売上債権回転率とは|計算式は?目安は?

公開日:2021年10月05日
最終更新日:2024年03月22日

この記事のポイント

  • 売上債権回転率とは、売上債権の効率性を判断するための指標である。
  • 売上債権回転率によって、売上債権が一定の期間内に何度「回転」するか、すなわち売上債権が平均して何度支払われるかを見ることができる。
  • 売上債権回転率が高ければ、売上債権を効率よく回収できていると判断できる。

 

売上債権回転率とは、売上高に対して一定期間内に売上債権がどの程度利用されたかを示す指標で、売上の回収が順調であるかをチェックするために活用されます。

売上債権回転率は業種別によって異なりますが、不動産業、宿泊業などは高い傾向があります。
売上債権回転率が同業他社と比較して低い場合には、代金回収サイトが長い、もしくは支払が滞っている債権がある可能性があります。したがって、代金回収サイトを見直したり不良債権予備軍がないかをチェックしたりして、改善方法を検討します。
 

売上債権回転率の豆知識

売上債権回転率は、売上高を売上債権の金額で割って計算します。売上債権回転率が高いほど、資本(資産)を効率的に利用して売上を獲得したことを意味します。逆に売上債権回転率が低いということは、売上規模の割に売上債権が多いことを意味します。
売上債権とは、いわばツケで売った状態です。代金を支払ってもらえるまでは、現金を受け取ることができませんから、ツケで売上が増えると手元にお金がなくなり、次の仕入や商品づくりができなくなってしまいます。万が一、取引先が倒産してしまえば、回収できなくなるリスクもあります。
売上債権の回収は、企業にとって重要な資金源泉であり、遅延したり回収が長期化してしまうと、資金繰りが苦しくなってしまいます。
したがって、売上債権回転率を把握して代金回収が遅すぎないかチェックして、同業他社と比較して遅い場合には、改善しなければなりません。
売上債権回転率は業界の慣習に影響されることが多いものですが、商品力があったり管理能力が高かったりする会社は、高い傾向があります。

売上債権回転率とは

売上債権回転率とは、売上債権の効率性をはかる指標です
売上債権とは、売掛金と受取手形のことで、売上債権回転率は高いほど資本の有効活用度が高いことを意味します。
そして、売上債権回転率が低い場合には、代金回収のサイトが長かったり、取り決めた回収条件が守られずに支払が滞っていたりする債権があり売上債権がふくらんでいるリスクがあるということになります。

(1)売上債権回転率は「代金回収の速さ」を見る指標

売上は、商品を売りさえすれば計上することができますが、相手が会社である場合には、通常は1~2カ月ほど待たないと、お金が入金されません。そして、入金されるまでは「売掛金」として計上されます。

その後、相手の会社が期限内に支払いをしてくれれば何の問題もありませんが、なかにはいろいろな事情から支払いが遅れることがありますし、もともと取り決めた代金の回収条件自体が長いというケースもあります。
そして最悪の場合には、相手の会社から入金されないこともあり得ます。

売上債権回転率は、このような問題がなくきちんと売掛金が回収できているかを見る指標であり、売上債権回転率が低い場合には「利益は出ているのに、代金が回収されない状態」である可能性があります。

(2)売上債権回転率の計算式

売上債権回転率は、損益計算書の「売上高」を貸借対照表の売上債権(売掛金・受取手形)で割って計算します。

売上債権回転率 = 売上高 売上債権

売上債権回転率は、1回転、2回転という単位を用います。
売上債権回転率が高ければ高いほど、売上の回収がうまくいっていることをあらわします。

たとえば、売上債権回転率が4回転ということは、1年に4回の支払予定となり、債権発生から現金化するまでの時間が約3カ月必要であるということです。
このように、売上債権回転率をチェックすることで、売上債権が現金化するスピードを把握することができるのです。
売上債権回転率が少ないということは、現金化するスピードが遅いということなので、それだけ資金不足になるリスクが高いことを示します。

売上債権回転率は業種によって異なりますが、一般的には6回転以上なら正常と判断され、3回転以下であると資本の有効活用度が低いと判断されます。

(3)売上債権回転率の業界平均は?

