合同会社の設立のメリット・デメリットと手続きの方法

公開日:2018年10月31日
最終更新日:2023年08月31日

この記事のポイント

  • 合同会社は、日本版のLLCと呼ばれる。
  • 合同会社は、モノよりヒトを重視した会社形態である。
  • 合同会社は、大きな資本を必要としないビジネスに向いている。

 

合同会社は、株式会社のように株式総会などの機関を設置する必要がなく、また設立費用を抑えることができるなどのメリットがあることから、最近は株式会社ではなく合同会社を選択するケースも増えています。

 

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合同会社とは

合同会社は、日本版LLC(Limited Liability Company)とも呼ばれる、比較的新しい形態の会社です。
株式会社のように株主総会や取締役会などの機関を設置する必要がなく、設立費用が安く、かつ手続きも比較的簡単であるなど多くのメリットがあることから、合同会社の設立件数は増加傾向にあり、有名企業の中にも合同会社として経営している企業が多くあります。

平成25 平成26 平成27 平成28 平成29 平成30 令和元 令和2 令和3 令和4
14,581 19,808 22,223 23,787 27,270 29,076 30,566 33,236 37,072 37,127

参照:e-Stat「合同会社の登記の件数(平成25年~令和4年)」

合同会社の設立数が増加傾向にあることについて、東京商工リサーチでは、「新設法人の4社に1社を占めるまでに増えた合同会社は、設立コストが安く、株主総会も不要など、経営の自由度が高く、メリットが浸透してきたようだ。」と分析しています。

参照:東京商工リサーチ「2020年「全国新設法人動向」調査」

(1)合同会社の特徴

合同会社には、「社員自身が出資者(株主)である」「出資者の責任範囲が有限責任」など、株式会社等と比較していくつかの特徴があります。

社員自身が出資者(株主)である
合同会社と株式会社の一番の違いは、「経営者と出資者が同一である」ということです。
株式会社の場合は、出資者は株主であり経営者ではありません。つまり、原則として所有と経営が分離しています。
したがって、少なくとも株主総会、取締役会の設置が必要となります。
一方合同会社は、株式会社のような株主総会、取締役会を設置しなければならないなどの法規制がほとんどないという特徴があります。
株式会社の最高意思決定機関が株主総会であるのに対して、合同会社の最高意思決定機関は総社員です。原則として出資者全員が業務を執行する権利を持った代表社員です。
したがって、総社員の過半数の同意あれば意思決定を行うことができるので、株式会社よりスムーズな意思決定が可能となります。

出資者の責任範囲が「有限責任」
合同会社の出資者の責任範囲は株式会社と同様、有限責任です。
出資者が出資額までしか責任を負わないので、会社が万が一倒産しても、会社の債務を個人財産で返済する義務はありません。
※ただし、代表者個人が会社の保証人となっているケースでは、会社の債務であっても、返済する義務が生じることになります。
なお、合名会社の場合は、全員が無限責任社員であり、合資会社の一部にも無限責任社員が存在します。
無限責任とは、会社が倒産してしまった場合、会社の債務(借金)であっても、出資者の個人財産などから全額を返済しなければならないという考え方です。
つまり、出資者は出資金以上の責任を負うリスクがあるということになります。

会社の種類 合同会社(LLC) 株式会社 合名会社 合資会社
出資者の
責任範囲
有限責任 有限責任 無限責任 有限責任または
無限責任
最高意思
決定機関
総社員の同意等 総社員の同意等 総社員の同意等 総社員の同意等

(2)合同会社のメリット

合同会社は、株式会社より少額・短期間で設立することができるというメリットの他、柔軟な機関設計が可能であるなど多くのメリットがあります。

設立費用が安い
株式会社では、設立時登録免許税15万円~、定款費用で9万円~かかりますが、合同会社では、登録免許税6万円~、定款費用4万円程度で設立することができます。

