経営改善を支援してもらうには?経営改善計画書とは?

公開日:2024年05月22日
最終更新日:2024年05月22日

この記事のポイント

  • 経営改善の方法は、まずは現状の把握と分析。
  • 追求すべきは、売上増加ではなく利益の増加。
  • 利益を増やすためには、経費削減でまず達成できる。

 

事業を行う上で目指すべきなのは、利益です。
「利益を増やすためには、売上を増やせばいい」と思われるかもしれませんが、それだけが利益を増やす方法ではありません。経費を見直してムダな経費を削減し、売上原価を下げる努力をすれば、利益を何倍にも増やすことが可能です。
 

経営改善の豆知識

顧問税理士がいれば、経営改善のために必要な決算書の数値を提示してもらうことができますし、利益計画や資金計画の策定や原価、経費の削減を実現するための対策を提案してもらうことができますし、決算書の信頼性を向上させ資金調達力を強化することができます。
ただし、税理士と顧問契約を締結すれば、かならず計画策定や経費削減の提案をしてもらえるというわけではありません。
顧問契約を締結する際には、「顧問料の対象となる業務は何か」「節税対策まで積極的に提案してもらえるか」「資金繰りや経営改善のための相談は、どの程度できるのか」など、細かく確認することが大切です。

経営改善とは

経営改善とは、財務分析で事業の実体をつかみ、利益増などの具体的な目標を定め、事業分析、組織分析、改善戦略の策定などを行うことです。
財務分析としてはさまざまな指標があり、前年と比較したり同業他社の比率と比較したりしますが、ここで大切なのが「良い、悪い」という結果を得ることが目的ではないということです。
その結果の裏には原因があるはずで、この原因について仮説を立てて分析・調査を行なうことこそが、効率よく改善策を見つけ出すためのコツです。

(1)財務分析で事業の実体をつかむ

まずは、財務分析を行い事業の実体を把握します。
財務分析は、安全性分析・収益性分析・生産性分析・成長性分析に分けることができます。

安全性分析:支払能力や財務体質の健全性に問題はないか
収益性分析:稼ぐ力があるか
生産性分析:効率よく稼いでいるか
成長性分析:順調に成長しているか

安全性分析は、短期的に倒産するリスクがないかを見る指標ですから、定期的にチェックすべきでしょう。会社は、手許資金がなくなれば、あっという間に倒産してしまうからです。
次に見るべきなのは、収益性分析です。売上原価率や販管費率をチェックして、ムダな経費がないか分析します。
それから効率よく成長しているかを見るために、生産性分析、成長性分析を行います。
ここでは、代表的な財務分析の指標をご紹介しますが、すべての指標で分析する必要はありません。
前述したとおり、まずは仮説を立ててみましょう。仮説を立てれば「とりあえず、財務分析を一通りやってみよう」ではなく「仮説を裏付けるための情報をまず集めて、分析してみよう」ということになるため、効率的な分析が可能となるからです。

(2)経営改善の目的は利益を増やすこと

経営改善の目的は、利益を増やすことです。
利益は、収益-費用で計算します。
下記は、売上を1%増やし、売上原価を4%削減し、販管費を2%削減した結果です。
改善前と改善後の利益を比較すると、最終的な利益は20倍以上になっています。

改善前 ▶▶ 改善後
売上に対する比率 売上に対する比率
売上 810 100% 売上 816 100%
売上原価 650 80% 売上原価 620 76%
売上総利益 160 20% 売上総利益 196 24%
販管費 150 19% 販管費 145 18%
営業利益 10 1% 営業利益 51 6%
営業外収益 -8 -1% 営業外収益 -8 -1%
利益 2 0.2% 利益 43 5.3%

売上を2倍にするのは難しくても、売上を1%増やす程度なら、それほど難しいことはありません。
売上原価を4%削減し、販管費を2%削減することもそれほど難しくありません。
人件費を削る必要も従業員をリストラする必要もありません。経費の中身を細かく見て削減に取り組めば、合計で6%減らすことは十分可能なはずです。
このように、少しずつ削減の努力を積み重ねることで、改善後の利益は20倍にもなったのです。利益率も0.2%から5.3%にもアップしています。

