相続時清算課税制度(暦年贈与の特例)がお得なケースとは

公開日:2018年08月01日
最終更新日:2020年01月11日

目次

  1. 暦年贈与とは
    • 1人あたり年間110万円までの贈与は非課税
    • 贈与した証拠は残すこと
    • 毎年同じ金額にしないこと
    • 子供名義の預金は贈与にならないので注意
    • 贈与契約書を作成しよう
    • 贈与税の申告も効果がある
  2. 相続時清算課税制度とは
    • 相続時精算課税制度は「相続税と贈与税の一体化した制度」
    • 2,500万円まで贈与税がかからない
    • 相続時清算課税制度は誰でも利用できるわけではない
    • 相続時清算課税制度の適用を受けるための届出が必要
  3. 一般贈与と相続時清算課税制度どちらが得か
    • 早く始めるなら「暦年贈与」が効果的
    • 相続税の申告が必要な人で相続時精算課税制度のメリットがあるのは?
    • 税理士をお探しの方
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この記事のポイント

  • 相続時精算課税制度とは、暦年贈与の特例で将来相続される財産を前渡しできる制度。
  • 相続時精算課税制度を利用すると生前の贈与のうち、2,500万円までの特別控除が認められる。
  • 暦年贈与と相続時精算課税制度は、選択制。有利な方法を選択してよい。

 

2015年(平成27年)に相続税が改正され、実質増税となったことで、相続対策に関する関心が高まっています。
この改正では、基礎控除が4割も削減され、より多くの人が相続税の課税対象になりました。さらに最高税率も50%から55%に引き上げられ、税負担も増えることになりました。

相続税の負担を減らしたいと考える時、効果的な方法として生前贈与があります。
生前にコツコツと贈与(暦年贈与)すれば、相続財産を減らして相続税を減額し、資産を上手に次世代に引き継いでいくことが可能となるからです。
そして、この暦年贈与と対照的なのが、「相続時精算課税制度」です。
相続時精算課税制度は、被相続人にあたる親と相続人にあたる子・孫の間で、将来相続される財産を前渡しできるようにする制度です。
生前の贈与に2,500万円までの特別控除が認められ、それを超える部分には一律20%の贈与税がかかります。

暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを利用すべきかについては、個々のケースによって異なります。いったん相続時精算課税制度を利用してしまったら、暦年贈与は適用されなくなるので、それぞれの特徴を正しく理解して適切な方法を選択しましょう。

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暦年贈与とは

暦年贈与とは一般贈与とも呼ばれるもので、毎年110万円までの贈与が非課税枠となる点を利用した相続税対策の方法です。
早い時期から毎年コツコツと贈与を行えば、相続税がかからず財産を移転することができて相続税のかかる財産を減らすことができるので、一番確実で効果的な相続税対策といえます。

1人あたり年間110万円までの贈与は非課税

贈与税には、毎年110万円までの贈与分に対しては贈与税がかからないという、基礎控除があります。つまり、年間110万円までの贈与であれば、課税されません。そこで、この基礎控除を利用して、毎年110万円ずつ贈与すれば、その分だけ相続財産を減らすことができる(相続財産に課される相続税も減らすことができる)というわけです。

たとえば、20年間で毎年110万円ずつ贈与を行えば、110万円×20年間=2,200万円まで無税で子世代に相続財産を渡せることになります。
ちなみに、この110万円は1人あたりの金額ですから、相続人が3人いた場合であれば、2,200万円×3人=6,600万円まで無税で贈与することが可能となり、大変大きな節税効果を得ることができます。

ちなみに、暦年贈与は、財産の内容に制限はなく、預貯金でも生命保険でも絵画や宝石、時計でも不動産でも、どのようなものでも対象とすることができます。

贈与した証拠は残すこと

暦年贈与のポイントは、なるべく長時間に、できるだけ多くの人に贈与していくことです。しかし、せっかく贈与を続けていても、贈与をしていたという証拠が不十分だと、税務署に贈与を否定されて、トラブルになってしまうことがあります。

たとえば、毎年贈与受けていて、まとまった金額を手にした人が不動産を購入したりすると、税務署が「その購入代金は、一括で贈与を受けたものではないか」と疑われ、贈与税を支払うよう言われることがあるのです。
この時税務署に対して「このお金は、毎年110万円ずつ贈与を受けていたものだ」と主張しても、毎年贈与した証拠がない場合には、それを立証することはかなり困難です。

このようなトラブルを避けるためには、「贈与をしたという証拠を残すこと」が大切です。

贈与を残したという証拠を残すためには、贈与した事実が客観的に残るように、贈与を受けた人の預金通帳に贈与金額を振込んだり、毎年贈与契約書(※後述)を作成したりするなどの工夫が必要です。

毎年同じ金額にしないこと

暦年贈与を行う際には、「定期贈与契約」と見なされないようにしておくことも大切です。

定期贈与契約とは、たとえば「毎年100万円ずつ10年間に渡って贈与する」というような契約です。
10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとの贈与ではなく「10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利」の贈与を受けたものとして、何年かに分けて贈与しても、その全額全てが課税対象とみなされ、贈与税がかかるからです。

