棚卸とは|実地棚卸や棚卸資産についてわかりやすく

公開日:2019年04月04日
最終更新日:2022年03月16日

この記事のポイント

  • 「棚卸」とは在庫を持っている小売業・卸売業などの会社が決算時の商品量を確認する作業。
  • 棚卸資産とは、商品、製品、仕掛品などのいわゆる在庫をいう。
  • 棚卸資産の数量は、期末に実地棚卸をすることで確定する。

 

在庫を持っている小売業・卸売業の会社が、決算時において実際に手元にある商品量を確認することを「棚卸(実地棚卸)」といいます。
実地棚卸とは、実際に在庫の数を数えることです。そして在庫を数え終わったら在庫金額を算定します。この在庫のことを棚卸資産ともいいます。

期末には売れ残った商品がありますが、これらの商品は期末時点では売上に貢献していないので、これらの仕入れにかかった経費は売上原価に入れることができません。
そこで棚卸を行い、売れ残った商品をチェックする必要があるのです。

棚卸とは

在庫を持っている小売業・卸売業の会社が、決算時において実際に手元にある商品、製品、仕掛品、原材料などを確認することを「棚卸(実地棚卸)」といいます。
棚卸資産とは、一般に「在庫」とも呼ばれ、会社が営業活動を行うために一時的に保有している商品などをいいます。

(1)棚卸資産として処理するものは

棚卸資産には具体的に、次のようなものがあります。

①通常の営業過程において販売するために保有する資産
商品(流通業)、製品(製造業)など

②販売を目的として、現在製造中の資産
・半製品:製造途中でも販売可能
・仕掛品(建設業以外)、未成工事支出金(建設業):製造途中では販売不能

③販売目的のものを生産するために短期間に消費される資産
原材料、工場消耗品など

④販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき資産
貯蔵品(事務用消耗品、消耗工具、器具および備品)

これらの資産については、決算時に実際に在庫の数を数える作業である「実地棚卸」を行い、在庫を数え終わったら在庫金額を算定します。

(2)棚卸資産の取得原価とは

棚卸資産の取得原価には、購入代価だけでなく取得するための引取費用も加算されます。
引取費用のうち、運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料などは、取得価額に算入しなければなりませんが、検収費や整理費などについては、その合計額が購入代価の3%以内であれば、取得価額に含めなくてもよいとされています。

(3)棚卸資産の評価①「原価法」とは

棚卸資産の評価方法には、原価法と低価法があります。
原価法とは、購入代価または製造原価に引取費用などの付随費用を加算した金額(取得価額)をもとにして棚卸資産を評価する方法で、個別法、先入先出法、総平均法などがあります。

①個別法
個別法とは、取得原価の異なる棚卸試案を区別して計算し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法です。
棚卸資産を、個々の実際の取得価額をもって評価する方法です。

商品個々の実際の仕入や払出金額をそのまま計算する方法であるため、ものの流れと帳簿計算が完全に一致しますが、実務的に大変手間がかかります。個別に在庫管理することが適している宝石業・貴金属業や不動産販売業などにおいて用いられることが多い評価方法です。

②先入先出法
先入先出法とは、「先に仕入れた商品から先に販売される」と仮定し、期末に最も近い時期に取得したものから順次期末の棚卸資産になるとみなして、その取得価額を評価額とする方法です。

実際の物の流れに一致しやすいため、評価しやすいというメリットがありますが、物価の変動があった場合には、インフレ時には在庫単価が高くなることから原価計上が少なくなり結果として利益が多く計上されてしまいます。また逆にデフレ時には利益が少なく計上されることになります。

③総平均法
総平均法とは、期首棚卸資産の取得価額の総額と期中に取得した棚卸資産の取得価額の総額との合計額を総数量で割った単価によって評価する方法です。
計算方法は簡単ですし先入先出法のように物価変動に左右されにくいというメリットがありますが、一定期間経過後まで単価が確定しないというデメリットがあります。

