公開日:2024年05月15日
最終更新日:2024年07月17日
消費税とは、お客さんが支払った消費税を事業者が預かったうえで納税する仕組みの税金です。
たとえば、コンビニで買い物した時、お客さんは10%の消費税を上乗せして支払います。コンビニは、その預かった消費税を後日納税しますが、その全額を納税するわけではありません。
コンビニは、商品を仕入れる時に仕入代金の10%の消費税を納めています。そこで、コンビニが仕入時に納めた消費税は、受け取った消費税から差し引いて、その差額を国に納めます。
しかし、消費税はすべての取引にかかるわけではなく、消費税がかからない取引もありますので、消費税の非課税取引や免税取引などの区分が必要です。
この記事では、どのような取引に消費税がかかるのか、どのような取引では消費税がかからない、もしくは対象外となるのかご紹介します。
消費税の課税対象となるのは、国内取引と輸入取引です。
輸入取引とは、物品を輸入する取引です。
国内取引は、一定の要件を満たすものが課税対象となりますが、要件を満たしていても課税対象としてなじまないものや社会政策的な配慮から課税が適当ではないと判断される取引は非課税取引となります。また、要件を満たさないものは不課税取引となります。
つまり消費税の計算をする場合には、原則として、課税取引・非課税取引・不課税取引・免税取引の区分をする必要があります。
消費税の課税対象となる取引の要件は、以下の4つです。
①国内で行われた取引であること 国内取引とは、国内で行われる資産の譲渡、資産の貸付、サービスの提供です。たとえば、米国で行われた取引については、日本の消費税はかかりません。 ②事業者が行った取引であること ③事業として行ったものであること ④対価を得て行った取引であること ⑤資産の譲渡、貸付並びに役務の提供に該当すること |
なお、上記の要件を満たしても課税対象になじまないものや社会政策的な配慮から課税が適当ではないと判断される取引は「非課税取引」、そもそも4要件を満たさないものは「不課税取引」となります。
事業として対価を得て行われる資産の譲渡や貸付、役務の提供であっても、消費税がかからない非課税取引というものがあります。
たとえば、医療費や授業料などは社会政策的な配慮から課税が適当ではないとされ、費税は非課税です。
また、有価証券や切手、印紙などの譲渡も消費税は非課税です。これは、消費税が最終消費にかかる税金であるという性質に馴染まないというのが理由です。
また、住宅の貸付については、賃借している人が住居として使用している場合には消費税は非課税、オフィスとして使用している場合は消費税がかかります。
消費税の非課税取引
①土地の譲渡および貸付 |
前述した消費税の課税対象となる要件に該当しないものは、「不課税取引」となります。
たとえば、寄附金や祝い金は、事業者が行った取引ではありませんし、資産の破棄や盗難・損失などは事業として行ったものではないため、消費税は不課税となります。
消費税不課税の取引
①給与・賃金 |
消費税の課税対象となるのは、国内取引と輸入取引ですから、輸出については免税取引となります。免税とは、税率0%で消費税を課税することです。
物品やサービスが消費される国で消費税と同様の税が課税されるため、輸出される物品等については、税負担がかからないように調整をするのが国際的な慣行となっているからです。
なお、輸入については消費税の課税対象となります。さらに輸入品には消費税のほかに関税が課されます。輸入品の品名や数量、金額や関税・消費税の金額を記入した「輸入申告書」を税関に提出したうえで輸入申告をする必要があります。
そして、原則として輸入品を引き取るまでの間に関税と消費税を納付しなければなりません。
なお、消費税の納税義務者は「輸入品を引き取る側」です。したがって、免税事業者でもサラリーマンでも、輸入品を引き取る場合には納税義務者となり、原則として消費税を納付しなければなりません。
課税取引、非課税取引、不課税取引、免税取引を正確に分類したら、仕訳処理を行います。
消費税を含む売上や仕入れの仕訳には、税抜経理と税込経理という2つの方式があります。
これは、取引の仕訳をする際に、取引価格部分と税金部分に分けるか分けないかという違いがあります。
税抜経理は、売上や経費を税抜き価格で計算し、消費税分は「仮払消費税」「仮受消費税」として計算して、確定申告で相殺し、その差額が納付する消費税となります。
税抜金額と消費税の2つに区分しなければならず手間がかかりますが、決算書で利益や経費が消費税抜きで表示されるので、正確な損益が分かりますし、仮払消費税と仮受消費税の差額が納付する税額なので、納税額がすぐに分かるというメリットがあります。
税込経理は、仕訳は簡単ですが利益や経費が消費税込で計算されているので、正確な損益が分からない・決算時まで実際の消費税額を把握できないというデメリットがあります。
免税事業者は税込経理しか認められていませんが、インボイス制度で課税事業者になった場合には、どちらの方式でもよいことになっています。
なお、後述する簡易課税制度等を選択している場合には、売上にみなし仕入率を掛けて納税額を計算するので、課税売上高を正しく把握していれば、それほど手間はかかりませんし、「freee会計」を活用すれば簡単に納税額を計算できます。
課税売上高にかかる消費税を計算したら、控除対象仕入税額や返還等対価にかかる税額、貸倒れにかかる税額を差し引いて、消費税の納税額を計算します。
控除対象仕入税額の計算方法としては、原則課税と簡易課税という方法があります。
簡易課税は、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者にのみ適用されます。
簡易課税における仕入税額控除の計算方法は、以下のとおりです。
(売上時に預かった消費税額)-(売上時に預かった消費税額×みなし仕入率)=(消費税の納税額) |
簡易課税では、課税仕入、非課税仕入の分類や課税売上割合の計算、課税仕入の売上と対応させた分類をする必要がありません。
簡易課税では、売上に対する消費税のうち何割かは控除対象仕入税額として控除すべき金額が占めているだろうという考え方をします。
みなし仕入率は、業種ごとに定められていて、このみなし仕入率を売上時に預かった消費税額に掛けます。
2割特例は、免税事業者からインボイス制度に登録した事業者で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下(新設法人については、資本金1,000万円未満)の事業者に認められる計算方法で、「売上時に預かった消費税×20%」を消費税の納税額とするものです。簡易課税よりされに計算が簡単で、業種によっては簡易課税より納税額が軽減されますので、税理士に相談してどの計算方法を選択すべきかアドバイスを受けましょう。
消費税の計算は、課税取引、非課税取引、不課税取引、免税取引を正確に分類しなければならず、原則課税と簡易課税のどちらを選択すべきか迷うケースが多いのではないでしょうか。
しかし、原則課税を選択するか簡易課税を選択するかで、消費税額が大きく変わりますし、経理の手間も格段に変わります。したがって、自社の場合に消費税額についてどのように計算すればよいのか、どちらが効率的なのか、どちらがお得なのかは、早めに税理士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、原則課税と簡易課税のどちらを選択すべきか相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 消費税について相談できる税理士を検索 /
・税込経理と税抜経理の違い 「税込経理と税抜経理では、それぞれ確定申告で算出される所得税額に違いが出てくるのでしょうか。それとも同額でしょうか。…」 |
・仮受消費税、仮払消費税が未払金として残っている場合について 「開業した2020年と翌年の2021年の申告を、税抜経理で決算していました。2022年からは、税込経理でしていますが、2年分の仮受消費税、仮払消費税が未払金と未収入金として残ってしまっています。…」 |
・簡易課税の会計処理について 「消費税ですが、簡易課税で税抜経理を採用しています。 課税売上割合が95パーセントを下回ると、控除対象外消費税が発生することになりますでしょうか…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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