公開日:2021年08月26日
最終更新日:2024年06月28日
人時生産性とは、就業時間1時間に対してどれだけ売上をあげているのかを示す指標です。飲食店や小売業などでよく使われる指標で、「部門別」「売り場別」など差分化して分析すると、より効果的です。
人時生産性の豆知識
人時生産性とは。就業時間1時間に対してどれだけ粗利益を挙げているかを示す指標です。
小規模事業者が成長し、従業員を複数名雇うような状態になってきた場合には、この人時生産性の考えが重要となります。
下の計算式から分かるように、平均粗利益率に人時売上高を掛けた値です。
人時生産性=平均粗利益÷総就業時間 |
人時生産性を活用し、経営のあり方を根本から変えることで、業務ロスは格段に減り、従業員は自分の仕事に集中できるようになり、さらに工夫や改善を行うようになります。作業スピードが早くなり、従業員満足度も高まることから、現場のコンディションが上がります。
人時生産性を高める方法はいくつかありますが、たとえば1人あたりの仕事量をITで押し上げたり、ITで業務を可視化して、無駄を見つけて効率化を図ったりといった方法が考えられます。
人時生産性は、業種によって差がありますが、中小企業庁の発表によると製造業の平均は2,837円、小売業の平均は2,444円、宿泊業の平均は2,805円、飲食店の平均は1,902円となっており、非製造業の人時生産性は低い傾向があります。
参照:中小企業庁「中小小売業・サービス業の生産性分析」
人時(にんじ)生産性とは、「1人1時間当たり」を分析する指標です。
人時生産性は、以下の計算式で算出します。
人時生産性 = 売上高(営業利益・付加価値の場合もある) ÷ 総就業時間 |
---|
分母には、パート、アルバイト、派遣など非正規雇用の従業員の労働時間や、時間外労働も含めます。
また、分子には、売上高のほか、営業利益、付加価値を入れて分析することもあります。その場合には「1人時売上高」「1人時営業利益」「1人時付加価値」となり、いわば1人当たりの売上高や営業利益の人時版となります。
人時生産性の計算金額が増加傾向にあれば、その会社は良好と判断することができ、人時生産性の計算金額が減少傾向にあれば、どこかに問題があり、改善の必要性があるということになります。また、人時生産性がマイナス金額であれば、その会社は赤字経営をしていることを意味します。
人の生産性を見る時には、従来は「1人当たり」を基準としていました。つまり「1人当たりの売上高」や「1人当たりの付加価値(労働生産性)などです。
1人当たりの売上高=売上高÷従業員数 |
労働生産性=付加価値(売上高-外部購入価額)÷従業員数 |
しかし、最近は派遣社員や外注先が主要な戦力になっている会社が増えてきました。また、ワーク・シェアリングといった労働形態も増えており、「1人当たり」を計算するだけでは、適切な指標を得られないケースが増えてきました。そして、そのようなケースでは、1人当たりをさらに細分化して「1人1時間当たり」を分析する指標が重視されるべきとされ、人時生産性が注目され始めたのです。
人時生産性は、会社単位で分析すると結果が平均化されてしまうので問題点が見えてきませんが、売り場単位、部門単位で見ると、人の動きの問題点が明らかになります。
たとえば、人時生産性を「付加価値÷総就業時間」で分析してみましょう。
下記は、ある会社の売り場Aと売り場Bを分析したデータです。
売り場A | 売り場B | |
---|---|---|
従業員数 | 35 | 41 |
売上高 | 900,000 | 1,100,000 |
付加価値 | 243,000 | 298,000 |
総就業時間/年 | 71,000 | 91,900 |
労働生産性 | 6,943 | 7,268 |
1人当たり売上高(売上高÷従業員数) | 25,714 | 26,829 |
人時生産性(円/時間) | 3,423 | 3,243 |
労働生産性を見ると、売り場Aも売り場Bもそれほど問題はないのですが、両売り場の人時生産性を見ると、売り場Aは3,423円であるのに対し、売り場Bは3,243円であることが分かります。つまりこれは、売り場Bの人の動きにムダがある可能性がある、と判断することができるわけです。
人時生産性が「1人1時間当たり」を見る指標であるのに対して、労働生産性は、「1人当たりの付加価値」を見る指標です。
労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数 |
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付加価値とは、会社が外部から購入したモノやサービスに付け加えた価値のことで、控除法(中小企業庁方式)か加減法(日銀方式)で計算します。
控除法 付加価値=売上高-外部購入価額(商品仕入高や原材料費など) 加減法 |
