会社設立の流れ~設立から事業開始まで

公開日:2023年04月20日
最終更新日:2023年10月17日

この記事のポイント

  • 会社を設立する際は、事前に大まかな流れを理解すると手続きがスムーズ。
  • 商号が決まったら、会社の代表印は早めに作成しておくとよい。
  • 登記が完了したら、税務署などの手続きを済ませ銀行口座を開設する。

 

会社を設立する際には、さまざまな手続きが必要です。
この記事では、一番シンプルな株式会社を設立するための大まかな流れをご紹介します。
株主は、役員と株主が同じ人という1人会社、資本金は、パソコンや車などの現物出資という方法もありますが、現金で払い込むケースをイメージして、ご紹介しています。

会社設立の流れ

会社を設立する際には、まず大まかな流れを理解しておくと、各手続きをスムーズに進めることができます。

①会社の重要事項(商号、住所など)を決める。
  ↓
②個人の印鑑証明書を取得する
  ↓
③会社の代表印を作成する
  ↓
④定款を作成し、公証役場で認証を受ける
  ↓
⑤資本金を払い込む
  ↓
⑥登記書類を作成する
  ↓
⑦登記を申請する(登記完了までは、約1週間)

まずは、①会社の商号や住所など、会社の重要事項を決めます。
次に②個人の印鑑証明書を取得します。個人の実印は、定款や登記用の書類に押印する必要がありますので、早めに取得しておきます。

③商号(会社の名前)が決まったら、会社の代表印を作成します。印鑑は、作成に1週間程度かかるケースが多いので、早めに作成しておきましょう。

これらの準備が整ったら、次に④定款を作成し、公証役場で認証を受けます。そして、定款の認証が終わったら、⑤資本金を払い込み、⑥登記書類を作成し、⑦登記の申請を行います。

(1)会社の概要を決める

会社の商号(名前)と事業目的(何を行うか)、そして本店所在地(事務所をどこに置くか)を決めます。

商号
商号は、設立後に簡単に変更することはできませんから、よく検討することが大切です。何を行う会社なのか、社名の由来は何なのかが、商号を見ればひと目で分かるようにすると、取引する際にスムーズになることがあります。
「!」「♪」「☆」などの記号は、商号に使用することはできませんが、「&」「‘」「,」「‐」「.」「・」などは使用可能です。

会社法施行後は、類似商号の規制が廃止されたので、同じ住所で同じ商号の会社でない限り、登記は受理されるようになりましたが、不正競争防止法などで商号は保護されるものですから、類似商号は避けるようにしましょう。

事業目的
事業目的は、定款にかならず記載しなければなりません。また、記載上一定のルールがあり、広く一般に認知されているものでなければなりません。
会社設立前にある程度決めておかないと、定款作成や登記申請の際にバタバタしてしまうので、早めに検討を始めることをおすすめします。
また、会社はあらかじめ定款で定めた目的以外の事業は行うことはできませんから、将来やってみたいと思う事業があれば、最初から定款に記載しておきましょう。後から事業目的を追加しようとすると、そのたびに手続きを行わなければなりませんし、その分費用もかかるからです。

本店所在地
本店所在地が決まると、その管轄の法務局に登記申請を行います。
記載方法は、最小行政区画まで記載する方法と具体的に町名、地番まで記載する方法があります。おすすめなのは、最小行政区画まで記載する方法(市区町村まで)です。町名地番まで記載すると、将来同一市区町村内で本店移転をするときに、定款変更手続きが必要となるからです。

会社設立後に本店を移転する際には、登記を変更しなければならないので費用がかかりますし、名刺や封筒も作成し直さなければなりません。したがって、本店所在地は慎重に決める必要があります。
なお、本店所在地として知名度のあるエリアで、見栄えのよいオフィスを選びたい気持ちは理解できますが、家賃は固定費ですから、あまりに家賃が高いと後々資金繰りが悪化してしまうリスクがあります。
最近は、シェアオフィスを利用するケースが増えていますが、法人登記ができないこともありますので、よく調べておくようにしましょう。

決算日
会社は、一定期間(事業年度)を決めなければなりません。法人税等の納付期限は、決算日から2カ月以内なので、業務の閑散期を決算日とするのもひとつの手です。
また、資本金1,000万円未満の会社の場合には、原則として第1期、第2期が消費税の免税事業者となります。
決算日や資本金の額は、会社設立後の納税額に関わってくることもありますので、事前に税理士に相談しておく方が安心です。

