脱税とは|ペナルティは?節税・租税回避との違いは?

公開日:2019年11月01日
最終更新日:2022年05月01日

この記事のポイント

  • 節税は合法的な行為だが、脱税は犯罪行為である。
  • 脱税は、ペナルティとして重加算税が課されることになる。
  • 租税回避行為が違法ではないが、批判の対象となる。

 

税の負担を少なくするために行うことには、大きく分けて脱税と節税があります。
脱税は、売上や経費をごまかして、不当に税の負担を免れる犯罪行為です。
これに対して、節税は自身に有利な選択肢を選ぶことで、税の負担を軽くする行為です。つまり、税の負担を少なくするという意味では似ていても、節税は合法的な行為ですが、脱税は犯罪行為です。

脱税が発覚すれば行政上の措置の対象となり、重加算税が課されたり、懲役・罰金刑などの刑罰を科されたりすることがあります。

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脱税とは

脱税は、一般的には「故意に税金を逃れる行為」と言われます。
ただし、法律的にいえば「検察から告発され、裁判で有罪になったもの」が脱税です。
しかしこの記事では、一般的に使われる「故意に税金を逃れる行為」(たとえば売上を隠したり領収書を偽造したりして、不法に税の負担を免れる行為)という意味で、脱税についてご紹介することとします。

(1)脱税するとどうなる?

脱税行為は申告納税義務に違反する行為として行政処置の対象となり、ペナルティとして重加算税が課されることになります。
さらに、特に悪質だと判断された場合には、脱税犯として5年以下の懲役あるいは罰金、または懲役刑と罰金刑の両方が科されることもあります(※後述)。

(2)脱税はどのように発覚するか

大半の脱税は、税務調査から発覚します。
税務調査というと「不審な点がある企業がされるもの」というイメージを持つ人もいますが、そうではありません。ある程度の事業規模があり黒字が出ている企業であれば、3年~5年周期で、税務調査の対象となります。
また、預貯金や証券などの資産関係から、発覚するケースもあります。
たとえば、高級車に乗っているのに納税額が少ないというような場合には、調査の対象となることがあります。
その他、内部や外部からの密告があって発覚するケースもあります。とくに相続税については親族から密告されるケースもあります。

(3)脱税発覚後の「更正」と「修正申告」の違い

脱税が発覚すると、その処分として「更正」と「修正申告」があります。
更正とは、税務署が強制的に処分をするもので「これだけの課税もれがあったから、追徴課税します」という処分で、修正申告とは、税務署からの指摘にもとづいて納税者が自発的に申告を修正するものです。
更正の場合には、税務署の指摘に納得ができなければ「不服の申立て」をすることができますが、修正申告の場合には、納税者が自発的に申告をし直したことになるので、原則として不服の申立てはできません。

(4)脱税と節税との違い

脱税とは違う方法で税の負担を軽くすることができるのが、節税と租税回避です。
脱税は犯罪行為ですが、節税行為は合法的な行為です。
もともと税法は、いくつかの選択肢が設けられていて、そのなかから納税者にとって有利な選択肢を選ぶことができるような制度になっています。
このように「納税者にとって、有利な選択肢を選んで税負担を軽くすること」が節税です。
たとえば税金を軽くするためには、課税所得を少なくすることが有効です。
課税所得は「益金(収益)-損金(費用)」で計算しますので、節税するためには、益金を減らすか損金を増やせばよいということになります。
しかし益金を減らすことは会社の売上を減らすことを意味しますので、事業を継続していくうえでは現実的ではありません。
しかし、だからと言って損金を増やすという方法も、結果的には無駄な経費の計上につながりやすく、得策とはいえません。

そこで、節税の方法として考えられるのが「特別償却」や「税額控除」です。

「特別償却」とは、通常の減価償却計算に先立って減価償却費の計上を行うことができる制度で、早期に経費を計上できることから、大きな節税効果があります。

「税額控除」は、国の政策的な理由から、一定の設備を取得した場合にその取得価額のうち一定額を直接税金から差し引くことができるという制度です。
税額から直接差し引くことができるのですから、節税効果は絶大で使わない手はありません。

このように、合法的な手段で税負担を軽くするのが「節税」です。

(5)脱税と租税回避との違い

脱税まではいかないものの、特殊な取引をすることで税負担を減少させる「租税回避」というグレーゾーンがあります。
租税行為自体は違法ではありませんが、税負担の軽減や回避を図る目的で通常では考えられないような取引を行い、税負担を軽くするような行為はグレーゾーンと言えるでしょう。

租税行為は、取引自体には隠ぺい行為などの違法性は認められないものの、明らかに不自然な行為であり、税負担の軽減を図る目的で行われただろうと強く想像させ、結果的に課税所得を減少させ、税負担を軽くする行為です。
たとえば、富裕層が、節税対策の一環として、タックスヘイブンと呼ばれる軽課税国に資産や企業を置き、意図的に税負担を軽くするような行為です。

租税回避行為が違法ではないにもかかわらず批判される理由は、「税負担の公平な観点からみれば不合理な行為」だからです。
所得金額が同じ2,000万円の人のうち、一方が租税回避を行うことで税負担を300万円も減らせば、それはあまりに不公平であるとして問題視されるのです。

脱税のよくある手口

単に軽微な作業ミスや判断ミスによるものは、脱税とは見られず単なる課税もれと見られます。
隠ぺいまたは仮装といった悪質な行為で売り上げや経費をごまかそうとする行為が、脱税と判断されます。
たとえば、領収書の偽造や二重帳簿の作成、証憑を隠す、帳簿への虚偽の記載、記載内容の改ざんなどは、税務調査の対象となった時には、脱税と判断されることになります。