従業員1人当たりの付加価値である労働生産性は、高いほどより利益の出やすい会社ということになります。また、付加価値は給料として従業員に支払われたり、配当として投資家に配分されたりしますので、少なくとも従業員は自分がもらっている給料以上の付加価値を稼ぎ出さないと、会社は赤字になります。
このように、労働生産性は1人当たりの付加価値を見る指標ですが、昨今のように非正規雇用の増加等で従業員数が必ずしも従業員の実際の労働時間を示さないケースもあることから、人時生産性が重要視され始め、「人の動き」をより細かく分析する必要が出てきたのです。
人時生産性は、会社全体で1人時売上高を計算しても、実は労働生産性とそれほど違った結果が得られないこともあります。そのような時には、部門別、売り場別など、より細分化して分析することで適切な指標を得ることができます。
人時生産性は、人の動きの問題点を把握する際のツールとなりますから、部門別、売り場別といった単位で数カ月、数週間と短い期間で分析すると、問題点を洗い出すことが可能となります。
人時生産性の計算式は「売上高÷総就業時間」ですから、人時生産性が低い場合には、「売上高を増加させる」もしくは「総労働時間を減少させこと」、およびその両方を対策することが必要になります。
しかし売上高をすぐに増加させるのは、容易なことではありません。したがって、総労働時間を減少させることをまず検討することになります。
これまでご紹介したように、効率的に就業時間を減らせる会社=生産性の高い会社です。
しかし就業時間を減少させると言っても、業務量自体が変わらないのでは意味がありません。なぜなら、単に就業時間を減らそうとする対策は、個人のスキルに頼るだけの対策だからです。就業時間を減らす=生産性を実現したいのであれば、業務のプロセスを見直す必要があります。
そこで検討したいのが「ECRSの原則」です。
ECRSとは、Eliminate(排除:なくせないか)・Combine(結合:一緒にできないか)・Rearrange(交換:組み替えられないか)・Simplify(簡素化:簡単にできないか)の頭文字をつなげたもので、業務プロセスを見直し生産性を向上させたい時には、このECRSに着目するべきということになります。
Eliminate(排除:なくせないか)…作業をやめることができないか Combine(結合:一緒にできないか)…別々の作業をひとつにまとめられないか Rearrange(交換:組み替えられないか)…工程や作業を入れ替えられないか Simplify(簡素化:簡単にできないか)…もっと簡単な方法はないか、自動化できないか |
ECRSに着目して業務プロセスを見直すためには、まず現状を把握する必要があります。そこで、可能な限りの業務を見える化します。
業務フローを作成すると業務全体を把握しやすくなりますが、まずは業務日報を作成するだけでも十分です。この業務日報には、すべての業務を洗い出すようにしましょう。そして、それを個人単位で1日の流れを洗い出して、1週間単位、1か月単位でまとめていきます。
業務日報は、従業員で共有してその中に何か気づきがあれば、改善のチャンスです。「この業務をなくせないか」「報告の回数を減らせないか」「会議の回数を減らせないか」などの気づきがあれば、1週間でも1カ月でもいいので、実践してみます。うまくいかなければ元に戻して、他の業務の見直しを行います。この実践の繰り返しは、業務プロセスを見直すために非常に重要となります。また、ITで業務を可視化して、無駄を見つけて効率化を図ったりといった方法もありますので、自社の状況に応じてツールを使い分けることも検討します。
なお飲食店など、時間帯によって売上高の変動が大きい業種については、さらに細分化して時間帯別に人時生産性を分析すると、より適切な指標を得て、問題点を明確にすることができます。会社全体の生産性ではありませんが、個別の戦略に役立ちます。
以上、人時生産性の意味や計算方法、人時生産性が低い場合の対策などについてご紹介しました。
人時生産性は、「1人1時間当たりの生産性」を見るための指標であり、昨今のように非正規雇用の従業員やパート、アルバイトが増え、ワーク・シェアリングといった労働形態が登場したきたことで、従業員数だけで分析することが必ずしも従業員の実際の労働時間を示さないケースにおいて、1人当たりをさらに細分化して分析するための指標です。
人時生産性は、部門別、売り場別、時間帯別などを分析すると、より問題点が明確になります。
人時生産性を上手に活用して問題点があることが分かったら、生産性向上のための業務プロセスの見直しを実践していきましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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