(2)個人実印の印鑑登録をする

発起人や取締役になる人は、定款や登記用の書類に個人の実印を押印する必要があります。
したがって、発起人や取締役が決まったら、個人の印鑑証明書を取得しておきます。
まだ実印を登録していない人は、すぐに印鑑登録を行いましょう。
個人の実印の印鑑登録は、住民票の所在地の役所の窓口に、登録する印鑑と本人確認のための書類を持参します。登録費用は400円程度です。
印鑑登録したら、印鑑証明書を発行してもらいます。印鑑証明書の有効期限は、発行日から3カ月以内と決まっているので、その点については注意が必要です。

(3)会社の印鑑をつくる

会社の実印は、会社の商号が決定したらすぐに発注します。
会社の実印は、法務局に登録するもので、形は丸いものが主流ですが、四角や三角でも、大きさの要件を満たしていれば、登録することができます。

会社の印鑑は、通常はこの実印のほかに銀行印、認印(角印)も作成します。
銀行印は、会社の登記申請が終わった後に銀行口座を開設する時に使います。認印(角印)は、領収書や請求書などを発行するときに使用します。

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(4)定款の作成・認証を受ける

定款とは、会社のルールブックのようなもので、会社の運営方針や基本的なルールを記載します。
定款に記載すべき事項は、①絶対的記載事項、②相対的記載事項、③任意的記載事項があります。
①絶対的記載事項は、記載もれがあったり記載内容に不備があったりすると、その定款自体が無効となってしまうもので、以下の6つの事項です。

①絶対的記載事項

①商号
②目的
③本店所在地
④設立に際して出資される財産の最低額
⑤発起人の氏名または名称(会社の場合)とその住所
⑥発行可能株式総数

②相対的記載事項は、記載がなくても定款自体は有効ですが、定款に記載すると法的な効力を持つ事項をいいます。
たとえば、株式の譲渡制限や株券の発行、取締役会を設置するか、取締役や監査役の任期などについての事項です。

③任意的記載事項は、法律に違反していなければ会社が自由に決めることができるもので、株主総会の運営方法や会社の事業年度などについての事項です。

定款を作成したら、公証役場で認証を受けます。
定款認証に必要なのは、定款3通、発起人の印鑑証明書各1通、発起人の実印、公証人の定款認証手数料5万円、収入印紙4万円分です。
定款の種類は紙定款と電子定款の2種類があり、電子定款は収入印紙が不要となるのでおすすめですが、自分で電子定款を受けるためには、アドビのソフトを用意し、電子証明書を取得し、ICカードリーダライタを用意し、法務省オンライン申請システムにユーザー登録をしなければならず、手間がかかります。

この点、利用無料の「freee会社設立」は、定款などの法人登記書類一式を誰でもかんたんに作ることができるサービスです。定款以外にも「設立登記申請書」など各種書類に対応しているため、入力内容に応じて必要な書類だけを作成することができます。
公証役場にて作成した定款の認証を受ける必要がありますが、紙定款の場合は公証役場に提出しなければなりませんが、電子定款の場合は提出まで専門家が代行いたします。

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(5)出資金(資本金)を払い込む

定款認証が終わったら、資本金の払込みを行います。
資本金は、本来であれば会社の銀行口座に振り込まれるべきですが、この段階では、会社はまだ設立されておらず法人名義の銀行口座を開設することができないので、発起人の個人名義の口座に、発起人全員が自分の出資分を振り込みます。
資本金が全額払い込まれたら、通帳の表紙、裏表紙、通帳の2ページ目(店番、口座番号、口座名義人などの記載があるページ)、資本金が振り込まれたことが分かるページをコピーし、「払い込みがあったことを証する書面」と一緒にホッチキスで綴じます。

(6)登記申請書類を作成する

登記とは、会社やその他の法人に関して重要な事項を登録し、一般に公開する制度をいい、登記が完了することで会社は設立されることになります。
登記に必要な書類は、以下のとおりです。

