公開日:2019年07月04日
最終更新日:2022年04月15日
健康保険とは、日常生活でケガをしたり病気にかかったりした時に使う保険です。健康保険というと、病院で健康保険証を見せて治療を受けるイメージが強いと思いますが、健康保険には他にも高額医療費や傷病手当金、出産手当金など、さまざまな種類の保険給付があります。
ここでは、健康保険の概要と主な保険給付の種類、必要な手続きなどについてご紹介します。
健康保険とは、日常生活のケガ、病気を治療するために使う保険です。
広義の社会保険には、健康保険・厚生年金保険・国民健康保険・国民年金・雇用保険などが含まれますが、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つを狭い意味での「社会保険」といいます。
健康保険は、被保険者(従業員など)と被扶養者(従業員の家族など)の日常生活における病気・ケガ・出産などに対して保険給付を行い、被保険者の生活の安定を図ることを目的とした保険制度です。
一定の要件を満たす事業所は、社会保険に強制的に加入しなければならない「強制適用事業所」となります。
個人事業主の場合には、雇用した人数が5人以上で、かつ適用業種に該当する場合に強制適用となります。
なお、強制適用事業所以外の事業所も、厚生労働大臣の認可を受ければ社会保険に加入することができます。これを「任意適用事業所」といいます。
健康保険には、大きく3つの種類があります。
サラリーマンであれば「健康保険組合」か「全国健康保険協会(協会けんぽ)」のどちらかで、個人事業であれが「国民健康保険」に加入しているケースがほとんどでしょう。
①国民健康保険 都道府県と市町村によって運営されていて、個人が加入します。 75歳になると後期高齢者医療保険に移行することになるので、74歳までの前期高齢者の多くが国民健康保険の加入者となります。 ②全国健康保険協会(協会けんぽ) ③健康保険組合 |
健康保険というと「病気やケガをして病院に行ったときに使う保険」というイメージが強いと思いますが、その他にも出産についても保険給付を受けることができます。また、病気やケガ、出産が原因で仕事ができなくなってしまったというような時でも、健康保険を活用することができます。
健康保険は、被保険者とその家族のケガ、病気、出産についてさまざまな保険給付を行います。
保険給付には、療養の給付、療養費、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、高額療養費、移送費、傷病手当金、出産手当金、出産育児金などがあります。
ここでは、これらの保険給付のうち、主な給付についてご紹介します。
療養の給付 病院や診療所などの保険医療機関で診察を受ける場合に、健康保険被保険者証を提示すると、一部負担分(入院・通院とも3割)を除いた部分が給付されます。 この一部負担分を除いた部分が、現物給付として給付されるのが「療養の給付」です。 高額療養費 参照:厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 傷病手当金 出産手当金 出産育児一時金 |
法人の場合には、事業の種類を問わず1人でも従業員がいれば、必ず加入しなければなりません。これを「強制適用事業所」といいます。ただし、すべての従業員ではなく適用除外が定められていて、この「適用除外 ※後述」に該当しない場合には、必ず加入しなければなりません。
法人事業所 | 強制適用 | ||
個人事業所 | 適用事業 | 5人以上 | |
4人以下 | 任意適用事業 | ||
サービス業 農林水産業 |
任意適用事業については、従業員の2分の1以上の同意があり、かつ事業主が希望すれば厚生労働大臣の認可を受けて社会保険の適用を受けることができます。
社会保険の適用事業所となった場合、雇用される人は強制的に社会保険の加入者となり、保険給付を受けることができます。
健康保険においては、社長も役員も常勤であれば、「法人に使用されている人」という考え方をしますので、原則として75歳までは被保険者です(75歳以上の人は「後期高齢者医療制度」に加入することになります)。
なお、個人事業主は使用されているわけではありませんので、事業主本人は、加入することができず、「被用者保険・厚生年金」ではなく、「国民健康保険・国民年金」に加入することになります。
適用事業所で働いている人でも、就労の形態によっては、健康保険の加入の仕方が異なります。
たとえば日雇いの人の場合、年金制度は国民年金となりますし、健康保険では「日雇特例被保険者」という特殊な被保険者制度が適用されます(ただし1カ月を超えて雇用されるようになったら加入しなければなりません)。
正社員と比べて勤務時間等が少ないパートやアルバイトについては、社会保険の適用基準が別途設けられています。
パートやアルバイト、外国人労働者についても、労働時間と労働日数が正社員の4分の3以上であれば、加入対象となります。
