不動産(土地・建物)評価の方法を分かりやすく

公開日:2019年11月22日
最終更新日:2022年07月16日

この記事のポイント

  • 不動産の評価は、建物、土地それぞれにルールがある。
  • 建物の評価は、建物の固定資産税評価額で決まる。
  • 土地の評価は「路線価方式」「倍率方式」の2つの評価方法がある。

 

土地や建物は、「どのように利用されているか」などの種類によって評価が変わります。
また、評価の方法もひとつではなく、実勢価格、公示価格、相続税評価額などがあります。
相続税評価額は公示価格のおよそ80%程度に抑えられていて、計算方法は、路線価方式、倍率方式があります。

不動産の評価

土地の価格を評価する方法は、以下の4つのようなものがあります。

①実勢価格(売買される時の時価)
不動産の売り手と買い手の公正な市場で取引される時価

②公示価格
国土交通省の土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて官報に公示したもので、①の実勢価格とほぼ同額

③相続税評価額
国税庁が、相続税などの評価目的で土地の面する道路に付した地価。路線価方式、倍率方式などの計算方法がある。
公示価格の約8割が目安

④固定資産税評価額
市町村が、固定資産税の課税のために評価した額
公示価格の約7割が目安

上記のとおり、③の相続税評価額は公示価格の80%とされていますが、これは相続税を支払うために土地を売却する時には、なかなか売れなかったり実勢価格より安く買い叩かれたりするケースがあるからです。これらの事情に配慮して「売却すれば最低でいくらなら売れるか」という考え方をします。

なお、形が悪い土地(不整形地)や他人の土地を通らないと道路に出られないような土地(無道路地)など特殊な状態にある土地は、不動産評価を行うことによって評価を引き下げることが可能です。

(1)建物は基本的に「固定資産税評価額」

建物は、基本的に建物の固定資産税評価額がそのまま相続税の評価額となります。

建物の固定資産税評価額 × 1.0

固定資産税評価額は、市区町村(東京23区の場合は東京都)が管轄内の土地について評価した金額です。3年に一度評価替えが行われます。建物、土地とも、建物の利用状況(貸している、借りているなど)によって、評価額は異なります。固定資産税、登録免許税、不動産取得税などの計算のもととなるものです。

(2)「固定資産税評価額」は台帳や納税通知書で確認

固定資産税評価額は、土地のある市区町村役場で調べると分かります。
納税義務者、借地人、借家人など、固定資産の管理処分を有する人は、新年度の価格等の公示日以降であれば、いつでも固定資産課税台帳記載事項の閲覧、証明書の交付を受けることができます。
なお、土地または家屋の固定資産税の納税者は、自分が所有する土地、家屋の評価額について、その土地・家屋の所在する市町村内の他の土地・家屋の評価額と比較することができるようになっています。

(3)土地は「路線価方式」と「倍率方式」

土地評価の方法は、主に「路線価方式」と「倍率方式」で行われます。

・路線価方式
評価の対象となる土地が面している道路につけられた1㎡当たりの価格(路線価)に免責をかけることで、土地の評価額を計算する方法です。
路線価は、相続税および贈与税の算定基準とするために国税庁が調査しているもので、毎年1回1月1日時点の土地の価格が夏頃に発表されます。

・倍率方式
路線価がない土地、主に地価格差の少ない郊外地や農村宅地の評価に使われる計算方法です。
「土地の評価額=固定資産税評価額×倍率」で計算することから倍率方式と呼ばれます。

(4)まず「路線価方式」で評価する

市街地の土地の評価は、まずは路線価方式で行います。
路線価方式とは、道路ごとにつけられた路線価によって評価する方法です。その土地の1㎡当たりの路線価に土地面積を掛けて、評価額を計算します。
市街地を評価する場合には、ほとんどがこの路線価方式で行われます。

路線価方式
1㎡当たりの路線価 × 土地面積

路線価は、税務署に備えられている路線価図を見れば分かるようになっています。宅地の形状や道路への接し方によって「画地調整率」を掛けて調整します。この路線価は毎年改訂されます。

土地はどのような地区区分に属しているか、どういった形の土地かなどさまざまな性質があります。路線価は、間口の広さと同じ奥行きである正方形を想定して作られた価額なので、土地が不整形であったり間口が狭く奥行きが長い土地だったり、他人の敷地を通らないと道路に出られないような土地は、評価額が下がります。
一方、角地は評価額が上がります。

たとえば、路線価が同じ15万円で面積が100㎡(普通商業用併用住宅)で奥行が違う、以下の土地Aと土地Bを比較してみましょう。

土地Aは奥行き50mありますので奥行価格補正率で調整し、以下のように計算します。
・基本額(1㎡当たりの価額)
 150,000円(路線価)×0.89(奥行価格補正率)=133,500円

・評価額
 133,500円(基本額)×1,000㎡(面積)=133,500,000円

土地Bは、以下のように計算します。
・基本額(1㎡当たりの価額)
 150,000円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=150,000円

