公開日:2019年12月26日
最終更新日:2022年07月05日
NPOとは、「Non-Profit Organization」の略で民間の非営利組織のことをいいます。
平成10年(1998年)に市民の自由な社会貢献活動を促進するためにNPO法(特定非営利活動促進法)が施行され、市民の公益活動が推進されることとなりました。
NPO法はこの後数回改正され、平成13年(2001年)には、税制上の優遇措置を盛り込んだ「認定NPO法人制度」ができました。
この記事では、NPO活動やNPO法人の意味、設立するための手続きや必要書類などについてご紹介します。
参照:内閣府「改正NPO法の概要」
NPO活動の「NPO」は、「Non-Profit Organization」の略です。
「Non-Profit」(非営利)とは、剰余金、利益を構成員に分配しないことを意味します。
運営に必要な職員の人件費や事務所の家賃などは必要経費なので、ここでいう剰余金や利益の分配には当たりません。
NPO法人というと「ボランティア」というイメージを持つ人も多いと思います。これはNPO法人の「非営利」という言葉が、ボランティアの「無償」という意味に誤解されているようですが「無償」と「非営利」は異なります。
「非営利」とは、事業収益を上げてそこから諸経費(人件費含む)を差し引き、それで利益が残ればそれは次の活動に使う資金にすることをいいます。
つまり、「非営利」とは会社のように株主に配当するなど、利益を上げ分配することを目的としてはいけないという意味です。
確かにNPO法人はボランティア活動を行い、社会貢献することを目的としていますが、非営利活動の意味は無償ということではありません。
NPO法人は、非営利でも収益を上げても良いのです。それに、そもそもボランティア自体は無償である必要はなく有償ボランティアでも構わないのです。
NPOとNGOとの違いについてですが、NGOとは「Non-Governmental Organization(非政府組織)」の略で、広く貧困、飢餓、平和、人道などに関して国際的に活動する民間組織のことであり、もともとは国連の場で政府組織と区分されるための言葉です。NGOも広い意味ではNPOのひとつということができますし、NGOもNPOも非営利の民間団体という点では共通しますが、活動の場が異なるということになります。
NPO法(特定非営利活動促進法)は、多様な市民団体に幅広く法人格を与え、その公益活動を促進・支援するための法律です。
それまで市民団体は任意団体であるケースがほとんどで、法人格がなく法律の保護を受けられないことが、たびたび問題点として指摘されてきました。
しかし、平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災での市民団体の活動が注目されたことをきっかけに、国会議員が市民団体と積極的に意見交換を重ねるようになり、立法化につながったという経緯があります。
NPO法人になると、任意団体と比較して社会的な役割を担う組織として明確化され、団体自体の社会的信用が高まります。
法人格を与えられることで、法人名で各種契約をすることができますし、法人名で銀行口座を開設したり借入したりすることもできるようになります。
一方、NPO法人として法人格を与えられることで、さまざまな義務も生じます。
会計はNPO法に定められた会計の原則にしたがって行わなければなりませんし、運営は定款通りに行う必要があります。また、定款を変更する時には総会の議決を経て、所轄庁に届け出るか新たに認証を受ける必要があります。
NPO法人を設立するためには、所轄庁の認可が必要です。
また、NPO法人の活動は20分野に限定されていてそのいずれかを選択しなければならないなど、さまざまな要件を満たす必要があります。
NPO法人を設立するためには、所轄庁の認証を受ける必要があります。申請手続きは、NPO法人の事務所を置いた都道府県を管轄する都道府県で申請手続きを行います。ただし、さいたま市などの政令指定都市に置く場合には、申請先は政令指定都市となります。
認証された後は、法務局で設立登記の申請を行います。
NPO法人は、登記を済ませたことを所轄庁に届け出て初めて、設立手続きが完成することになります。
NPO法人になるためには、目的・社員・役員などに関する要件を満たす必要がありますが、活動内容についても以下の20の分野に該当する活動である必要があります。
20分野から1つを選択しなければならないというわけではなく、複数の分野にまたがって活動することができます。
① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 ② 社会教育の推進を図る活動 ③ まちづくりの推進を図る活動 ④ 観光の振興を図る活動 ⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 ⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 ⑦ 環境の保全を図る活動 ⑧ 災害救援活動 ⑨ 地域安全活動 ⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 ⑪ 国際協力の活動 ⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 ⑬ 子どもの健全育成を図る活動 ⑭ 情報化社会の発展を図る活動 ⑮ 科学技術の振興を図る活動 ⑯ 経済活動の活性化を図る活動 ⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 ⑱ 消費者の保護を図る活動 ⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 ⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動 |
NPO法人を設立するためには、前述した20分野のいずれかに該当する活動であることの他に、以下の要件を満たす必要があります。
①不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とすること。 ②営利を目的としないこと。 ③宗教活動を主たる目的としないこと。 ④政治活動を主たる目的としないこと。 ⑤特定の公職の候補者、公職者または政党の推薦・指示・反対を目的としないこと。 ⑥社員(総会において表決権を持つ会員)は10人以上であること。 ⑦社員の資格得喪について、不当な条件を付さないこと(誰でも自由に社員になれ、かついつでも社員をやめることができること)。 ⑧役員報酬を受ける者は、役員総数の3分の1以下であること。 ⑨暴力団でないこと。暴力団または構成員もしくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと。 |
