公開日:2022年07月29日
最終更新日:2022年08月01日
個別対応方式とは、課税仕入れにかかる消費税額のうち、課税売上に対応する部分のみを控除対象仕入税額とするための調整計算です。
この調整計算の方法としては、個別対応方式のほかに、一括比例配分方式があり、課税事業者はいずれかを選択することができます。
この記事では、個別対応方式の内容や計算方法、一括比例配分方式との違い、それぞれのメリット・デメリットを図入りでわかりやすくご紹介します。
個別対応方式とは、課税売上に対応する部分のみを控除対象仕入税額とするための調整計算方法のひとつです。
仕入税額控除制度における仕入控除税額の計算方法は、原則課税と簡易課税に大別され、原則課税の仕入税額控除の方法としては、個別対応方式のほかに一括比例配分方式があります。
平成23年に消費税法が改正されるまでは、課税売上割合が95%以上の企業は、企業規模にかかわらず仕入税額の全額控除が可能でしたが、平成23年の改正により、課税期間の課税売上高が5億円超の企業では、仕入税額の全額控除が認められなくなり、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらかを選択適用することとなりました。
消費税は、大まかにいうと、客から受け取った消費税の合計額から、仕入先や外注先に支払った合計額を差し引いて、その残額を納めるしくみになっています。
課税売上高にかかる消費税 -①控除対象仕入税額 -②返還等対価にかかる税額 -③貸倒れにかかる税額 =納付税額 |
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これらの3項目のうち、一般的に最も金額が大きいのが①控除対象仕入税額です。
まれに、事業者が客から預かった消費税よりも、仕入などで支払った消費税の方が多い場合があります。このような場合には、事業者は国から消費税を払い戻してもらうことができます。
仕入税額控除とは、税の累積を避けるために、課税事業者が消費税を納税する時に、仕入にかかった消費税を差し引くことができるしくみです。消費税は、1つの商品が消費者に届けられるまで、取引のたびに課税されます。
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つまり課税事業者は、顧客から預かった消費税について、仕入で支払った消費税を納税額から差し引くことができるというわけです。
しかし、仕入れで支払った消費税は全額が控除できるとは限りません。
全額控除できるのは、その年(事業年度)の課税売上高が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上の場合だけです。
つまり、課税売上割合が95%未満か、課税売上高が5億円を超えると、仕入で支払った消費税を全額控除することができないことになります。そして、その場合の仕入控除額の計算方法として、個別対応方式と一括比例配分方式の2つの方法があります。
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原則課税による場合の控除対象仕入税額は、以下の順番で行います。
①課税売上割合の計算 ↓ ②課税仕入れの集計 ↓ ③課税仕入れにかかる消費税額の計算 ↓ ④課税売上高が5億円以下、かつ課税売上割合が95%以上の場合 …③で求めた全額が控除対象仕入税額 ⑤課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満の場合 |
①課税売上割合の計算
まず、課税売上割合を以下の計算式で計算します。
課税売上割合=(課税売上額+免税売上額)÷(課税売上額+免税売上額+非課税売上額) |
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②課税仕入れの集計
次に課税仕入れの集計を行います。
消費税の計算で、一番手間がかかる作業が、この課税仕入の集計です。
課税仕入の集計が完了したら、課税仕入にかかる消費税額を計算します。
課税仕入れにかかる消費税額=課税仕入高(税込)×6.3/108 |
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③課税仕入れにかかる消費税額の計算
最後に控除対象額を求めます。
原則は、全額が控除対象仕入税額となりますが、課税売上高5億円超で、課税売上割合95%未満の場合には、全額ではなく一部だけを控除対象仕入税額とするための調整計算が必要となります。
この調整計算の方法として、個別対応方式と一括比例配分方式があります。
個別対応方式では、課税仕入に係る消費税額を、以下の3種類に分類します。
①課税売上のためのもの (免税売上や国外への非課税売上のためのものを含む) ②国内の非課税売上のためのもの ③①と②両方のためのもの(または不課税売上のためのもの) |
そして、そのうえで、控除対象仕入税額を以下の計算式で計算した金額を控除することができます。
控除対象仕入税額=①の金額+③の金額×課税売上割合 |
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つまり、国内の非課税売上のための仕入で支払った消費税は、控除できないということです。
一括比例配分方式では、個別対応方式のような課税仕入れの区分は不要です。
すべての課税仕入れの税額に、課税売上割合を掛けた金額を控除することができます。
控除対象仕入税額=課税仕入にかかる消費税額×課税売上割合 |
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一括比例配分方式の方が簡単で、メリットは大きいように見えますが、課税売上割合が低いと課税売上のための課税仕入れが多くても、控除税額が少なくなってしまうという点に注意が必要です。
課税事業者は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを選択することができます。
これまでご紹介したように、個別対応方式では課税仕入れ等の区分が必要ですが、一括比例配分方式では不要です。
したがって、納税額にどれくらい違いが出るのか、課税仕入れ等の区分の事務負担はどれくらいかといった点について、事業者ごとに有利不利を判断する必要があります。
どちらの税額も同程度である場合には、まずは個別対応方式の適用を検討してみる方がよいでしょう。
なぜなら、一括比例配分方式を選択した事業者は、一括比例配分方式によって計算することとした課税期間の初日から、同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間において、一括比例配分方式を継続して適用しなければならないからです。
したがって、一括比例配分方式を選択しようとする場合には、翌期の事業計画もあわせて検討しなければなりませんが、事業計画が予定通りに実行されるかは分かりませんし、コロナ禍のような予期せぬ経済情勢の変化が起こることもあります。
このような可能性を踏まえると、2年の継続適用が強制されない個別対応方式の方が、リスクヘッジという点で優れていると考えられるからです。
仕入税額控除制度における仕入控除税額の計算方法は、原則課税と簡易課税に大別され、原則課税は個別対応方式または一括比例配分方式に区分されます。
仕入税額控除は、課税売上に対応するものだけを対象にするのが原則ですが、基準期間の課税売上高が5千万円以下の中小事業者は、簡易課税制度を選択することができます。簡易課税制度とは、中小事業者の事務負担を軽減するための簡便な計算方法で、業種別のみなし仕入率を用いて課税売上高の金額のみから納付消費税額を計算します。
したがって、基準期間の課税売上高が5千万円以下の中小事業者で簡易課税を採用している事業者は、そもそも課税仕入れについて、課税区分を設定する必要はありません。
令和5年(2023年)10月1日以降は、仕入にかかる消費税額控除のための要件として求められる請求書が、「適格請求書」になります(いわゆるインボイス方式)。
この適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。そして、適格請求書発行事業者は、消費税の課税事業者に限定され、免税事業者は適格請求書発行事業者になることができず、適格請求書を発行することができません。
つまり、免税事業者からの仕入について、消費税額の控除を受けられないことになります。
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以上、個別対応方式についてご紹介しました。
課税売上高が5億円超、または、課税売上割合が95%未満の場合には、課税仕入れにかかる消費税額に調整を加えて控除対象仕入税額を計算しなければなりません。
この調整計算には、個別対応方式と一括比例配分方式があります、
また、令和5年(2023年)10月1日以降は、いわゆるインボイス方式が導入されます。
インボイス方式の導入により、消費税における取引段階ごとの転嫁のしくみが、より厳格に運用されることになります。
免税事業者が適格請求書を発行するためには、課税事業者になることを選択する必要があります。
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