(3)利益計画の立て方

利益を上げるために必要なのが、利益計画です。
利益計画を立てるためには、まず目標経常利益を設定します。

①目標経常利益の設定
中小企業の場合、無借金経営を行っている企業はそう多くありませんから、目標経常利益を設定するためには、借入金の返済を考慮する必要があります。
利益を生み出すためには、少なくとも借入金の返済予定額以上のキャッシュ・フローを生み出さなければなりません。
そこで、まずは簡易な計算方法として、借入金の額に20~40%の余裕をもたせてキャッシュ・フローを見積ります。
たとえば、税引前当期純利益が1,000万円、減価償却費が200万円の場合、キャッシュ・フローは1,200万円になります。
借入金の返済予定額とキャッシュ・フローが同額だと、借入金の返済はできますが、不測の事態に対処することができません。
借入金返済額が1,000万円で20%の余裕を持たせると、125(1,000÷(1-0.2)=1,250万円)のキャッシュ・フローが必要ということになります。
このキャッシュ・フローから減価償却費、法人税等(仮に40%とします)考慮すると、目標経常利益を計算することができます。

1,250万円-200万円(減価償却費)=1,050万円(当期純利益)
1,050万円÷(1-0.4)=1,750万円(目標経常利益)

②固定費を計算する
目標経常利益を計算したら、次に固定費を計算します。
固定費とは、人件費や家賃、リース料、通信費、支払利息などです。
通信費は、従業員や取引先の増加によって増えるものなので、ある程度増加すると予想して見積っておきます。
ただし、後述する通り通信回線の変更などによりコスト削減を実現することもできます。
注意が必要なのが、人件費です。
人件費には、直接人件費と間接人件費があります。

直接人件費は、以下の計算式で計算します。

①従業員給与-退職予定者分の給与×昇給予定率
②賞与の年間予定額
③退職金の年間予定額
①+②+③=直接人件費

②間接人件費は、法定福利費や厚生費などの割合を直接人件費に乗じて計算します。

直接人件費×(法定福利費・厚生費などの割合)

(4)利益計画の実現に必要な資金計画の立て方

目標経常利益と固定費の合計は、目標限界利益となります。
ここから、目標売上高を計算します。

目標売上高 = 目標限界利益目標限界利益率

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高で計算しますが、目標限界利益率は、売上が1計上することで増加する限界利益の割合です。
次期以降、限界利益率が変化しない場合には、この数値を使用してOKです。商品構成や取引先に変化がある場合には、その要素を加味します。

たとえば、目標経常利益+固定費が500万円であれば、目標限界利益は500万円となります。そして売上高が2,000万円であれば、限界利益率は25%となります。
以上から目標売上高は、2,000万円ということになります。

(5)売上原価を(仕入原価)下げる

利益計画、資金計画を立てたら、具体的に利益計画の実現可能性を高めていきます。
まずは、売上原価(仕入原価)の削減です。
無理な原価削減は、品質の低下や従業員のモチベーション低下につながりかねないので、まずは3%削減を目指します。
仕入品の一覧表を作成し、金額の大きいものから単価の引下げ交渉の余地がないか検討します。

状況に応じて他の仕入先の検討も行います。
そして、この引下げ交渉は定期的に行います。取引先に交渉するのは辛いことではありますが、なぜ価格改定が必要なのか根拠を記載して、ていねいに説明してみます。
卸売、小売で仕入原価を下げる方法としては、メーカーと一緒に製品販売を行う方法があります。
売れる製品を作ってもらえばメーカーにとっても損はなく、価格引き下げに応じてくれる可能性が高まります。
どれも時間はかかりますが、実現できれば確実に効果があります。

(7)削減可能な経費の洗い出す

経費も、工夫次第で削減可能です。
経費項目を検討する際にも、まずは一番金額の大きいものから検討を始めます。
オフィス賃料も、場合によっては交渉できる余地がありますが、手をつけやすいものとしては水道光熱費、修繕費があります。
水道光熱費については、休憩時間は電力をストップすることで、削減できたケースがあります。
これまで9時間稼働していたものを、休憩時間の1時間削減すれば、1時間÷9時間の11%を削減することができます。
また、修繕費についても、その修理が必要だったか、価格は妥当だったかを細かく検証してみましょう。細かく検討することで、現場にもコスト意識が生まれます。

・広告宣伝費
意味のない広告費は、マーケティングの観点からも非常にリスクがあります。
なかには費用対効果や反響を全く確認していないケースがありますが、現時点で効果が認識できないのであれば、その方法自体を見直しすべきです。