また、4分の2未満であっても以下の5つの要件をすべて満たす人は、社会保険の適用を受けます。
①従業員501人以上の企業(500人以下の企業で、労使合意の上で適用拡大の申し出をしたものを含む)に勤めていること。 ②1週の所定労働時間が20時間以上であること。 ③所定の賃金が月8.8円以上(年106万円以上)であること。 ④継続して1年以上使用される見込みであること。 ⑤学生でないこと。 |
サラリーマンの妻が家計を助けるために働いているような場合で、上記の基準に該当しない人は、「原則130万円未満」という年収の要件を満たせば、健康保険の被扶養者(※後述)、国民年金の第3号被保険者となることができます。
健康保険の被扶養者(後期高齢者医療の被保険者等に該当する場合は除く)とは、保険料を負担することなく健康保険のサービスを受けられる人をいいます。
たとえば、夫がサラリーマンで妻が専業主婦や子どもというケースは典型例です。
被扶養者に該当する場合には、健康保険の保険料を支払う必要なく、年金制度でも優遇されています。国民年金では、第3号被保険者として保険料を支払う必要がありません。
従業員を新規で採用した場合には、社会保険の資格取得手続きが必要です。
社会保険の資格取得手続きは、原則として健康保険と厚生年金保険を一緒に行います。
健康保険組合に加入している事業所の場合は、健康保険の資格取得手続きを健康保険組合で行い、厚生年金保険は所轄の年金事務所で手続きをします。
資格取得手続き
手続きを行う際には、以下の情報が必要となりますので、あらかじめ準備しておきましょう。
① 労働者の採用年月日 ② 労働者の氏名(フリガナ)、住所、性別、生年月日 ③ 年金手帳および基礎年金番号通知書 ④ 雇用形態 ⑤ 被保険者の有無・氏名(フリガナ)、住所、性別、生年月日・続柄・同居の有無・送金の有無 ⑥ 賃金額(月給・日給・時間給 ⑦ マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカードにて個人番号の確認 |
従業員が退職した時にも、原則として健康保険と厚生年金保険を一緒に行います。
資格喪失手続き
健康保険と厚生年金保険の資格喪失手続きについて、健康保険組合に加入している事業所の場合は、健康保険の資格取得手続きを健康保険組合で行い、厚生年金保険は所轄の年金事務所で手続きをします。
この時、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届・厚生年金保険70歳以上被用者不街頭届が必要です。
手続きを行う際には、以下の情報が必要となります。
① 退職者の退職年月日 ② 退職者の氏名(フリガナ)、住所、性別、生年月日 ③ 具体的な退職の理由 ④ 健康保険被保険者証(被扶養者全員分の被保険者証も) ⑤ 退職時の標準報酬月額 ⑥ 年金手帳の記号・番号 ⑦ 健康保険の資格喪失後の受給の有無の確認 ⑦ マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカードにて個人番号の確認 |
保険証の回収ができない時
従業員の退職が決定したら、退職日に必ず健康保険被保険者証を会社に返却するよう伝えます。しかし、何度催促しても回収できない時には「健康保険被保険者証回収不能届」を提出します。
健康保険被保険者証を回収できずに「健康保険被保険者証回収不能届」の提出が遅れてしまうと、納める必要のない保険料を請求されることがありますので、早めに手続きを行いましょう。
退職後の健康保険任意加入を希望する時
退職者から、健康保険の任意加入について希望されることがあります。
その退職者の被保険者期間が2カ月以上である場合には、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を資格喪失後20日以内に退職者の住所地を管轄する全国健康保険協会または加入していた健康保険組合に提出するよう指導します。
任意継続被保険者は、原則として2年間加入します。再就職した場合には、その退職者は資格を喪失します。
なお、この時の保険料は全額自己負担になります。
以上、健康保険の主な給付の内容や、加入条件、従業員の入退社時に必要な手続きなどについてご紹介しました。
健康保険は、ほとんどの事業所が強制適用事業所であり、加入を義務づけられていますし、それぞれの給付の申請に必要な手続きも異なります。
また、退職後の従業員の健康保険被保険者証を回収できないと、余計な保険料を請求されることもあります。
社会保険労務士などのアドバイスを受けながら、もれなく手続きを行なうようにしましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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