公開日:2019年07月08日
最終更新日:2023年10月17日
法人というと会社や社団法人などをイメージする人が多いと思いますが、労働組合、私立学校、神社も法人です。
必要な手続きを行い「法人格」が与えられると、法律上、人間とは全く別の社会的な存在となり、人間と同じように法律行為などを行うことができるようになります。
ここでは、法人の代表例である株式会社や合同会社、NPO法人などの法人の特徴と設立方法についてご紹介します。
法人とは、人間とまったく別の存在である法律上人格が認められたもののことをいいます。
法人に対して、人間は「自然人」といいます。
本来、「ヒト」といえば人間ですが、経済活動を円滑にするために、法は人間の集団である会社に人格を与えて、人間と同じように法律行為を行なえるようにしているのです。
法的に与えられた人格が「法人格」であり、法人格を与えられた集団が「法人」です。
会社を設立すると会社の代表者である「人間」と、法律上は全く別の存在である「法人」という「ヒト」ができることになります。
法人という概念がなければ、会社と第三者が契約をする場合には、会社の一員である人間が、個々に相手方と契約をしなければなりません。また、会社に借金があれば債権者は、会社の一員である人間を相手に請求を行います。
しかし、法人という概念があることで、会社に多くの人間がいても法人が契約の主体となり、法人と個人の財産は分離されることになります。
起業する時に迷うのが、「個人事業主として起業するか」それとも「法人をつくって起業するか」です。
法人と個人事業主は、それぞれメリット・デメリットがありますので、自分がやりたい事業の内容に照らし合わせて考えてみましょう。
個人事業主 | 法人 | |
資本金 | 不要 | 必要 |
設立費用 | 不要 | 登記費用など25万円程度 (株式会社の場合) |
決算月 | 12月31日 | 好きな月に決めて良い |
確定申告 | 3月15日 | 決算日より2カ月 |
融資などの資金調達 | 不利 | 有利 |
赤字の繰越欠損 | 青色申告なら3年間 | 10年間 |
・個人事業主 個人事業主とは、株式会社などの法人を設立せず、自分で事業を行う個人のことをいいます。一般的には「自営業」と言ったりしますが、税務では「個人事業主」といいます。 ・メリット ・デメリット |
・法人 法人とは株式会社などの法人を設立して法人格を与えられることで、代表者とは法律上全く別の存在のことをいいます。 ・メリット ・デメリット |
法人には、株式会社や合名会社などさまざまな種類があり、それぞれ特徴があり設立手続きも違います。
会社法における会社は全部で4種類あり、NPO法人やNPO法人や一般社団法人などの法人もあります。
会社法上の会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社があり、株式会社は株主が経営者を選任しますが、合名会社、合資会社、合同会社(この3つを持分会社といいます)は、社員が自ら会社の経営を行います。
ここでは、それぞれの法人の特徴、設立手続きについてご紹介します。
なお、法人の設立手続きについては、別の記事で詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
株式会社は、利益をあげることを目的として、株主から資金を集める会社のことをいいます。株主から経営を委託された人が取締役となって、会社の価値を上げるために事業を行います。
株式会社の特徴
株式会社は、経営者自ら出資を行うことができますし、株主が1人取締役1人でも、株式会社を設立することができます。取締役が1名だけの場合には、そのままその人が、代表取締役となります。
株式会社の設立方法
株式会社を設立する場合には、定款は作成するだけでなく「定款の認証」を受け、登記手続きを行う必要があります。
設立費用は25万円ほどで、その他実印の作成費用などもかかります。
株式会社の会社設立の流れ
① 発起人の決定 |
合同会社はLLCとも呼ばれ、最近増えてきた会社形態です。
株式会社をさらに小さくしたようなイメージを持つ人が多いと思いますが、有名企業の中にも、合同会社として経営している企業は数多く存在します。
合同会社の特徴
合同会社は株式会社と共通点が多いのですが、いくつかの違いがあります。
株式会社では、お金を出す人は「株主」であり、経営を行う人は「役員」です。
しかし、合同会社では出資者全員が会社の経営者であり、会社の重要な決議事項について柔軟に判断することができるというメリットがあります。
合同会社は、原則として出資者全員が業務を執行する権利を持った代表社員であり、代表取締役や取締役という役職はありません。
株主総会や取締役会などの機関もなく、代表社員緒みんなで経営上の重要事項を協議し決めていきますので、小規模で事業を開始したい会社にとって運営しやすい形態です。
合同会社の設立方法
