公開日:2019年07月10日
最終更新日:2023年10月17日
「起業したい!」と思った時には、いきなり行動を起こさず、しっかりとした事前準備が必要です。行動力、営業力、資金力などを高めることはもちろん、必要な知識や情報を幅広く集めることも必要となります。
ここでは、起業する前に最低限決めておきたい7つのポイントをご紹介します。
自分で考え、自分で利益を生み出す「起業」は、大きなやりがいと成果をもたらしてくれるとても素晴らしいことです。
しかし、2021年の休廃業・解散件数は、民間調査が開始された2000年以降で過去3番目の高水準となっています。
また、宿泊業をはじめとする各業種において感染症流行前と比べて借入金月商倍率が上昇しており、さらに依然として人手不足の状況が続いていることも、あわせて指摘されています。
起業への情熱が先行してしまい、情報収集を行うことや事業計画を立てることがおろそかになってしまっているケースがあります。
しかし、経営者は常に問題意識を持って物事を見ることが大切です。
そこで起業前には自身のビジネスについて、客観的な事実を裏づけにして仮説を立て、事業計画を立てることが重要です。
そして、事業計画を策定するうえで必要なのが、綿密な情報収集です。
情報収集の方法はさまざまですが、経済誌や業界紙、テレビ、ネットなど複数のメディアを使い分けてコアな情報を得るよう、心がけましょう。
専門的な事業でない限り、顧客は一般的な人々であることがほとんどですが、「一般的な人々のニーズ」は新聞、雑誌、ネットなどを見渡すことで具体的なイメージが浮かび上がるものです。ニーズを正確に把握することは、求める事業を行ううえでも「誰に、何を、どうやって売るか」といった指針にもなります。
飲食店などを開業するのであれば、候補地の立地や人の流れ、料理の質や価格帯なども重要な情報収集ポイントです。
ただ、成長したビジネスのなかには、世の中のニーズがないと思われていた商品やサービスが、ニーズを呼び起こし、成功したというケースも多々あります。要は「喜んでくれる人がいる」「価値があること」が、ビジネスになるということです。
ですから、情報収集をする時には、一旦「売れるのか」という観点を捨てて「このビジネスには、価値があるのか」「喜んでくれる人がいるのか」ということに集中してみましょう。
起業について考え始めると、不安に感じるのが「お金」です。
「起業しても、売上がなかったらどうしよう…」と考え始めると、ますます不安になってしまいます。
事業を行ううえでは、経営全般に関わる知識、計数感覚(企業活動と計数の動きを関連付けて考えることができる能力)が必須です。
特に決算書を読めるようになると、決算書から読み取れる数字と企業活動のつながりを理解し、頭のなかでシミュレーションし「利益を増やすためには何をすればよいのか」が具体的に分かるようになります。
ビジネスで成功した人のなかで、会計の数字が読めないということはまず考えられません。細かいルールを知らなくても、最低限おさえるべきポイントについては理解しておく必要があります。
体系的な知識を身につけるためには、簿記などから学ぶのも有効ですが、会計ソフトを活用すれば、収益レポート、費用レポートなどで経営状況を確認することができます。
ただし、これらのレポートを見る上で必要な最低限の計数感覚は必要となります。
起業に精通している税理士に相談すれば、起業に関する心構えから税務に関する知識、事業計画書の作成ポイントなどについてサポートを受けることができます。
また、独立・開業支援を行う商工会議所やハローワークのセミナーなどを利用するのもよいでしょう。
自分自身の事業の方向性、販路、社会的意義などがイメージできたら、それを事業計画として具体的にアウトプットしていきます。起業してから3年間程度の計画を立てるとイメージしやすいでしょう。
事業計画といっても、今すぐに完璧な計画を立てる必要はありません。もちろん、じっくり目標を考えその目標を達成するための方法を考えることは大切ですが、実際に事業を行ってみると目標はどんどん変わるものです。
ですからまずは仮の目標を決めて行動したり情報を集めたりしながら、目標と計画をブラッシュアップしてみましょう。
経営理念から考えてもいいですし、まずは生きるうえで必要な金額という観点から考えても構いません。理屈で考えるより「何となく、これくらい売上を上げたい」という直感でも構いません。
また、起業したあと販路を開拓し事業を成長させるためには、事業に共感し共にリスクを負って進んでくれる補佐役(出資者や共同経営者)が必要となることがあります。
補佐役には、計画的に事業を推進するという説明を行わなければなりません。
資本構成はどうするか、将来の増資計画はあるか、役員構成はどうするかなど、明確な事業計画を作成し情報共有することが必要になります。
事業計画は、最終的には一件の「最善計画」といえるようになるまで検討します。
「これが最善の計画だ」と自分自身納得できるよう、十分に情報収集し再検討した計画を立てることで、誰に対しても自身をもって説明することができるようになります。
事業計画は、起業前に決めて作成しておかなければならないものではありません。しかし、目標と計画は、自分自身を行動させる力があります。
ぜひ、取り組んでみてください。
起業するということは、さまざまなリスクが伴います。
サラリーマンであるなら、今までは月々入ってきていた給与が入らなくなります。つまり、起業後は安定した収入が保証されないということになります。また、大きな病気やケガをして仕事ができなくなることもあるでしょう。そういう時に備えて貯金をすることも必要となりますし、老後の生活資金の確保も、自分で何とかしなければならなくなります。
これらのリスクを十分理解したうえで「やはり起業したい!」と思ったら、次に考えるのは、どのような形態で起業をするかということです。
個人事業主のメリット 個人事業主は設立費用などがほとんどかからないので、小規模で始めて事業を軌道に乗せてから法人化を考えたい、という人は個人事業主で起業するのがおすすめです。 個人事業主のメリット・デメリットは、主に以下のようなものがあります。 ① 起業・設立費が安い ② 均等割がない ③ 確定申告が楽 ④ 消費税の免税制度を有利に使える ⑤ 毎日の経理作業がラク |