NPO法人を設立するためには、さまざまな手続きが必要です。
想像以上に手続きが煩雑ですが、全体的なスケジュールをつかみ、必要な届出についてイメージをしておきましょう。
①設立認証申請のための準備 ②設立発起人会 ③設立総会 ④申請書類の作成・提出・受理 ⑤縦覧および審査 ⑦法人設立登記 ⑧NPO法人の成立 ⑨各種届出 |
NPO法人を設立するための書類は、大きく設立認証申請時の書類と設立登記申請時の書類、そしてNPO法人設立後の各種届出書類に分けることができます。
設立認証申請に必要な書類は、以下のとおりです。ただし、個々の状況によって異なりますのでかならず事前に窓口に確認を行いましょう。
なお書類の多くは、所轄庁のホームページから各書類の様式、書式、定款令などをダウンロードすることができます。
提出書類 | 内容 | 提出部数 |
---|---|---|
設立認証申請書 | 設立認証を求める申請書 | 1 |
定款 | NPO法人の設立目的や規制を明文化したもの | 2 |
役員名簿および役員のうち報酬を受ける者の名簿 | 役員全員の氏名・住所を記載したもの | 2 |
各役員の就任承諾および誓約書の謄本 | 原本は申請者が保管 | 1 |
各役員の住所または居所を書する書面 | 住民票の写しが必要(コピー不可) | 1 |
社員のうち10人以上の者の名簿 | 社員のうち10人分を掲載する | 1 |
確認書 | 宗教・政治目的の団体、暴力団関係の団体でないことの確認 | 1 |
設立趣旨書 | 法人格が必要な理由、申請に至るまでの経過などの説明 | 2 |
設立について意思の決定を証する議事録の謄本 | 設立総会の議事録(原本は申請者が保管) | 1 |
設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書 | 事業の具体的な計画書 | 各2 |
設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書 | 活動の予算書 | 各2 |
設立申請認証を行い、認証決定されたら、設立登記申請を行います。登記申請書と別紙以外の必要書類のうち作成済の書類などについては原本証明したものでOKです。これらの書類は原本を添付するのが原則ですが、返却が必要な原本は原本証明したコピーを同時に提出します。
提出書類 | 内容 | 提出部数 |
---|---|---|
設立登記申請書+別紙 | 設立登記をするための申請書 登記すべき事項を具体的に記載した用紙 |
1 |
定款 | 定款に原本証明 | 2 |
設立認証書 | 設立認証書のコピーに原本証明 | 2 |
資産の総額を証する書面 | 法人成立日時点での財産目録に原本証明 平成28年(2016年)のNPO法の改正によって貸借対照表の公告によって、資産の総額を登記する必要がなくなりました。 |
1 |
代表権を有する者の資格を証する書面 | 代表権を有する理事の就任承諾および誓約書などのコピーに原本証明 | 1 |
委任状 | 代表者以外の代理人が申請する場合に必要 | 1 |
印鑑+印鑑証明書 | 印鑑(改印)届書+代表者個人の印鑑証明書+実印の押印 | 1 |
申請書類の作成方法については、管轄の法務局で相談にのってもらうこともできます。
なお、NPO法人は登記して初めて法人として成立します。設立登記は認証書到達後2週間以内に完了させる必要があります。
設立登記申請に必要な書類のなかでも、「設立登記申請書+別紙」は作成するうえで最も労力がかかりますので、早めに作成を始めたほうがよいでしょう。
法人として成立後は関係官庁に各種の届出をする必要があります。これらの届出は期限が決まっています。すべての法人が主たる事務所の設立登記完了後、遅滞なく所轄庁に「設立登記完了届出」と各条例で決められた日までに都道府県税事務所・市町村役場に「法人設立の届出」を行います。また、有給職員を雇用した時や税法上の収益事業を開始した時には、関係官庁へ所定の届出を行う必要があります。
各種届出を行う時には、雇用関係などの団体内部諸規定、帳票を作成しておく必要があります。これらの届出書類はすべて所定のもので、該当する官庁で入手します。
提出書類 | 内容 | 提出部数 |
---|---|---|
設立登記申請書+別紙 | 設立登記をするための申請書 登記すべき事項を具体的に記載した用紙 |
1 |
定款 | 定款に原本証明 | 2 |
設立認証書 | 設立認証書のコピーに原本証明 | 2 |
資産の総額を証する書面 | 法人成立日時点での財産目録に原本証明 平成28年(2016年)のNPO法の改正によって貸借対照表の公告によって、資産の総額を登記する必要がなくなりました。 |
1 |
代表権を有する者の資格を証する書面 | 代表権を有する理事の就任承諾および誓約書などのコピーに原本証明 | 1 |
委任状 | 代表者以外の代理人が申請する場合に必要 | 1 |
印鑑+印鑑証明書 | 印鑑(改印)届書+代表者個人の印鑑証明書 +実印の押印 |
1 |
以上、NPO活動の意味やNGOとの違い、設立手続きや必要書類などについてご紹介しました。NPO法人は、運営組織や事業活動が適正で公益の増進に資するものの場合、一定の基準に適合したものとして、認定NPO法人になることができます。
認定NPO法人となると、個人が寄付した時に寄付金控除を受けることができ、法人が寄付した時には損金算入することができるので、寄付を集めやすくなるというメリットがあります。
ただし、認定NPO法人になるためには、運営組織および経理に関してさまざまな基準をクリアしていくことが必要で、会計について公認会計士もしくは監査法人の監査を受けることが必要となります。また、青色申告法人と同等に取引を記録することが必要ですし、不適正な経理が行われていないなどの基準も満たしている必要があります。
NPO法人を設立したあと認定NPO法人となるためには、これらの基準をクリアするためにも、NPO法人に詳しい税理士に早くから相談することをおすすめします。
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