設立に必要な手続きや期間は、株式会社より圧倒的に手間がかからず短期間で済ませることができます。株式会社の場合には、どんなに早くても10日以上かかるケースがほとんどですが、合同会社は株式会社と異なり公証人の認証が必要ないので、4~5日程度で設立登記が可能です。
なお、合同会社は、事業が軌道に乗ってから株式会社の形態に移行することも可能です。
合同会社の会社設立の流れ
① 出資者の決定 |
合名会社は、無限責任社員だけから成る会社のことで、出資者の全員が「無限責任」を負います。無限責任とは、会社の債務を会社の資産で返済しきれない場合に、個人の資産で返済しなければならないという重い責任です。
合名会社の特徴
合名会社は、出資者の全員が「無限責任」を負います。
これは、もし会社が破産した場合には、個人の全財産を投げ打ってでも、会社の借金を支払わなければならないという大変厳しい責任です。
合名会社の設立方法
合名会社は、出資者が2名以上必要です。設立費用は6万円~と、株式会社や合同会社より安い費用で設立することが可能です。
合名会社の会社設立の流れ
① 出資者の決定 |
合資会社には、無限責任社員と有限責任社員があります。
無限責任社員は合名会社と同じく無限責任を負いますが、有限責任社員は、自分の出資した金額以上の責任を負う必要はありません。
この点からいえば、合資会社は、合名会社と比較すると「所有と経営の分離が進んでいる」ということができるでしょう。
合資会社の特徴
合名会社と同じように、合資会社も、無限責任社員の責任は大変厳しいものです。
会社が破産した時の弁済責任は、会社の債務が消滅しない限りなくなりません。時効も成立しないのです。
したがって、合名会社や合資会社を設立する際には、相当の覚悟が必要となるということを覚えておきましょう。
合資会社の設立方法
合資会社の設立方法は、株式会社等と同様定款の作成などは必要ですが、定款には有限責任社員・無限責任社員を明記する必要がありますし、損益の分配割合を決める必要もあります。
合資会社の会社設立の流れ
① 出資者の決定 |
NPO法人とは、非営利的な法人のことで「特定非営利活動促進法」に基づいて、認証を受けて法人になった団体のことをいいます。
NPO法人の「非営利」という言葉から、「無償で活動を行う団体」というイメージを持つ人も多いと思いますが、そうではありません。
「非営利」とは、「事業収益を上げてそこから諸経費を差し引き、人件費も差し引いてもし利益が残ったら、それは次の活動に使う資金とする」という意味であり、NPO法人も収益を上げることができます。
NPO法人の特徴
NPO法で掲げられる「特定非営利活動」については、(1)保健、医療または福祉の増進を図る活動、(2)社会教育の推進を図る活動など、20の活動内容が規定されています。
20項目すべての活動を行う必要はなく、1つでも該当していればそれでかまいません。
具体的には、被災地復興支援、動物保護活動、難民支援などのボランティア活動や、学童保育、介護施設、託児所などの社会貢献活動などが挙げられます。
「ずっとボランティア活動をやってきたが、本格的に社会貢献に取り組みたい」といった人に向いているやり方です。
①保健、医療又は福祉の増進を図る活動 ② 社会教育の推進を図る活動 ③ まちづくりの推進を図る活動 ④ 観光の振興を図る活動 ⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 ⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 ⑦ 環境の保全を図る活動 ⑧ 災害救援活動 ⑨ 地域安全活動 ⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 ⑪ 国際協力の活動 ⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 ⑬ 子どもの健全育成を図る活動 ⑭ 情報化社会の発展を図る活動 ⑮ 科学技術の振興を図る活動 ⑯ 経済活動の活性化を図る活動 ⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 ⑱ 消費者の保護を図る活動 ⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 ⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動 |
NPO法人の設立方法
NPO法人を設立するためには、株式会社より多くの手続きが必要となりますし、時間もかかりますが、出資金関係の手続きが不要です。また、定款認証や登記申請の際の手数料、印紙代、登録免許税もNPO法人設立では不要となります。
NPO法人の法人設立までの流れ
① NPO法人の基本事項の決定 |
▶ NPOとは|NGOとの違いは?NP0法人の設立手続き・必要書類は?
