移動平均法とは|総平均法との違い・計算式をわかりやすく

公開日:2022年08月11日
最終更新日:2024年02月12日

この記事のポイント

  • 移動平均法とは、棚卸資産や有価証券等の資産の評価方法のひとつ。
  • 移動平均法は、棚卸資産の入庫のつど、計算し直した平均単価を単価とする。
  • 移動平均法を選択する場合は、評価方法の変更を届け出る必要がある。

 

移動平均法は、棚卸資産や有価証券等の資産を評価する方法です。

移動平均法では、資産を取得するたびに、直前の金額と新規取得分の合計額から平均単価を計算し、その計算し直した平均単価を単価とします。
 

移動平均法の豆知識

平均法とは、一定期間の仕入原価の平均を計算して、その平均原価で売上原価と棚卸資産の両方を計算する方法です。平均法には、移動平均法と総平均法があります。移動平均法とは、仕入や出荷によって在庫に変動があるたびに平均原価を計算し直す方法です。総平均法とは、期末に一括して平均原価を計算する方法です。
移動平均法は、一定期間の末日を待たなくても払出原価を把握できるというメリットがありますが、新たな棚卸資産を取得するたびに加重平均を求めなくてはならないため、総平均法より事務労力が必要になるというデメリットがあります。
棚卸資産の評価方法は、事業や棚卸資産の特性などから適切な方法を選んで決めることが大切です。どの評価方法を選択するかについては、税理士に相談することをおすすめします。

移動平均法とは

移動平均法は、棚卸資産や有価証券等の資産を評価する方法で、棚卸資産の場合であれば、仕入れる都度に計算し直した平均で計算する方法です。
期末の在庫金額は、期末の在庫品の単価に数量をかけて求めます。

期末の在庫金額=在庫品の単価×数量

在庫数量は、実地棚卸によって確定させ、在庫品の単価は原則として購入単価を用いますが、その算定方法が移動平均法であり、算定方法には移動平均方法以外にも以下のような方法があります。

先入先出法 先に仕入れた方から先に消費すると考えて計算する
移動平均法 仕入れる都度に計算し直した平均で計算する
棚卸資産の入庫の都度、直前の在庫金額とその合計数量で割ったそう平均単価を単価とする
総平均法 1カ月間(または1会計期間)に仕入れたものの平均で計算する
売価還元法 期末在庫の売価を計算し、当期の原価率で原価を引き直す方法
個別法 仕入れた材料ごとに価格が分かるようにしておく
最終仕入原価法 最後に仕入れた単価を期末の評価単価とする方法

最終仕入原価法は、会計基準では認められない方法ですが、法人税法上はとくに届出がなければ、最終仕入原価法を選択したものとされます。
また、中小会計指針では、期間損益上で著しい弊害がない場合には、最終仕入原価法によることもできるとされています。
したがって、最終仕入原価法以外の評価方法を選択する場合には、期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署に届けなければなりません。そして、継続して適用する必要があります。
なお、後入先出法は、「棚卸資産の評価の基準に関する会計基準」の改正(平成20年9月)により、棚卸資産の評価方法として認められなくなり、平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。

(1)移動平均法による評価

移動平均法は、棚卸資産の入庫の都度に平均原価を計算する方法で、以下のように計算します。

平均原価=(受入棚卸資産取得原価+在庫棚卸資産金額)÷(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)

つまり、平均原価が計算するたびに異なります。
たとえば、移動平均法による評価を行った場合の平均原価は、以下のようになります。

①期首時点の商品Aの残高は2,000(@20円×100個)
②4月30日に商品Aを@25円で150個仕入れた。
③5月31日に商品Aを200個売り上げた。
④6月30日に商品Aを@20円で50個仕入れた。
受入れ 払出し 残高 平均原価の算出
期首 2,000
(=@20×100個)
4月 3,750
(=@25×150個)
5,750
(=@23×250個)
@23円=(2,000+3,750)÷(100個+150個)
5月 4,600
(=@23×200個)
1,150
(=@23×50個)
6月 1,000
(=@20×50個)
2,150
(=@21.5×100個)
@21.5=(1,150+1,000)÷(50個+50個)

(2)移動平均法と総平均法との違い

棚卸資産の入庫の都度に平均原価を計算する方法が移動平均法であるのに対して、総平均法は、一定期間が経過した後、経過期間の平均原価をまとめて計算する方法です。
つまり、移動平均法と総平均法では、平均する時期と頻度が異なります。当然計算結果も異なります。
前述した事例で、総平均法によるとどのように平均原価を算定するかを見てみましょう。

①期首時点の商品Aの残高は2,000(@20円×100個)
②4月30日に商品Aを@25円で150個仕入れた。
③5月31日に商品Aを200個売り上げた。
④6月30日に商品Aを@20円で50個仕入れた。
・四半期ごとに平均原価を算定するとします。
受入れ 払出し 残高 平均原価の算出
期首 2,000
(=@20×100個)
4月 3,750
(=@25×150個)
5,750
5月 4,500
(=@22.5×200個)
1,250
6月 1,000
(=@20×50個)
2,250
(=@22.5×100個)
@22.5=(2,000+3,750+1,000)/(100個+150個+50個)

実際払出時点では、払出原価は決まっていません。6月の総受入量と金額が判明して、初めて総平均単価を計算できます。

(3)移動平均法のメリット

移動平均法では、常に平均原価が明確になっていますが、総平均法では、一定期間が経過するまで平均原価が分かりません。
したがって、移動平均法には、売却時に損益を把握でき、不規則的な価格変動の影響を中和できるというメリットがあります。

(4)移動平均法のデメリット

移動平均法は、入庫の都度、平均単価を計算する煩雑性がデメリットといえるでしょう。
受入があるたびに、平均原価の算出を行わなければならず、作業負担がかかることになります。

(5)暗号資産を移動平均法で算定するとどうなる?

暗号資産の必要経費に算入する価額は、原則として「総平均法」によって計算しますが、届出を行うことで移動平均法を算定することも可能です。
移動平均法を選択する時には、「所得税の暗号資産の評価方法の届出」が必要で、届出をしない場合には総平均法によって評価することとされています。

参照:国税庁「所得税の暗号資産の評価方法の届出手続」

たとえば、1BTC=100万円のとき、2BTCを購入、次に1BTC=80万円のときに2BTCを購入し、その後1BTC=120万円のときに3BTCを売却したケースを移動平均法で算定すると以下のようになります。

①1BTC=100万円のとき2BTCを購入:
購入単価は100万円
②1BTC=80万円のとき2BTCを購入
(200万円+160万円)/(2+2)=90万円

1BTC120万円のときに3BTCを売却しているため最終的な損益額は以下のようになります。
(120万円-90万円)×3=90万円

一方、総平均法で計算すると以下のようになります。

①1年間に購入したビットコインの合計:
4BTC
②1年間に購入した金額の合計:
100万円×2+80万円×2=360万円
③購入時の単価:
360万円÷4=90万円

1BTC120万円のときに3BTCを売却しているため最終的な損益額は以下のようになります。
(120万円-90万円)×3=90万円

まとめ

移動平均法は、入庫の都度、平均単価を計算する煩雑性がデメリットといえるでしょう。
ただし、常に最新の平均原価が把握できれば、売却時に損益を把握できるため意思決定を行いやすくなりますし、不規則的な価格変動の影響にも迅速に把握することができます。
したがって、作業の煩雑性を克服できるようであれば、移動平均法の選択を検討してみましょう。

移動平均法について相談する

freee税理士検索では、移動平均法について相談する税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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