補助金申請のための手続き・計画書の作成

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2022年03月25日

この記事のポイント

  • 補助金とは、国や地方公共団体から交付される給付金である。
  • 補助金の審査では、「事業計画書」が非常に重視される。
  • 補助金を申請しても、必ずしも事業の全額が補助されるわけではない。

 

補助金とは、国や地方公共団体から交付される給付金です。
金融機関などから受ける融資とは異なり、助成金などと同じく原則として「返済不要」のお金です。

補助金の給付を受けるためには、事務局に申請をして審査を受けることが必要です。
必要な手続き、書類は、補助金を運営する事務局によって異なりますが、ほとんどのケースで申請書、事業計画書などが必要となります。

審査員は、大学教授や大企業の役職員など、さまざまな分野のプロフェッショナルで、それぞれの目線で審査されます。さまざまな分野のプロを納得させるためには、ありきたりの計画書ではなくさまざまな工夫を用いて書類を作成する必要があります。

補助金とは

補助金とは、国や地方公共団体から交付される給付金です。
国や地方公共団体は、新しいビジネスや技術を持つ企業が増えることを期待しています。新しいビジネスや技術を持つ企業が増えることによって、雇用が増え経済活動が活発になることを期待しているからです。そして、そのための助成金や補助金が多く用意されています。

(1)補助金と助成金との違い

補助金と助成金は、どちらも原則として返済不要の給付金ですが、実はさまざまな違いがあります。
補助金については主に経済産業省が管轄で、助成金については主に厚生労働省が管轄です。
また、補助金は国民から徴収した税金を財源としていますが、助成金は、従業員の雇用保険料を財源としているという点でも異なります。

とは言っても、補助金も助成金も財源が税金なので、申請期間や使用用途には制限がありますし、申請すれば必ずもらえるというものではありません。
応募書類などを準備し申請をして、審査・面接などを経て採択されると交付されます。

(2)補助金の交付までのスケジュール

補助金が交付されるまでのスケジュールは、補助金によって異なりますが、大まかには以下のような流れで交付されます。

① 申請
申請したい補助金を決めて、応募要項・申請書を入手し、申請します。

② 審査
申請書をもとに、審査委員会で審査がされます。

③ 採択
審査委員会で審査、面接を経たうえで、交付する事業を選定します。
採択された事業者は、選定結果通知を受け取ったら「補助金交付規定交付申請書」を提出します。

④ 交付
交付申請書経費相見積もりなどの必要書類を提出します。
事務局は、見積もりなどを確認して、事業者に「交付決定通知」を送付します。

⑤ 実施
事業者は、対象事業実施を開始します。
経費は、すでに提出している経費明細書通りに使うのが原則です。
必要に応じて、事務局が中間審査などを行います。

⑥ 報告
計画の実施中は、定期的に実施報告書・経費エビデンスを作成し、提出します。

⑦ 検査
事務局から、実施状況についてヒアリングなどの方法で、検査がされます。
事務局によっては、巡回指導などが行われることもあります。

⑧ 確定
検査結果に基づき、補助金の支給額が最終確定します。
事務局が補助金額を確定すると、補助金額確定通知が為されます。

⑨ 請求
「補助金額確定通知書請求書」を提出します。

⑩ 入金
補助金が交付され、入金されます。

補助金申請で必要となる書類

補助金は、制度ごとに運営事務局が異なりますので、手続きや申請書類の作成方法も、それぞれ異なります。
ただし、補助金を申請するほとんどのケースで、応募申請書・事業計画書・経費明細書・事業要請書・申請書などの書類が必要となります。

審査の手順は非公開ですが、審査員は、大学教授や大企業の役職員などさまざまな分野のプロフェッショナルで構成されていて、それぞれの目線で厳しく審査されます。
これらのさまざまな分野のプロを納得させるためには、ありきたりの計画書ではなくさまざまな工夫を用いて書類を作成する必要があります。

(1)記入例通りでは採択されない

補助金の申請書の案内ページを見ると、よく記入例がついていることがあります。
そこで、その記入例を参考に申請書を作成する人が多いのですが、記入例をそのまま参考にしても、それでライバルたちに差をつけることはできません。
つまり、記入例のレベルの申請書では、採択されないということです。
ライバルたちに差をつけ採択される申請書を作成するためには、「記入例以上」のレベルの申請書を作成しなければならないことを意識することがまず必要です。

(2)「目的・概要」は目を引くよう工夫を

申請書の最初には、「事業計画の概要」という項目があることがあります。

それほど大きな欄ではありませんので、あまりたくさんのことは書けませんが、この概要でまず目を引くように工夫をすることは、採択への大きな第一歩です。
ここで、ありきたりの印象しか与えられなかったり、審査員に与える印象が悪かったりすると、審査員はそこから先を読む気がなくなってしまうかもしれません。

逆にこの事業計画の概要が目を引くような内容であれば、その後の計画にも興味を持って読み進められることになりますので、大変有利になります。

(3)「課題・内容・解決方法」は業界事情を交ぜて

申請書の「課題・取り組み内容・解決方法」についての欄がある場合には、専門用語や業界用語を使わず、読み手に分かりやすいよう記載することが大切です。

読み手となる審査員は、大学教授や大企業の役職員などさまざまな分野のプロフェッショナルではありますが、あらゆる分野に精通しているというわけではありませんから、業界用語を多用しても理解できないこともあり得るからです。
なお、業界用語だけではなくその業界特有の事情や慣習なども、丁寧に説明するよう注意しましょう。業界にいる人にとって当たり前のことでも、主観的な表現を使うと、分かりにくくなってしまいます。