一般社団法人とは、社団法人の一種であり営利を目的としない「非営利」法人ですが、必ずしも「公益」を目的とする事業内容である必要はなく、事業目的に制限はありません。一般社団法人は、非営利型と非営利型以外に分類することができます。
そして、一般社団法人のうち、公益法人認定法によって、公益性の認定を受けたものが公益社団法人です。
公益社団法人の場合には、直接設立することが不可能で、まずは一般社団法人を設立した後、公益認定申請の手続きを行い、認定を受けることではじめて公益社団法人となることができます。
一般社団法人の特徴
一般社団法人には、通常社員で構成される社員総会、理事で構成される理事会、業務監査・会計監査などを行う監事という機関があります。
理事は、社員総会の決議に基づいて業務執行を行わなければなりません。また、社員総会にかける議案について審議を行うのも理事の業務です。
社会が抱えるさまざまな問題を民間の力で解決し、かつビジネスとして収益も継続的に確保したいという社会貢献型ビジネスに向いている形態です。
一般社団法人の設立方法
一般社団法人は、基金の払込みは設立時の必須の事項ではありませんので、法人設立後に手続きを行うことができます。
一般社団法人の法人設立の流れ
① 基本事項の決定 |
社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立され、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人をいいます。
ここでいう「社会福祉」とは、貧困者や心身に障害を持っている人に対して、さまざまな分野の支援を行うという意味です。
具体的な事業は、社会福祉事業と公益事業、収益事業に分類されます。
社会福祉事業: 社会福祉施設等の入所者に対する救護や医療サービス 在宅サービス 公益事業: 収益事業: |
社会福祉法人の特徴
社会福祉法人は、民法で規定された公益法人を発展させた「特別法人」です。特徴としては(1)行う事業について公益性を持っていること、(2)営利を目的としないこと(非営利性)などが挙げられます。
社会福祉法人の理事や監事は、その他の職員とは異なる地位にあり、社会福祉法人ごとにさまざまな報酬体系が採られています。理事長に対しては役員報酬が支払われると定められていますが、その他の理事や役員については一定の役員報酬が支払われるわけではなく、出席回数に応じて報酬が支払われるしくみになっています。
社会福祉法人の設立方法
社会福祉法人と設立するためには、大きく4つの手続きが必要となります。
社会福祉法人の設立登記までの流れ
① 設立準備手続き設立準備会の発足や事業計画の作成 |
以上、法人の意味や法人の種類、それぞれの特徴や設立方法などについてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、法人にはさまざまな種類があり、認証を受けなければならない場合もあります。また、設立手続きは煩雑で多くの書類を準備する必要があります。また、法人の形態や規模によって税制上のメリットがある場合もあり、設立前には、事業目的に合致しているか検討するとともに、税制上のメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。
会社の設立手続きに精通している税理士には、設立手続きのサポートはもちろん、税制上のメリット・デメリットについても教えてもらうことができます。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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