公開日:2023年06月30日
最終更新日:2023年11月13日
出資者は株式(合同会社では持分)を取得することで、一定の議決権を行使することができるようになります。
そして、この議決権の割合によっては、事業経営に大きな影響を与えることがありますので、出資者を誰にするか、出資割合はどうするかは、設立前に十分考慮する必要があります。
株式会社の設立方法としては、第三者から出資者を募集する「募集設立」と発起人のみで手続きを行う「発起設立」があります。
募集設立は、発起人以外の第三者から出資者を募るので手間がかかりますし、煩雑な手続きが必要となります。
そこで、会社設立は発起設立で行うケースがほとんどで、発起設立の場合には発起人が出資者となります。
出資者は、株式を取得することで一定の議決権を行使できるようになります。
議決権とは、株主の権利のひとつです。
株式会社は、発起人が定款を作成し、出資を行い、設立登記をして設立します。そして、発起人が会社設立時の株主となります。
株主は、株式を保有することで株式の引受価額を限度として責任を負うとともに、自益権と共益権という権利を有することになります。
自益権とは、株主が会社から直接経済的な利益を受ける権利(剰余金の配当を受ける権利など)をいい、共益権とは、会社の経営に参与する権利をいいます。
この共益権には、株主総会における議決権や取締役の業務執行等を監督・是正する権利が含まれます。
議決権比率とは、議決権総数に対する議決権の割合です。
会社法では、議決権比率によって会社経営に対する権利を認めています。
たとえば、取締役の選任・解任は50%超、定款の変更には3分の2超の議決権の賛同があれば、可決することができます。
設立時には、特別決議も議決可能な出資総額2/3以上を確保しておけば、設立時の役員以外からの予期せぬ議決を回避することができるので、安定的な経営状態を保つことができるといえるでしょう。
なお、持株比率とは、ある企業の発行済株式総数に対して特定の株主が保有している株数の割合をいい、議決権比率とは異なります。
株主総会は、主に①普通決議、②特別決議、③特殊決議の3つに区分され、それぞれ議決に必要な最低議決権数が異なります。
①普通決議 議決権を行使することができる株主の過半数を有する株主が出席すれば株主総会は成立し、出席した株主の議決権の過半数が賛成すれば、その事項について決定されます。 ②特別決議 ③特殊決議 |
定足数 | 決議要件 | 主な決議事項 | |
普通決議① | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 (定款で撤廃・緩和が可能) |
出席した株主の議決権の過半数 | ・役員の報酬・退職・慰労金の支給 ・剰余金の配当 ・自己株式の取得 |
普通決議② (役員の選任 ・解任) |
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 (定款で1/3以上の割合を定めることも可能) |
出席した株主の議決権の過半数 (定款で過半数を上回る割合を定めることも可能) |
・取締役、監査役、会計参与の選任 ・取締役(累積投票によって選任された者を除く)、会計参与の解任 |
特別決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 (定款で1/3以上の割合を定めることも可能) |
出席した株主の議決権の2/3以上 (定款で2/3以上の割合を定めることも可能) |
・定款の変更 ・事業の譲渡等、解散 ・組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付 ・譲渡制限株式の買取り ・相続人等に対する売渡請求 ・特定の株主からの自己株式の取得 ・募集株式の募集事項の決定など |
特殊決議 | なし | 要件①議決権を行使できる株主の半数以上(定款で半数を上回る割合を定めることが可能) | ・発行する全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更など |
要件②議決権を行使できる株主の議決権の2/3以上(定款で2/3を上回る割合を定めることが可能) |
定款数要件は、定款によって緩和したり撤廃したりすることが可能です。
多くの会社では、定款の株主総会の決議を定めた条項について、以下のように定めており、定足数要件を撤廃及び緩和しています。
普通決議 「株主総会の決議(普通決議)は、法令又は定款に別段の定めがある場合のほか、出席した議決権のある株主の議決権の過半数をもって決する。」 特別決議 |
自分が役員となり、自由に会社を動かしたいと思うのであれば、自分が100%出資して株主となるのが、安心です。
しかし、それだけの金額を集めるのが難しいのであれば、家族や第三者に出資してもらうことになります。
ただし、その場合には特別決議も議決可能となる「出資総額の3分の2以上」を確保することをおすすめします。
たとえば、AさんとBさんが発起人となり、それぞれ50万円ずつ金銭出資を行い、100株ずつ株式を引き受けるケース(議決権合計200個)で考えてみましょう。
株主Aさんだけが株主総会に出席した場合で、定足数要件がある時には、株主総会の決議は成立しません。なぜなら、株主総会で決議をするためには株主Bさんの出席が必要となるからです。
しかし、だからと言って定款で定足数要件を撤廃してしまうと、株主の誰か1人でも出席すれば、株主総会の決議が可能となってしまい、株主Aさんの意思だけで会社の経営が決まってしまうことになります。
次に、株主AさんとBさんが出席した場合には、株主総会の定足数要件は満たされます。
しかし、普通決議は出席した株主の議決権の過半数が賛成しなければ、決定しません。
したがって、株主AさんとBさんの意見が異なった場合には、双方過半数とはならず、決議事項が何も決まらないことになってしまいます。
株主AさんとBさんは、設立当時からずっと仲良く意見の食い違いがなければ、何も問題ないかもしれませんが、そのような関係が長く続くという保証はありません。
議決権は、通常、株式1株について1個の議決権が付されています。
会社設立にあたって、他人に株式を引き受けてもらう、または他人に取締役に就任してもらう場合には、議決権が事業経営に与える影響を良く理解し、検討する必要があります。
代表者としては、空く博徒も過半数の議決権を確保しなければ、その後の会社運営にリスクを抱えることになります。できれば、特別決議も議決可能な2/3以上を確保しておいた方が安心でしょう。
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