会社の種類 合同会社(LLC) 株式会社 合名会社 合資会社
定款費用 4万~ 9万~ 4万~ 4万~
登録免許料 6万~ 15万~ 6万 6万

定款費用
合同会社を設立する場合も定款を作成する必要はありますが、公証人の認証が必要ないので、認証手数料はかかりません。

登録免許料
合同会社の設立登記に関する登録免許税の金額は、資本金の金額×0.7%もしくは6万円のいずれか高い金額が必要です。
株式会社の場合には、登録免許税として資本金の金額×0.7%もしくは15万円のいずれか高い金額が必要です。

参照:国税庁「登録免許税の税額表」

設立手続き
株式会社より合同会社の方が、比較的短時間で済ませることができます。
社員となる人が定款を作成し、全員が記名押印しますが、株式会社のように公証役場で認証を受ける必要はありません。

決算の公告義務がない
株式会社には決算公告の義務があり、官報によって決算公告する場合には、一般的な場合でも6万円ほどの費用がかかります。一方、合同会社には決算の広告義務がないので、決算公告に関する官報掲載費用を考慮する必要はありません。(※ただし、現状は決算公告していない株式会社も多くあります)

役員の変更登記が必要ない
株式会社の役員の任期は、原則として取締役2年、監査役4年です。
そして同一人物が引き続き取締役、監査役に就くときにも役員変更登記が必要になり、その都度登記費用がかかります。
一方、合同会社では任期はありません。

「有限責任」なのでリスク小
合同会社の出資者の責任範囲は株式会社と同様、有限責任です。
したがって、会社が倒産しても自分の出資金が返ってこないだけで済むので、さまざまな事業へのチャレンジがしやすいといえます。

たとえば、介護サービス業・(介護保険適用)介護タクシー業や建設業は、許認可要件で法人格が必要なため、株式会社よりもローコストで設立ができる合同会社が選択するケースが増えています。
また、ITサービス業やコンサルタント業、保険代理店業などでも、合同会社の運営の自由さから合同会社を選択するケースが増えています。

(3)合同会社のデメリット

合同会社は、メリットの多い会社形態ではありますが、株式会社と比較すると「知名度が低い」「上場できない」などのデメリットがあります。
最終的には、メリット・デメリットを比較検討して、自社の事業内容に沿って会社形態を決定することが必要です。

知名度が低い
合同会社は、株式会社と比較すると知名度が低く、信用の面で有利とはいえません。
株式会社はポピュラーな会社形態であり、取引先に対して安心感を与えることができます。
ただし、合同会社の設立件数の増加に伴い、今後は、合同会社の知名度は上昇していくものと思われるのであまり気にする必要はないかもしれません。

上場できない
合同会社は、株式会社のように証券市場で上場することができません。
したがって、大規模な資金調達は難しいといえます。

ただ、合同会社を設立した後に、株式会社に変更したくなった場合には、いつでも株式会社に変更することが可能です。
したがって、最初は合同会社として設立し、事業が軌道に乗ってきて資金調達が必要になれば、その時には株式会社に変更することを検討するというのでもよいでしょう。

合同会社設立の流れ

合同会社は、出資して業務を執行する社員が1名以上いれば設立することができます。
出資者全員がそれぞれ1円以上の出資金を支払います。
これまでもご紹介してきたとおり、合同会社における「社員」は、出資者であり経営者です。出資をしない社員は存在しませんし、出資者が業務執行社員として出資者全員で会社の業務を執行していくことになります。
なお、業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その他の人に業務執行する権利を持たせないとすることも可能です。

定款の作成から資本金の払込など、出資者全員が納得いくように、代表者が意見をうまくまとめて効率よく手続きを進めるようにしましょう。

(1)出資者を決める

合同会社は、出資者は社員と呼ばれ、経営に携わります。
出資者は個人ではなく、法人もなることができます。
法人が社員となる場合には、その法人から職務を執行する人を1名選びます。そしてその人の氏名や住所を他の社員に通知します。

