公開日:2019年11月20日
最終更新日:2022年07月17日
有価証券を購入した時には、有価証券の保有目的に沿って勘定科目に分類する必要があります。
また、有価証券を売却した時には、売却原価を計算して売却損益を確定する必要があります。
有価証券とは、「権利を表彰する証券」のことですが、通説による定義と会計上の定義は異なります。
通説による定義でいえば、株券や債券の他、小切手や手形、デパートの商品券やコンサートのチケット、鉄道の乗車券、図書券なども有価証券に分類されます。
一方、会計上の定義による有価証券は、株券や債券(社債や国債)などのことをいいます。
小切手や手形については、有価証券に該当しますが、会計上は有価証券とは処理しません。小切手を処理する場合の勘定科目は「当座預金」や「現金」で、手形を処理する際の勘定科目は「受取手形」や「支払手形」です。
有価証券勘定で処理するものとしては、売買目的有価証券、1年以内に償還される債券などです。
①売買目的有価証券 ②1年以内に償還される公社債 ③証券投資信託受益債権 ④MMF、MRFなど |
有価証券は、保有目的により処理方法が異なります。
有価証券の保有目的は、以下のように分類されます。
保有目的 | 内容 | 例 |
---|---|---|
売買目的の有価証券 | 運用目的で保有する有価証券のこと 時価の変動によって利益を得ることを目的として保有する有価証券 |
短期に売買することを目的とした株式 1年以内に満期が到来する社債 |
満期保有目的の債券 | 満期まで保有する意思を持って保有する社債その他の債券 |
1年超に満期が到来する社債 国債 |
子会社株式および 関連会社株式 |
支配目的で保有する株式 |
子会社株式 関連会社株式 |
その他の有価証券 | 上記のいずれにも該当しないもの | 持合株式など |
有価証券は、保有目的によって処理が異なります。
「有価証券」に分類されるのは、売買目的の有価証券だけで、その他は「投資有価証券」もしくは「関係会社株式」という勘定科目で処理をします。
会計上の有価証券の種類 | 勘定科目 | 決算上での区分 |
---|---|---|
売買目的の有価証券 | 有価証券 | 流動資産 |
満期保有目的の債券 | 投資有価証券 | 固定資産 |
子会社株式および関連会社株式 | 関係会社株式 | 固定資産 |
その他の有価証券 | 投資有価証券 | 固定資産 |
売買目的有価証券とは、運用目的で保有する有価証券のことで、時価の変動によって利益を得ることを目的といて保有する有価証券です。
ただし、売買目的の有価証券に該当するためには、事業としてトレーディング部門があるなど、売買を目的としていることが客観的に明らかである必要があります。
①有価証券を取得したとき
「株式1000株を1株420円で購入した。手数料33,000円とともに振り込んだ。振込手数料は440円であった。」
有価証券を取得した時には、証券会社に支払う売買手数料、有価証券を取得するために要した通信費や名義書換料などの付随費用が発生します。
証券会社に支払う売買手数料は、有価証券の取得価額に含めて処理しますが、有価証券を取得するために要した通信費や名義書換料は、取得価額には含めません。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
有価証券 | 4,230,000 | 普通預金 | 4,233,440 |
雑費 | 400 | ||
仮払消費税等 | 3,040 |
②有価証券を売却したとき
有価証券を売却したときは、有価証券の帳簿価額と売却価額の差が有価証券売却損益となります。
売却価額が帳簿価額より大きければ「有価証券売却益」、売却価額が帳簿価額より小さければ「有価証券売却損」が計上されることになります。
なお、有価証券の帳簿価額を算出するときの単価の計算方法としては、移動平均法と総平均法がありますが、総平均法は同一期間で一部売却した後に追加取得があると、売却時に計算した売却損益を期末時に計算し直す必要があるため、一般的には、移動平均法を採用します。
・総平均法 同一銘柄の期首残高に、当期中に購入した同一銘柄のすべての取得価額を合計して平均単価を計算します。したがって、期の途中では売却原価が確定しません。 ・移動平均法 |
満期保有目的の債券とは、社債や国債など、満期まで保有する意思を持って保有する社債やその他の債券のことです。
満期保有目的の債券は、「投資有価証券」として処理をします。
満期保有目的の債券を、債権金額より低い価額あるいは高い価額で取得した場合には、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とすることとされています。
償却原価法とは、債権金額と取得価額の差額が金利差額と認められる場合に、その金利差額を取得日から償還日までの期間にわたって期間配分する方法をいいます。
子会社株式等とは、子会社や関連会社の株式など、支配目的で保有する株式のことです。
子会社株式等は、「関係会社株式」で処理をします。
子会社株式と関連会社株式は、取得原価で評価しますが、その子会社や関連会社の財政状態が悪化したことで、実質価額が著しく下落したときには、帳簿価額を実質価額として、損失を計上します。
その他有価証券とは、一般企業が余資運用あるいは営業上の関係で保有し、時価の変動等によっては売却することを考えている有価証券のことです。
その他有価証券は、「投資有価証券」として処理をします。
その他有価証券は、時価のあるものは時価で、時価のないものは取得原価で評価しますが、中小会計指針では、少額の場合には取得原価とすることも認められています。
有価証券売却時には、売価と原価の差を有価証券売却益もしくは有価証券売却損として計上します。証券会社等に売却手数料を支払った時には、それも計上し振替伝票を入力します。有価証券売却時の振替伝票は「クラウド会計ソフト freee会計」で簡単に作成することができます。
たとえば、売却益が出る場合には、以下のように振替伝票に入力します。
「帳簿価額100,000円の投資有価証券を150,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率10%)を引いて入金された。」
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売却損が出る場合には、以下のように振替伝票に入力します。
「帳簿価額100,000円の投資有価証券を70,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率10%)を引いて入金された。」
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▶ クラウド会計ソフト freee会計「固定資産や有価証券の売却を記帳する 」
以上、有価証券の意味や会計上の処理、売却原価の計算方法などについてご紹介しました。
有価証券は、保有する目的によって仕訳の際の勘定科目が異なります。
また、売却・購入のパターンによって計算方法が異なります。
不明点や疑問点があれば、早めに税理士に確認して適切に手続きを行うようにしましょう。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から有価証券の意味や処理について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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