公開日:2019年11月11日
最終更新日:2022年07月30日
平成27年(2015年)の相続税改正によって、相続税の大増税時代が始まりました。この改正によって、これまで相続税を納付する必要がなかった人も、相続税の対象となる可能性が高まったことになります。そして、2019年7月(一部は11月)からは、相続法の改正は施行されました。相続法は、実に40年ぶりの大改正ということで、注目が集まっています。
平成30年(2018年)7月に、相続法の改正が順次施行されました。
この改正は、1980年以降実に40年ぶりの大きな見直しとなりました。
この40年間で日本人の平均寿命は延び高齢化が進行し、パソコンは普及するなど、社会情勢に大きな変化があり、これまでの相続法では時代に合わなくなったことが理由のひとつとして挙げられています。
最近の相続法の主な改正ポイントは、以下の8つです。
①遺言書の一部がPCで作成可能になった ②預貯金の払戻制度の創設された ③長男の妻も財産の取得が可能に ④配偶者はそのまま自宅に住めるようになった(配偶者居住権) ⑤配偶者が一定期間自宅に住めるようになった(配偶者短期居住権) ⑥婚姻関係20年以上の夫婦の自宅贈与は遺産分割対象外になった ⑦自筆証書遺言の保管制度の創設された ⑧空き家の3000万円特別控除 |
遺言書は大きく自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類があります。
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の内容、日付、名前をすべて自筆で書いて捺印し作成するものです。
自筆証書遺言ですから、パソコンや他人による代筆は無効となります。
しかし、今回の改正で財産目録については、パソコンで作成することが可能となり、一度作成した遺言書を書き直すなどの手間も減ることになりました。
また、財産目録についても必ずしも文書形式でなくてもよくなり、通帳のコピーや不動産の登記簿謄本などで財産を特定することも認められるようになりました。
これまで、亡くなった人の預貯金口座は、遺産分割協議が終わるか、相続人全員の同意がないと引き出すことができませんでした。葬儀費用も引き出すことができず、遺協議がまとまるまでの間の生活費が不足し、残された家族が日々の生活に困るといったケースもありました。
しかし、「預貯金の払戻制度」が創設され、令和元年(2019年)7月以降は、一定額については相続人が単独で引き出すことができるようになりました。
なお、これらの制度により払い戻された預金は、後日の遺産分割において、払戻しを受けた相続人が取得するものとして、調整が図られます。
預貯金を引き出す方法は、①金融機関に直接依頼する方法、②家庭裁判所に申し立てをする方法の2つがあります。
①の場合には、金融機関から引き出せる上限額は150万円が上限です。②の場合には上限額は多くなりますが、裁判所に申し立てをしなければならないというデメリットがあります。
参照:全国銀行協会「遺産分割前の払戻制度」
相続人でない長男の妻などの親族が、どれほど長年亡くなった方の介護をしてきたとしても、その苦労が報われることがなく、不公平感がありました。
しかし、特別寄与料制度が創設され、令和元年(2019年)7月からは、長男の妻など相続人でない親族が介護を続けて、その結果義父母の財産が維持された・増加した認められた場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。
配偶者が自宅を相続して、その他の相続人が預貯金を相続した場合、配偶者の手許に預貯金が残らず生活に困るケースがありました。
たとえば、子どもがおらず遺言書もない夫婦で夫が亡くなると、妻は夫の兄弟姉妹と相続財産を分割しなければならず、自宅を売却しなければならないケースもありました。
このようなケースを解消しようと創設されたのが、「配偶者居住権の創設」です。令和2年(2020年)4月1日から、自宅の価値を「所有権」と「配偶者居住権」に分けて、自宅に住む権利を優先的認めることとしました。配偶者は「配偶者居住権」のみを相続することができるようになり、自宅に住み続けながら、預貯金も相続することができ、生活の不安から解放されるケースが増えました。
配偶者短期居住権とは、被相続人が所有する建物に無償で居住していた配偶者が、被相続人の死後もその建物を、6カ月間無償で使用することができる権利です。
配偶者が被相続人所有の建物に無償で居住していた場合、被相続人が亡くなった後も、6カ月間はその建物を無償で使用することが認められます。配偶者居住権には使用と収益が認められていますが、配偶者短期居住権には「収益」は認められず「使用」しか認められません。
配偶者に財産をあげると「贈与税」がかかりますが、結婚して20年以上経つ夫婦間での贈与は基礎控除110万円のほかに2,000万円までは贈与税がかからないという特例があります。
しかし、この制度を利用して夫が妻に自宅を贈与しても、夫が亡くなった時にはこの贈与はなかったものとされ、相続財産として、他の相続人と相続の取り分を決めなければならないとされていました。
そこで、令和元年(2019年)7月からは、婚姻関係が20年以上ある夫婦間で自宅の贈与をした時には、相続の取り分を決める時に贈与した自宅は、その対象としなくてもよいことになりました。
自筆証書遺言は、遺言者が作成して自宅で保管していることが多く、亡くなった後遺言書が発見されなかったり、家庭裁判所で遺言書の確認をしてもらう「検認」という作業が必要であったりして、相続手続きが煩雑で時間がかかるというデメリットがありました。
しかし令和2年(2020年)7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が創設されました。
本人が法務局に預けるので、内容に疑いが生じることがないため、家庭裁判所で検認手続を行う必要もありませんし、紛失のリスクもなくなりました。
相続で空き家になった被相続人の家を売却した場合には、譲渡所得(売却することで得た利益)から3000万円を差し引くことができます。
これは、年々放置される空き家が増え、治安悪化や災害時の倒壊のリスクなど、周辺の生活環境に悪影響をもたらしていることから、空き家の売却を促すために設けられた特例です。
空き家の3,000万特別控除の適用を受けるためには、建物が一定の耐震基準を満たしている必要があります。そのため、耐震改修を行ってから売却するか、建物を解体して更地にしてから売却しなければなりません。売却は、相続開始から3年目の12月までに行うことが条件で、かつ令和5年12月までの特例です(延長の可能性あり)
以上、最近の相続法の改正ポイントについてご紹介しました。
40年ぶりに相続法が改正されましたが、相続税法も毎年のように見直しがされています。
相続財産が基礎控除の金額の範囲内であれば、相続税の申告は不要ですが、相続する財産が基礎控除の金額を超えていて、特例を使うことで相続税の額を減らしたい人は、その特例を認めてもらうために、相続税の申告をすることが必要です。
相続法・相続税法の改正を踏まえ、少しでも相続税を減らしたいという方は、早めに税理士に相談して対策を検討されることをおすすめします。
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