(1)脱税の手口①:領収書の偽造

脱税の典型的な手口ともいえるのが、領収書の偽造です。
領収金額や日付を書き換えたり、自分で作成したりしてしまう場合などがあります。
さらに悪質になると、架空の会社名義で発行した領収書を、額面額に応じた金額で販売しているようなケースもあります。
もちろん、これを買い受けて経費を仮装するような行為も脱税ということになります。

(2)脱税の手口②:二重帳簿の作成

申告書に記載している銀行口座とは別に、売上代金の回収用の口座を使ったり、帳簿を2つ作成して売上や経費をごまかしたりするのも、脱税です。

申告書に記載されていない隠し口座を簿外口座といいますが、税務署員は簿外口座を見つけるために、銀行に出向いて入出金記録をチェックしています。そして不審な点が見つかれば、自宅や会社、店舗などすべてが調査されることになります。

また、二重帳簿を作成しても売上や仕入れと在庫について辻褄が合わなければ、すぐに脱税が発覚します。税務調査の対象となれば、売上伝票はすべてチェックされますし時間帯ごとの顧客の出入り、1人あたりの料金などもすべて調査され、裏付けをとったうえで徹底的に調査されることになります。

(3)脱税の手口③:売上を隠す

毎日の売上から一定額ずつのぞいたり、現金収入だけ隠したり、遠隔地との取引による収入を隠したりして、売上を隠すことも脱税です。
これらの手口は、業務記録などから発覚することがありますし、仕入れと売上の関係を詳細に調査することで発覚する場合もあります。

それに、税務署は「現金による入金は、隠されることがある」と思っていますので、現金の入金に関しては厳しくチェックされます。
また、遠隔地との取引についても、税務署は豊富なネットワークを持っていますので、不審に思われればすぐに発覚してしまいます。

(4)脱税の手口④:所在不明の会社を使う

世の中には、経営が立ちいかなくなり、知らぬ間に移転していたりする会社があるものです。
昨今のコロナ禍の影響を受け、どんな業種でも「いつの間にかなくなった」という会社はあるものです。そこでこのような所在不明の会社を利用して、外注をしたことにしたり売掛金があったことにしたりするわけです。
しかしこの場合も、この所在不明の会社にどのような売掛金があったのか、あるいは外注した作業が何だったのかを調査された際に、発覚してしまいます。

(5)脱税の手口⑤:人件費を水増しする

本当はアルバイトを雇っていないのに、雇ったようにみせかけて人件費を水増しする行為も、脱税です。
通常人を雇用する時には、事業者は支払調書を作成して提出しなければならないため、従業員の人件費はごまかしづらいのですが、短期のアルバイトの場合には年末調整の必要もなく支払調書の提出もないので、人件費の水増しをしやすいわけです。
しかし税務署は、他の従業員等にも細かく聞き取り調査をすることがあり、その際に「アルバイトを雇ったことはない」などの証言があることで発覚することがあります。

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脱税することのペナルティ

脱税すれば目先の税金を減らすことができますが、そのデメリットは計り知れません。追徴税額を納付することになりますし、懲役や罰金などの刑罰を科せられることもあります。また、厳しい社会的制裁を受けることも覚悟しなければなりません。

(1)追徴税が課せられる

脱税行為と認定されると、簡易的なものとして追徴税によるペナルティを課せられることになります。そのなかで最も重い処分が、重加算税です。
重加算税とは、仮装または隠ぺいによって申告している場合に課税される付帯税で、過少申告加算税の場合には税額の35%、しなければならなかった申告をしなかった無申告の場合には税額の40%もの税率の加算がされます。
この他に、もともと納めなければならなかった本税を期限内に納められなければ、利息として別途延滞税がかかります。

(2)懲役・罰金という刑罰をうけることも

脱税額が大きかったり、脱税の手口が悪質であると判断されたりした場合には、最終的には10年以下の懲役や1,000万円以下の罰金(脱税額が1,000万円を上回る場合には脱税相当額以下)、あるいはこれらの併科に処せられます。

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(3)社会的制裁を受ける

脱税は、多くの時間と費用が失うことになるだけでなく、会社の信用や名誉を大きく失墜させます。脱税によって得た利益の、おそらく何十倍、何百倍ものかけがえのないものを失うことになるのです。
「税金を減らすことができるなら…」と安易に脱税行為を行いそのためにもたらされるデメリットは、想像以上に大きいものです。一度失墜させてしまった信用や名誉を、再び元の状態に戻すのには多くの時間と努力を要することになります。
くれぐれも「脱税=犯罪行為」であるということを、忘れないようにしたいものです。

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まとめ

以上、脱税の意味や脱税になる行為、節税や租税回避との違いなどについてご紹介しました。
税金を支払いたくないばかりに、行き過ぎた行いをしてしまえば、重加算税が課される他、懲役や罰金を科されてしまう可能性もあります。
そして、結果的に支払わずにすませようとした金額以上のものを失うことになるのです。税金の負担を少しでも軽くしたいという気持ちは理解できますが、税金は国民一人ひとりが所得に応じて、負担しなければならないものです。その税金を不当に免れることは、社会のルールを守らない犯罪行為であることを肝に銘じておくようにしましょう。

脱税行為を行わなくても、適切な節税対策を行えば、税額を大きく軽減することは可能です。税理士などのアドバイスに従って、合法的な行為によって税負担を軽減させるようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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