・未活用の団体の会費
何らかのコストメリットがあったり会社の信用度が上がったり、大口の取引先との関係維持などの理由がない団体やコミュニティは退会しましょう。
経費だけでなく、貴重な時間も浪費します。

・売上につながらない交際費
売上や仕事に全くつながっていない交際費は、会社の損益を不必要に悪化させます。

・通信費
スマホやタブレットなどの契約を見直し、不必要な端末は解約を検討しましょう。

・消耗品費
消耗品費は金額も小さいことから、あまり内容を確認しないものですが、業況が悪い場合には、ムダ遣いになっている可能性もあります。

・車両費
ムダな車は、持っているだけで経費がかかります。「たまに使うから」という理由で、余剰な台数を保有している場合は、今すぐ処分を検討しましょう。

・新聞や雑誌の定期購読
新聞や雑誌は、何らかの経営改善や事業活動のために購読するものです。「ただ何となく」という理由で定期購読している場合には、解約を検討しましょう。

・機械装置や事業用車両
機械装置や事業用車両は、リース契約より取得することをおすすめします。とくに耐用年数が長く技術的にもそれほど進歩が少ない機械装置については、取得して減価償却が終わってからも大切に使うことで、コストメリットを享受できます。

(5)売上増のために営業力をアップさせる

前述したとおり、原価の削減、経費の削減も取り組むべき重要な課題ですが、売上増加もいうまでもなく大きな課題です。
前年対比120%と高すぎる目標を設定しても、従業員のやる気はなくなってしまいますので、まずは前年対比102%を目指しましょう。既存先は100%、新規で2%獲得するだけと考えると、それほど難しい数値ではありません。

取引先それぞれに合った作戦を立てるためには、営業日報を活用するのもひとつの手です。
自社製品の販売状況や、人事の動き、新規出店の情報、商談内容など、細かく分析していきます。
日報といっても紙に記載するわけではなく、Googleのスプレッドシートを活用すれば音声入力が可能なので、それほど時間はかかりません。
次に、その先を読むために戦略思考を始めます。
その先に展開する状況や場面を想定し、相手の反応を読み戦略を立てます。
商談は、予想外の展開になるものですが、前日には徹底した予行練習を行うくらいの心構えも必要です。
さまざまな状況や場面、反応を想定して予行練習をしておくと、当日の商談に自信と余裕が生まれるものです。

これは、たとえば飲食業等で売上を上げる方法にも通じるところがあります。
飲食業で売上アップを検討する際は、それぞれの時間帯に分けて、売上、客数をカウントし、そこから客単価を計算し、それぞれどのように上げていくかの作戦を検討していきます。
「客単価を上げるか」「客単価を上げるのは難しいから、客数を上げるか」「客数を上げるためには、チラシやのぼりを立ててみるか」「効果がなければ、次の方法としては何があるか…」と検証していくわけです。

状況を分析すること、その状況に応じて検証し戦略を立てることは、売上アップに欠かせない作業といえるのです。

(8)経営改善に顧問税理士が有効な理由

これまでご紹介した経営改善の計画を立てるためには、まず決算書が必要となります。
損益計算書や貸借対照表はもちろん、キャッシュ・フロー計算書も必要です。キャッシュ・フロー計算書は、中小企業には義務づけられてはいないため、作成されていない会社も多いでしょう。しかし事業を行ううえでは、キャッシュの動きこそが最も重要といえますから、税理士にキャッシュ・フロー計算書を作成してもらいましょう。

さらに、資金調達力を高めるために、決算書は税理士に作成してもらいましょう。
中小企業には監査制度がないため、決算書の信頼性が低く、資金調達が困難になるケースが多々あります。
しかし、いざという時に金融機関から借入ができなければ経営改善計画そのものがとん挫してしまうリスクがあります。
そこで、中小企業の決算書の信頼性を向上させる方法として「税理士法33条の2による書面添付制度」があります。
これは、経営者と共同して税理士が決算書を作成したことを証明するもので、決算書の信頼性を向上させ、資金調達力を強化することができます。

まとめ

事業を行ううえでは、経営の基本資源と言われる「ヒト」「モノ」「情報」「時間」をコントロールし、成長させることが大切です。中小企業であっても事業を成長させるためには、この資源の活用こそが経営を成功させるために大切だと認識すべきです。
そして、そのためには、経営の右腕となる存在が必要です。経営改善だけでなく事業を成長させるためにも、顧問税理士の存在は不可欠といえるでしょう。

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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