残業代の計算|時間単価、実労働時間、割増率の計算方法

公開日:2019年04月04日
最終更新日:2019年07月08日

目次

  1. 残業代とは
    • そもそも労働時間とは
    • 残業をさせるためには36協定が必要
    • 時間外・休日・深夜労働の割増率
    • 時間外労働が45時間、60時間を超えた時の割増率
    • 時間外労働が制限される時の割増率
  2. 残業代の計算
    • 時間単価を算出する
    • 実労働時間を確定させる
    • 割増率を把握する
  3. 残業代を計算してみよう
    • 月40時間の残業をしたAさんのケース
    • 月65時間の残業をしたBさんのケース
  4. まとめ

この記事のポイント

  • 「残業代」は正式には「時間外労働手当」という。
  • 時間外・休日・深夜労働の割増率は法律で決められている。
  • 1か月に60時間を超えて時間外労働をさせると1.5倍の割増賃金の支払いが必要となる。

 

労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。
また休日も原則として、週に1回あるいは4週を通じて4日を確保しなければならないと定められています。
会社が労働者にこの規定を超えて労働をさせた場合には、割増賃金の支払い義務があるとされています。

残業代の支払いを怠ると、労基署によって指導を受けたり罰則が適用されたりすることもあるため注意が必要です。また近い将来、法改正によって、中小企業にも1か月の時間外労働時間が60時間を超えると1.5倍の割増賃金率が適用されるようになります。
人事や給与計算の担当は、正しい残業代計算方法を理解しておきましょう。

残業代とは

実は「残業代」は法律用語ではなく、正式には「時間外労働手当」といいます。
労働基準法37条では、法定労働時間を超えて労働させた場合の時間外労働、休日労働および深夜労働については、割増賃金の支払いが必要と規定されています。
割増率は、時間外労働で1カ月60時間までが1.25倍、60時間超が1.5倍(一部の中小企業については適用猶予)休日労働については1.35倍、深夜労働は、1.25倍と規定されています。

そもそも労働時間とは

残業代について理解するためには、まずそもそも「労働時間」についての基礎知識が必要です。
労働時間とは、労働者が働く時間のことですが、会社が労働者を雇用した場合に会社は労働者を何時間でも働かせてよいというものではありません。
働かせても良い「労働時間」は、雇用者と労働者が締結する「労働契約」と「法律(労働基準法)」によって規制されています。

まず、労働契約では「所定労働時間」を規定する必要があります。
所定労働時間とは、契約によって予定される労働者の労働時間です。
所定労働時間は、「1日6.5時間」や「1日7時間」など、自由に定めることができます。たとえば「1日7時間労働で月給30万円」という条件で労働契約を締結したのなら、その労働者の所定労働時間は1日7時間ということになります。
そして、所定労働時間を超えて労働した場合でも労働法の基準内の労働の場合には、「法内残業」となります。

所定労働時間を超えて働かせる場合でも法定労働時間を超えていなければ、36協定を締結する必要はありませんし、法的には割増賃金を支払う必要もありません。
ただし、就業規則で割増率が規定されている場合は、その規定に従います。また、就業規則で割増率の規定がない場合でも100%の時間賃金(割増でない賃金)を支払う義務は有することになります。

次に「労働基準法」により「法定労働時間」が規定されています。
法定労働時間は、労働基準法が定める上限を定めた労働時間です。基本的には「1日8時間、1週間で40時間」となっています。このような、法定労働時間を超える残業のことを「法定時間外労働」「法外残業」あるいは単に「時間外労働」といいます。

そして、この限度を超えて働かせる場合には「36協定」という特別な労働協定を締結する必要があり、なおかつ「割増賃金」を支払わねばなりません。

このように、所定労働時間を超えて法定労働時間内に収まっている残業のことを「法内残業」と言います。

以上のように、一口に「残業代」と言っても、「法内残業」と「法定労働時間外労働」の2種類があり、法律的には取扱いが大きく異なるので、まずは理解しておきましょう。

残業をさせるためには36協定が必要

労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、1週間に40時間)の法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には36協定の締結が必要と定めています(労働基準法36条)。
36協定とは、雇用者と労働者の過半数が加入する労働組合または過半数を代表する労働者が話合い、法定時間外労働をさせる仕事内容や労働者の種類、人数などを詳細に取り決めるための労働協定です。

雇用者は、労働者に時間外労働や休日労働をさせるとき、必ず「36協定」を締結し、労働基準監督署へ提出しなければなりません。また36協定を締結しても1カ月の残業時間は45時間までとされており、臨時的に特別な事情があり、この45時間を超えて時間外労働を行う必要がある場合には、さらに特別条項の設定が必要です。

このような限度時間を超える時間外労働については、労働基準法の改正により以下のように改正されています。働き方改革関連法案では、2019年から中小企業にも適用される予定です。

