予告するか、または30日分の解雇予告手当の支払いをすること
労働者を解雇するときは、原則として少なくとも30日前に予告するか、または平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です(労基法第20条第1項)。

④従業員に普通解雇を通知すること
口頭で解雇を行った場合も法的効力は生じますが、口頭による通知は、後々「言った、言わない」のトラブルが発生しやすいことから、正式な書面を用意する、送信済みのメールを保管するなど、証拠が残るようにしておきましょう。

(2)整理解雇

整理解雇とは、会社が経営上の必要性に迫られて、人員削減したり、天災事変などの理由によって解雇したりするものです。

整理解雇は、他の解雇と異なり会社側の事情による解雇なので、整理解雇をする場合には、以下の4つの要件を満たすことが必要とされています。

① 人員削減の必要性
人員削減を実施する際に、不況、経営上の必要性が強く求められていることが必要で、単に業績悪化という程度の理由では不十分です。
人員削減をしなければ、会社の存続自体が危ぶまれるほどの差し迫った状況であることが必要です。

② 解雇回避努力
賃金カットや経費削減など、解雇以外の手段で出来る限り解雇を回避するために努力したことが求められます。

③ 被解雇者選定の合理性
被解雇者を選定する際には、客観的で合理的な基準を設定することが必要です。そして、その基準に従って公正に適用して選定することが必要です。

④ 手続きの妥当性
就業規則等に解雇の手続きが規定されている場合には、その手続きに従って行う必要があります。また、労働者と誠意を持って協議し、労働者の納得を得るよう努力をすることも求められます。

(3)懲戒解雇

懲戒解雇とは、労働者の業務命令違反、秩序保持義務違反、不正行為、企業利益侵害行為などの理由で解雇するものです。
懲戒解雇は、「罰」という意味合いの解雇なので、退職金が減額または支給されない会社がほとんどですし、解雇予告手当が支払われないケースもあります。

だからこそ、懲戒解雇するためには、あらかじめ就業規則の規定や懲戒手続きなどの体制を整備しておくことが必要です。

① 労働者の合意
懲戒とされるほどの行為が労働者側にあり、労働者がそのことについて同意していることが必要です。

② 就業規則の規定
懲戒の事由や、懲戒の内容などについて、就業規則に記載されていることが必要です。

③ 懲戒手続き
労働者に弁明の機会が与えられることが必要です。

(4)論旨解雇(論旨退職)

論旨解雇(論旨退職)とは、懲戒解雇を若干緩和した解雇処分をいいます。
懲戒解雇は、退職金も解雇予告手当も支払われないケースが多いのに対して、論旨解雇(論旨退職)は、退職願の提出などを促し、それに応じない場合に懲戒解雇とされるので、いわば会社側の温情処分といえます。

解雇のルール

労働者を解雇するためには、合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
解雇に関する法律は労働契約法に規定があり、解雇手続きは労働基準法に規定がありますが、具体的にどのような場合に解雇できるのかという法律はありません。
なぜなら、解雇にはさまざまなケースが考えられるため、具体的に規定するのは不可能だからです。

ただし、労働契約法16条では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」として、解雇の権利濫用は無効と規定しています。
したがって、解雇事由は適用がかなり限定的に解釈されるものであるという点に注意が必要です。

(1)法律で禁止されている解雇

法律で禁止されている解雇は、認められません。
法律で禁止されている解雇としては、主に以下のような解雇があります。

①業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇 労働基準法第19条
②産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇 労働基準法第19条
③国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇 労働基準法第3条
④労働組合の組合員であること等を理由とする解雇 労働組合法第7条
⑤女性(男性)であること、女性の婚姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇 男女雇用機会均等法第6条、第9条
⑥通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者
について、パートタイム・有期雇用労働者であることを
理由とする解雇
パートタイム・有期雇用労働法第9条
⑦障害者であることを理由とする解雇 障害者雇用促進法第35条
(平成27年厚生労働省告示第116号)
⑧労働基準監督署等に申告したことを理由とする解雇 労働基準法第104条
じん肺法第43条の2
賃確法第14条
⑨育児・介護休業等の申出等をしたこと、育児・介護休業等を取得したことを理由とする解雇 育児・介護休業法
第10条、第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2
⑩育児休業等に関するハラスメントの相談を行ったことを理由とする解雇 育児・介護休業法第25条
⑪セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とする解雇 男女雇用機会均等法第11条、第11条の3
⑫パワーハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とする解雇 労働施策総合推進法第30条の2
⑬男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法、育児・介護休業法に基づく紛争解決援助を求めたことを理由とする解雇 男女雇用機会均等法第17条、第18条
労働施策総合推進法
第30条の5、第30条の6
パートタイム・有期雇用労働法
第24条、第25条
育児・介護休業法
第52条の4、第52条の5
⑭個別労働紛争解決促進法に基づく紛争解決援助を求めたこと、あっせん申請をしたことを理由とする解雇 個別労働紛争解決促進法第4条、第5条
⑮公益通報をしたことを理由とする解雇 公益通報者保護法第3条

