支払いサイトとは?「支払は遅く・回収は早く」はなぜ重要?

公開日:2019年11月11日
最終更新日:2024年03月01日

この記事のポイント

  • 「支払いサイト」とは、その代金を実際に支払う(支払われる)までの期間(何日締め、何日払いなど)のこと。
  • 「支払いは遅く、売上代金の回収は早く」を意識することで、資金繰りが改善される。
  • 「支払いサイト」を見直し入金と支払いのバランスをとることが大切。

 

支払サイトとは、代金を実際に支払うまでの期間です。
買掛金の支払サイトと売掛金の入金サイトが同じだと、買掛金の支払いが先に必要になります。
つまり、買掛金支払時に十分な手許資金がないと、資金不足が起きてしまいます。
このような状況を回避するためには、売上債権の回収サイトを早めて、仕入債務の支払サイトを延ばす方法が有効です。

資金繰りを改善する方法は、いくつもありますが、どの会社にも共通しているのがこの支払いサイトと回収サイトの見直しという方法です。

支払いサイトとは

取引関係がある程度継続した場合は、取引先に商品を販売した場合に現金取引ではなく、掛け取引となる場合がほとんどです。このような取引で、その代金を実際に支払う(支払われる)までの期間(何日締め、何日払いなど)を支払いサイトといいます。

サイト(sight)とは、ウェブサイトなどを表すサイト(site)とは別の言葉です。支払いサイトで用いるサイト(sight)の本来の意味は「視界」や「視力」といった意味なのですが、日本のビジネスシーンではいつからか「期間」といった独自の意味を持たせるようになっていて、そこから「支払いサイト」と呼ばれるようになっています。

支払いサイトは、仕入先などに支払う場合(買掛金)と取引先に支払ってもらう場合(売掛金)がありますが、この時「支払は遅く、回収は早く」を意識することで、資金繰りが大幅に改善されることがあります。

(1)支払いサイトが資金繰りに与える影響

支払サイトの条件の変更は、売上代金の回収条件の変更と同様に資金繰りに大きな影響を与えます。
たとえば20日締め翌月末払いの支払いサイトを、月末締め翌月末払いに変更したとします。変更後は21日から月末までの仕入れについて1カ月分の支払いが早くなることになります。つまり、31日―20日=11日分の仕入代金のために資金を用意しなければならなくなり、以前より必要資金が増加することになるわけです。

「支払手形を使えばよい」という考え方もできますが、支払手形は業績が悪化すると認められなくなることがあります。万が一支払手形が使えなくなれば、さらに大きな資金が必要となってしまいます。

(2)支払条件を変更するとどうなるか

売上代金の回収が遅いと資金繰りは苦しくなりますが、支払サイトは遅ければ遅いほど資金繰りは楽になります。
「支払は遅く、回収は早く」とは、簡単にいうと、仕入先への支払いサイトは長くし、取引先から支払ってもらうサイトは早くするということです。つまり、出ていくのは遅く、入ってくるのは早く、ということです。
何とも都合のよい話に聞こえるかもしれませんが、資金繰りをよくするためにはとても重要なことなのです。

(3)仕入債務回転日数をチェックしよう

仕入債務とは、仕入れ業者に支払いを待ってもらっている状態です。
したがって、仕入債務回転日数は長いほど、仕入債務の現金支払いまでの期間が長くなるため、手許資金に余裕が生まれます。
仕入債務回転日数は、以下の計算式で計算します。

仕入債務回転日数 = 仕入債務(買掛金+支払手形)1日当たりの売上原価

仕入債務回転日数の業種別平均は、建設業が長くて80日程であり、製造業も長くて60日程度です。小売業では30日程度、旅館業では8日程です。
自社と同業他社を比べて、平均より短い場合には、支払サイトを見直すことをおすすめします。

(4)売上債権回転日数をチェックしよう

売上債権回転日数とは、売上債権が何日で現金化されるかを見る指標です。
売上債権回転日数は、以下の計算式で計算します。

売上債権回転日数 = 売上債権(売掛金+受取手形+割引手形)1日当たりの売上高

この売上債権回転日数は、短ければ短いほど現金回収されるスピードが早くなり、運転資金が少なくて済むことになります。
売上債権回転日数の業種別平均は、製造業や建設業では長く100日程度、小売業や旅館業では短く30日程度です。
自社と同業他社を比べて、平均より長ければ、回収サイトを見直すことをおすすめします。