(1)特別条項付きの時間外労働規程では、月45時間を超える時間外労働に対する割増率も定めること
(2)上記1の割増率は、法定割増率(25%)を超える率とするよう努めること
(3)月45時間を超える時間外労働を出来る限り短くするよう努めること

なお、36協定は事業所単位で把握されるので、支店や営業所がある場合には、すべての就業場所で36協定が必要です。
36協定の締結・提出を怠ると労働基準法違反となり、労働基準監督署による立入調査や行政処分を受けたり刑事的な処罰を適用されたりするおそれがあります。
また、36協定を締結すると、「残業をもさせても良い」状態になるだけで「残業代を払わなくて良い」ことになったわけではありません。残業代は36協定がなくても、支払う必要があります(小島撚糸事件 最判昭和35年7月14日)。
36協定を締結して労基署に提出しても、割増賃金の支払いをしないと労働基準法違反となって罰則が適用されるので、注意が必要です。

36協定については、あわせて「36(サブロク)協定とは|36協定を締結すべきケースと記載すべき内容」もご覧ください。

時間外・休日・深夜労働の割増率

労働者に時間外労働をさせるときには、必ず「割増賃金」の支払いが必要です。
割増賃金とは、通常の時給よりも割合的に増額された賃金のことです。
時間外労働や休日労働は労働者にとって負担が大きいので、通常業務よりも多めに賃金を支払わねばならないのです。
割増賃金率は、法律によって定められています。
基本的に、1日8時間、1週間に40時間の「法定労働時間」を超えた場合の基本的な賃金の割増率は、25%です。

時間外労働、休日労働、深夜労働の割増率は以下の通り規定されています。

時間外労働の割増率
月60時間まで…25%(45%を超える場合には努力義務あり)※後述
月60時間を超える時…50%
(中小企業については2019年年4月1日から適用)
休日労働の割増し率…35%
深夜労働(午後10時~午前5時)の割増率…25%

例えば、時間外労働(1か月60時間以下)でかつ深夜労働の場合には、25%+25%=50%増しとなります。
休日に時間外労働を行った場合には、35%+25%=60%増しの割増賃金が適用されます。

時間外労働が45時間、60時間を超えた時の割増率

労働基準法の改正により、1カ月の時間外労働が45時間を超える場合には、25%を上回る割増賃金を支払うことが「努力義務」とされることになりました。
さらに、1カ月の時間外労働が60時間を超える場合には、賃金の割増し率が50%となります。
2019年3月までは中小企業にはこの規定の適用が猶予されており、1カ月の時間外労働時間が60時間を超えても25%の割増賃金を支払えばよいこととされていますが、2019年4月1日からは中小企業にも適用が拡大されます。つまり、2019年4月1日以降は、1か月に60時間を超えて時間外労働をさせると1.5倍の割増賃金の支払いが必要になって、中小企業の負担が増すので、今のうちから残業規制などの対策をしておくことが推奨されます。

参照:厚生労働省「「労働基準法等の一部を改正する法律案」について」

参照:厚生労働省「今後の労働時間法制等の在り方について」

時間外労働が制限される時の割増率

36協定を締結して届出をすれば、誰に対しても、時間外労働や休日労働を命じることができるかというとそういうわけでもありません。
危険有害業務につく人や妊娠中の女性、年少者、介護・育児をする必要のある労働者などについては、時間外労働が制限されます。

(1)年少者
年少者とは、18歳未満の労働者のことです。年少者については、たとえ36協定を締結しても、原則として時間外労働・休日労働をすることはできません。

(2)妊産婦
妊産婦とは、妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性のことをいいます。妊産婦が請求した場合は、会社は時間外労働、休日労働をさせることはできません。ただし、妊産婦が管理監督者である場合には、時間外・休日労働が可能となることもあります。

(3)育児・介護を行うもの
育児・介護休業法では、育児や家族の介護の必要がある労働者が請求した場合には、36協定で締結した制限時間にかかわらず、使用者は労働者に対して時間外労働を1カ月24時間、1年に150時間までしかさせることができません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、労働させることが可能となることもあります。

※育児・介護を行う労働者とは

①小学校就学の始期に達するまでの子を養育している労働者
②ケガ、病気または身体上精神上の障害によって、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある「配偶者、父母、子、配偶者の父母」あるいは「その労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫」のいずれかを介護する労働者

残業代の計算

就業規則と労働基準法などから、時間外労働(残業)が発生している場合には、残業代を計算し支払う必要があります。
残業代を算出するためには、まず時間単価を算出し、残業した時間を掛け、割増率を掛けて計算する必要があります。

残業代=時間単価×残業した時間×割増率

以下では、具体的な残業代の計算方法をご説明します。

時間単価を算出する

残業代を計算するためには、まずは「(賃金の)時間単価」を計算しなければなりません。
月給制の場合には、以下のように月給を1カ月あたりの所定労働時間で割り算して求めます。

