公開日:2019年07月02日
最終更新日:2022年07月09日
会社は原則として健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入しなければなりませんが、加入手続きやその他の諸手続きを行う窓口は、それぞれの保険によって異なります。
健康保険と厚生年金保険の新規加入手続きは、会社設立後5日以内に所轄の年金事務所で行う必要がありますし、労災保険は、労働基準監督署、雇用保険はハローワークが窓口になります。
この記事では、社会保険制度の概要や、年間で行うべき社会保険手続きのスケジュールについてご紹介します。
労働保険、社会保険については年間を通じてさまざまな手続きが必要です。
3月に健康保険料率や介護保険料率が改定されることがありますし、4月に労働保険率が改定されることがあります。担当者は、それに応じて手続きを行う必要があります。
社会保険とは社会保障制度の1つで、大きく医療・年金・労災・雇用・介護の5つの制度に分類されます。
社会保険制度には、「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」があります。
「広義の社会保険」は、「狭義の社会保険」と「労働保険」に2つに区分され、
「狭義の社会保険」とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つをいいます。
社会保険(広義) | 労働者保険 | 社会保険(狭義) | 健康保険 介護保険 厚生年金保険 |
労働保険 | 雇用保険 労災保険 |
||
一般国民保険 | 国民健康保険 国民年金 |
社会保険へ加入しなければならない事業所のことを、「社会保険の適用事業者所」といい、適用事業所は、強制適用事業所(国が法律で加入を義務づけている事業所)と任意適用事業所に分類されます。
法人格を有している場合には、国が法律で加入を義務づけている「強制適用事業所」なので、原則として必ず加入しなければなりません。
労災保険 労災保険とは、仕事中の病気やケガ、通勤途中のケガなどの時に使う保険制度です。 私生活で病気やケガをした場合には、病院の窓口で健康保険証を提示して治療を受けますが、仕事中の病気やケガ、通勤途中のケガの場合には、健康保険証は使わずに、労災保険を使って診療を受けることになります。 労災保険の対象は、パートやアルバイト、正社員などの名称にかかわらず会社に勤めているすべての従業員です。 労災保険加入の申請や、労災保険料の申告、労災保険給付の申請は、労働基準監督署で行います。 雇用保険 健康保険 厚生年金保険 介護保険 |
労働保険関係 | 社会保険関係 | |
---|---|---|
1月 | 労働者私傷病報告書の提出(10月~12月分) 労働保険料第3期納期限 |
社会保険料の支払い |
2月 | - | 社会保険料の支払い |
3月 | - | 社会保険料の支払い 健康保険料率・介護保険料率の改定月 |
1月は、前年に支払った給与や報酬等の支払調書を税務署と各市町村に送付する事務作業で忙しい時期ですが、12月分の社会保険料の支払いを忘れずに行います。
2月は、1月の社会保険料の支払いがありますが比較的スケジュールは緩やかです。
3月は、健康保険料率・介護保険料率の改定月です。
健康保険については協会けんぽの医療分の保険料率が引き上げられており、協会けんぽの介護保険料率が引き上げられています。
労働保険関係 | 社会保険関係 | |
---|---|---|
4月 | 労働保険率の改定時期(不定期) 労働者死傷者報告書の提出(1月~3月分) |
社会保険料の支払い |
5月 | 労働保険年度更新申告書類送付時期 | 社会保険料の支払い |
6月 | 労働保険の年度更新手続きの開始 労働保険の申告・納付 |
社会保険料の支払い |
4月は、新入社員が入社することから、社会保険の資格取得の手続きを行う必要があります。健康保険や厚生年金保険は、従業員が入社してから5日以内に手続きを行わなければなりません。
雇用保険は、従業員が入社した日の属する月の翌月10日が手続き期限です。
また、毎年6月10日から7月10日(土日を挟むなど、日にちは前後します)までには労働保険料の申告・納付手続きを行わなければなりません。
労働保険関係 | 社会保険関係 | |
---|---|---|
7月 | 労働保険申告・納付期限 労働者死傷者報告書の提出(4月~6月分) |
健康保険・厚生年金の算定基礎届提出期限 高年齢者・障がい者雇用状況報告書提出 社会保険料の支払い |
8月 | - | 社会保険料の支払い |
9月 | - | 定時決定(算定)後の社会保険料の反映対象月 社会保険料の支払い |
多くの会社では、年2度ボーナスを支給しますが、なかでも最も多いのが7月と12月にボーナスを支給するケースです。
ボーナスを支給すると、そのなかから社会保険料や所得税を控除する事務作業が発生します。
また、4月に昇給した従業員については、社会保険料のベースとなる給与を変更するために「報酬月額変更届」を提出する必要があります。
7月には、10日までに社会保険料の計算のベースとなる給与の決定手続き「報酬月額算定基礎届」の提出が必要です。
対象となるのは、7月1日時点で雇用している社会保険の被保険者全員で、6月1日以降に被保険者となった従業員は、届出の対象とはなりません。
どの従業員が届出の対象となるのか、しっかり把握して届出もれがないようにしましょう。
算定基礎届の対象とならない従業員 ・6月1日以降に社会保険に加入した従業員 ・6月30日までに退職した従業員 ・7月、8月、9月に月額変更届を提出する従業員 ・7月、8月、9月に育児休業等終了時変更届を提出する従業員 |
算定基礎届を作成したら、年金事務所に届出を行います。
年金事務所に届け出ると、新しい社会保険料額が正式に決定します。
また、労働保険料は、毎年7月10日(土日を挟むなど、日にちは前後します)までに申告・納付手続きを行います。
労災保険にかかる保険料を「労災保険料」といい、雇用保険にかかる保険料を「雇用保険料」といいます。そして、労災保険料と雇用保険料をあわせて「労働保険料」といいます。労災保険料は、危険度が高い業種ほど保険料率が高く、危険度が低い業種ほど保険料率が低く設定されています。
労働保険料は、従業員に支払われた給与額と通勤交際費の合計額に、決められた保険料率を抱えて算出し、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付する必要があります。
労働保険関係 | 社会保険関係 | |
---|---|---|
10月 | 労働保険料第2期納期限 労働者死傷者報告書の提出(7月~9月分) |
社会保険料の支払い |
11月 | - | 社会保険料の支払い |
12月 | - | 被保険者賞与支払届提出(支給日から5日以内) |
10月には、7月の標準報酬月額に基づいた、新しい社会保険料を給与から控除します。
社会保険料は、前月分を今月の給料から控除します。したがって、9月に改定された保険料を10月から控除することになります。
12月は、11月までの給与や賞与から控除した所得税の過不足を調整する年末調整があるため、年間で最も忙しい時期となります。各従業員から提出してもらう資料が多いので、11月中に計画的に準備しておきましょう。
労働保険・社会保険は、その都度発生する手続きがあります。
従業員入社時 健康保険・厚生年金被保険者資格取得手続きを行います。期限は5日以内です。 また、雇用保険被保険者資格取得手続きを翌月10日までに行います。 従業員退社時 |
労働保険・社会保険は、年齢に応じて発生する手続きがあります。
40歳到達 従業員の介護保険料の徴収を開始します。 65歳到達 70歳到達 75歳到達 |
以上、社会保険の種類やそれぞれの内容、1年間で行わなければならない手続き等についてご紹介しました。
社会保険の手続きや計算は煩雑で、保険料率は1年ごとに更新されるものもあります。社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受け、手続きもれや計算ミスがないように進めるようにしましょう。
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