このような定期贈与とみなされないためには、毎年新たな意思をもって110万円ずつ贈与している、という外形(金額や内容を記載した贈与契約書の作成)を整えねばなりません。

子供名義の預金は贈与にならないので注意

贈与した場合には、贈与した人が通帳や印鑑を管理せず、管理は子どもに任せることが大切です。
たとえば、親が子ども名義の預貯金口座を作り、そこに贈与として毎年110万円ずつ振り込んでも、実際には親が管理していて親が自由にお金を出し入れしたりすると、税務署としては、このような預金は「親の預金」とみなします。
このような預金は「名義預金」といい、相続税の税務調査でもっとも指摘されるものです。税務調査で指摘を受ければ、相続税の申告漏れとして訂正を求められ、追徴課税される可能性もあります。

名義預金といわれないためには、贈与を受けた口座をクレジットカードの引き落とし口座に指定し、贈与を受けた人が自由に使っていると証明したり、印鑑と通帳を子供に渡して子どもに管理させるなどの工夫が必要です。

贈与契約書を作成しよう

生前贈与をするときには、必ず贈与のたびにしっかりと金額や内容を記載した「贈与契約書」を作成することをおすすめします。

贈与契約書とは、贈与の目的や価額、贈与の日にちや方法などを明らかにする契約書で、贈与者と受贈者が双方とも署名押印します。

贈与契約書を作成すると、贈与をした日にちと贈与者と受贈者が双方とも贈与に合意していることが明らかになり、以下のようなメリットがあります。

定期贈与とみなされない
毎年新たな贈与契約書を作成することで、その都度贈与の合意をしていることが明らかになるので、「定期贈与」になりません。きちんと連年贈与として認められ、毎年110万円の贈与税の基礎控除を最大限適用できる可能性が高くなります。

名義預金とみなされない
贈与契約書を作成することで、名義預金とみなされるリスクが低くなります。
名義預金とみなされてしまうのは、親などの贈与者が子どもなどの受贈者の承諾をとらずに一方的に子ども名義の預金口座にお金を入金している状態だからです。

そこで、贈与契約書を作成し、親と子どもが署名押印して双方の贈与に対する意思を明らかにしておけば、「親が実際は管理しているだろう」と言われることがなくなり、贈与したものだとみなされることになります。

贈与税の申告も効果がある

毎年110万円を超えた贈与を受け、毎年贈与税の申告をすると、その年に贈与を行ったことが明らかになります。贈与税の納付を受けている以上、贈与を行っている記録が税務署にも残るので、後に「定期贈与」や「名義預金」などと言われる可能性がなくなります。
ただし、だからと言って、「110万円を1万円超えた贈与をして、1万円に対する贈与税を支払い、税務署に事実を認めさせていく」という方法は、かえって税務調査の対象となってしまうことがあります。
贈与税の申告は、本来、贈与を受けた人が行わなければなりません。
しかし、毎年贈与をした人が申告をしていると「暦年贈与の証拠のために、勝手に贈与税の申告書を提出しているのではないか」と疑われ、税務調査の対象になりやすくなってしまうからです。

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相続時清算課税制度とは

前述した暦年贈与が、コツコツと長い年月をかけて行う対策であるのと対照的なのが、「相続時清算課税制度」という制度です。

相続時清算課税制度とは、2003年(平成15年)の税制改正で経済活性化の切り札として創設された制度で、生前の贈与のうち2,500万円までの特別控除が認められる制度で、贈与税の特例にあたります。通算2,500万円を超えた場合には、一律20%の贈与税で済みます。たとえば、5,000万円贈与した場合でも、500万円の贈与税で済むというわけです。

(5,000万円―2,500万円)×20%=500万円

ただし、贈与した財産は、すべて相続時に贈与した時価で再計算します。つまり、贈与したすべてを相続財産として相続税の計算をすることになります。贈与した時の時価で再計算するので、相続時と贈与時の時価の差額が、節税になることになります。

相続時清算課税制度の適用を受けたい人は、贈与税申告時に「相続時清算課税制度選択の届出」を税務署に提出しなければなりません。
この届出を提出し、相続時精算課税制度を選択すると、これ以降は「暦年贈与」を利用した財産の移転は受けられませんので、それぞれの制度の特徴を知り、状況に応じた方法を選択することが大切です。

相続時精算課税制度は「相続税と贈与税の一体化した制度」

相続時精算課税制度は、親や祖父母から子どもや孫へ贈与を行う際に、最大2,500万円までの贈与分にかかる贈与税を非課税とする制度です。つまり、相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円分の贈与をしても、贈与税がかかりません。

1回の贈与で全部の枠を使い切る必要はなく、何年かけて2,500万円贈与してもかまいません。

相続時清算課税制度は、あくまでも贈与は相続財産の前渡しとしてとらえるので、相続時精算課税制度を選択して生前に贈与しても、相続時には合算されて相続税が課税されることになります。

つまり、相続時精算課税制度を利用すると、贈与税がかからなくなる代わりに相続税が発生するイメージです(※ただし、相続税の基礎控除以内であれば、相続税はかかりません)。
このようなことから、相続時精算課税制度は、相続税と贈与税が一体化した制度と言えます。