参照:厚生労働省「適切な労務管理のポイント」

(2)就業規則には解雇事由を定める

就業規則には「解雇の事由」を定めておくことが必要です。
退職に関することは、労働条件の重要な事項です。したがって、就業規則には「解雇の事由」を定めておくことが必要です。さらに、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所に掲示又は備え付けること、書面を交付すること等により、労働者に周知する必要があります。
厚生労働省のモデル就業規則内においては、解雇について以下のような規定例を示しています。

(解雇)
第51条
労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
② 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
③ 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
④ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
⑤ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
⑥ 第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
⑦ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。

3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第65条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
①  日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
②  2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
③  試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

参照:厚生労働省「モデル就業規則 (令和3年4月)」

(3)解雇には厳格な判断基準が求められる

就業規則に解雇の関する規程を設けたとしても、実際には解雇には厳格な基準が求められます。
普通解雇をする際に必要な「客観的に合理的な理由」とは、就業規則の解雇事由に該当するか、判断していくことになります。
たとえば、就業規則に「勤務成績または勤務態度が不良であって、改善の見込みがない時」という規定に該当する労働者がいた場合でも、以下の内容を具体的に確認する必要があります。

・適切な教育・訓練・指導があったか
・勤務成績・勤務態度が不良であるという証拠はあるか
・回数・頻度はどうか

なお、上記の内容に該当していたとしても、その内容が社会通念に照らして妥当かどうかは別問題です。
解雇が妥当であると認められるためには、「能力不足を改善すべき再教育を行ったか」「配置転換などの解雇回避の努力義務は行ったか」「能力不足である、勤務態度が悪いという証拠はあるのか」などについて、慎重に判断する必要があります。

(4)解雇予告・解雇予告手当

解雇手続きは、30日前に予告するか30日分の平均賃金を支払う必要があります。
ただし、天変地異や労働者の責任である場合は、認定を受ければ解雇手続きなしで解雇することができます。
また、臨時的雇用者(日々雇用される者など)には、原則として解雇手続きは不要です。

解雇予告
解雇予告とは会社が労働者を解雇する際には、30日以上前から解雇の予告をする必要があるという規定です(ただし、懲戒解雇の場合には「即時解雇」もあります)。
労働基準法第20条では、会社が労働者を解雇しようとする場合には、30日以上前にその予告をしなければならないとされています。
そして、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定しています。
なお、解雇予告は口頭で行うこともできますが、後日トラブルになった場合にその証明が難しくなるので、原則として文書で行います。
そして、その予告を行ったことで法律関係が確定し、労働者が合意しない限り使用者が一方的に予告を取り消したり、予告した解雇日を変更したりすることができなくなります。
解雇予告手当
30日以上前に予告をしない場合は、予告に代えて30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です。30日分以上の手当を支払えば、予告期間をおかずに解雇することができます。
この解雇予告手当は、解雇の申し渡しと同時に支払う必要があり、この手当を支払わない限りは解雇の効力は生じません。

また、解雇手続きは20日分の解雇予告手当を支給して10日前までに解雇予告をするというように、相当日数分の解雇予告手当を支払えば、その日数分だけ解雇予告期間を短縮することができます。

たとえば10月1日に解雇を通告され、10月19日以降は会社に出勤しないように通告された場合には、18日後に解雇されたことになるため、会社は労働者に「30日-18日=12日」の12日分の解雇予告手当を支払えばよいということになります。

解雇手続きの例外
天変地異その他やむを得ない事由のために、事業の継続が不可能となった場合や労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合などは、解雇予告なく解雇することができます。
この例外的な措置の適用を受けるためには、労働基準監督署長に「解雇予告除外認定申請書」を提出して認定を受ける必要があります。
参照:厚生労働省「解雇予告除外認定申請について」

(5)退職時の証明が必要なとき

労働者から請求があった場合には、①使用期間、②業務の種類、③その事業における地位、④賃金、⑤退職の事由(解雇の場合は、その理由を含む。)といった解雇の理由等について、遅滞なく証明書を交付する必要があります。
また、労働者に解雇の予告をした場合に、労働者が解雇の理由について証明書を請求したときには、遅滞なく証明書を交付する必要があります。なお、この時交付する証明書には、労働者が請求しない(希望しない)事項を記入してはならないとされています。また、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときについても、遅滞なく証明書を交付しなければなりません。

まとめ

以上、解雇の種類や必要な手続き、解雇する際の判断基準などについてご紹介しました。解雇については、厳格に法律で規定されていて、解雇が禁止されているケースもありますし、解雇するためには解雇予告や解雇予告手当が必要です。

これらの手続きを行わなかったり、正当な解雇事由であると認められなかったりする場合には、解雇そのものが無効となりますし、労働者側から損害賠償請求をされることもあります。
解雇の要件については、社会保険労務士などに相談して就業規則に明確に規定をし、解雇のルールについてしっかり理解しておく必要があります。

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