④移動平均法
移動平均法とは、棚卸資産を仕入れるごとに、それまでの平均価額と合わせて計算しなおし、取得価額とその時にある棚卸資産の取得価額とを総平均して価額を求める評価方法です。仕入れるごとにタイムリーに平均価額を把握できる反面、計算に手間がかかります。
この方法を採用するためには、対応出来るシステム・体制を整備する必要があります。

⑤売価還元法
売価還元法とは、期末棚卸資産の販売価額の総額に、原価率を掛けて評価する方法です。
棚卸資産をグループに分けて、そのグループごとにその取得原価を売価で割ることで原価率を算定し、期末実地棚卸高の売価に原価率を掛けて期末棚卸資産の価額を算定します。

この方法は、一定時点で保有する棚卸の価額を算定することはできますが、適時に払出原価を算定することはできません。
したがって、取扱商品の多い百貨店・小売店などで用いられる方法です。

⑥最終仕入原価法
その事業年度の最後に取得したもの(期末に最も近い仕入時の金額)の単価で評価する方法です。
総平均法と同じく、期末まで計算できませんが、簡単に計算できる方法であり、税法上も集計上も、中小指針および中小要領で認められている評価方法なので、中小企業ではよく採用されています。
しかし、期末棚卸資産が、最終仕入送料を上回る場合には、期末棚卸試案の一部が実際に原価ではない金額で構成されてしまうというデメリットがあります。
したがって、上場企業では棚卸資産の大部分が最終の仕入単価で取得されている場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合だけ認められます。

(4)棚卸資産の評価②「低価法」とは

低価法とは、棚卸資産の評価を「原価法のうちいずれか1つの方法により評価した価額」と、期末における「時価」のうち、いずれか低い方の価額をもって評価する方法です。
低価法は、上場企業においては強制適用となっています。なお、低価法を適用した場合は、翌期首に振り戻しの処理(評価損を計上した期末仕訳の逆仕訳)が必要です。つまり、低価法を適用した場合であっても、翌期には再度取得価額に戻して評価し直すことになります。

(5)実地棚卸作業とは

決算における重要な業務のひとつとして、「実地棚卸」という作業があります。
実地棚卸とは、決算時において残っている棚卸資産がいくらあるのかを実際に数え、これに棚卸資産の単価を掛けて期末棚卸資産の金額を把握することをいいます。

会社は、1年が終わる期末に事業の成績をすべてまとめ、売上や利益を確定させなければなりません。しかし、在庫を持って商売を行う小売業・卸売業の場合には、期末でも通常は売れ残った商品があるものです。
売れ残った商品は翌期には売上に貢献することが予想されますが、今期(期末時点)では、売上に貢献していません。
そして売上に貢献しなかった商品は、その商品の仕入れにかかった経費は、売上原価に入れることはできないというルールがあります。
そこで、実地棚卸という売れ残った商品をすべてチェックして、取得原価を算出する作業を行う必要があるのです。

期末(決算時)に残った棚卸資産は、貸借対照表の流動資産に計上して次期以降に繰り越し、販売した期に費用(売上原価)として処理されることになります。

期末の在庫金額は、期末の在庫品の単価に数量をかけて求めます。
在庫品の単価は、原則として購入単価としますが、算定方法は前述した評価方法を示す必要があります。

期末の在庫金額=在庫品の単価×数量

仕入の時期がずれれば、単価が変わってくることもあります。したがって、棚卸資産として残っているものはいつ購入したもので、どの単価を設定すればいいかということを考慮する必要があります。

また、この時「販売価額が下がっていないか」という点も考慮に入れる必要があります。
たとえば在庫として長期に残ってしまった場合、販売価額を下げないと売れないことが考えられるからです。
その場合にはセールなどを実施し、正規の販売価格から値下げして販売することになるため、販売価額が下げることになります。
棚卸資産が、仕入れた価額よりも、販売価額の方が下がっていて含み損がある場合には、「棚卸資産評価損」を計上し、この実態を損益計算書に反映させる必要があります。