(5)棚卸資産回転日数をチェックしよう

在庫は資金が投じられた結果であり、販売することによってしか再び資金になりません。つまり在庫は「資金が眠っている状態」であり、さらに在庫を保管するためのコストもかかります。
しかし、在庫がないと販売機会をロスしてしまうリスクもあります。
そこで、適正在庫量に収めるように管理することが大切です。

適正在庫量を見極めるための指標が、棚卸資産回転日数です。
棚卸資産回転日数とは、現金が棚卸資産に姿を変え、次に売上債権になるまでの日数です。
つまり「現金→棚卸資産→売上債権」になるまでの日数で、この日数は短ければ短いほど運転資金は少なくて済みます。

棚卸資産回転日数 = 棚卸資産1日当たりの売上原価

棚卸資産回転日数の業種別平均は、製造業が長く60日から90日程度で、小売業が短く20日程度、仕入商品を持たない金融業では1日程度となっています。

支払サイトを改善する方法とは

これまでご紹介したように、「支払は遅く、回収は早く」を徹底すると資金繰りは大きく改善される可能性があります。
これは、商品を購入する時にクレジットカードで支払うとその時点では資金繰りが楽になるのと同じことです。
「支払は遅く、回収は早く」は、長い期間で考えれば同じ収支ではありますが、手許のキャッシュの状況には雲泥の差が出ます。資金繰りに不安を抱える状態からも解放されるので、ぜひ検討してみましょう。

(1)売上代金は早く回収する

商品やサービスを提供して、まだ取引先から支払ってもらっていないお金を「売掛金」といいます。
売上代金の回収を早くすると、資金繰りは楽になります。ガソリンスタンドでよく現金払いにすると価格が安くなりますが、これはこのような理由があるからです。

売上代金の回収がどのような影響を与えるのかについて、「月末締め翌月末払いから20日締め翌月末払いに変更された場合」で考えてみましょう。この場合には、資金になるまで31日-20日=11日間分について余計に時間がかかるようになります。たかが11日間と思われるかもしれませんが。月商5,000万円の企業であれば約1,800万円の運転資金が余計に必要になってしまうことになります。

「早く支払ってくれ」と取引先に依頼するのは、なかなか勇気のいることかもしれませんが、「回収は早く」を実現するためには大切です。
それに、取引先との関係性を悪くしたくないばかりに、回収サイトを延ばし延ばしにしていると、結局回収できなくなる「貸倒れ」のリスクもあります。貸倒れのリスクを避けるためには、支払いサイトは短くし、支払期限が過ぎても入金がなければ、すぐに督促する体制を整えておくことも大切です。
売掛金は、放っておくとどんどん溜まっていきます。「催促されないから、後回しでいいだろう」というのは人間の本質的な心理です。取引先には、時には「この人はうるさいな」と思われることも重要です。「放っておいたら永久に入金されないかもしれない」と思うくらいがちょうどいいのです。

(2)支払い条件を遅くする

売上代金の回収を早くするのと同時に支払い条件を遅くできるよう交渉します。
たとえば、仕入先に、仕入れ条件を翌月払いから翌々月払いになどに変更してもらえるか交渉してみましょう。
ただし、こちらの都合を一方的に押しつけるだけでは、相手に納得してもらえないこともあるでしょう。その場合には、たとえば支払いサイトを伸ばしてもらう代わりに取引量を増やして確実に支払うなど、お互いにメリットのある提案をして信頼関係を保てるような交渉を行いましょう。

(3)会計ソフトと税理士を活用する

取引先の数が増えてくると、売掛金の管理が煩雑になり回収も遅れがちになってしまうことがありますが、そのような時には「クラウド会計ソフト freee会計」のレポートを活用するのがおすすめです。

入金管理レポートの活用

「freee会計」の「入金管理レポート」は、売掛金・未収入金等の債権の入金予定・滞留状況をひと目で確認することができます。
来月の入金予定や、取引先ごとの金額も確認することができ、「年齢表」もひと目で分かるよう工夫されています。年齢表とは、売掛金(または債務・買掛金)が発生してから何カ月経ったのか、どれくらい残っているのかを確認するためのデータです。

▶ 入金管理レポートの見方と活用アイディア(売掛レポート)

この他にも、「freee会計」には、さまざまなレポートがあります。
「収益レポート」では売れ筋商品を確認することができますし、資金繰りレポートでは、どの勘定科目で一番お金を使ったのか確認することができるので、資金ショートを回避することができます。