・評価額
 150,000円(基本額)×1,000㎡(面積)=150,000,000円

つまり、土地Aと土地Bとでは、1,650万円もの差額があることになります。
同じ路線価で同じ面積でも、奥行によってこれだけ評価額が異なるのです。

(5)路線価がない場合は「倍率方式」で評価する

郊外や田畑、山林など路線価がつけられていない土地については、倍率方式という方法で評価します。
この倍率方式は、固定資産税評価額を基本とするものです。その土地の固定資産税評価額に、地域や土地の種類ごとに定められた倍率を掛けて計算します。

倍率方式
土地の固定資産税評価額 × 倍率

固定資産税評価額は、固定資産課税台帳や納税通知書で確認できます。また、倍率は税務署にある評価倍率表を見れば分かります。

たとえば、固定資産税評価額が4,000万円で倍率が1.1倍なら、
4,000万円×1.1=4,400万円が相続税評価額となります。

(6)貸している不動産は評価が下がる

他人に貸し付けている宅地を「貸宅地」といいます。
貸宅地は、借りている人に使用する権利があり、土地の所有者といえどもその土地を自由に使うことはできません。そこで、評価額の計算ではその借地権分を差し引くことになり、その分貸宅地の評価額が低くなることになります。

評価額の方法は、土地を貸している場合には建物と土地をセットで課している場合、建物を貸している場合によって異なります。

貸宅地
貸宅地とは、貸している土地に他人が建物を建てている場合です。
借地権割合は、住宅地であればその土地に対する権利の60~80%で、地域によって異なります。通常の評価額は、路線価方式、倍率方式などで計算します。

通常の評価額×(1-借地権割合)
貸家
建物を貸している場合には、貸家となり、建物を借りている人の借地権分を差し引きます。借家権割合は原則として30%です。
通常の評価額は、建築価格の50%~70%です。
空室などがある場合には、その床面積を差し引いた「賃貸割合」を掛けます。

通常の評価額×(1-借地権割合)
貸家建付地
アパート・貸家などが建てられた土地は、貸家建付地と呼ばれます。
貸宅地との違いは、貸宅地の場合には建物が借地人の所有となりますが、貸家建付地は建物も土地も土地の所有者のものであるという点です。
借地権割合は、地域によって異なります。借家権割合は原則として30%です。通常の評価額は、路線価方式、倍率方式などで計算します。
空室などがある場合には、その床面積を差し引いた「賃貸割合」を掛けます。

通常の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)

(7)被相続人のマイホームは税額が軽減される

被相続人(亡くなった方)の住んでいる家の土地は、評価額を80%下げることができます。これを「小規模宅地等の特例」といい、一定条件に該当する被相続人の不動産(土地)の評価額を50~80%まで減額するという相続税の特例です。
適用される土地には、居住用、事業用、貸付事業用の3つがあります。

特定居住用宅地
被相続人や生計を共にしていた親族が住んでいた土地は、「特定居住用宅地」として、330㎡までの評価額が80%も減額されます。

主な要件は、以下のとおりです。
①配偶者が相続する場合には、特に条件なし
②同居していた親族が相続する場合には、引き続き住み続けその後も所有すること(※申告期限まで)。
③別居していた親族が相続する場合には、相続開始前3年以内に自分や配偶者名義の家、三親等以内の親族などが所有する家に住んでいないこと。
④その家を過去に所有していたことがないこと。

特定事業用宅地
被相続人(または被相続人と生計を共にしていた親族)が、事業に使っていた土地も対象となります。400㎡までの評価額が80%減額されます。

主な要件は、以下のとおりです。
①相続した人が事業を引き継ぎ、その後もその土地を所有すること(※申告期限まで)。
②事業開始が、相続開始前3年以内ではないこと。

貸付事業用宅地
被相続人が貸していた賃貸不動産や駐車場などの土地も対象となります。上限は200㎡までの評価額が50%減額されます。

主な要件は、以下のとおりです。
①相続した人が事業を引き継ぎ、その後もその土地を所有すること(※申告期限まで)。
②事業開始が、相続開始前3年以内ではないこと。

小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告が必要です。申告は、税額がゼロになる場合にも必要となりますので忘れずに申告を行うようにしましょう。

まとめ

以上、土地や建物の不動産評価についてご紹介しました。
土地はその種類によって評価が違い、評価の方法も実勢価格、公示価格、相続税評価額などいろいろあり、その土地がどのように利用されているかによっても評価額が変わります。
相続税対策に精通している税理士に相談すれば、的確に評価分析を行ない、相続人間の利益調整のとれた遺産分割について丁寧に検討を積み重ねていくことで、税額を大幅に減らすことが出来ますし、何よりも円滑な相続を実現することができます。
また、遊休土地の有効活用やライフプランの設計にもアドバイスをもらうことができます。

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