公開日:2024年03月18日
最終更新日:2024年07月19日
最低資本金の規制がなくなり、1人でも会社の設立が可能になったこと、会社を設立した方が節税につながるなどの理由で、会社を設立するケースが増えています。
しかし、いざ会社を設立したものの、赤字がかさんでしまったり、事業をスリム化する必要ができたりといった理由で会社をたたむことを考えるケースもあります。
しかし会社を継続するのが難しくても、個人事業主としてなら事業の継続が可能な場合もあります。
個人成りの豆知識
会社を経営していて、事業の成長が見込めないことが一時的なものであれば法人格を維持するべきですが、会社としての成長が見込めず、個人で事業を行っていける可能性があり、個人事業の方が法人よりメリットが上回っている場合には、個人成りを検討するのもひとつの手です。
具体的には、法人を清算した場合や私的整理をしたうえで、最終的に法人格を消滅させ、個人事業に転換します。
ただ、個人成りは、既存の債権・債務や取引先との関係を考慮する必要があり、スムーズに移行できるとは限りません。また、無理に個人事業に移行すると、法令違反などのリスクもありますので、この点にも十分な注意が必要です。
個人成りとは、会社を清算または休眠して、事業を個人に引き継ぐことをいいます。経営が難しいなかで会社であることのデメリットが多くなってきた場合には、個人成りをすることを検討してみましょう。
法人にしているメリットとしては、①代表者に給与を出せるので、代表者は事業所得から給与所得となり、所得税や住民税が下げられる可能性がある、②借入や増資などの資金調達手段が多様化するため、資金調達しやすい、③個人と比べて信用力が増すことから、取引の幅が広がるなどが考えられます。
また、中小法人の場合には税率が軽減されることから、トータルの税額が個人と比べて低くなる可能性があります。
さらに繰越欠損金の繰越も10年と長く、個人の繰越限度機関の3年間と比較すると長いといったメリットもあります。
そこで、これらのメリットが個人事業主の場合より上回っている場合には、法人として事業を継続することとし、下回っている場合には個人成りを検討します。
個人成りを検討するタイミングは、赤字、もしくは収支がとんとんの会社の場合で、役員給与を20万円ほどしか受け取っていない場合です。このような場合には、個人成りの方が、税金が少なくて済みます。
ただ、個人成りするタイミングは個々の状況にもよります。
法人として事業を行っている場合には、既存の顧客や取引先があり、仕入先や債権者もいます。これらがすべて法人から個人に組織変更したときに、スムーズに移行できるかどいうと、そうとは限りません。
個人には、信用力に限界があり、法人として取引するうえで同じ条件で取引や販路が維持できるとも限りません。
これらは、個人成りして事業を継続していくうえでも、非常に重要となりますから、優先して検討する必要があります。
銀行口座や賃貸契約、各種保険などの名義変更も、かなり大変になることがありますので、あらかじめ調べておきましょう。
また、法人では認められていた経費が、個人事業になると認められなくなることもあります。その結果、「やはり法人のままでいればよかった」というケースも少なからずあります。
したがって個人成りするタイミングについては、かならず税理士に相談してアドバイスを受けましょう。
会社の場合、どんなに赤字でも自治体に最低7万円がかかっていましたが、個人事業主の場合には、赤字なら税金はかかりません。
会社の損金にできる役員給与については厳しい要件を満たす必要がありますが、個人事業主には厳しい要件はありません。
また、会社は定期的に税務調査の対象となりますが、会社と比べると個人事業主は税務調査の対象となりにくい傾向があります。
ただ、個人事業主と法人を比較してどちらにメリットがあるかについても、個々の状況によって大きく異なります。また許認可が必要な場合、会社の許認可は個人に引き継ぐことはできません。
したがって、詳細については税理士によく相談してみましょう。
個人事業の場合には、原則として従業員が5人以上の場合に社会保険の加入が義務づけられます。
従業員5人未満の場合は社会保険に加入する義務はなく加入が任意となり、国民健康保険と国民年金に加入することになります。
事業主は社会保険料を負担しなくてもよくなりますが、従業員にとっては不利になるケースもありますので、従業員への配慮が大切ですし、福利厚生面での配慮も必要になってくるでしょう。