2,500万円まで贈与税がかからない

相続時精算課税制度の一番のメリットは、2,500万円の贈与分まで贈与税がかからないという点です。
たとえば、まとまった財産を贈与しても、2,500万円までであれば無税です。それを超えても一律で20%の贈与税しかかからないので、一般の贈与税の税率よりは相当低くなります。

相続時清算課税制度は誰でも利用できるわけではない

相続時精算課税制度は、誰でも利用できるわけではありません。適用されるのは、60歳以上の親や祖父母などの直系尊属から20歳以上の子どもや孫などの直系卑属に贈与される場合のみです(以前は、65歳以上の父または母から20歳以上の子どもの場合でしたが、2015年(平成27年)の税制改正で対象が拡大されました)。

相続時清算課税制度の適用対象者

①贈与者は60歳以上の両親または祖父母
②受贈者は推定相続人(代襲相続人含む)である20歳以上の子または20歳以上の孫

相続時清算課税制度の適用を受けるための届出が必要

相続時精算課税制度を適用するためには、当初に贈与が行われた年の翌年の2月1日から3月15日までの贈与税の申告期間に、贈与税の申告とともに「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
届出の際には、次の書類を添付します。

相続時精算課税選択届出書の際に必要な書類

・受贈者(贈与を受けた人)の戸籍謄本または抄本
・受贈者の戸籍附票や住民票
・贈与者の戸籍附票や住民票

この届出をしない限り、相続時精算課税制度は適用されません。また、前述したとおり、いったん相続時精算課税制度選択の届出をしてしまったら、それ以降暦年贈与の非課税枠は使えないことになります。

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一般贈与と相続時清算課税制度どちらが得か

これまで繰り返し述べてきたとおり、一般贈与は、贈与税をゼロにすることができますが、相続時清算課税制度は、最終的には相続財産に持ち戻されるに過ぎません。
では、相続時清算課税制度がメリットになるケースとはどのような点でしょうか。
それは、実際に相続が発生した時、相続財産が相続税の基礎控除の範囲内であれば、相続税を納める必要がなくなるという点が、そもそも相続税を納める必要のない人にとってメリットだからです。
つまり、相続税を納める必要のない人であれば、この相続時清算課税制度を利用することで、実質無税で相続財産を前渡ししてもらえる制度になるというわけです。

このように、一般贈与と相続時清算課税制度どちらを利用すべきかについては、個々のケースによって節税効果が大きく変わりますので、どちらを選択すべきか判断する時は、被相続人、相続人両方の財産状況をよく考えることが必要です。
ここでは、個々のケースによってどちらがメリットがあるか考えていきましょう。

早く始めるなら「暦年贈与」が効果的

暦年贈与は、毎年少しずつしか贈与できませんが、長年継続すると多額の贈与を無税でできるメリットがありますので、早めに相続税対策をするなら、暦年贈与をするならば、早めに始めるのが効果的でしょう。
死亡が遠い未来で、贈与者がまだ元気なうちから子どもや孫などに対し、110万円以内の金額で贈与を続けていけるようなケースであれば、暦年贈与を行うのがおすすめといえるでしょう。

ただし、法定相続人に対する贈与については、死亡前の3年間の贈与については相続とみなすことになっています。そこで、3年以内に死亡する可能性があるときに暦年贈与をするのであれば、法定相続人となっていない孫や長男の嫁などに贈与するのがよいでしょう。

相続税の申告が必要な人で相続時精算課税制度のメリットがあるのは?

前述したとおり、相続時精算課税制度は、相続税を納める必要のない人にとっては、実質無税で前借のメリットだけを利用できる制度でしたが、それでは、相続税の申告が必要な人にとっては、相続時精算課税制度を有効に利用する方法はないのでしょうか。

相続時精算課税制度の場合、2,500万円というまとまった額の財産を無税で贈与できるメリットがありますが、相続時に相続財産に算入されて相続税が課税されるという問題があるからです。

しかし、ここで注意したいのは、その際の評価は、相続時の時価ではなく「贈与時の時価」という点です。
つまり、不動産や株式などの時価が下がっている時に相続時精算課税制度を利用すれば、後に相続税評価をするときに財産の評価額を下げられ、結果的に相続税額を引き下げることができる可能性があるからです。

たとえば、不動産や上場株式を所有しているときには、相場が下がっている時を見計らって子どもなどに贈与したり、自社株贈与の場合で、一時的に株式評価額が低下したときに贈与(退職金を支払うなどして)したりすると、評価額を下げやすくなります。

したがって、相続時清算課税制度は、「将来相続税が発生する可能性が高いが、今ならそれほど相続税がかからない」というケースや、「親のお金をアテにしているが、相続まで待っていられない。しかし、贈与してもらっても高い税金を納めるのはつらい」というようなケースでは、有効といえるでしょう。

以上のように、相続税を節税するためには、暦年贈与と相続時精算課税制度と賢く使い分ける必要があります。どちらが向いているかわからない場合には、一度税金の専門家である税理士に相談してみましょう。

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