①登記申請書
②定款
③就任承諾書
④代表者個人の印鑑証明書
⑤本人確認証明書
⑥払い込みを証する証明書
⑦代表者の印鑑届出書
①登記申請書
登記申請書には、会社の商号や本店所在地、登記の事由、登記すべき事項、資本金の額、登録免許税の額などを記載します。商号や本店所在地は省略せずに記載し、取締役の住所も印鑑証明書のとおりに記載します。
「登記すべき事項」を記載した「別紙」や収入印紙を貼付した台紙をセットにします。
登記申請書は、法務省のホームページからダウンロードすることができます。

参照:法務省「商業・法人登記申請手続」

②定款
公証役場で認証を受けた定款です。

③就任承諾書
株式会社を設立する場合に必要となりますが、定款で定めた役員と発起人が同一の場合は、不要となります。

④代表者個人の印鑑証明書
代表者個人の印鑑証明書を準備します。

⑤本人確認証明書
運転免許証のコピーや住民票などです。

⑥払い込みを証する証明書
資本金の払込みをした際の証明書を準備します。

⑦代表者の印鑑届出書
会社の代表印で、法務局に登記をするための届出書です。オンライン申請の際は不要となります。

「freee会社設立」を利用すれば、案内に従って必要事項を入力するだけで「設立登記申請書」などの必要書類を作成することができます。

(7)登記を申請する

登記申請の不備などがない限り、登記を申請した日が会社設立日になります。
登記申請書の提出方法は、法務局に手渡しするか郵送する方法が一般的ですが、一人会社の場合でマイナンバーを持っていれば、法務局に出向かずにオンライン申請も可能です。

オンライン申請の流れ

①法務局に電子証明書の発行を申請し、ダウンロードする。
②「登記・供託オンライン申請システム」で「申請用総合ソフト」をダウンロードして、申請者情報を登録する。
③「登記・供託オンライン申請システム」で、申請書に必要事項を記入し、本人確認証明書、払い込みを証する書面、委任状、定款などを添付します。
④添付書面に電子署名を付与します。
⑤申請データ一式を送信し、登録免許税を納付します。

会社設立後の流れ

会社を設立したら、必要な届出を税務署に提出します。また、社会保険の加入手続きも必要です。
これらの届け出は、期限が厳格に定められているものもありますので、期限までに忘れずに提出するようにしましょう。

(1)税務署への届出一覧

税務署に提出する書類は、以下のとおりです。

提出先 提出書類 提出期限 添付書類・備考
税務署 法人設立届出書 会社設立の比から2カ月以内 提出は必須
・定款のコピー
・履歴事項全部証明書
・設立時の貸借対照表
・事業概況書
・現物出資者名簿(現物出資した場合)
・株主名簿
給与支払事務所等の開設届出書 給与支払事務所等の開設から1カ月以内 役員報酬や従業員への給与等を支払う場合には、会社は所得税を給与等から天引きし納付しなければなりません。この給与支払事務所等の開設届出書を税務署に提出すると、税務署は給与等の支払いが行われることを把握し、納付用紙が会社に郵送されます。
法人設立時点で、いつから役員報酬や給与等の支払いをするかすでに決まっているのであれば、法人設立届出書と一緒に提出する方がよいでしょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 納期の特例を受ける日の初日の前日まで
(給与支払事務所等の開設届出書と同時に提出がおすすめ)
源泉徴収した所得税は、原則として支給日の翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、毎月の納付手続きは手間がかかります。そこで、役員や従業員の合計人数が常に10人未満であれば、まとめて納付できる特例があります。この特例を受けたい場合に提出が必要となります。
青色申告の承認申請書 設立から3カ月以内 青色申告とは、一定の要件を満たすことを条件として、法人税の計算上各種優遇措置を受けることができる制度です。青色申告には、さまざまな優遇措置が設けられていますから、青色申告をした方が得です。実際、ほとんどの法人が青色申告制度を利用しています。
減価償却資産の償却方法の届出書 最初の事業年度の確定申告の提出期限 この届出書を提出しない場合には、減価償却の方法が自動的に定率法を選択したことになります。ただし、建物や無形固定資産については、定額法で償却しなければなりませんので注意が必要です。
棚卸資産の評価方法の届出書 最初の事業年度の確定申告の提出期限 この届出書を提出しない場合には、棚卸資産の評価方法について、自動的に最終仕入原価法を選択したことになります。
消費税課税事業者選択届出書 設立第1期の終了日まで 設立時の資本金が1,000万円未満の場合には、通常は設立1期目は消費税免税事業者となり、消費税の納税義務が発生しません。ただし、消費税免税事業者となることが不利になることもありますし、インボイス制度も始まります。あえて課税事業者を選択する方が有利なこともあります。その場合には消費税課税事業者選択届出書が必要です。
消費税簡易課税制度選択届出書 設立第1期の終了日まで 課税事業者を選択した場合や、会社設立時の資本金が1,000万円以上の場合には、消費税の納税義務がありますが、消費税の納税額を計算するには非常に手間がかかります。そこで、計算を簡略化する「簡易課税制度」という制度が設けられています。そして、簡易課税制度の適用を受けるためには、最初の事業年度終了時までに消費税簡易課税制度選択届出書の提出が必要です。
ただし、実際に計算してみたら、簡易課税制度ではない方が消費税の納付額が少なかったという場合もありますので、事前に税理士に相談し、慎重に検討することをおすすめします。
都道府県税事務所 法人設立届出書
(名称は自治体により異なる)
都道府県や市町村は、この届出書をもとに事業税や法人住民税に関する事務を行います。東京23区が本店所在地となっている場合には、窓口が東京都なので、区役所への提出は不要で都税事務所にのみ提出すればOKです。 ・定款のコピー
・履歴事項全部証明書
市区町村
(東京23区は不要)
法人設立届出書
(名称は自治体により異なる)
・定款のコピー
・履歴事項全部証明書