(2)会社の基本事項の決定

会社の基本的な事項を決定します。

・目的
・商号
・本店所在地
・社員の氏名または名称および住所
・代表社員
・社員全員を有限責任社員とする旨の記載
・社員の出資およびその価額または評価の標準
・業務執行権のない社員

商号
営業上使用する会社の名称のことです。
商号は、基本的に自由に決めることができますが、「名称には必ず「合同会社」を入れなければならない」「ほかの法令によって仕様が禁止されている文字(銀行や信託など)を使用することができない」などのルールに則して決定する必要があります。
また、同一場所に同一商号の登記をすることはできませんので、その点は調査する必要があります。

本店
事業を行ううえで主軸となる事業所のことで、その所在場所を「本店の所在地」といいます。
本店の所在地といっても、専用のオフィスを用意する必要はなく、代表者の自宅を本店の所在場所とすることも可能です。
なお、定款では、本店所在地は最小行政区画である市町村まで記載すればよいことになっています。
ただし、会社設立登記申請書には本店所在地の全部を記載することが必要なので、定款に市区町村まで記載した場合には、別途本店所在地を決定した議事録(決定書)が添付する必要があります。

代表者
すべての出資者が会社の代表権を持つと、取引先から見て最高責任者が誰なのか分からないことがあります。そこで、社員の中から代表者を選び、定款ですべての社員を代表する「代表社員」を決めることができます。

業務執行権のない社員
経営に参加しない社員がいる場合には、定款で業務執行権のある社員、業務執行権のない社員を決めることができます。この場合には、業務執行権のある社員は「業務執行社員」、業務執行権の社員は「社員」です。

(3)定款の作成・認証

定款とは、会社の組織や運営方法などのルールを定めたもので、国でいうと憲法のようなものです。
合同会社では、定款自治の範囲が広いので、この定款の作成は極めて重要となります。
とくに定款で記載されていないと効力が生じない「相対的記載事項」については、十分な注意が必要です。
定款は、会社を設立するときには必ず作成しなければなりません。
定款に記載すべき事項としては、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類があります。

「絶対的記載事項」は、定款に必ず記載しなければならない事項で、事業目的、商号、本店所在地などの事項が該当します。これらが記載されていない場合には、定款自体が無効となります。

「相対的記載事項」とは、定款に記載しなければ効力を持たないとされている事項で、持ち分の譲渡、業務の執行、利益相反取引の制限や社員の損益分配の割合などの規定が該当します。
合同会社では、定款自治の範囲が広いので、相対的記載事項(定款で記載がないと効力が生じない事項)については、十分に検討し作成しましょう。

「任意的記載事項」は、法律の規定に違反しなければ任意に記載することができる事項で、事業年度、社員総会を開催する際の規定などが該当します。
定款に記載しなくても定款自体の効力に影響がなく、定款以外で定めることもできます。

絶対的記載事項 相対的記載事項 任意的記載事項
定款に絶対に記載しなければならない事項 法律の規定によって、定款に規定がなければその効力を生じない 法律に違反しないもので、任意で記載できる事項
・目的
・商号
・本店の所在地
・社員の氏名(名称)と住所
・社員が有限責任社員であることを示す記載
・社員の出資の目的と出資の価額または評価の標準
・業務執行社員の定め
・代表社員の定め
・出資の払戻しの方法についての定め
・解散事由についての定め
・公告方法についての定め
・事業年度
・役員報酬 等

定款は社員となる人が作成して、全員がこれに記名押印します。
株式会社と違って、公証役場で認証を受ける必要はありません。

(4)会社の代表印をつくる

会社の代表印は、登記の申請書に押印すべき代表社員が、本店を管轄する登記所に届出する必要があります。
したがって、代表印は登記所に登記申請をする前に作成しておく必要があります。
代表印の届出をする時期ですが、会社設立登記の申請と同時に行うのが一般的です。