レポートの種類 使い方のアイディア
収益レポート
  • 今月の売れ筋商品を確認する
  • 得意先ごとの売れ筋トップ10を確認する
  • 売上が多い月を確認する
費用レポート
  • 今月の費用内訳を確認する
  • 費用が多い月を確認する
損益レポート
  • 今月の損益のうち多かった商品は何かを確認する
  • 収支別の取引先トップ10を確認する
  • 損益の主要項目を時系列で確認する
売掛レポート
  • 来月の入金予定を確認する
  • 得意先ごとの金額を確認する
買掛レポート
  • 来月の支払い予定を確認する
  • 支払い先ごとの支払い予定を確認する
  • 一括振込用のファイルを出力する
  • 請求書が届いたので、いつの買掛金に対応しているかを確認したい
現預金レポート
  • 今月のお金はどれくらい動いたのかを確認する
  • 先週の現預金の残高を確認する
資金繰りレポート
  • 今月はどういった勘定科目で一番お金を使ったのかを確認する
  • 今後のお金の出入りを踏まえた上で、資金ショートを起こさないかを確認する
集計表
  • 「売上高」として入力した取引の件数を確認する
  • 複数の条件で絞り込みをかけて集計結果を知る

これらのレポートは、リアルタイムで税理士にも確認してもらうことができます。税理士とレポートを共有することで、「この支払いサイトでは、資金繰りの改善は難しい」とか「○○という会社の支払いサイトを短くしてもらうよう、交渉してみましょう」など、具体的なアドバイスをもらうことができます。

▶ freee会計で確認できるレポート

資金繰りを改善するその他の方法

これまでご紹介した「支払は遅く、回収は早く」という支払いサイトを見直すというテクニックは、どの会社にも共通する方法ですが、資金繰りを改善する方法は、他にもいくつもあります。たとえば、使わない資産は早期に売却したり、不採算事業は事業譲渡して現金化したりといった方法です。

(1)使わない資産は早期に売却する

会社の車両や機械設備、不動産など使わない資産がある場合には、それらを売却することや現金化することができますし、空いたスペースを有効活用することもできます。
使わないということは利益を生み出すことがないというのと同じです。なくてもいいなら、処分をしてしまって現金化することを考えましょう。

(2)不採算事業は事業譲渡する

事業を同時にいくつも行うようになると、採算性の高い事業と低い事業が発生するものです。どの事業も採算性が高いというケースの方が、ほとんどないと言っても過言ではありません。
このように採算性が低い事業を抱えている場合には、事業を廃止するか、事業全体を売却する事業譲渡を検討してみましょう。

もし採算性が低い事業に新規参入しようとしている会社があれば、その会社にとっては事業譲渡を受けることで、コストを抑えて新規参入できるというメリットがあるはずです。自社にとっては採算性が低い事業であっても、買収したい会社にとっては、事業価値があることもあります。採算性が低いからといってただ単に廃止するよりは、事業譲渡をして現金化するのも資金繰りを改善する方法のひとつです。

まとめ

以上、支払いサイトの意味や、資金繰りを改善するための支払いサイトの管理方法などについてご紹介しました。
会社は、利益が出ていても現金がなくなれば倒産してしまいます。
倒産は、急に起こるものではなく、当事者である経営者が資金繰りの問題点に気づいておらず、倒産のシグナルに気が付いていないケースがほとんどです。
このような事態を避けるためにも、まずは常時現金の残高を確認すること、支払いサイトを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、支払いサイトを見直しても、それでも資金繰りが苦しく、どうしても支払期限までに支払えない時には、できるだけ早めに先方に伝えて謝罪をしましょう。そして、支払条件を交渉します。最悪なのは、黙って放置してしまうことです。何の連絡もなく支払いが遅れたら、これまで築いてきた信頼関係が一瞬にして崩れると思ってください。
交渉する時には、全額でなくても一部でも支払うことを条件に交渉するのもひとつの手です。「100万円の請求書に対しては100万円を全額用意しないと支払ってはいけない」と思い込んでいる人も多いのですが、一部だけでも支払えば、その誠意は相手に伝わります
もちろん「一部だけ支払いたい」という依頼も、可能な限り早く先方に伝えましょう。

支払いサイトについて相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から支払サイトの見直しや会計ソフトの活用について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、支払いサイトの改善について相談することができます。

 

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