法人のメリット
法人化するメリットは、節税できる、社会的な信用を得ることができるなどさまざまです。売上が上がってきたら、個人事業主でいるより法人化した方がメリットは多くなります。
① 税金を安くすることができる 個人と会社では、税金のかかり方が違います。 個人では、売上から必要経費を差し引いた残りが所得となり、これに対して所得税や住民税が課せられます。 一方法人化すると、事業で得られた利益はすべて会社の売上となり、社長個人の所得は会社から支払われる報酬のみとなります。そして社長個人の所得に対して個人の所得税や住民税が課せられるのです。 個人事業主か法人化するかを検討する際には、社長個人で支払う所得税や住民税、会社で支払う法人税・住民税を合算し、個人事業主の所得税や住民税と比較してみることが大切です。 ② 赤字を繰越すことができる ③ 資金調達が有利 ④ 社会的な信用を得られる ⑤事業承継がスムーズ |
起業する際には、「起業資金」「運転資金」「当面の生活費」の3つの資金を把握して、自己資金でどこまでまかなえるかを検討します。
いくら用意すべきかについては、個々の状況によりますが、3~6カ月程度の生活費(家賃、光熱費、通信費、交通費、給与)は見ておくと安心でしょう。
できれば、起業資金の50%は自己資金で用意するのが理想で、足りない資金については借入を検討します。
起業前の個人に融資をしてくれる金融機関は、なかなかありませんが、そんな時に活用したいのが、日本政策金融公庫の創業融資制度です。
日本政策金融公庫とは、株式の100%を国が常時保有する特殊な会社で、起業前または起業間もない会社でも、融資を受けられる可能性があります。
土地や家屋を売却して現金化することを検討する人もいますが、あまりおすすめできません。資金繰りが悪化した時の備えという点から、土地や家屋の売却は最終手段と考えておきたいものです。
事業を行ううえでは、多くの場合は、請求書を発行後一定期間後に取引先が振り込みなどで、代金を支払います。
ところが、取引先が約束した日に振り込んでこないこともあります。
そのようなことが何度も起きると、資金繰りが悪化してしまうことがあります。
つまり、帳簿上は黒字でも手元に資金がなくなってしまうことがあるわけです。そうなれば、事業はたちまち立ち行かなくなってしまいます。
反対に、帳簿上は赤字でも、借入などで資金を用意できれば、事業は続けることができます。
したがって、事業を行ううえでは、売上や利益だけでなく、取引先の支払能力にも注意し、早めに資金繰りの予測を立て、何をすれば会社を守ることができるのかを、常に意識することが大切です。
起業したら、サラリーマンのように毎月の給与をもらうことができなくなります。
そこで、起業した後どのような税金がかかるのかという知識や、資金繰りを把握するための会計・経理業務について知っておく必要があります。
会計・経理作業とは、出納業務と会計業務、給与の支払や税金の納付など、お金に関する作業全般をいいます。
基本的には、日々の取引を正確に記録することです。
現金を支払ったり商品の購入・引渡をしたり、納税をしたりといったお金が動く場面を記録していくことが必要です。
会社でも個人事業主でも、これらの作業を正確に行うことが必要ですが、「クラウド会計ソフト freee会計」を活用して管理することで、作業を効率化することができます。青色申告をする際には、現金出納帳、総勘定元帳、仕訳帳などを作成する必要がありますが、「クラウド会計ソフト freee会計」ならこれらの帳簿もほぼ自動で作成することができます。
起業に必要な手続きは、個人事業主か会社か大きく異なりますが、会社を設立する方が多くの手続きが必要となります。
個人事業主として開業する場合には、会社を設立する際に必要となる定款の認証や登記の申請は必要ありませんが、税務署や都道府県に提出しなければならない書類があります。
①個人事業の開廃業届出書 個人事業主が開業する際には、まず「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を納税地の税務署に提出しなければなりません。 ②所得税の青色申告承認申請書 ③事業開始等申告書 |
▶ 個人事業主として開業するには?必要な届出・起業資金・確定申告
会社を設立するためには、商号や定款を作成しなければなりません。
定款を作成したら公証役場に認証を受けに行き、法務局に登記の申請をする必要があり、また、税務署に法人設立届出書や法人の設立届出書(地方税)などを提出しなければなりません。
以上、起業前に知っておきたい7つのポイントについてご紹介しました。
起業をするということは、多くのメリットを享受できるとともに、さまざまなリスクも伴います。一攫千金の夢があると同時に、収入が不安定になるというリスクも抱えることになるため、節税対策などについても検討する必要があります。
起業で失敗しないためには、ここでご紹介したポイントを踏まえ、成功するための準備や計画を用意周到に行うことが大切です。
個人事業主として起業する際にも、確定申告は必要ですし適切な節税対策を行って利益を上げていかなければなりません。
顧問税理士がいれば、経営状態を常に把握できるため、状況に応じた効果的な節税対策についてアドバイスがもらえるのはもちろん、確定申告もスムーズに行うことができます。
会社を設立する際には、設立前から税理士に相談するのがおすすめです。
設立時期によって節税できるケースもありますし、前述したとおり個人事業主としてスタートして、その後法人成りした方が、メリットがあることもありますし、資本金の額や事業年度の決め方で、起業後に税負担が変わることもあります。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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