売上債権回転率は、業種によって差があります。宿泊業、飲食サービス業の売上債権回転率は10回転を超えていますが、それ以外の業種については5回転、6回転という業種があるなど、幅があります。
このような業種による差は、その業界特有の慣習等の影響もありますので、同業他社と比較することが大切です。

業種 売上債権回転率
建設業 9.07回転
製造業 5.75回転
情報通信業 6.75回転
運輸業・郵便業 7.85回転
卸売業 6.56回転
小売業 14.44回転
不動産業・物品賃貸業 10.77回転
学術研究、専門・技術サービス業 9.55回転
宿泊業、飲食サービス業 47.52回転
生活関連サービス業、娯楽業 34.93回転

引用:e-Stat「中小企業実態基本調査 / 令和元年確報」

(4)売上債権回転期間も見てみよう

売上債権回転率をチェックする時には、あわせて売上債権回転期間も確認しましょう。売上債権回転期間とは、売上債権が現金になるまでの日数です。

つまり、売上債権回転率が「1年に売上債権が何回転するか」を表しているのに対して、売上債権回転期間が「売上債権が1回転するのに、何日かかるのか」を示す指標です。つまり、売上債権が現金化するまでに何日かかるのかを表します。

売上債権回転期間 = 売上債権売上高 × 12

売上債権回転期間は、売上債権が現金化するまでの平均的な期間を示すものです。
たとえば、売上債権回転率が5回転であれば、売上債権回転期間は「365÷5(回転)=73日」となります。つまり、債権発生から現金化までの日数が73日ということです。

売上債権回転期間が短いほど売上の回収がうまくいっていることになりますので、売上債権回転期間が短い会社ほど現金化が早く、資金的に余裕ができて財務安全性が高いと判断することができます。

売上債権回転率の改善方法

これまでご紹介したように、売上債権回転率は高く、売上債権回転期間は短いほど、売上の回収がうまくいっていることを意味します。
取り決めた売掛金の支払い条件のサイトが長かったり、支払いが滞っている債権……いわゆる「滞留債権」があったりすると、売上債権回転率、売上債権回転期間の数値は悪くなります。
したがって、売上債権回転率や売上債権回転期間の数値が悪い時には、代金回収サイトの見直し、滞留債権の解消などについて検討する必要があります。

(1)代金回収の速さを見直す

売上高が上がれば売上債権もまた増加します。しかし、売上債権回転率は取引条件が変わらない限り、大きく変化することはありません。
したがって、代金回収サイトが長いために売上債権回転率が悪化している場合には、売上債権回転期間を確認して取引先と交渉し、取引条件を見直してもらうよう依頼し、サイトを短くしてもらうか現金決済を増加してもらう必要があります。

「支払いはなるべくゆっくり、そして代金の回収はなるべく早く行う」ことを意識することで、資金繰りは改善します。

(2)滞留債権がないか確認する

代金回収サイトの見直しを行ったにもかかわらず売上債権回転率が改善しない場合には、何らかの特別な事情が起きている可能性があります。
不良債権や架空債権など、きちんと回収できていない売掛金が存在していることを疑ってみましょう。
そして、きちんと回収できていない売掛金が多数存在する場合には、債権回収の強化によって滞留債権を減少させることが必要です。

よくあるのが、営業サイドが把握している売上債権残高と経理部の帳面上の売上債権が不一致であるケースです。とくに販売から売上債権管理までの業務を、会計ソフトとは別の販売管理ソフトを使っている場合には、このようなケースがよく起こります。
そこで、毎月確認して差額の解消を図ることが大切です。
また、売上債権が長期間にわたり回収不能になっているかどうかは、売掛金エイジングリストを作成することでチェックできます。
入金遅れのある取引先には、営業担当から連絡してもらい事情を確認することが必要です。

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(3)回収できそうにない時は「貸倒引当金」

売上債権管理は、「貸倒損失」を防いで利益を守るためにも欠かせませんが、売上債権が取引先の倒産などの理由によって回収不能となった場合に備えて、貸倒引当金の計上について検討します。

当該事業年度に発生した売掛債権が明らかに回収できないときには、「貸倒引当金」を設定して「貸倒損失」として計上することができます。

貸倒引当金とは、売上債権が取引先の倒産などによって回収不能(貸倒)になった場合に備えて、各期の利益から一定金額を積み立てて準備しておく時に使う勘定科目です。
「引当金が増える」=「経費が増える」=「利益が減少」=「税金が少なくなる」ことから、自由に引当金を計上できるわけではなく、法人税法でその限度額が定められています。

決算において貸倒見積額を「貸倒引当金繰入額」として費用計上し、回収不能な見積額を「貸倒引当金」という負債科目で準備をします。
ただし、債権が回収できないことで資金繰りにリスクを与えるという事実に変わりはありません。あくまで貸倒引当金を取り崩せば、回収不能が起こった決算期の利益に影響しないだけという点からすれば、やはり売掛債権管理は万全に行う必要があります。

まとめ

売上債権回転率は、資本の有効活用度を見る指標であり、売上債権回転率は高いほど、資本の有効活用度が高いことを示します。
売上債権回転率が低い場合には、滞留債権がある可能性がありますが、これは決算書からは分からないので、売掛金管理を徹底し、内部分析を行う必要があります。そして売上債権の中身にまで踏み込んで、代金回収サイトが長いなら、取引先と交渉して見直しをするなどの対策を講じることが重要です。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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