賃金の時間単価=月給(円)÷1カ月の平均所定労働時間

例えば、月給30万円で、1か月の平均所定労働時間が160時間の労働者の場合、1時間当たりの賃金は、30万円÷160時間=1,875円となります。

時間単価を計算するとき、小数点以下の端数が発生した場合には、四捨五入します。

参照:東京労働局「残業手当等の端数処理はどうしたらよいか」

なお、この時「月給」には、家族手当・扶養手当、通勤手当、単身赴任手当、住宅手当などのような手当を含めずに計算します。

1カ月当たりの平均所定労働時間がわからない場合には、次の計算式で求めます。

(365日-年間所定休日数)×1日あたりの所定労働時間÷12

うるう年の場合、366日で計算します。

実労働時間を確定させる

残業時間を計算するためには、実際に時間外労働や休日労働をした時間を確定する必要があります。
残業時間は、実労働時間(賃金の支払い対象となる労働時間)から所定労働時間を差し引いて求めます。

残業した時間=実労働時間―所定労働時間

したがって、残業した時間を算出するためには、まず実労働時間を確定する必要があります。

判例では、実労働時間について「労基法の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」と定義しています(三菱重工業長崎造船書事件 最判平成12年3月9日)。
正確に労働時間を把握するためには、労働時間管理ソフトや入退館記録などで確認することになります。
日頃からタイムカードや業務日報などにより、各労働者の労働時間を把握できるシステムを構築しておくようにしましょう。

割増率を把握する

時間単価と時間外労働の時間がわかったら、それぞれに対応した割増賃金を適用します。
前述したとおり、残業には大きく分けて法内残業と方が言残業があります。
法定労働時間内の「法内残業」の場合には、割増賃金は適用されないので、そのまま1倍の賃金を支払うことになります。
1日8時間、1週間40時間超えの基本的な時間外労働(法外残業)をさせる場合には、割増賃金率は1.25倍、休日労働なら割増賃金率は1.35倍、午後10時~午前5時までの深夜労働では割増賃金率は1.25倍です。
なお、1カ月あたりの時間外労働時間が60時間を超えると割増賃金率が1.5倍になるので、計算を間違えないように注意しましょう。

残業代を計算してみよう

ここでは、具体的に、残業代を計算するとどのくらいの金額になるのか、例を挙げて説明します。

月40時間の残業をしたAさんのケース

「Aさんは、1カ月に法定労働時間外労働として、40時間の残業を行いました。
通勤手当などをのぞいた月給が40万円、平均の所定労働時間は毎月165時間とします。」

Aさんの場合、1時間あたりの単価は40万円÷165時間=2,424.24円です。
小数点以下は四捨五入するので、1時間当たりの時間単価は,2424円として計算します。

そして、1カ月に40時間の残業をしているので、2,424円×40時間=96,960円です。
ここに1.25倍の割増賃金の規定が適用されるので、最終的な残業代の金額は、96,960円×1.25倍=121,200円となります。
そこで、Aさんに対する次回の給与支払いの際には、毎月の定まった月給に上乗せして、上記で計算された121,200円分の残業代を支払う必要があります。

月65時間の残業をしたBさんのケース

「Bさんは、1カ月に65時間の残業を行いました。
Bさんの月給は35万円、平均の所定労働時間は毎月160時間とします。」

Bさんの場合、1時間当たりの時間単価は、35万円÷160時間=2,121.21円です。
四捨五入すると、時間単価が,2121円となります。

そして、Bさんの場合、月に65時間残業しており、1カ月の時間外労働の時間が60時間を超えています。
そこで、60時間までの賃金割増し率は1.25倍ですが、それを超える5時間分については割増し率が1.5倍となります(中小企業については、2019年4月から中小企業にも適用されるので、ここでは適用される前提で計算します)。

すると、Bさんに支払われるべき残業代は、以下の通りとなります。
2,121円×60時間×1.25倍=15,9075円
2,121円×5時間×1.5倍=15,908円
合計 179830円

つまり、Bさんの次の給料日には、基本的な月給にプラスして、上記の179,830円の残業代を支払う必要があります。

まとめ

以上、残業代の基礎知識、労働基準法の規定、計算方法についてご紹介をします。
残業代をきちんと支払わないと、労働基準法違反となって行政処分や刑事処分を受ける可能性がありますし、労働者からまとめて残業代請求をされて経営を圧迫される事例もあります。訴訟対応が必要になったら、無駄な労力や費用もかかります。
後々のトラブルを防ぐためにも、日頃から残業代をきちんと計算し、支払い義務のあるものは間違いなく支払いましょう。不明点等は、社労士などの専門家に相談して適切な手続きを行うようにしましょう。

給与計算・年末調整・人事労務に強い税理士・社労士を探す

労務リスク対応(労基署対応など)にノウハウを持つ税理士を探す

地域からその他に実績がある税理士を探す

より細かいカテゴリから税理士を探す

人気記事

タグ一覧

業種

その他

PageTop