(5)個人の印鑑証明書をとる

代表社員の印鑑登録証明書(個人の実印)を準備します。
個人実印の印鑑登録証明書は、印鑑登録した役所で申請すれば入手できます。
この印鑑登録証明書は、登記申請書類に添付するために必要となるものです。

(6)出資金を払込む

出資金を準備し、払込みをします。
具体的には、出資者個人の銀行口座に自分の出資金分を振込むことになります。
この払込みされた範囲で、自由に資本金の額を決定することができますが、資本金の額は0円以上である必要があります。ただし、現実的には資本金の額が0円の会社と取引しようとする人は少ないでしょうから、その点については注意が必要です。

なお、節税という観点からすると、資本金は1,000万円未満の方が法人住民税の均等割を安くすることができます。
法人住民税の均等割とは、会社が黒字でも赤字でも関係なく毎期支払わなければならない税金のことで、資本金と従業員の数によって、納税額が変わります。

法人住民税の均等割は、一般的には7万円(道府県民税分2万円と市町村民税5万円)と言われています。この7万円は、最低水準(資本金等が1,000万円以下、従業員数50人以下)であり、資本金等の額や従業員の数によって、均等割の税額は変化します。
1,000万円を超えると、均等割額は18万円となります。なお、1億円を超えると均等割額は年額29万円となります。

また、資本金が1億円以下の会社の場合には、税務上は「中小企業」と位置付けられ、多くの優遇措置を受けることができます。
※ただし、親会社の資本金が5億円以上で、その親会社が株式を100%保有する完全子会社を設立した場合は、その子会社は実質的には中小企業ではないとみなされて、一定の優遇措置の適用が制限されます。

資本金1億円以下の中小企業のメリットの一例

①少額資産の減価償却制度
通常、減価償却資産は、減価償却資産として資産計上し、法定耐用年数に従って減価償却します。
しかし、資本金1億円未満の会社の場合、取得価額が30万円未満の減価償却資産については、すぐに損金算入することができます。

参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

②法人税の中小企業軽減税率の適用
中小企業者等の年所得800万円以下の部分に適用される法人税が軽減されます。

参照:国税庁「法人税の税率」

③中小企業等投資促進税制
機械装置等の対象設備を取得や製作等をした場合に、特別償却または税額控除が適用されます。

参照:国税庁「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」

(7)設立登記を申請する

会社が法的に成立するためには本店の所在地を管轄する法務局において登記の申請をする必要があります。
設立登記では、以下の書類が必要になります。

・設立登記申請書
・定款
・代表社員の就任承諾書
・代表社員、本店所在地、資本金を決定したことを証する書面
・払込みがあったことを証する書面(出資金を振り込んだ通帳のコピーなど)
・資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
・登記すべき事項を入力したCD-R
・登録免除税(資本金の金額×0.7%もしくは6万円)

参照:法務局「合同会社(設立)」

(8)登記事項証明書を取得する

登記申請が済んだら、印鑑カードの交付を申請します。

この印鑑カードでは、「法人の印鑑証明書」の交付を受けることができます。銀行口座の開設の際に必要となりますので交付を受けておきましょう。

また、登記完了後は、登記事項申請書を取得できます。
登記事項申請書も、銀行口座の開設や法人税の設立届や社会保険の新規適用届の添付書類として必要になりますので、3~4通取得しておくことをおすすめします。

まとめ

以上、合同会社(LLC)のメリット・デメリット・設立手続きについて説明しました。合同会社は株式会社と比較すると、知名度が低い等のデメリットはありますが、定款自治で事業を柔軟に運営することができる、社員が有限責任なのでリスクが小さいなど多くのメリットがあります。大きな資本を必要としない専門的なサービス事業の場合には、物的資産より人的資産が中心となりますから、専門的なサービス事業で起業する場合には合同会社の設立を検討してみることをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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