実地棚卸のポイント

これまで述べてきたように、棚卸は決算の時期に合わせて行います。
実地棚卸とは、一定時点(通常、期末)にある在庫について、実際に目で見て数量をカウントし、在庫がどれだけあるのかを確認する作業のことです。
倉庫や店舗にある在庫を全部数えるので、大変な作業です。場合によっては社員全員が総出で対応することもあります。

実地棚卸を行う理由は、商品の仕入や製品の製造などについて、仕入帳や商品有高帳、製造元帳などの帳簿などで帳簿上の在庫を管理している場合でも、商品などが出入りするなかでは、破損、紛失、盗難などから、実際の在庫が帳簿上の在庫の数と合わない場合があるからです。
そこで、定期的に実地棚卸を行うことにより、帳簿上の在庫数から実際の在庫数へ修正しておくための作業必要になるわけです。
なお、規模の大きな会社や商品アイテムや取扱い数が多い会社は、短期間の実地棚卸を行うケースが多く、四半期や半期ごと、会社によっては毎月実施しているところもあります。

(1)実地棚卸作業の準備

実地棚卸を正確に行うためには、事前に準備しておくことが重要です。事前準備が整っていたら、当日の実地棚卸はスムーズに行うことができるはずです。

準備すべきポイントは、以下の通りです。

①実地棚卸の責任者を決める(総指揮者および現場監督者)。
②実地棚卸日における棚卸しの対象範囲と商品別担当者、タイムスケジュールなどを記載した「実地棚卸計画書」および、実地棚卸をどのように行うかをまとめた「実地棚卸マニュアル」を作成し、関係者に配布する。
③必要に応じて、関係者を集め、実地棚卸の事前説明会を実施する。なお、実地棚卸は通常2人1組で行うことから、あらかじめそのペアを決めておく。
④実地棚卸やすいよう、商品・製品の整理整頓を行っておく。
⑤ビスやナットのような数の多いものは、重量換算法を使う。
重量換算法は、総重量÷1個の重量=数量で計算して、棚卸数を求める。

(2)実地棚卸作業の開始

事前準備が整っていたら、いよいよ実地棚卸作業の開始です。
実地棚卸作業は、一般的に以下のような流れで行います。

①総指揮者あるいは現場監督者により、当日のスケジュールや実際にカウントするペア、カウントする範囲を確認・伝達する。

②棚卸原票(実地棚卸を行うための記入用紙)に、在庫の品名、数量、保管場所などの情報を正しく記入し、この情報を集計して実際の数量を把握する。ペアのうち片方が在庫のカウント、もう片方が棚卸原票へ記入、といった流れで行なう。

③カウントミスや記入漏れがないかをチェックしたうえで、棚卸原票のうち1枚(通常は複写式のものを使用)を回収し、棚卸集計表に集計する。

④帳簿上の在庫数と、③の棚卸集計表に記入した数量に差異がないかどうかを確認し、もし差異があれば差異分析を行って最終的な在庫数量を確定する。

まとめ

以上、棚卸の作業手順、評価方法についてご紹介してきました。
これまで述べてきたように、棚卸資産の取り扱いは単純なものではなく、帳簿上の処理から実地棚卸、評価方法など、自社に適した評価基準や評価方法については、様々な視点から考える必要があります。
したがって、棚卸の考え方や業務手順、仕訳処理方法と期末評価方法などについては、税理士に相談して各論点を整理し、把握するようにして下さい。
また会社が経営を行ううえでは、一般的には手元にある商品や製品を販売することになりますが、品切れを防ぐためにはある一定量の商品を手元に置いておく必要があります。
しかしだからといって、必要以上の商品を手元に置いておくと売れ残りが発生してしまい経営上好ましくありませんので、会社にとって商品の適正量を考える必要があります。この点についても、税理士の意見を取り入れながら検討するのがおすすめです。

棚卸について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、棚卸資産の評価方法や実地棚卸作業について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
棚卸について相談できる税理士をさがす

監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計



クラウド会計ソフト freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なうことができます。ぜひお試しください!




PageTop