結婚・子育て資金贈与の特例|令和5年度税制改正でどう変わった?

公開日:2019年05月23日
最終更新日:2023年05月02日

この記事のポイント

  • 結婚・子育て資金の贈与の特例が令和5年度に改正された。
  • 適用期限は令7年3月末まで延長され、制度が見直された。
  • 受贈者が50歳に達した場合等は、管理残額に贈与税(一般税率)が課される。

 

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例とは、子や孫のための資金の拠出について、父母や祖父母が20歳以上(令和4年以降18歳以上)50歳未満の子や孫のために、結婚や出産または育児に要する資金を一括で贈与した場合、1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。

令和3年(2021年)に税制改正され、適用期限が延長され、贈与者死亡時の相続税課税や2割加算制度が導入され、内容が厳しくなりましたが、令和5年度の改正で適用期限が2年延長され、令和7年3月31日までとなりました。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例とは

結婚・子育て資金贈与の特例とは、正式名称を「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(以下結婚・子育て資金贈与の特例)」といい、将来の経済的不安から結婚・出産を躊躇している若年層について、両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・子育てを支援することを目的とした特例措置です。

結婚・子育て資金贈与の特例は、もともと平成27年(2015年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間の期限付き措置でしたが、平成31年(2019年)の税制改正で適用期限が2年間延長され、さらに令和3年(2021年)の税制改正でも2年延長され、令和5年度の改正でさらに適用期限が延長されたことから、適用期限が令和7年(2025年)3月31日まで延長されました。

参照:財務省「令和5年度税制改正要望事項」

(1)制度の対象となる結婚・子育て資金とは

制度の対象となる結婚・子育て資金とは、以下のとおりです。

1,000万円枠 ・不妊治療・妊婦検診に要する費用
・分娩費等・産後ケアに要する費用
・子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代含む)
合計1,000万円まで非課税
300万円枠 ・挙式費用、衣装代等の婚礼費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
・家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)

通常、結婚や出産の費用は、生活費用として贈与しても課税されることはありません。
したがって、この特例の目的は、将来の経済的不安から結婚・出産を躊躇している若年層に対して親、祖父母が費用を一括贈与することで、不安を取り除くことにあるといえるでしょう。
現に内閣府でも、制度の目的として以下のように規定しています。

将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな原因の一つになっていることを踏まえ、両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・子育てを支援するものである。

参照:内閣府「平成31年度 税制改正に関する内閣府主管項目のポイント」

(2)1人につき合計1,000万円まで非課税

結婚・子育て資金贈与の特例の非課税限度額は子や孫1人につき1,000万円です。
このうち結婚費用や、家賃、敷金等の転居費用等に充てられるのは300万円までとなります。

なお、結婚・子育て資金の「結婚」の費用とは、婚礼、披露宴費用、新居の住居費などが該当し、「子育て」は不妊治療費、妊娠中の通院費、子どもの医療費、保育料などが該当します。

(3)残額があると受贈者に贈与税が課税される

受贈者が50歳になると終了することになります。そして、その時点で資金の残高があれば、受贈者に贈与税が一般税率で課税されます。

相続までに受贈者がすべて使い切ることができれば、贈与税が課税されることがないので、その点では節税効果があるといえることになります。

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(4)贈与者が死亡した時は残高が相続税の対象となる

この特例で注意が必要なのが、贈与者(両親や祖父母)が亡くなると、残高が相続財産に加算されるということです。

結婚・子育て資金贈与の特例の終了前に贈与者が亡くなった時には、亡くなった時点で残高があれば、その残高は受贈者が相続または遺贈によって取得したものとみなされて、相続税の対象となります。
改正前は、受贈者が贈与者の孫であってもその相続税について2割加算の適用はされないというメリットがありましたが、令和3年の改正で2割加算の適用対象となることになりました(※後述)。

(5)金融機関で口座を開設する必要がある

結婚・子育て資金の一括贈与の特例の適用を受けるためには、金融機関で専用口座を開設して贈与された金額の預け入れを行う必要があります。また、この時受贈者から所定の申告書(結婚・子育て資金非課税申告書)を金融機関に提出しなければならず、口座を開設する前に贈与者と受贈者の間で、書面による贈与契約を締結する必要があります。
開設可能な専用口座は、受贈者1人につき1つです。一度に全額ではなく分割して預け入れることも可能です。

令和3年・5年の改正ポイント

結婚・子育て資金贈与の特例は、令和3年(2021年)に税制改正され、本来の制度趣旨と異なる節税的な利用を防止するために内容が見直されました。また、令和5ん年度の税制改正でさらに適用期限が2年延長されました。

(1)適用が令和7年3月31日まで延長

結婚・子育て資金贈与の特例は、令和3年(2021年)3月31日までの措置でしたが、令和5年(2023年)3月31日まで延長され、令和5年度の税制改正でさらに延長され、適用期限は令和7年(2025年)3月31日となりました。

しかし、結婚・子育て資金贈与の特例は平成31年3月末時点で累計6,700件強ほどしか利用されていません。そもそも、結婚費用や婚礼費用などは通常親が出しても非課税なので、なかなか利用されないという事情がありました。
税制改正大綱には「実務上の留意点」において「次の適用期限到来時に、制度の廃止も含め検討することとされています」と記載されているので、次に適用期限の到来時には、利用件数や利用実績を踏まえ、制度の廃止も含め検討されるものと思われます。

(2)一定の基準を満たす保育料が資金の範囲に追加

令和3年4月1日以降、1日あたり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち、都道府県知事等から、一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものに支払われる保育料が加えられました。

(3)管理残高は2割加算制度の対象に

贈与者から相続等によって取得したものとみなされる管理残高について、令和3年4月1日以降の一括贈与契約については、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が加算される場合に、当該管理残高に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の対象となることになりました。

令和3年改正前 令和3年改正後
適用期限 令和3年3月31日まで 令和3年5月31日まで
受贈者の年齢要件 20歳以上 18歳以上
相続税額の2割加算 孫に対する2割加算は適用されない 贈与者から相続等によって取得したものとみなされる管理残額について、当該贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課税される場合には、当該管理残額に対応する相続税額は、相続税額の2割加算の対象となる。
結婚・子育て資金の範囲 1日あたり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち、都道府県知事等から一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものに支払われる保育料が追加。
申告書等に記載すべき事項の提供方法 以下に掲げる申告書等の書面の提出に代えて、取扱金融機関の営業所等に対して、当該申告書書面に記載すべき事項等を電磁的方法によって提供することができる。
①結婚・子育て資金非課税申告書
②追加結婚・子育て資金非課税申告書
③結婚・子育て資金非課税取消申告書
④結婚・子育て資金非課税廃止申告書
⑤結婚・子育て資金管理契約に関する異動申告書

まとめ

以上、結婚・子育て資金の一括贈与の特例の内容や令和5年度の税制改正のポイントなどについてご紹介しました。結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、住宅資金の特例や教育資金の特例と比較するとメリットの少ない特例ではありますが、それでも暦年贈与と比較すれば、一度に1,000万円を非課税で贈与できるというメリットがあります。
今後は制度自体が廃止されることが予想されますので、利用したい方は早めに税理士に相談されたうえで、手続きを行うことをおすすめします。

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