安全性分析の指標と目安を解説

公開日:2024年05月14日
最終更新日:2024年05月14日

この記事のポイント

  • 安全性分析とは、会社の資産(資本)の調達構造を分析すること。
  • 安全性分析とは、会社が倒産する可能性があるか否かを測るための指標。
  • 安全性分析の指標の数値がよい会社は、安定した会社といえる。

 

安全性分析とは、会社の財務構造や資金繰りが健全であり、債務不履行などによって倒産することがない、ということを示すための指標です。
安全性分析の代表的な指標としては、流動比率、当座比率、自己資本比率などがあります。

安全性分析とは

会社が倒産する典型的なパターンは、債務の返済期限が到来したときに、それを返済するだけの十分な資産がない、あるいは返済するために必要な資金を調達できないために、債務不履行に陥ってしまうというパターンです。
安全性分析は、会社がこのような事態に陥るリスクがないかを見る指標で、返済しなければならない債務としての負債の残高に注目し、その返済をするための資産の金額と比較したり、総資本に占める負債の相対的な大きさを検討したりすることからスタートします。
安全性分析は、主に貸借対照表の項目間の関係に着目するため、財務構造の分析とも呼ばれます。

(1)安全性分析の指標一覧

安全性分析の指標としては、主に以下のようなものがあります。

指標 分かること
流動比率 短期的な支払い能力があるか
当座比率 換金性の高い資産を用いた短期的な支払い能力があるか
負債比率 自己資本に対する負債の割合は妥当か
自己資本比率 借入金が多すぎないか
固定比率 固定資産を過剰な借入金で購入していないか
固定長期適合率 自己資本に固定資産を加えた金額で固定資産を賄えているか
キャッシュ・フロー比率 営業キャッシュ・フローが、有利子負債に対してどの程度獲得できているか

(2)流動比率

流動比率とは、会社の短期的な支払い能力を見るための指標です。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

会社はさまざまな資産を持っています。その資産のなかでもとくに流動性の高い資産といえば、現金です。また、売掛金も回収すれば現金になるので、これも流動性が高い資産といえます。
そこで、現金とすぐに現金化できる資産の合計と、すぐに支払わなければならない負債の合計を比較して、負債の返済に充当しうる資産の割合を見るための指標が、この流動比率です。
流動比率は、債務返済能力の点から高ければ高いほど望ましいとされ、かつては200%が一応の目安とされてきました。しかし、現在では売上債権や棚卸資産の管理法も進歩しているため、200%必要なケースはあまりありません。ただし、「流動負債と同額以上の流動資産を保有している」という意味で、100%を超えていることが望まれます。

業種 流動比率
建設業 223.8%
製造業 194.5%
情報通信業 245.7%
運輸業,郵便業 178.7%
卸売業 179.4%
小売業 164.1%
不動産業,物品賃貸業 173.4%
学術研究,専門・技術サービス業 222.9%
宿泊業,飲食サービス業 159.6%
生活関連サービス業,娯楽業 161.9%
サービス業(他に分類されないもの) 215.6%

参照:e-Stat「中小企業実態基本調査」

(3)当座比率

当座比率とは、流動比率と同じく会社の短期的な支払い能力を見る指標です。
しかし、流動比率よりもさらに現金に近い当座資産(現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券)のみで、すぐに払わなければならない負債を賄えるかどうかをチェックします。

当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

この当座比率は、100%を超えていれば、とりあえず支払能力は問題ないといえます。
ただし、当座比率は、棚卸資産(在庫)を計算から除きますから、売れない不良在庫の心配はありませんが売掛金は含んで計算します。この売掛金の中に不良債権があれば、当座比率の数字もあてにならなくなってしまいます。
また、当座比率が高すぎるのも資金がムダに遊んでいることを意味します。

業種 流動比率
建設業 160.4%
製造業 126.6%
情報通信業 190.4%
運輸業,郵便業 145.9%
卸売業 127.9%
小売業 101.6%
不動産業,物品賃貸業 95.5%
学術研究,専門・技術サービス業 167.9%
宿泊業,飲食サービス業 132.5%
生活関連サービス業,娯楽業 124.1%
サービス業(他に分類されないもの) 174.9%

参照:e-Stat「中小企業実態基本調査」

(4)負債比率

負債比率とは、他人資本と自己資本の関係に基づいて、長期的な観点から自己資本に対する負債の割合を見る指標です。

負債比率 = 他人資本 ÷ 自己資本 × 100

自己資本の割合が大きいほど、他人資本の返済が保障されて安全性が増すと考えられるので、負債比率は低いほどよいと判断され、目安は100%以下とされています。

業種 負債比率
建設業 153.3%
製造業 119.5%
情報通信業 70.6%
運輸業,郵便業 175.5%
卸売業 161.3%
小売業 172.2%
不動産業,物品賃貸業 205.8%
学術研究,専門・技術サービス業 79.4%
宿泊業,飲食サービス業 594.3%
生活関連サービス業,娯楽業 195.2%
サービス業(他に分類されないもの) 122.7%

参照:e-Stat「中小企業実態基本調査」

(5)自己資本比率

自己資本比率も、負債比率と同様に他人資本と自己資本の関係を見る指標で「借入金が多すぎないか」をチェックします。

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資本(総資産) × 100

負債比率が低いほど良いのに対して、自己資本比率は高いほど安全性が高いと判断されます。日本企業は、従来は必要資金を銀行からの借入で調達していたため、自己資本の割合が相対的に低い傾向にあり、一時期は15%台まで低下していました。1980年代には新株発行に伴う資金調達が活発化したため、改善傾向がみられます。

業種 自己資本比率
建設業 43.1%
製造業 44.3%
情報通信業 57.0%
運輸業,郵便業 33.9%
卸売業 39.6%
小売業 36.6%
不動産業,物品賃貸業 35.2%
学術研究,専門・技術サービス業 53.8%
宿泊業,飲食サービス業 13.9%
生活関連サービス業,娯楽業 37.7%
サービス業(他に分類されないもの) 35.9%

参照:中小企業庁「中小企業の基礎データ」

(6)固定比率

固定比率とは、長期の支払い能力を見る指標です。
自己資本と固定資産の関係に着目し、固定資産をどの程度自己資本で賄っているかを判断します。

固定比率 = 固定資産 ÷ 純資産 × 100

固定比率は、100%以下であれば、固定資産を全額自己資本で賄っているということになり、長期の支払い能力はまずは安心といえますので、一般的には100%以下が目安とされます。

業種 自己資本比率
建設業 75.81%
製造業 96.15%
情報通信業 63.99%
運輸業,郵便業 147.73%
卸売業 88.43%
小売業 121.26%
不動産業,物品賃貸業 210.98%
学術研究,専門・技術サービス業 95.02%
宿泊業,飲食サービス業 509.80%
生活関連サービス業,娯楽業 201.44%
サービス業(他に分類されないもの) 93.25%

参照:e-Stat「中小企業実態基本調査」

まとめ

安全性分析では、会社の短期の支払い能力と長期の支払い能力をチェックします。
借入金が多すぎないか、十分な自己資本を持っているかといった財務体質を見るため、金融機関から融資を受ける時などは、この安全性分析の指標について説明が求められることがあります。
自社の安全性分析は、倒産リスクを回避するためにも非常に重要です。税理士等に相談して同業他社と比較して安全性分析の数値が低い場合には、早期に対策を講じることをおすすめします。

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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