(4)「体制」は具体的に分かりやすく

事業計画に「実施体制」の欄があり、社外のメンバーも含めて補助事業を実施する予定である場合には、自社の体制だけではなく社外のメンバーを含めた実施体制を記入します。その際には、個々が何を担当するのかも具体的に記入するようにします。

また、社外のメンバーを記載する場合には、担当だけでなくそれぞれの具体的な実績なども記入するようにしましょう。

(5)「スケジュール」は端的に

補助事業の計画スケジュールの欄には、具体的にいつどのような活動を行い、その結果として具体的に何をどのように進めるかを課題や項目ごとに分かりやすくまとめるよう、工夫します。

審査員は、ここでスケジュールの実行可能性があるかを判断しようとするので、実施するのに無理のあるスケジュールを提示すると不信感を招いてしまいます。かといって、あまりに余裕を持ったスケジュールでも、ダラダラとした印象を与えてしまいかねません。また、大雑把過ぎるスケジュールでも計画能力の低さを露呈している印象を与えてしまいます。

実施項目は「実験」「設計」「試作」といった分かりやすい項目で、簡潔、かつ十分、かつ納得感のあるスケジュールを立てるようにしましょう。

(6)「市場規模」は統計を活用

市場規模や競合を示す場合には、統計を活用しましょう。
この時説得力のある計画とするためには、各省庁の公的データを活用するのがおすすめです。もちろん、信頼のおける民間の調査機関が出している統計でもOKです。
どのデータを利用するにせよ、出典、引用は必ず記載するようにしましょう。

各データは、あらゆる切り口で調査・分析がされていますから、ひとつのデータだけで説得しようとするのではなく、いくつかのデータを活用し分析することが大切です。
色々な切り口でさまざまなデータを示すことは、審査委員を納得させるためというばかりでなく、自身の事業計画そのものを見直すきっかけになったり、新たな販売戦略を見出したりすることにもつながります。

また、競合についても隠さずにリストアップするようにしましょう。
競合の製品、商品、サービスの特長や販売戦略を分析することは、自身の製品、商品、サービスの特長や販売戦略の分析することができるというメリットもあります。

競合との比較は、分かりやすく一覧にするのもおすすめです。長々と書かずにポイントが理解しやすいように、特長、課題、問題点を簡潔にまとめるようにします。

(7)「売上と利益」は根拠を明示

売上と利益の計画は、それまで説明してきた課題、解決方法、スケジュールなどを数字で表現する項目ですので、緻密な分析に基づいた客観的かつ説得力のある数字であることを心がけましょう。
事業スタート時の赤字は仕方ありませんが、次年度以降は黒字になるような利益計画を心がけましょう。

なお、この売上計画の作成方法についても、色々な方法と注意点があります。

そのうちのひとつが、営業活動などの計画から予想される数値を積み上げていく方法です。たとえば、200万円の商品を営業担当者1人が月5件獲得するとしたら、月1,000万円の売上を獲得できることになります。そして、営業担当者が3名なら、年間3億6,000万円の売上が期待できる、という数字を示すことができます。

また、市場規模から想定シェアを求める方法もあります。
ただ、データは調査機関や調査方法によって結果が異なることもあり、その際にきちんと説明できなくなることもあるので、注意が必要です。

その他、過去に類似の手法で販売したことがある、類似のサービスを展開している他社の実績と比較して売上規模を予想する方法などがあります。

実際に、事業計画で「売上と利益」を作成する場合は、上記のさまざまな方法を複合的に用いるケースが多いようです。
どのような方法をどのように使用し、計画書を作成すべきかは個々のケースによって異なりますが、どうすれば審査員を納得させることができる数字になるかは、補助金に精通した税理士に相談するのがおすすめです。

(8)経費明細表を活用する

前述したとおり、補助金は後払いが原則です。
採択されたらすぐに入金されるのではなく、事業を実施し使った経費を申告すると、その一部が後から支給されます。
経費明細表とは、この事業で使う経費を予め申告しておくための表です。

この時注意したいのが、補助金はどのような経費でも補助してくれるものではないということです。どの補助金でも、補助対象経費が細かく規定されていて、それ以外の経費は補助対象外となります。
したがって、まずは何が補助対象経費となっているかをパンフレットなどで確認するようにしましょう。
「人件費は全体の何割まで」と注意書きされていることもありますので、十分注意して下さい。

当たり前のことですが、経費明細表に記入する金額は、必要な分だけ適正な価額で記載することが大切です。たとえば、ある部品の購入費を500万と記載して後から100万ほどで購入できることが分かってしまうと、補助金の事務局に悪いイメージを与えてしまいかねません。
このようなことがないよう、経費明細表は誠実に正確な金額を記入するようにしましょう。

(9)補助金の「別紙」を活用する

補助金の種類によりますが、様式が自由な別紙を添付できる場合があります。
もちろん添付はしてもしなくてもよいのですが、せっかくPRできるチャンスを利用しない手はありません。
審査員に分かりやすいようインパクトのあるビジュアルを利用して、別紙を最大限活用しましょう。
文字だけで分かりにくい事業内容、ストーリー、ビジョンなどを効果的に示すことができれば、採択される確率をグッとアップさせることができます。

まとめ

以上、補助金の申請に必要な手続きや申請書の事業計画書について、ご紹介してきました。補助金制度は、国が認定した「経営革新等支援機関」のサポートが要件となっているものも多くあります。
経営革新等支援機関:税理士や弁護士など一定の専門知識や実務経験を持つ者に対して国が認定する公的な支援機関のことで、中小企業や小規模事業者の相談機関的な役割を担っています。

補助金の交付を受けられるよう、補助金の申請はもちろん、事業計画の策定、実行支援までフォローしてもらうことができます。
補助金は、募集期間も短く競争率も激しいので、補助金に精通した税理士に早めに相談するようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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