公開日:2021年12月12日
最終更新日:2022年03月31日
「受取配当金」とは、株式や出資の配当金を処理する時に使用する勘定科目です。
株式配当金や出資配当金のほか、利益分配金、収益分配金などを処理する時にも、「受取配当金」で処理をします。なお、個人事業主の場合には「受取配当金」ではなく「事業主借」で処理をします。
受取配当金とは、所有している株式などの有価証券の配当金や、信用金庫や信用組合などへの出資金の配当(剰余金の分配)などを処理する時に使う勘定科目です。
受取配当金は、企業の活動以外によって発生した収益であることから、決算書においては損益計算書の「営業外収益」に区分される勘定科目です。
営業外収益とは、企業の活動以外によって発生した収益のことで、企業の活動以外によって発生した費用は「営業外費用」として表示されます。
受取利息は、国税等は控除されて支払われます。
たとえば、「上場株式の配当金1万円が、国税15.315%差し引かれて普通預金に振り込まれた」というようなケースで受取配当金を使用します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 8,469 | 受取配当金 | 10,000 |
仮払法人税等 | 1,531 |
受取配当金は、以下のようなものを処理する際に使われます。
・株式会社、合資会社、合名会社および合同会社、特定目的会社などからその所有する株式数など、または出資口数などに応じて剰余金の配当として受取る配当金、ならびに資本金の払戻に際してその原資が利益積立金に対応するみなし配当に相当する部分の支払として受取る配当金
・中小企業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合などの特別法人から剰余金の分配として出資金の持分に応じて受取る配当金および一定の取引量に応じて受取る事業分量配当金 ・証券投資信託の収益分配金 ※国内のみならず、外国法人から支払を受けるものも含まれます。 |
具体的には、所有している株式などの株式配当金、信用金庫や信用組合の出資配当金、投資信託の収益分配金、協同組合の配当金、保険契約者配当金、投資信託配当などが該当します。
受取利息とは、普通預金の利息や有価証券の利息、定期預金の利息などを処理する時に使用する勘定科目です。受取利息は、受取配当金と一緒に「受取利息配当金」という勘定科目で処理する場合もあります。
個人事業主にとって配当金や出資金は、「事業所得」ではなく「配当所得」となります。したがって「事業主借」として処理をします。
事業主借とは、個人事業主の「事業以外」からの入金を処理する時に使うもので、受取利息を処理する時にも、この事業主借を使用します。
受取配当金の計上時期は、「市場価格のある株式」と「市場価格のない株式」で、処理方法および計上時期が異なります。
市場価格のある株式について 受取配当金の収益計上時期は、市場価格のある株式については、配当落ち日に前回の配当実績または公表1株当たり予想配当額に基づき見積り計上してから、その後の実際の配当額との差異について、その差異の判明した事業年度に計上します。 ※ただし、継続適用することを条件として株主総会等の決議があった日の事業年度に計上することも認められます。 市場価格のない株式について |
配当金は、法人税が控除された後の利益のなかから配当されるものです。
つまり税金が控除された後の「受取配当金」への課税は、法人税の二重課税となってしまいます。そこで税法上、「受取配当金」は原則として益金には算入しない「益金不算入」、すなわち法人税がかからないことになっています。
なお、受取配当金であっても、短期所有株式にかかるものは、益金不算入の対象とはならず、益金となります。
この短期所有株式にかかる受取配当金で益金になるものとは、①配当の計算期間の末日以前1カ月以内に買い、②その末日以後2カ月以内に売った株式をいいます。
受取配当金は益金になりませんが、「益金にならない金額」=「受け取った配当金額」ではありません。
たとえば、受取配当金が200万円で株式を買うための借入金の負債利子が20万円であるケースで考えてみましょう。
この時、受取配当金200万円が全額益金にならないとすると、「益金にならない金額」の計算は「200万円-20万円=180万円」となります。ここで問題となるのが、受取配当金から差し引かれる負債利子の計算方法です。
上記のケースでは、「株式を買うための借入金」という明確な理由があることを前提としましたが、実際には借入金と買った株式が紐づいているケースはあまりありません。
したがって、「差し引かれる負債利子」は、以下の計算式によって計算します。
支払利子の額×{(当期末の株式等の帳簿価額+前期末の株式等の帳簿価額)/(当期末の総資産の帳簿価額+前期末の総資産の帳簿価額)} |
---|
なお、この差し引かれる負債利子については、簡便法として過去2年度(基準年度平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した事業年度)の実績割合で計算することも認められています。
これまでご紹介したとおり、益金不算入となる受取配当金は、基本的に以下の計算式で算出します。
受取配当金の金額-短期所有株式にかかる配当金-負債利子の金額 |
---|
ただし、以下のように受取配当金の種類よって、計算式が異なります。
①完全子法人株式等については全額 ②関連法人株式等(持株割合が1/3超)については負債利子控除後の金額の全額 ③その他の株式等(持株割合が5%超~1/3以下)については50% ④非支配目的株式等(持株割合が5%以下)については20% |
①完全子法人株式等については全額 |
②関連法人株式等(持株割合が1/3超)については負債利子控除後の金額の全額
|
③その他の株式等(持株割合が5%超~1/3以下)については50%
|
④非支配目的株式等(持株割合が5%以下)については20%
|
そして、益金の額に算入しない受取配当金(①+②+③+④)については、法人税申告書別表四⑭に記入して計算することになります。
受取利息は、上場株式の配当金であるか非上場株式の配当金かによって、控除される国税の額が異なります。
また、個人事業主の場合は「受取利息」でははなく「事業主借」で処理をします。
ここでは、受取配当金のよくある仕訳についてご紹介します。
「上場株式の配当金1,000円について、国税15.315%が差し引かれて普通預金に振り込まれた(法人の場合)。」
上場株式の配当金は、国税15.315%が控除されて支払われます。
参照:国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 847 | 受取配当金 | 1,000 |
仮払法人税等 | 153 |
「非上場株式の配当金5万円について、国税20.42%を差し引かれて普通預金に振り込まれた(法人の場合)。」
上場株式等以外の配当等の場合には、20.42%(地方税なし)が控除されて支払われます。
投資信託の収益分配金に対する源泉徴収税率は、内容によって20.315%または20.42%となっています。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 39,790 | 受取配当金 | 50,000 |
仮払法人税等 | 10,210 |
「出資金に対する配当金2万円について、国税20.42%が差し引かれて、普通預金に振り込まれた(法人の場合)。」
上場株式等以外の配当等の場合には、20.42%(地方税なし)が控除されて支払われます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 15,916 | 受取配当金 | 20,000 |
仮払法人税等 | 4,084 |
「個人事業主の所有している上場株式の配当金1万円が、税金20.315%差し引かれて振り込まれた。」
個人事業主の場合には、受取配当金は事業所得ではなく配当所得となるため、「事業主借」で処理をします。
国税15.315%のほかに地方税5%も控除されています。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 7,969 | 普通預金 | 10,000 |
以上、受取配当金についてご紹介しました。
受取配当金は、株式配当金や出資配当金などを処理する時に使う勘定科目であり、損益計算書の営業外収益に区分される勘定科目です。受取利息は、個人事業主の場合には「配当所得」となりますので「事業主借」で処理をします。
なお、個々の状況に応じて受取配当金と受取利息をあわせて「受取利息配当金」の勘定科目で処理する場合もあります。
もっとも効率の良い処理の方法については、税理士のアドバイスを受け、経理システムの構築に役立てましょう。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から受取配当金について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、受取配当金の処理について相談することができます。
クラウド会計ソフト freee会計