(2)社会保険の加入手続き

健康保険と厚生年金保険を総称して社会保険といいます。そして、会社を設立したら、この社会保険に必ず加入しなければなりません。

提出先 提出書類 提出期限 添付書類・備考
年金事務所 健康保険・厚生年金保険新規適用届 設立から5日以内 加入義務あり
・新規適用事務所現況所
・被保険者資格取得届
・保険両口座振替納付申請書
・被扶養者届
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 設立日もしくは入社日から5日以内 会社設立時または新規に従業員を雇用したときに必要
健康保険被扶養者届 扶養に入る場合できるだけ早く 被保険者に扶養する者がいる場合
国民年金第3号被保険者資格取得届 第3号被保険者に該当してから14日以内 被保険者に被扶養配偶者がいる場合
労働基準監督署 適用事業報告 労働基準法の適用事業となった場合できるだけ早く 従業員やパートなどを雇用した場合
労働保険関係成立届 従業員を雇用した日から10日以内 従業員やパートなどを雇用した場合
労働保険概算保険料申告書 従業員を雇用した日から50日以内 従業員やパートなどを雇用した場合
36協定書 時間外・休日労働を行う前まで 時間外・休日労働をさせる場合
所轄のハローワーク 雇用保険適用事業所設置届 従業員を雇用した日から10日以内 雇用保険に加入する従業員を雇用した場合
雇用保険被保険者資格取得届 従業員を雇用した月の翌月10日まで 雇用保険に加入する従業員を雇用した場合

まとめ

会社設立に必要な書類の作成・手続きは、すべて自分で行うことが可能です。ただし事業年度や資本金の額で、会社設立後の納税額が変わってくることがありますし、会社を設立した後に税務署に提出する届出書のなかには、状況に応じて必要となるもの・ならないものがあります。
また、会社を設立したら、法人税や地方法人税、法人住民税、法人事業税などの税金を納める必要があり、なかには赤字でも納付義務のある税金もあります。
適切な節税対策を実施すれば、納税額が大きく軽減されることがありますので、できれば会社設立前から税理士に相談して、必要な手続きを効率よく進めることをおすすめします。

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・社会保険加入の義務について
「現在会社を1社経営しております。
そこで社会保険に加入して納税しているのですが、今月もう1社別会社を設立しました。
そこでは売上の不安定が予想されますので、初年度は役員報酬を0円に設定しました。社員もおらず私1人です。
・個人事業主でリースしている自動車を法人化するにあたり名義変更
「個人事業から法人を設立します(合同会社)。
現在、自動車は、1)リース契約、2)自動車保険は家族で加入しています。
名義変更を法人にしたいのですが、個人でできますか?
もしくは、士業に依頼しないとなりませんか?
・株式会社と個人事業主の業務内容の重複について
「現在、私は個人事業主でフリーランスのWebエンジニアとして働いています。
主な仕事内容は、Webサイトの製作全般で、エージェントを経由して仕事を受注しています。
今回、友人と一緒に株式会社を設立し、その会社の取締役になることを検討しています。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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