個人事業になると、信用力などの面から、従業員が退職する可能性もありますから、その場合の事業への影響も想定しておく必要があります。
個人成りの方法としては、一般的には法人組織を終了ないし結了して、会社を消滅させたうえで個人事業に転換します。
いずれの方法を選択する場合も、個人事業として継続することを意識する必要がありますが、無理に個人事業に移行するとトラブルにつながることがありますので、慎重に検討する必要があります。
会社を清算するためには煩雑な手続きが必要となりますし、債務超過で清算結了できない場合などは休眠手続きをとることになります。会社を休眠させるのは、それほど難しいことはないため休眠させて個人成りするのもひとつの手です。なお、休眠会社になって12年が経過すると、みなし解散として法人格が剥奪されます。
会社の清算とは、会社を法律的に消滅させる手続きです。
清算手続きは、解散時の会社の状況によって異なり、大きく以下の3つの手続きに区分されます。
①通常清算
株主総会で会社を解散させる旨の決議と清算人の選任に関する決議を行い、その旨を法務局に登記します。解散の決議が行われた日が清算開始日となり、営業活動を終えます。そして債権者に対し公告を行い、債権・債務を整理し、残った財産があれば株主に分配します。
最後に清算結了の登記を行います。
②特別清算
清算手続きで会社が債務超過の状態というケースもあります。この場合、迅速かつ公正な清算をするために、債権者が株主、監査役などの申し立てにより裁判所の監督のもとで行う法的な清算手続きです。
特別清算は、解散した株式会社が債務超過の疑いがある場合に、特別清算の開始の命令を行うことができます。
債権者集会も多数決による集団的若い等がなされ、通常清算とは異なる特別な手続きで、株式会社の清算を完了させます。
特別清算は、裁判所が関与するため債権者の同意がなくても清算できるというメリットがありますが、反面後述する破産手続きとは異なり、債権者集会などが必要になるというデメリットがあります。
③破産
裁判所が選任した破産管財人が、全財産を管理し財産の処分を行います。
破産は、裁判上の手続きで「破産手続き」ともいいます。
特別清算が、清算人による手続きである程度自由な配当が認められる一方、破産は破産管財人が管理するという点が異なります。
破産は、債権者の同意がなくても手続きを進められるというメリットがありますが、法人破産の場合には、その会社の法人格が消滅するため、その法人を単位とした事業が終了してしまうというデメリットがあります。
会社の休眠手続きは、税務署や等道府県税事務所等に休業届を提出するだけです。
届出を提出した場合でも、税務申告書が送られてきますが、事業を行っていないので所得金額に「0」と記載して提出します。
休眠中の法人住民税の均等割については、減免申請書を提出すると免除や減額を受けられる場合がありますので、自治体に問い合わせてみましょう。
休眠会社になって12年が経過すると、官報に公告が出され、さらに公告があったことが休眠会社に対して通知されます。そして、休眠会社による届出がない場合には、解散とみなされることになります。
なお、みなし解散の後でも3年以内なら、事業を再開することもできます(株主総会の特別決議が必要です)。
個人事業を開始する時は、「個人事業の開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
個人成りをする方は、個人事業主としてスタートした方も多いと思いますので、青色申告のメリットは十分ご存知でしょう。
また、従業員を雇用する場合には、「給与支払い事務所等の開設届出書」の提出も必要です。配偶者や子どもに給与を支払う場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出しましょう。
なお、従業員が5人未満の場合や社会保険に加入する必要はありませんが、労働保険には加入しなければなりませんので、この点については注意が必要です。
個人成りを検討する場合には、法人を運営していた場合に生じる税額と、個人成りした場合に見込まれる所得税+住民税+事業税の額を比較して、トータルの税額を比較してみましょう。
法人でいた方が税額が低いのであれば、個人成りをするメリットは低くなります。
また、既存の債権・債務の処理等も必要となりますので、個人成りを検討し始めたら、早めに税理士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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